エッジコンピューティングとは?IoTの活用事例も解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

エッジコンピューティングとは?
IoTの活用事例も解説

UPDATE : 2022.02.25

エッジコンピューティングとは、利用者側の端末やその近くに設置するサーバーなどのネットワーク周縁(エッジ)部分でデータを処理するコンピューティング手法です。普及を続けるIoTや5Gと相性が良いネットワーク技術として注目を集めています。本記事では、エッジコンピューティングにどのような特徴があるのか、ビジネスにどのように役立てられるのか、最新の活用事例を踏まえてわかりやすく解説します。

INDEX

エッジコンピューティングとは?

「エッジコンピューティング(Edge Computing)」とは、コンピュータネットワークの周縁(エッジ)部分でデータを処理するネットワーク技術です。従来のクラウドコンピューティングでは、全ての情報をクラウドに集約しクラウド上の高性能サーバーでデータ処理を行います。これに対しエッジコンピューティングでは、データ加工や分析など一部の処理をネットワーク末端のIoTデバイス、あるいはその周辺領域に配置したサーバーで行い、加工されたデータのみをクラウドに送信します。不要な通信を避けることで通信遅延やネットワーク負荷の低減などを実現します。

なお、エッジコンピューティングに近しい概念として、シスコシステムズが提唱した「フォグコンピューティング」があります。これはエッジとクラウドの中間地点でコンピューティング処理を行う手法です。クラウド(雲)よりもユーザーに近い場所に位置することから、「フォグ(Fog)=霧」という表現が使われています。フォグコンピューティングは、ネットワークの中間で処理を行い情報の橋渡しを担うため、端に存在するエッジコンピューティングと共存して効果を高めることも期待されています。

多様なエッジコンピューティング

エッジコンピューティングでは、スマートウォッチなどのウェアラブル端末や監視カメラ、ドローンや工場の制御装置などを「エッジデバイス」とカテゴライズします。その他、工場や支店オフィスなど特定のエリアに設置されたサーバー機器などを「ロケーションエッジ」、通信基地局やWi-Fiのアクセスポイントなどを「ネットワークエッジ」と分類しています。上記以外にも、利用者に近い距離にあるデータセンターなどでエッジコンピューティングを機能させるケースもあります。このように、どのような形態をとるかには厳密な決まりがありません。目的に応じて役割を分担させてエッジコンピューティングを機能させるため、多様な活用パターンが存在します。

ETSI(欧州電気通信標準化機構)では、「MEC(Multi-access Edge Computing)」として標準化を進めています。MECでは、通信基地局近くなどに分散処理サーバーを展開することで、一定エリア内におけるデータ処理の効率化を目指しています。5Gのさらなる拡大を見据え、MEC環境の高付加価値なサービスが活況を帯びることが見込まれています。

エッジコンピューティングのメリット

これまでのクラウド集約型のコンピューティング技法とは大きく異なるエッジコンピューティング。ここではその代表的なメリットを4つ紹介します。

低レイテンシの実現

レイテンシとは、データ転送をリクエストしてから実際に届くまでに生じるデータ通信の遅延時間を指します。ネットワークを通じて遠距離のデータ送受信を行うクラウドコンピューティングでは、約0.1秒~数秒の遅延が避けられませんでした。対してエッジコンピューティングでは、端末に程近いエッジ領域で処理を行うため、物理的な距離が短くレイテンシを軽減させられます。そのため、自動運転や工場の機械制御などリアルタイムの管理が必要な場面で、特に効力を発揮します。

ネットワークの負荷を軽減

エッジコンピューティングでは、エッジデバイスで収集したデータを全てクラウドにアップロードする必要がなくなるため(エッジ側で処理したデータのうち、必要なものだけを送信可能)、通信量の劇的削減と自社ネットワーク帯域の圧迫を低減させることが可能です。また、これに伴う通信コスト削減も大きなメリットです。

データ漏えいのリスクを低減

エッジデバイスで収集したデータを丸ごと全てクラウドにアップロードするクラウドコンピューティングには、小さくないセキュリティリスクが存在します。その点、エッジコンピューティングではクラウドに送信するデータを必要最小限度に絞り込むため、プライバシーリスクのある情報を保持する必要がなく、データ漏えいなどのリスクを最小化できます。

クラウドサーバーの影響を少なくする

例えば、工場ラインの稼働状況をネットワークコンピューティングでリアルタイムに管理するような仕組みの場合、操業中のサーバーダウンは許されません。また、BCP(事業継続計画)の観点からも操業を継続できる仕組み作りが求められています。エッジコンピューティングでは、クラウドに依存することなく稼働できる環境を構築することも可能なため、BCP対策にも寄与します。

