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コラム
RFM分析とは?顧客分析の基本手法と施策例を解説

UPDATE : 2022.02.18
RFM分析とは、「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」という3つの指標を用いて顧客をグループ化する分析手法です。顧客の性質にあわせたマーケティング施策を実践するために有用で、顧客分析の基本ともいえる分析手法の1つです。本記事では、マーケティングに取り組むうえで押さえておきたいRFM分析の特徴と基本的な分析手順、施策例を解説します。
INDEX
- RFM分析とは
- RFM分析のメリット
- RFM分析の手順
- データ集計・整理
- データ分析
- 施策・改善アクション
- RFM分析の注意点と対策
- 分析項目を増やして補完する
- その他の顧客分析手法を併用する
- 顧客分析を属人化させないために
- ExcelとPythonによる分析の注意点
- まとめ
RFM分析とは
RFM分析は、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」これら3つの指標を用いて顧客をグループに分ける分析手法です。「R・F・M」は、3つの指標の頭文字から取られています。
「最終購入日(R:Recency)」
顧客が最後に購入したのはいつかを算出し、最終購入日からの時間が短い顧客を高く評価
「購入頻度(F:Frequency)」
顧客が何回購入したかを算出し、回数が多い顧客を高く評価
「購入金額(M:Monetary)」
顧客の購入金額の総額を算出し、金額が高い顧客を高く評価
例えば「FとMの数値は高いが、Rの数値が低い」場合は、「購買力はあるが最近の購買がないことから、競合他社に奪われ離反されている可能性がある」という分析を行い、離反対策の施策につなげます。このように、分類したグループごとに効率的かつ効果的なマーケティング施策の立案を行える点がポイントです。なお期間の設定に関しては、対象となる製品やサービスの特徴などから判断する必要があります。

RFM分析のメリット
各指標により整理された顧客グループの分布を確認し、自社の状況を可視化できる点もRFM分析の大きなメリットです。例えば、優良顧客や休眠顧客、新規顧客という分類をしたとして、全体の割合で優良顧客層が多いのであれば、その層に対するマーケティング施策は一定の効果を発揮していると判断できます。一方、休眠顧客が多いのであれば、リピート購入を促す施策が不足している可能性があるでしょう。
このように自社の状況を分析することで、「どの顧客グループに対して、どのような施策を、どのタイミングで実施すべきか」の判断材料を手に入れられ、施策のPDCAを回転させることに役立てられます。さらに顧客グループ間の優先順位も付けやすくなるため、効果の見込めない層へのリソースを削減すれば、限られたリソースを売上効果の見込めるグループに集中投下することも可能になります。
RFM分析の手順
RFM分析の手順は、「①データ集計・整理」「②データ分析」「③施策・改善アクション」という3つのステップに分けられます。
①データ集計・整理
データ分析を行う場合、最初に解決すべき課題の設定とそれに対する仮説立案を行います。RFM分析以外のさまざまな分析方法も検討したうえで、諸条件を踏まえた課題解決のためにはRFM分析が適しているという判断に基づき実施します。
RFM分析の場合は顧客の「最終購入日・購入頻度・購入金額」データの集計が必要です。なお、「購入頻度」を集計するためには、顧客の識別が可能となるユニークIDが必須。小売業の場合は、これらのデータ収集にPOSレジ(ID-POS:顧客IDと購買データが連係しているデータ)を効果的に活用しましょう。
この際、上記3つの指標に加えて確認したいデータ(例えば商品名、顧客の年齢、居住エリアなど)の抽出ができれば、さらに詳細な分析が可能になります。ただし、プライバシーにかかわる情報となりうるので、個人情報の扱いには十二分に注意しましょう。
また、表記ゆれや入力ミスなどで発生する不正確なデータを修正し、データを整理するデータクレンジングも、分析精度や分析作業の生産性に影響を与えるため、徹底して行います。
②データ分析
RFM分析では3つの指標をもとに顧客グループを分類します。そのため、まずは「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」それぞれの分布状況をヒストグラムで確認しましょう。この時、それぞれの数字の解釈・判断にはビジネスの理解が不可欠です。例えば下図のように、通販の購入金額指標において特定の金額帯で急激なピークが発生したとします。

