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菅野建設工業株式会社 様
NEC VR現場体感分析ソリューション・導入事例開設予定の『危険体感実技センター』にVRを導入し
体験型の設備と併用することで効果的に安全教育を実施
開設予定の『危険体感実技センター』にVRを導入し、体験型の設備と併用することで効果的に安全教育を実施。VRと体験型設備を併せて経験することで、より印象深く学ぶことが可能に。継続的に進化させ"労働災害ゼロ"を目指す。
菅野建設工業株式会社
- 本社:〒969-1206 福島県本宮市長屋字征矢田6
- 設立:1949年4月
- 資本金:5千万円
- 事業内容:総合建設業(一般土木・舗装・建築・冷暖房衛生設備・上下水道・造園)、一級建築士事務所(建築設計業務)、宅地建物取引業(不動産斡旋業務他 業務)
事例のポイント
課題背景
- 労働災害の低減を目指し、危険を体感できる『危険体感実技センター』の開設を計画していた。
- すべての危険を体感できる設備をつくり込むには費用がかかり過ぎるため、部分的に最新の通信技術を利用したい。
- 実際に設備化できない危険について、映像を利用したバーチャルリアリティで体感させたい。
成果
- 感覚的に体験できるVRと体験設備を組み合わせることで、非常に効果的な教育ができるようになった。
- 新しいコンテンツを追加してVRを進化させ、継続的な教育を行うことで労働災害ゼロを目指す。
- 同業他社や異業種の企業からも、『危険体感実技センター』を講習や見学に利用したいという申し込みが多数あり、地域貢献・建設業貢献の想いから無料で開放。
導入前の背景や課題
「顧客、社員、地域社会との"絆"を強め、全てにおいて信頼・安心できる企業を目指す」を経営理念に掲げる菅野建設工業様は、2018年5月28日、本社敷地内に『危険体感実技センター』を開設しました。施設内にはVRを使った危険体験訓練をはじめ、工事現場で想定される危険を体験できる設備がそろっています。代表取締役の菅野泰助氏は、NEC VR現場体感分析ソリューション導入の背景について、次のように語ります。
「私の今年のテーマは『不易流行』です。建設業界では、人手不足、若手技術者不足、若い人の建設業離れが大きな問題になっています。こうした状況にあって、時代の流れに沿って変えていくべきものと、変えてはいけないものがあると思っています。将来の繁栄を考えると、当社においても根本の経営理念は変えませんが、いろいろと変えていくべき方策があります。例えば、IoTやAIなど、最先端のICT活用もその一つ。先行して取り組んでいくことで、建設業のみならず、未来の社会を支える子供たちにもアピールできればという想いがあります」
同じように危機感を抱く国土交通省も、ICT の全面的な活用等の施策を建設現場に導入することで生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指すi-Constructionの取り組みを進めています。
「当社も生産性向上の視点からICT活用を進めていきますが、経営理念に掲げる"信頼・安心できる企業"になるには、大元に社員の安全があることが前提条件になります。これまでも社員の安全教育には力を入れてきましたが、安全があって初めて高品質を実現できます。そして、そこから顧客や社会の信頼・信用も生まれてきます。これは、まさに企業活動の目的でもあります。今回のVRは、大元となる社員の安全確保のための教育を効果的に行える最新技術と判断しました」(菅野氏)
選択のポイント
デモ体験会での体験からトップが導入を即決。
『危険体感実技センター』の開設に合わせて、VRコンテンツ制作もスタート。
「NEC VR現場体感分析ソリューション」導入の経緯について、営業本部管理部土木積算・調査課長の成田龍一氏は、次のように語ります。
「NECソリューションイノベータから、2017年3月開催の『最先端ICTビジネス事例体験セミナー』のDMが届きました。案内を見ると、VRやドローンがあり、面白そうだったので参加しました。その時はセミナーが中心で、あまり話をする時間はありませんでした。そこで、連絡を取りデモを依頼すると、快く了承してくれました」
翌月の4月21日、菅野建設工業様においてデモ体験会が行われました。
「社員と協力企業の社員を含め35名くらいが参加し、VRとドローンのデモを体験。社長をはじめ会社の上層部も参加していました。その当時、たまたま安全教育を行う『危険体感実技センター』をつくる計画がありました。そこで、せっかく施設をつくるのならば、VRも入れようかという話になったのです」(成田氏)