エッジコンピューティングを取り巻く現状

クラウドやIoTといった最新ネットワーク技術は、わずかな期間でビジネスや暮らしの有り様を大きく変えました。しかし、ここに来てその課題が顕在化していることも事実。指数関数的に増大していくネットワークトラフィックやセキュリティリスクなどに早急な対処が求められています。エッジコンピューティングはそこに1つの解決策を提示することが期待されています。

5G時代における大きな役割

すでに実用化が始まっている次世代データ通信技術「5G」。その特徴でもある「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」は、低レイテンシなどのエッジコンピューティングの特長をさらに増強するものです。
特に、5Gの展開により今後も普及が見込まれているIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に対して、エッジコンピューティングは大きな役割を果たします。IoT機器でリアルタイムに収集するビッグデータをすべてクラウド上で処理すると、ネットワークに多大な負荷が発生することは自明の理でしょう。しかし、エッジコンピューティングを効果的に機能させられれば、将来的なデータ通信量の削減や、クラウド側の負担軽減も実現できます。

重要度を増すデータセキュリティ対策

これからの社会は日常生活からビジネスまで、あらゆる場面にIoT機器が介在し、そこで収集されたデータをビッグデータとして活用していくようになります。その中には、個人を識別可能な個人情報も含まれるため、これまで以上にデータセキュリティやデータガバナンスへの注目度が高まっています。実際にデータ保護に対する情勢は国際的に動いており、EUではGDPR(EU一般データ保護規則)が2018年に施行され、日本では改正個人情報保護法が2022年に施行されます。
このように、個人情報およびプライバシーを守りつつもデータを最大限有効活用することが求められている状況下であるため、利活用に不要な情報をクラウドで保持する必要がないエッジコンピューティングは期待を集めています。

エッジコンピューティングの最新活用事例

すでに現実社会で活用が始まっているエッジコンピューティング。ここではいくつかの先進的事例をピックアップして紹介します。

自動車のIoT「コネクテッドカー」

幅広い分野に活用のステージを拡げているIoTですが、特に注目を集めているのが自動車のIoT化、すなわち「コネクテッドカー」でしょう。その目玉の1つと言われている自動運転機能では、低レイテンシを駆使したリアルタイムな障害物検知などにおいて、エッジコンピューティングがフル活用されています。車両の状態(業務用大型自動車向けのタイヤマネジメントソリューションなどがすでに実現)や交通状況をリアルタイムに共有し、安全でスムーズな移動を実現するメリットは計り知れません。
なおネットワークに繫がることによるハッキングのリスクは生じるため、多くの企業がセキュリティに対する取り組みを進めています。人命に関わる重要なポイントのため、コネクテッドカーを含むIoTのセキュリティ対策の進化は、サービスが流通するための非常に重要なミッションです。

農業領域でのIT活用「アグリテック」

農業や水産業の世界でもITによるデジタルシフトは加速しています。農場に設置された数々のセンサーや産業用ドローンで取得する作物の生育状況や環境(天候のほか、日照量や温度、湿度なども)、土壌(肥料濃度や水分量など)といった膨大なデータを分析することで、より効果的な生産管理を可能にします。そしてここでも、クラウドやネットワークのコストを低減するためにエッジコンピューティングによるローカル処理が進められています。
また、作物と雑草をエッジコンピューティングで瞬時に見分け、的確に除草剤を散布するためのロボットなども実用化が始まっています。このような高度な判断能力をリアルタイムで実現するために、AI技術をエッジコンピューティングで機能させています。

店舗運営の「デジタルシフト」を加速

2018年に米国にオープンした完全無人店舗「Amazon Go」では、入店客の認証や購買製品の確認などに多数のカメラやセンサーを活用。そして、その処理にエッジコンピューティング技術を利用することで、リアルタイムで遅延のないスムーズな“顧客体験”を実現しています。
また小売店店舗で収集する人流データをもとに、人員配置やVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)などの売り場づくりの改善に活用するケースや、冷蔵ショーケースや照明機器などといった店舗内設備の管理にエッジコンピューティングを利用するケースも登場。後者では、不測の事態でデータセンターとの接続が切れても店舗運営を継続できる点が高く評価されています。

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出所:NECソリューションイノベータ「IoTスターターキット・利用シーン:店舗設備管理」

