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プロフェッショナルインタビュー Vol.2

自動運転や自動ブレーキシステムなど、加速する車の進化。IoT時代に対応した「コネクテッドカー」にも、大きな注目が集まっています。利便性や快適性、安全性向上など、いまや車の進化に欠かせない電子制御において、重要な役割を担うのがソフトウェアです。モビリティ分野におけるソフトウェア開発のプロフェッショナルが、電子制御や車に求められる新たなセキュリティなどについて語ります。

初めに、昨今の自動車開発の技術進化について聞かせてください。

現在の車は、まるで「走るコンピュータ」

  • 永原:
    昔の車は、単純に走ることが目的でしたが、現代の車はさまざまな便利さや快適さが追求されています。こうした車の進化を支えているのが、搭載された数多くの電子部品による制御です。現代の車には、大量のマイコンやセンサー、駆動装置が組み込まれ、数百のECU※によってさまざまな機能が制御されています。またこれらECUは車載ネットワークで結ばれ、機能連携に必要な複雑な制御も行っています。いま街を走っている車は、まさに電子部品や電子制御のかたまり、「走るコンピュータ」といえるでしょう。

  • ※ECU(Electronic Control Unit ):自動車の電子制御を行う装置

車の進化を支える電子制御の役割をもう少し詳しく教えてください。
  • 永原:
    電子制御は、エンジン、ブレーキ、トランスミッションなど車を動かすための領域だけでなく、カーナビによる位置情報確認や走行ルート案内、カーエアコンの自動温度調整、ドアの無線ロックや解除なども含め多種多様な領域で活用されており、走行性や利便性、快適性の実現に重要な役割を果たしています。
    さらに電子制御は、車の安全性向上においても欠かせません。時々、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故のニュースで目にしますが、こうした事故を未然に防ぐ自動ブレーキシステムも、電子制御などICTのチカラによって可能になったのです。

電子制御の鍵を握るソフトウェア

永原さんが所属するモビリティソリューション事業部では、どんな業務を行っているのですか。
  • 永原:

    車に関わるソフトウェア開発やソリューション・サービスの提供です。情報系(IVI※)や制御系などの車載組込みソフトウェア、画像認識技術を活用した周辺監視、センシング技術、車内外のネットワークセキュリティ、機能安全規格(ISO26262)に沿った開発支援サービスなど幅広く行っています。
    その中で、私たちのチームでは、電子制御やネットワーク制御を支えるソフトウェア開発やシステムインテグレーション、アプリケーションを動かすソフトウェアプラットフォームの開発などの業務を行っています。具体的には、自動車部品サプライヤーのお客様のご要望に合わせて、ボディ系ECUや安全系ECUに関する制御ソフトウェア開発を担当しています。

    ※IVI(In Vehicle Infotainment):車載情報通信装置。カーナビや音楽再生、スマートフォンとの連携などを実現する

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車載ネットワーク例
自動車におけるソフトウェアの重要性について教えてください。
  • 永原:

    電子制御の領域は多岐にわたります。「電子制御によって、何をしたいのか。どう動かしたいのか」といった用途や目的に合わせて、さまざまな部品装置を実際に動かします。その中で自動車の各機能の制御や車載ネットワークを通じて制御間の連携を行っているのが、ECU上のマイコンに組み込まれたソフトウェアなのです。
    車の進化に比例してソフトウェアの重要度もますます高まっています。自動ブレーキシステム、ペダル踏み間違い抑制やACC※などの安全機能や運転支援の機能は、センサー入力をもとに、ECU上のソフトウェアによって複雑な計算を行い、必要な制御を判断、実施するものです。もしソフトウェアがなかったら、このような先進機能は実現できません。

    ※ACC(Adaptive Cruise Control):定速走行・車間距離制御装置

開発者とドライバー。2つの目線を大切に

永原さんの具体的な業務について聞かせてください。

  • 永原:
    私は現在、さまざまなソフトウェア開発プロジェクトの統括リーダーとしての業務を遂行しています。モビリティのソフトウェア開発は、お客様からのご要望に合わせて、複数のチームによるプロジェクトが並行して進められます。そうした開発プロジェクトを俯瞰的に見守りながら、お客様と開発チームの間の意見調整や開発作業におけるトラブル解決のアドバイス、定期的な進捗・品質状況確認など、プロジェクト全体を円滑に進めていくのが私の役目です。

