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コラム
“密”を避けて現場を感じるトレーニングを
コロナ禍で注目が集まるVR・AR研修

UPDATE : 2021.02.26
今、多くの企業で課題となっているのが、リモートワーク下での新入社員(中途入社含む)教育です。
コロナ禍の収束が見えないなかで加速するリモートワークの活用。結果的に「働き方改革が進んだ」とポジティブに考える企業も少なくないようですが、従来の社員研修では、実際の現場に出向く必要がある、会議室に集まるなど、密になってしまう可能性があり、コロナ禍での研修・教育には多くの問題があります。
その解決策の1つとして注目を集めているのがVR・AR技術を活用したトレーニングです。実際、多くの国内企業でもVR・ARを活用した社員トレーニングをすでに始めています。
具体的にどのような成果が得られるのか?多くの実例から見えてきた高い実効性、そして意外なメリットなどをご紹介します。
新型コロナ禍で従来方式の
社員教育が難しくなった
おさまらぬ新型コロナ禍の中、VR・AR技術を駆使した新入社員研修が注目を集めています。
VR(仮想現実)・AR(拡張現実)と言えば、ゲーム、エンタメ業界で話題となったテクノロジー。2016年に発売された『Oculus Rift』や『PlayStation VR』を中心とした第2次VRブームを覚えている人も多いことでしょう。
実はこの技術、ゲーム・エンタメ業界だけでなく、ビジネスの世界でも注目を集めています。VRの「まるでその場にいるような臨場感」や、ARの「現実世界に視覚情報を追加できる利便性」が、社員のトレーニングにピッタリだと一部の先進企業が気づき、活用し始めたためです。
具体的には2018年頃から、自動車メーカーのアウディが製造工程で働く従業員のトレーニングに、ファストフードのケンタッキーフライドチキンが調理・接客トレーニングに利用しはじめ、大きな成果を上げています。
実際の現場に行かずとも、会議室や、従業員の自宅など、ちょっとした空間でリアリティのあるトレーニングを行えることがVR・AR研修のメリット。こうした特性が、新型コロナ禍の今、ますます高く評価され始めているのです。
VR・AR研修には密回避以外にも
時短・理解促進など多数のメリット
新型コロナの感染拡大から2度目の春に向け、国内でも多くの企業がVR・AR技術を駆使した社員トレーニングをはじめています。
コンビニ大手のファミリーマートは2020年10月に直営店で勤務する新入社員(2020年度入社)を対象に、VR社員研修プログラムの実証実験を実施。VR空間でトレーナーから店舗オペレーションを学んだり、VR空間内で実際に手を動かしたり、これまで対面でしかできないとされていた新入社員教育プログラムを「密」を避けながら実現しています。学習効果も極めて高く、同時に行われた従来形式のプログラムを受けたグループと比べ、教える側、教わる側合わせて約60時間の教育時間が削減できたとのこと。この成功を受け、今後はフランチャイズ加盟店など、さらに導入対象を拡大していくとのことです。

そのほか、住友林業はグリーとの協業で2020年春の新入社員研修からVR・AR技術を活用中です。同社はこれまで入社1〜3年目の若手社員を対象に、バスで建築現場を訪問する合同現場研修を行っていましたが、これをVR動画に切り換え、現場に行かずして現場の空気感を体感できるようにしました。VR動画による研修には、受講者が同じ動画を見ることで理解の質を一定しやすくなるメリットに加え、往復3時間+準備1時間の工程と費用を削減できるというメリットも。中長期的にはAR技術を活用した教育ツールの整備も視野に入れていると言います。
また、新型コロナ対策の最前線である医療分野でもVR技術を用いたトレーニングが始まっています。特に注目を集めているのが、重症呼吸不全の治療に利用する体外式膜型人工肺(ECMO/エクモ)操作技能習熟のためのVRコンテンツ『人工肺ECMO教育VR』。利用頻度の低さから、習熟に必要な20〜40症例をこなすまで10年以上かかるとされていたECMOの習熟を、VR技術を利用して集中的に「体感」することで劇的に圧縮。早急にECMO治療の臨床経験値を高めることができると言います。すでに昨年8月から現場の医師で構成される「日本COVID-19対策ECMOnet(エクモネット)」主催の研修会がスタートしており、その後も多くの都道府県で同様の研修会が行われています。

VR・AR研修は
今後、当たり前のものになる
あらゆる分野でVR・AR技術を活用した社員トレーニングが注目を集める中、VR・AR技術を取り入れた社員研修ソリューションも次々に登場しています。
VRを活用すれば体験型現場教育やチームワーク訓練、問題点やノウハウの定量的な可視化と分析ができますし、ARを活用すれば遠隔地の未熟練労働者の指導や現場作業のサポートなどが可能になります。
こうしたトレーニングを必要とする業種・業界であれば、今すぐにでもVR・ARトレーニング導入を検討する価値はあるでしょう。現時点ではまだ、それぞれの企業に合わせたオーダーメイドのソリューションが主流ですが、ビジネスマナー講習をVRヘッドセット越しに学ぶような、パッケージ化された敷居の低いサービスもスタートしています。
2020年3月に国内初の緊急事態宣言が発令されてから1年以上が経過した今日。国内でもワクチン接種が開始されるなど、いよいよ収束に向けた動きが見えつつありますが、多くの専門家は「油断するのはまだ早い」と警鐘を鳴らしています。また、一部の企業には、新型コロナの状況に関わらず、今後もリモートワークを継続すると表明するところも。
こうした中、VR・ARトレーニングは今後、間違いなく一般化していくことでしょう。もはや一過性のムーブメントではなくなっているのです。
まとめ
新型コロナ禍の中でもVR・ARソリューションを駆使することで、新入社員のトレーニングは可能です。アフターコロナ後も有効活用することで、リモートワークなど、さまざまな働き方に対応できます。