工場設備をIoT化で「スマートファクトリー」に

工場設備にITを活用したスマートファクトリーでは、製造ライン上に配置したカメラでベルトコンベアー上の製品や部品を監視し、AIを駆使して不良品を判別する「不良品検出」や、製造機器に内蔵されたセンサーでラインの異常を検知する「予知保全」が実装されています。多数の機器を用いて、画像や動画などの重いデータを送信すると通信量が膨大になるため、その対策にエッジコンピューティングが機能しています。また、即時制御が必要なロボットアームの管理などにも、エッジデバイスレベルで判断を行えるように環境構築することで、「脊髄反射的な制御システム」が実現できます。

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出所:NECソリューションイノベータ「IoTスターターキット・利用シーン:工場設備管理」

エッジコンピューティングの課題

もちろん、エッジコンピューティングにはデメリットもあります。ここではエッジコンピューティングを導入・運用するにあたって注意すべきことを記します。

イニシャルコストとランニングコスト

エッジコンピューティングで利用するIoTデバイスは、データ活用の目的に応じて高機能が求められ、その分費用が増大します。また、サーバーのロケーション選定や環境構築も容易ではなく、相応のコストが発生します。
これらのイニシャルコストに加えて、ランニングコストも注意が必要です。収集するデータをコントロールしなければ通信量は膨らむ一方なので、適切なデータ戦略を構想・運用できる人材の登用が開発時点だけでなく運用時にも求められます。また、煩雑な運用体制下では教育コストも軽視できません。スムーズな運用管理体制を構築し、組織全体でデータ利活用を推進することで、費用対効果を最適化すべきでしょう。

運用管理の煩雑化

多数のエッジ領域で分散してデータを処理するエッジコンピューティングでは、管理下となるデバイスが大量に存在します。さまざまなロケーションに展開することで対応すべき環境が複雑な様相を呈し、運用管理が煩雑化する恐れがあります。加えて、将来的には機能の拡張や新機能の実装が求められることもあるでしょう。運用管理が煩雑化していると、作業工数を圧迫する要因にもなるほか、ビジネスを展開するスピードにも影響を及ぼすため、エッジデバイスの管理を効率的に行うための仕組みづくりが肝要です。

セキュリティリスクの存在

エッジコンピューティングは、収集した全データを送信するクラウドコンピューティングと比べて低リスクであると紹介しましたが、エッジデバイスがネットワークに接続されていることには変わりありません。ハッキングなどによるリスクが存在することを理解し、ゼロトラストの発想で適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

エッジコンピューティングの今後の展望

リアルタイム性に優れるエッジコンピューティングですが、大量のデータ分析を対象とするとクラウドコンピューティングに分があります。現状では、導入する現場の特性や状況に合わせて適材適所で使い分け、併用していくことが最適解でしょう。その上で、「エッジAI」というエッジ領域の役割を拡大する技術も登場しており、期待を集めています。

エッジAIへの期待

進化し続けるエッジコンピューティング関連技術の中で、特に重要なのが「エッジAI」です。これは、エッジデバイスでAI処理を実行する技術。エッジデバイス内で処理が行われるため、瞬時の判断が求められるシチュエーションで重宝される技術です。具体的には自動車の自動運転や、高速で流れる製造現場のライン監視などが該当します。
ビッグデータによるディープラーニングなどの「学習」処理をクラウドで行い、作成されたAIモデルに基づく「予測」処理をエッジで行うことで、エッジとクラウドそれぞれの特長を活かして実装できます。昨今では技術開発が進み、リアルタイム性を損なうことなくエッジAI側で「学習」処理までも可能にするサービスが登場しており、さらなる発展が期待されています。

Society 5.0を支える技術として

Society 5.0とは、内閣府が科学技術基本計画で提唱する、目指すべき未来社会の姿。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を示しています。内閣府は『サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)』と定義しています。このシステムはCPS(Cyber Physical System:サイバーフィジカルシステム)といわれ、IoTやAIをフル活用することを前提としています。そして、そのインフラとして重要な役割を担うのが、低レイテンシでIoT機器などの即時制御に貢献するエッジコンピューティングです。

すでにSociety 5.0は実現に向けて動き始めています。先行する実証実験が国や自治体、大企業主導で始まっているほか、経済産業省主催の「AIエッジコンテスト」(2018年以降毎年実施)など、技術や人材を育成する取り組みも加速しています。

まとめ

クラウドコンピューティングの誕生で、ビジネススピードは加速し、新しいビジネスの創出も活況しました。同様にエッジコンピューティングとその関連技術がさらに世界を大きく発展させようとしています。技術の進化により、今は不可能なことでも1年後には可能になっているかもしれません。ソリューションベンダーとの定期的な情報交換を徹底し、情報のアップデートに努めましょう。