製造業の組み立て作業とは?効率化の改善手法、改善事例を解説

NEC 現場作業支援ソリューション

製造業や工場の組み立て作業とは

製造業の組み立て作業とは、部品やユニットを設計図面にしたがって標準時間や標準手順のなかで組み上げていくことです。

製造するものにもよりますが、かつては人の手で組み立てるのが主流でした。現在は、組み立て作業の効率化や少子高齢化による作業者の減少といった観点から、産業用ロボットなどの機械設備の導入が進んでいます。

たとえば、組み立て途中の製品や部品の運搬といった人間が関わると時間がかかってしまうような作業や負担が大きい作業、検査などの非付加価値作業などにロボットが使われることが多いようです。もちろん、ビス締めやハンダ付けといった作業にもロボットが活用されています。

ただし、機械設備の導入には大きなコストがかかります。製品の変更などによる段取り替えにも時間がかかり、逆に効率が落ちてしまうリスクもあるので、無理に導入を進める必要はありません。また、各工程でできた部品を最終的に製品として組み上げていく過程など、人間がおこなうほうがいいところもあります。

メリットとコストを客観的に計算しながら、組み立て作業のどこに、どれだけの機械設備を導入するかを考えるといいでしょう。

組み立て作業を効率化・改善する方法

組み立て作業を効率化するにはどうしたらいいでしょうか。大切なのは人作業の観点と機械設備の観点を分けて考えることです。

機械設備の観点から組み立て作業の効率を改善するためには、機械設備が止まってしまう阻害要因を見える化する必要があります。

たとえば、24時間止まることなく動かしても問題のない機械があったとしましょう。ところが、その機械を本当に24時間稼働させられるとは限りません。どうしても機械が停止してしまうことがあるからです。組み立て作業を効率化するためには、その原因を明らかにする必要があります。設備自体に問題があるのか、組み立てに使う部品の精度や品質に問題があるのか、人のオペレーションに問題があるのかといったことをはっきりさせて改善してくといいでしょう。

人の作業の観点では、動作分析と時間観測をしっかりおこなう必要があります。一般的に製造の現場では「標準作業」が決められています。標準作業とは「サイクルタイム(製品1つ作るための1サイクルの標準的な時間)」や「作業順序」などが決められたものです。
また、1日の所要に対し製品1つを作るペースを「タクトタイム」として進捗を管理する必要があります。

タクトタイム=1日の定時稼働時間÷1日の生産必要数

たとえば、「1日1000台の需要がある製品を、1日7.5時間の稼働で製造する」というケースを考えてみましょう。この場合のタクトタイムは「7.5時間(2万7000秒)÷1000台=27秒」となります。つまり、27秒に1台を製造する必要があるということです。このタクトタイムは基準となる時間なので、これより早く作業が終わっても遅くなってもいけません。

ところが、実際にはこのタクトタイム通りに作れず、作業時間にバラツキが出ることがあります。そのバラツキの原因を明らかにし、見える化する必要が出てくるのです。

ここで動作分析と時間観測が役立ちます。一つの製品が完成するまでの作業を細かく分けて、それぞれにどれだけ時間がかかっているのかを計測するのです。たとえば、ビスを締める工程だけを考えても、「ビスを手に取る」「ビスを穴に差し込む」「ビスの頭にドライバーを当てる」「ドライバーをまわす」「ドライバーをビスから離す」「次のビスを取る」というよう分解できます。こうした作業を秒単位で計測して、どこでバラツキが起きているかを探っていくのです。そして、それぞれの作業にかかる平均時間を算出して標準作業を修正。その繰り返しによって、組み立て作業を効率化していきます。

ただし、やってはいけない効率改善の方法があります。それが労働強化です。「単純に人間の動作スピードを速くすればいい」という考え方をするのではなく、普通の人間が無理なく動ける範囲のなかで効率化しなければいけません。人間の動作スピードはそのままでも、「人間の移動距離を短くする」「部品を置く位置を変える」「右手で取っていた部品を左手で取るように、標準作業を変更する」など、効率を改善する方法はたくさん見つかります。

組み立て作業効率化の事例

組み立て作業の効率化を実現したモノづくり拠点に、NECプラットフォームズ 福島工場があります。NECプラットフォームズ 福島工場では、一つの製品が完成するまでの工程を何千にも分解。どうすれば効率的に作業を進められるかを研究しました。自分たちでできるところは改善し、開発部の協力が必要なところはフィードバックをして効率化していったのです。

また、各工程の作業時間を計測する時間観測などは、これまで人間の手でおこなっていました。ストップウォッチを持った人間が作業者のうしろに立って、どれぐらいの時間がかかるのかを確認するわけです。もちろんこの方法でも標準作業を改善することはできます。しかし、その分だけ人員を増やす必要があるので効率的ではありません。1~2か月に1回程度しか時間観測できないため、その精度に疑念が生じる可能性もあります。

そこでNECプラットフォームズ 福島工場では、「現場作業支援ソリューション」を導入してDX化しました。現場作業支援ソリューションは、作業者の前にある端末が「カバーをつけてください」「ビスを締めてください」などと音声で指示を出してくれるシステム。作業を実施した作業者が「OK」と発話するだけですべての作業時間を記録できるので、人員を割かず継続的に時間観測できます。

組み立て作業効率化の事例

このソリューションに実装されている「つぶやき機能」も組み立て作業の効率化に役立ちました。これは作業者が「音声メモ開始」と発話することで、やりづらいと感じた動作を音声でメモできる機能です。効率が落ちがちな項目を、作業に追われる作業者が失念する前に発話によって記録。リアルタイムに改善へとつなげられるのです。

たとえば、作業者がやりづらいと感じた項目にビス締めがあります。それまではある製品の組み立て時に、その製品を斜めに立ててドライバーを当てる動作を標準としていました。そのため作業者が一歩後退してからビス締め作業をおこなっていたのです。これに作業者がやりづらさと非効率を感じたことから、製品を垂直に立てた状態でビス締めするように変更。作業者は定位置にいられるようになり、作業効率が上がりました。

ある製品のラベル貼りも「つぶやき機能」によって改善できたことの一つです。もともとこの製品のラベルは、製品の前に飛び出ていた装置押さえ板を越えて貼る必要がありました。ところが、これでは作業しづらいだけでなく効率が落ちてしまいます。そこで装置押さえ板が製品より下に収まるように改善したことによって、作業を効率化しました。

NECプラットフォームズ 福島工場は、効率改善のために必要な時間観測といった作業や、DX化による標準作業のスピーディな見直しなどによって、組み立て作業の効率化を実現したのです。

日本電気株式会社 東日本統括支社 シニアエキスパート坂西 勉

1993年よりトヨタ生産方式(TPS)をベースとした現場改革を開始。
NECの携帯電話事業においてそのノウハウを学び、高度化する製品・生産技術の中、 25年間もの長年に渡り、ものづくり改革をはじめ、サプライヤ・顧客エンドユーザーを結ぶトータルSCM改革を推進、実践、指導の経験を持つ。
現在は、日本電気(株)東日本統括支社に所属。
様々な顧客企業へのSCM、現場・業務プロセス改革、IT活用に向けた顧客目線での効率的導入のサポートに従事。

日本電気株式会社 東日本統括支社 シニアエキスパート坂西 勉

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