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IoTにおけるAI活用の効果、活用法や導入メリットについて
組込みシステム近年ビジネスにおいて何度も耳にするのが、IoTとAIです。どちらも先進のテクノロジーで相互に補完する関係にあるものの、用途や目的は全く別物です。本記事では、IoTとAIの概要、メリット、活用法と課題などを詳しく解説します。IoTとAI活用に伴う課題解決に役立つソリューションについても紹介するので、ぜひご一読ください。
目次
IoTとAIの違いとそれぞれの特徴
はじめに、IoTとAIの違いについて明確にしましょう。それぞれの概要と特徴を解説します。
IoTとは
IoT(アイオーティー)は「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット」とも呼ばれます。パソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスだけでなく、車やセンサー、家電製品、住宅設備など、従来はインターネットに接続できなかったモノをインターネットに接続する技術です。インターネットを通して得られた情報をビッグデータとしてサーバーやクラウド上で収集し、分析・連携などを行うことで、既存の製品・サービスの高性能化、新しいサービスの創造などにつなげられます。今やIoTは、公的機関から医療、物流、小売、サービスなど、様々な業界で欠かせない技術になりつつあります。
AIとは
AIは「Artificial Intelligence」の略称で、邦訳すると「人工知能」と読みます。明確な定義はありませんが、人間の思考プロセスを模倣するコンピュータシステムやプログラムのことを指します。学習した膨大なデータをもとに新しいデータを判別、分類、分析することで、人間が行っていた多様なタスクを代わりに実行できます。画像認識のように、特定の作業に特化したAIもあります。近年では、学習したデータを踏まえて新しいテキスト、画像、音楽などを作る生成AI(ジェネレーティブAI)も登場しています。いずれも、機械学習やディープラーニングなどを行うことで、膨大なデータを学習できます。
IoTとAIの違い
IoTとAIは、注目されるテクノロジーとして共に言及されることが少なくありません。しかし、相互に密接な関わりがあるものの、IoTとAIは全く異なる技術です。IoTは、設備や機器などのモノを使って膨大なデータの収集を自動化する技術です。それに対してAIは、大量のデータを学習することで法則性などを見つけ、推論・生成などを行う技術で、接続するモノは不要です。そして、AIがデータに基づく高度な推論などを行うには、大量の良質なデータを学習することが欠かせません。そのため、「IoT機器を通して質の高いデータを収集し、機械学習などの技術を通して優れたAIを開発する」という使い方をなされるのが一般的です。
IoTにおけるAI活用が注目され始めた背景
IoTとAIの活用が注目され始めた背景には、5G(5th Generation:第5世代の通信規格)の普及などがあります。5Gは、4Gの最大100倍ほどの超高速で、大容量のデータを瞬時に送受信できる技術です。AIの機械学習には膨大なデータが欠かせませんが、この5GによってIoTによる膨大・高品質なデータの収集が高度化・効率化されることで、AIの学習精度が飛躍的に向上しています。
それに伴い、IoTやAIを導入するハードルも下がりつつあります。令和2年時点で、監視カメラや非接触型ICカード、電子タグといったIoTやAIなどのシステム・サービスを導入している企業の割合は12.4%で、導入予定の企業を含めると22.1%となりました。
総務省「令和2年通信利用動向調査の結果(概要)」
URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000756018.pdf
IoTにおけるAI活用の相乗効果