これにはさまざまな理由が考えられるでしょう。通販事業者が設定した「その金額以上は送料が無料」といったサービスも数字に影響するため、どの値にグループを分類する境界を設定するかは、ビジネス的な観点と根拠が不可欠です。
数値の分布を確認できたら、次は分析です。下表のように、3軸の値に応じてスコアを割り当て、総合点で分類する方法があります。
最終購入日 Recency |
購入頻度 Frequency |
購入金額 Monetary |
|
---|---|---|---|
スコア5 | 7日以内 | 20回以上 | 15万円以上 |
スコア4 | 4週間以内 | 15回以上 | 10万円以下 |
スコア3 | 2か月以内 | 10回以上 | 6万円以上 |
スコア2 | 半年以内 | 5回以上 | 3万円以上 |
スコア1 | 1年以内 | 5回未満 | 1万円未満 |
この区分けは任意で変更できますが、あまりにも細かく分類してしまうと分析にかかる手間と時間が膨大となるため、施策に落とし込むまでに時間を要してしまいます。上表の場合では、すべてのスコアのパターンでグループを分類すると125通りになります。ビジネスの種類や規模にもよりますが、3指標のスコアの合計値でシンプルに分類し、すばやくPDCAを回転させていくことも検討するとよいでしょう。
下図はBIツールを用いてビジュアル化したイメージです。「購買頻度」と「最終購買日」で9つにグループを分類し、色のグラデーションで「購入金額」を表現しています。グループの分類方法など、データ分析による状況の可視化は一朝一夕とはいきませんが、下図のようにBIツールを活用することで直感的にビジュアル化することが可能です。


データ分析がゴールにならないように、ITツールを効果的に活用することも検討しましょう。
③施策・改善アクション
分析が完了した後は改善施策の実施へと移行しますが、ポイントは、継続的に分析と施策を繰り返してPDCAを回転させることです。なお、実際に施策を展開する際には、グループの優先順位付けとリソースの配分を行う点も留意しましょう。
それでは、仮に「優良」「優良候補」「新規」「休眠」の4つに分類したケースの施策例を紹介します。
優良グループへの施策例
3つの指標で高いスコアを示す層は「優良グループ」となります。この層に対しては、「ロイヤルカスタマーへの進化」を狙います。具体的な施策例としては、限定商品の提案や新商品の体験イベントへの招待、顧客ランクの実装とランクに応じたプレミアサービスの展開などがあります。
大切なのは「お得感」ではなく「特別感」です。魅力的な特典や体験で、顧客からの愛着と信頼の獲得を狙います。SNSが生活に定着した現代では、確かな信頼関係を築けたロイヤルカスタマーが、新たな集客をもたらしてくれる可能性もあります。
優良候補グループへの施策例
「購入頻度」のスコアに課題がある場合はポイントカードなどリピートを誘導する施策を、「購入金額」のスコアに課題がある場合はお得なセットパッケージ企画などを展開します。EC事業者なら、アップセルやクロスセルにつながるレコメンド機能の実装や、顧客にとって有益なコンテンツの発信で顧客体験の向上を図ります。
また、詳細な分析をするために、アンケートやインタビューを実施し、顧客インサイトを深掘りすることも検討すべきです。この層が優良グループとなるか休眠グループとなるかで、ビジネスに大きな影響を与えます。さまざまな施策を試し、分析と改善を繰り返しましょう。
新規グループへの施策例
新規顧客の育成はビジネスにおいて非常に重要です。顧客全体の中でこの層にボリュームが偏っている場合は、顧客の定着、リピーター化に課題があるとも判断できます。メルマガ登録やSNSフォローによるクーポン配布、2回目の利用時に適用できるリピートクーポン配布などの施策を検討すべきです。
また、初回購入後のアフターフォローの質を高めることも重要です。コミュニケーションの足掛かりを確実に築くことで、顧客にとって興味のある情報発信などのパーソナライズした施策を展開し、リピート利用につなげます。
休眠グループへの施策例
休眠グループと一括りにしても、過去の優良(候補)顧客が休眠顧客になったケースと新規顧客から休眠顧客となったケースとでは、施策が大きく変わります。
前者の場合、顧客の転居やライフステージの変化も理由として考えられます。転居の場合であれば、最寄り店舗の案内やオンラインサイトへの呼び込みを徹底すべきです。後者の場合は、新規顧客からの育成に失敗している可能性が高いので、製品およびサービスにおける課題の洗い出しや、新規グループに向けた施策の見直しを行います。