開発プロジェクトの統括リーダーに求められる知識やスキルとは何ですか。
  • 永原:
    ソフトウェア開発の知識に加えて、車全体におけるコンピュータやネットワークの知識が求められます。統括リーダーとして私自身が必要だと感じるのは、ドライバーとしての目線です。例えば、ソフトウェアによってAとBの動きを実現できるとします。その時、開発者としての目線だけでなく、自分がドライバーだったらどちらの動きを望むだろうかと、実際に車を運転する人の気持ちに寄り添った選択をすることです。
    また、こうした2つの目線によって、設計図面や仕様書単位の機能の追求だけでなく、複数の機能を連携させた場合にドライバーにとってよりよい動きが実現できるような気づきを、お客様にご提案することも大切だと思っています。
永原さんがプロジェクトを推進する上で、重視していることを聞かせてください。
  • 永原:

    重視していることは、大きく2つあります。1つは、メンバーとの対話です。開発プロジェクトは、機能やサービス、部品装置、マイコン、ネットワーク、ソフトウェア設計などの専門メンバーが集まってチームが構成されますが、作業を進める中で悩みを抱えるメンバーがあれば相談にのったり、トラブルが発生した時には、できるだけ直接相手に会って解決策やアドバイスを伝えたりすることを心がけています。こうした対話は、チームの結束力や仕事に対するモチベーションを高めるうえで欠かせないと感じています。
    重視している2つ目は、開発チーム間の垣根を超えてメンバーの成長を図ることです。チーム間で助けあったり、スキルを高めあったりできる環境づくりを目指し、関連するチームが参加する勉強会の開催、プロジェクトの運営や開発ノウハウ・プロセスの共有化など、数々の取り組みを行っています。

IoT時代の車に重要なのは、通信のセキュリティ

モビリティ分野におけるNECソリューションイノベータの強みを教えてください。
  • 永原:

    当社は、組込みソフトウェアの開発や、IoT、クラウドを活用したシステムの構築支援など、モビリティ分野においても応用可能な高度な技術力や幅広い対応力が大きな強みです。 さらに、長年にわたるソリューション提供の実績、先進のAI技術などNECグループの強みも活かし、お客様に新たな価値を提供します。

ソフトウェア開発で、注力していきたいのはどんな領域ですか。
  • 永原:

    通信の高速・大容量化、クラウドによるビッグデータ活用など技術の進展に伴い、ICT端末機能を持った車として「コネクテッドカー」に対する注目が高まっています。車外とのネットワークが大きく広がり、走行中の車同士のコミュニケーション、路上・建物などに設置したセンサーやカメラからの情報収集、メディアやデータベースからの情報入手など、膨大でスピーディな情報のやり取りが可能になります。そこで、特に重要になってくるのが通信や情報のセキュリティです。

    これまで車のセキュリティといえば、不正なロック解除などによって「車を盗む」行為を防ぐ対策などが中心でしたが、今後は、サイバー攻撃を受けたり、プライバシーが侵害されたりといったリスクが懸念されます。不正アクセスによってデータが盗まれたり、改ざんされたりすると、走行トラブルなどによる重大な事故につながりかねません。そのため、「情報を盗む」行為から車を守る新たなセキュリティ対策が求められます。こうしたリスクを低減するデータ暗号化など、通信の安全・安心に役立つソフトウェア開発に力を注いでいきたいと考えています。

社会に役立つモノづくりが、仕事のやりがい

仕事における永原さんのやりがいとは何ですか。
  • 永原:

    自動車関連のソフトウェア開発は、2~3年位のスパンで進められます。多くの時間をかけ、仲間が力を注いで作り上げたソフトウェアを搭載した車をテレビCMで目にしたり、実際に街を走っている光景に出会ったりすると、思わずうれしくなります。車を制御するソフトウェアを実際に目にすることはできませんが、自分たちが作ったソフトウェアが人々や世の中に役立っているのだなと、実感できる瞬間だからです。 1つのプロジェクトが完了すると、新たなソフトウェア開発がスタートします。次のモデルや次世代の車に向けた新たなソフトウェアには、それまで以上の高度な技術や機能の進化が要求されます。より高いゴールに向かってつねに挑み続けることが私たちに課せられたミッションですが、そうした仕事に意欲を燃やしてやりがいを感じるのは、私だけでなくチームのみんなも同じだと思います。

最後に、永原さんの今後の仕事に向けた想いを聞かせてください。

  • 永原:

    自動車の進化だけでなく、これからは街や道路などを含めた大きな観点から交通システムを見つめることが大切だと思っています。
    車を運転するのが好きで、モノづくりが好きな私としては、自動車産業全体の発展とともに安全で快適な街や社会づくりに、今後もソフトウェア開発を通じて役に立つことができればと願っています。

(2018年7月19日)