前述のとおり、IoTとAIはそれぞれ異なる役割を持ち、相互に補い合う関係です。IoTが収集した膨大で多種多様なデータをAIが分析し、試行錯誤を繰り返しながら、より最適化されたアウトプットにつなげていくことが可能です。今やIoTとAIの相乗効果は、業種・業態を問わず様々な分野で注目を集めています。相乗効果の具体例は数多くあります。本人確認のための画像認識や音声認識はもちろん、ビッグデータ解析、自動翻訳、レコメンドサービス(おすすめ機能)、機器の故障検知、在庫管理、顧客課題の把握、ユーザーの問い合わせ対応、車の自動運転、病気の早期発見、都市計画、水産養殖など、多岐にわたります。官公庁でも積極的に利活用が進められています。
IoTとAIを導入するメリット
自社に合ったIoTとAIを導入し適切に運用することで、業務の効率化や労働環境の改善といったメリットを得られます。
業務の効率化につながる
蓄積していたデータをAIに学習させることで、人間に代わって高精度な判断・作業を自動化・半自動化で行えます。特に定型化された作業やデータに基づく予測は、AIの得意とするところです。ユーザーの問い合わせにAIが答えるチャットボットも、ここ数年で一般化しました。また、「IoTを生産ラインで活用し、新旧を問わない機器からデータを収集しAIで分析することで、サイクルタイムを減少させる」などの取り組みも実行できます。結果として生産性の向上や人手不足の解消が見込めるだけでなく、人材戦略の抜本的な見直しも行えます。
労働環境の改善につながる
各業務のプロセスにAIやIoTを導入して自動化・半自動化を進めることで、従業員の働き方にも余裕が生まれます。その結果、各従業員のモチベーションが高まり、エンゲージメントが向上することも期待できます。例えば、蓄積された業務データに基づく需要予測やセールスレターの自動送付、顧客審査の自動化なども有効です。それによってコア業務に従業員が集中できるようになるため、イノベーションが生まれやすくなります。
IoTとAIの活用法
すでにいくつかIoTとAIを業務の一部で活用している具体例を挙げましたが、本章では「スマート〇〇〇」と呼ばれる、より大掛かりなIoTとAIの活用事例を解説します。
スマートファクトリー
「スマートファクトリー(スマート工場)」とは、IoTやAIなどのテクノロジーを積極的に活用することで各業務プロセスを最適化し、生産性・品質の向上、製品化・量産化の期間短縮、人材不足の解消などに取り組む工場のことです。産業用センサー、産業用ロボット、産業用3Dプリンターなどの導入によって、各データの収集・管理にかかる工数削減、業務の属人化の解消、予防保全、トラブル発生時の迅速な対応などが実現できると期待されています。また、膨大で多様なデータによって各業務プロセスが可視化されることもメリットのひとつです。それによって経営戦略の見直し、各従業員のスキルの標準化、円滑な技能継承なども行いやすくなります。
スマートストア
IoTやAIを活用して無人化・省人化による効率的な店舗運営を実現するのが「スマートストア」です。AIカメラによる売れ筋商品や品切れ商品の自動検知、電子タグを使った商品情報の検知などを行えます。また、顧客の属性をはじめ、店内の移動経路などの行動データも収取することで、効率的なマーケティングを実現できるのが特長です。AIによる需要予測によって発注作業も効率化します。また、スマートストアでは顧客がセルフレジなどで決済するため、従来よりも少ないスタッフで店舗運営を行えるようになるとして、人手不足や人件費の大幅な削減に直結すると期待されています。キャッシュレス決済が基本なので、感染症対策としても有効です。
スマート農業
「スマート農業」とは、農業における持続性の確保と生産性向上を両立させるために、AIやIoTといった先進のテクノロジーを利活用する取り組みです。過去の収穫データや気象データ、生育予測システムなどのデータを統合して最大限に活用し、農作業の自動化などを行うことで、収益の向上、コスト削減、高品質な農産物の安定供給などをめざしています。農林水産省でも、農業データを連携・共有できるクラウドサービス「WAGRI」の運用を開始しました。農業に新規参入する企業なども、WAGRIを通して農作物の病害や作業適期などのデータを利活用できるため、農業の深刻な担い手不足への対応策となることが期待されています。
スマートシティ