休眠顧客の掘り起こしにもコストがかかります。この層に対する施策にどの程度のリソースを割くかは、ビジネスの状況に応じて検討すべきでしょう。
RFM分析の注意点と対策
さまざまなメリットがあるRFM分析ですが、一方で以下のようなデメリットも存在します。
- 計測するタイミング次第で結果が変わる
- 購入者の細かい属性やライフステージの変化までは考慮できない
- 購入頻度が低い商品の分析や購買行動の予測には不向き
計測期間の設定次第では、月に1回程度の利用で10年以上にわたって定期的に購入している常連顧客より、直近のセール期間中に連日購入した顧客を優良と判断する可能性もあります。また、買い替え需要が数年に1回程度の商品では、購入頻度のスコアにほとんど差が生じません。
こうした課題を解消する手段としては、「①分析項目を増やして補完する」「②その他の顧客分析手法を併用する」ことが有効です。
①分析項目を増やして補完する
前述したデメリットを補うためには、分析項目を増やすことが効果的です。具体的には、「R・F・M」の指標に商品(Item)の項目を追加した「MRFI分析」や、距離(Distance)によるエリア情報を加味した「RFM-D分析」などがあります。
また、既存の分析項目を深掘りして新たな指標を付与することも有効です。例えば、1年に10回購入があった場合と、1ヶ月に集中して10回購入があった場合、RFM分析の「購入頻度」では同じ集計期間内であれば同じ分類となります。この購入頻度の集中度具合を新たな指標に据えて顧客分析を深めれば、さらにパーソナライズされた施策の展開も可能でしょう。
②その他の顧客分析手法を併用する
RFM分析が苦手とする部分を他の顧客分析手法で補う方法もあります。具体的な分析手法を以下で紹介します。
●CPM分析
CPM(Customer Portfolio Management)分析は、RFM分析と同じく顧客をグループ分けし、それぞれに適したマーケティング施策を展開することが目的の分析手法です。
RFM分析と異なるのは、分析項目。CPM分析では「購入頻度」「購入金額」「初回購入から最終購入までの経過日数」「最終購入日からの経過日数」を指標にして顧客を分類します。
RFM分析では、購入者の細かい属性やライフステージの変化までは考慮しないため、一度休眠顧客に分類されると、そこからの掘り起こしは困難です。一方、CPM分析では休眠顧客へと至るまでを段階的に分類するため、よりきめの細かい分析とアプローチが可能となります。特に休眠顧客の掘り起こしや顧客育成(ナーチャリング)に有効活用できます。
●デシル分析
デシル分析は、顧客を購入金額順に10のグループに分類し、それぞれの購買データから顧客分析を行う分析手法です。
デシル分析では、各グループが全体売上のどれくらいを占めるかを算出します。購買力の高い上位グループを可視化することで、売上貢献の高い層に向けて集中的な施策を展開することを可能にします。指標が購入金額のみであるため、RFM分析よりも簡単でハードルが低い分析手法となり、優良(候補)顧客を素早く見出し囲い込み施策の立案を行う際に有用です。
ただし非常にシンプルな分類となるため、この分析手法の特徴を理解しておく必要があります。例えば、デシル分析では「数年前に1回だけ高額の購入があった顧客も優良顧客に分類」することが起こりえるため、データの期間に関しては十分に配慮しなければなりません。
●ABC分析
売上の高い順番に項目(商品やサービスなど)を並べ、ABCの3つにランク分けする手法がABC分析です。
例えば、売上累計の構成比75%までをAランク、75〜95%までをBランク、残りの5%をCランクなどと商品をグループ化して可視化します。そこから商品の売れ筋や死に筋を把握して、どの商品に注力するのかを検討する際に利用します。各ランクを何%で区切るかについては明確な決まりがあるわけではなく、分析の目的や過去の経験則などから設定するため、分類には知見が求められます。
RMF分析では難しい、売上における商品やサービスの重要度が相対的に把握できるため、注力商品の可視化や露出の強化、在庫管理への応用(仕入れの強化)、不調商品の見直しなどに有用です。
●CTB分析
CTB分析は、以下に挙げる3指標で顧客をグループ化、分類する分析手法です。
【カテゴリ(Category)】例:大分類(電化製品、食料品、アパレル)小分類(洗濯機、テレビ、カメラ、Tシャツ、シューズ)
【テイスト(Taste)】例:色、柄、形、素材、サイズ
【ブランド(Brand)】例:メーカー、キャラクター、ブランド
この指標をもとに顧客をいくつかのグループに分類し、グループごとの購入傾向を可視化します。顧客ペルソナの解像度を上げて施策を検討することができるため、RFM分析が苦手とする、未来の購買行動に向けた施策の実施に適しています。
●セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客の属性や購入履歴などから、類似した傾向を持つ顧客を分類する分析手法です。例えば、「20代、女性、海外ブランド好き、化粧品購入額月2万円以上」のように顧客や市場を区分して、狙ったセグメントに対して効果的な施策を行います。
価値観の多様化に伴い細分化された顧客ニーズの把握に有効とされています。
なおセグメンテーション分析に用いられる分類には、以下の基準が用いられます。
①ジオグラフィック変数(地理的変数):国、地域、都市、気候、生活習慣など
②デモグラフィック変数(人口動態変数):年齢、性別、職種、家族構成など
③サイコグラフィック変数(心理的変数):趣味嗜好、興味関心、ライフスタイルなど
④行動変数:曜日、時間、購入に至る経路、購入頻度など
RFM分析では対象としない、より細分化された顧客の特性から購入傾向を可視化します。インターネット広告に活用すれば、地方や性別などのセグメントに合わせたアプローチが可能です。さらにセグメントの特性に合わせた配信媒体および配信時間の選定を行うことで、より効率的かつ効果的にマーケティングを行えます。
●行動トレンド分析
行動トレンド分析は、特定の期間における購入行動を分析する手法で、季節ごとの商品戦略を立てる際に役立ちます。
年齢や性別などを軸に顧客を分類して、どのグループが特定期間における全体トレンド(売り上げのヤマ)を生み出しているかを分析します。さらに分析対象に商品を据えることで、季節ごとの売れ筋を明らかにします。このような手順で、売り上げに貢献する可能性の高い期間とグループと商品を把握します。
注意点としては、RFM分析と同様に優良顧客(商品)が分析対象の中心になるということです。また期間と顧客層の分類は、「年単位、月単位、曜日」や「年齢層、購入チャネル、居住地」など多様に考えられ、当該分野における知見が求められる点も留意すべきです。
●AIを活用したデータ分析
顧客分析にAI、機械学習を用いるケースも増えています。例えば、画像や音声のような表形式に変換できない非構造化データの分析です。AIによる画像認識技術は、製造現場での不良品検出や医療現場における画像診断に活用されているほか、顧客分析の領域で実店舗における人流の分析などに応用されています。また、ECサイトで広く採用されているレコメンド機能は機械学習の範疇の技術で、データから関連性を導き出すアソシエーション分析により実現しています。
AIや機械学習の応用で、未開拓のデータの分析や顧客にとって有益なデータ利活用が行えますが、実装には高度な専門知識が求められます。
関連情報
顧客分析を属人化させないために
RFM分析をはじめとした顧客分析により、効果的なマーケティング施策の実行が可能になりますが、要求される知識レベルは非常に高度です。結果として、データ分析業務が属人化・ブラックボックス化しかねません。組織にデータ分析を定着させるためには、「データ分析業務の啓蒙」と「現状のデータ分析・利活用状況の課題提示」を行い、組織レベルで協力体制の構築を図る必要があるでしょう。
ExcelとPythonによる分析の注意点
企業活動を支えるExcel(エクセル)でも、RFM分析などの顧客分析は可能です。またプログラミング言語のPython(パイソン)を活用すれば、機械学習が実装できます。しかしながら、分析担当者の技量への依存が大きいと、顧客分析現場の属人化が進んでしまう恐れも。データ分析を組織に定着させるために、ナレッジやノウハウを共有する仕組みを作ることが重要です。
ビッグデータと呼ばれる超多量データの分析を行う際には、ビッグデータの運用を想定したBIツールを導入するとよいでしょう。社内の多種多様なデータを統合管理することができるBIツールは、データを用いて素早い意思決定を行うための機能を備えています。UI(ユーザーインターフェイス)も優れているため、直感的にデータを把握することができます。
また、超多量のデータを分析する場合は、Excelでは動作が不安定になり時間を要する恐れがあります。効率的にPDCAを回転させるためにも、ITツールを導入しデータ分析環境を整備することが肝要です。
まとめ
RFM分析では、3つの指標を用いて顧客をグループ化することで、自社の状況を可視化します。分析項目の補完や、その他の顧客分析の併用により、データ分析結果の解像度を上げることも可能です。
昨今ではデータ収集の手段と技術が進化し、膨大なデータを用いて顧客分析を行う企業も増えています。競合他社に後れを取らないように、新しいITツールを活用し効率的かつ効果的に顧客分析を行うデータドリブンな組織を目指してみてはいかがでしょうか。