「VRのデモでは、製造業の棚から部品を取る工程学習や、高層ビルとビルの間に渡した足場を歩くという体験しました。足場歩きでは、怖くて足がすくみ前に進むことができませんでした。『百聞は一見に如かず』の言葉がありますが、いくら"危ないよ"と言っても、なかなか恐怖心や危機感は伝わりません。自分で体験し"あっ、これだ"と思ったのです。そこで、役員会で決裁をもらう前に、先に進めてしまおうと即決。それくらい衝撃的な体験でした」(菅野氏)
こうして『危険体感実技センター』にVRも導入するプロジェクトが本格的に始動しました。まとめ役としてプロジェクトを推進した管理本部 IMS統括管理部長の本多英男氏は、次のように述べます。
「プロジェクトメンバーは、それぞれの役割を担いましたが、大事な事は皆で相談しながら進めていきました。私は、その取りまとめを行ったのです」
「体験会では臨場感があると非常に好評でしたが、実際のVR導入ではコンテンツづくりが重要になります。私は、主にそのコンテンツづくりを担当しました」(成田氏)
土木本部管理部調査・計画係主任技士の小林豊氏は、ITに関わる課題を中心になって担当しています。
「私が主に担当したのは、VRで使う機器の選定です。NECソリューションイノベータと相談しながら、費用対効果を十分に検討し、選定を進めていきました」
プロジェクト期間は1年以上。やはりコンテンツづくりに時間をかけました。
「ゼロベースでつくり始め、つくっては皆に意見を聞き、NECソリューションイノベータに修正を依頼。そのやり取りを10回近く繰り返しました。また映像の撮影では、実際に現場の作業者にも協力してもらうなど、大勢の人が関わりながら完成を目指しました」(成田氏)
「VRはセンターのオープンの直前に完成。バーチャルとリアルを併せた施設として2018年6月より、まず当社と関連会社の社員から利用を開始しました」(本多氏)
導入後の成果
VRと体験型設備を併せて経験することで、より印象深く学ぶことが可能に。
継続的に進化させ"労働災害ゼロ"を目指す。
『危険体感実技センター』を安全教育に利用し始めてからの効果について、本多氏は次のように語ります。
「VRと実際に体験できる設備を組み合わせることで、非常に効果的な教育ができるようになりました。VRはゲーム感覚でできる面白さがあり、高所作業で足場から転落する恐怖や、土木作業で土砂崩れに巻き込まれる恐怖を体感できます。しかし、転落時の衝撃などを直接身体で感じることはできません。そこで、VRの近くに落下衝撃を体験できる設備や、安全帯ぶら下がり体験のできる設備を置き、足場作業の恐怖と身体的な衝撃を連動して体験できるようにしました。すると非常に印象が深くなり、安全に対する意識も高まります。一方、土砂崩れは画像だけですが、土砂災害を考える良いきっかけになっています。このようにVRと設備のプログラムを順に体験することで、少しでも災害が少なくなってくれれば良いと思っています」
「VRのことは、ゲームですがどんなことができるか知っていました。今回は、初めての経験なので、ここまでの内容のものができたことに満足していますし、施設全体の中でVRの機能が活かされていると思います」(小林氏)
また、これからのVRの展開について、成田氏はこう語ります。
「現在のコンテンツは2種類ですが、今後、例えば重機巻き込まれ体験など、新しいコンテンツを追加していきたいと思っています」
「役員会で予算を取り、プロジェクトを進めていきましたが、余剰スペースを有効利用するなどにより、十分予算内に収めることができました」(菅野氏)
VRも体感できる『危険体感実技センター』は、建設業界でも先進的な試みであり、業界に大きな一石を投じました。
「県内の新聞2紙、建設業界専門紙などに記事として取り上げられたのをはじめ、一般社団法人福島県建設業協会を通じた取材依頼などもあり、かなり大きな反響がありました。それだけ、注目度も高く、評価されているのではないかと思います」(菅野氏)
菅野建設工業様では、まず自社の社員、関連会社、協力会社の社員と、順に教育研修を進めていきました。
「7月に入ってからは、同業他社の方の研修も受け入れています。現在は、建設業だけでなく当社のお客様である製造業の方からも、全社員に研修させたいという希望をいただいています。また『危険体感実技センター』の見学のお問い合わせもたくさんあります。福島県建設業協会からも視察したい、ゆくゆくは安全講習に利用したいという相談もいただいています。"労働災害ゼロ"がキャッチフレーズですが、自社の労働災害ゼロはもちろんのこと、建設作業での労働災害を少しでもゼロに近づければと考えています。経営理念にあるとおりの地域貢献、あるいは建設業への貢献という想いで施設を無料で利用してもらっています。
今回のVR導入は、つくろうとしていた施設にちょうどマッチする最新技術がタイミングよく紹介されました。偶然ではなく、すべてが必然に集まってつくり上げられていった施設ではないかと皆思っています。今後、もっともっとVRを進化させて継続的に教育を続け、労働災害ゼロを達成できれば良いと思っています」と、菅野氏は締めくくりました。