先進テクノロジーやデータの利活用によって温室効果ガスの排出削減などの社会課題を解決し、そこに住まう人々が等しく快適で安全に暮らせる持続可能な都市を「スマートシティ」と呼んでいます。SDGsの達成などとも連動して、国を挙げて推進している取り組みです。地域がそれぞれに持つ個性を生かしながら、行政の各種手続きをはじめ、エネルギー、交通、商業、医療、福祉、観光、災害対策など様々な都市機能をスマート化していくことで、地域間格差の解消などをめざします。地方自治体をはじめ、民間企業やNPOなどがエコシステムを形成する動きもあります。複数のプレーヤーが協働して都市運営に関わることで、スマートシティの持続可能性を高めていくことが期待できます。
IoTとAIを活用する際の課題
IoTとAIは近年普及しつつある、進化し続けているテクノロジーです。そのため、企業が倫理観とリテラシーを持つことは大前提として、以下で挙げるような課題も論じられています。
セキュリティを万全にする必要がある
IoTは各端末が相互にネットワークに接続されているため、顧客・企業の情報漏えいや改ざん、誤作動・制御不能などのセキュリティ事故を起こさないように、IoTの性質をよく知った上で、適切なセキュリティ強化の対策を行うことが欠かせません。セキュリティレベルの低いIoTデバイスを通してサーバーが攻撃される可能性も考慮しましょう。AIでは、デバイス内で処理が終わる「エッジAI」も登場していますが、基本的に情報漏えい・改ざんをはじめ、サイバー攻撃、誤情報の悪意ある拡散などに備えなければなりません。また、AIを運用する側の責任として、生成AIの著作権侵害、AIが統計的に生成したコンテンツによる差別の助長などにも気を配る必要があります。
適した人材の確保が必要である
仮にIoTやAIのシステムの連携・開発をしたいと考えても、どちらも新しい分野で高い専門性が求められるため、一朝一夕でできるものではありません。データ分析も同様です。これらAI人材・データ人材を確保するため、世界各国で人材の獲得競争が激化しています。そのため、すでに十分なスキルを備えた人材を採用するハードルは上がっています。実務経験がなくともAIやIoT運用に興味がある人材などをポテンシャル採用し、自社で長期的に育成することも検討の余地があります。すでに開発されたAIを導入する場合でも、AIに任せる範囲の設定、AIへの適切な指示、仕上がったもののチェック・評価は欠かせません。
コストがかかる
どのような機器やテクノロジーにも共通しますが、IoTやAIを自社の業務プロセスに組み込むには、初期費用や維持費がかかります。価格を重視するのは当然ですが、欲しい機能がなければ本末転倒です。また、多額のコストをかければ生産性向上に直結するとも限りません。そのため、まずはAIやIoTの導入によって解決したい自社の課題、利活用する目的、達成したいKPIなどを明確にしましょう。AIはデータが不足していれば正しい判断ができないため、解析・学習させるのに十分なデータが確保されているか、IoTなどを活用してデータを収集・蓄積できるかといった観点も忘れないようにしてください。その上で、コストパフォーマンスをしっかりと考慮しながらプロジェクトを進めることが重要です。
IoTとAIにおける活用の課題はエッジAI(組込みAI)で解決
IoTやAIを新しく導入する際には検討する項目がいくつもありますが、コストやセキュリティといった課題は、「エッジAI(組込みAI)」で解決できる可能性があります。エッジAIは、センサーなどのIoT機器にアルゴリズム構築済みのAIを直接搭載する技術です。得られた情報は、従来のAIのようにクラウドで処理を行うのではなく、デバイス上で処理します。そのため、即時性とセキュリティ面を重視する場合に適した選択肢となります。そのほか、低遅延・低消費電力で行えることもメリットです。
しかし、エッジAIにもデメリットがないわけではありません。複雑化しやすいなどの課題があるため、NECソリューションイノベータの「エッジAI技術 設計・開発」をはじめ、検討から構築・実装まで一貫してサポートを行っているソリューションなどを選ぶことがおすすめです。
まとめ
近年よく耳にするIoTとAIは、両者を導入することで相乗効果が見込めます。IoT機器が収集したデータをAIが分析しアウトプットすることで、様々な分野でイノベーションが起こる可能性があります。ただし、新しい技術であるため、特に悪用やサイバー攻撃などへ備えることは急務です。もしもセキュリティ面がAI導入のボトルネックであるなら、デバイスに直接AIを搭載することによってセキュリティリスクを抑えられるエッジAIの導入を検討するのも有効です。