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コラム
LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説
UPDATE : 2022.04.15
LTVとは「顧客生涯価値」を意味するLife Time Value(ライフタイムバリュー)の略称で、ある顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間にどれだけの利益をもたらしてくれるかを表す指標です。リカーリングやサブスクリプションなどの“継続”がカギを握るビジネスモデルが隆盛している現在、特に重要視されています。そこで本記事では、LTVの意味や計算方法、向上させるための施策例をわかりやすく解説します。
INDEX
- LTVとは
- LTVが重要視される理由
- ファン化、ロイヤルカスタマー獲得
- 売り切り型からサブスクリプションの時代へ
- 3rd Party Cookie規制の影響
- LTVの計算方法
- LTVと合わせて押さえておきたい重要指標
- LTVを向上させるためのマーケティング施策
- 購入単価を上げる
- 購入頻度を上げる
- コストを下げる
- 解約率を下げる
- LTVを向上させるためにデータ・AIをフル活用する
- まとめ
LTVとは
LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは、「顧客生涯価値」と訳される指標で、ある顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間に、自社にどれだけの利益をもたらしてくれるかを表した数値です。LTVを明らかにすることで、自社サービスの利益体質の把握や優良顧客の傾向分析、顧客獲得コストと維持コストの目標数値算出などのメリットが享受できます。LTVは成果指標や目標値として機能し、適正な経営判断を行うために有益な情報を提供するため、企業活動やマーケティング活動において重要な役割を果たしています。
LTVが重要視される理由
LTVを高めるためには、既存顧客の維持が欠かせません。マーケティングの通説には「1:5の法則」や「5:25の法則」がありますが、いずれも新規顧客獲得ではなく既存顧客維持の有効性を説明する法則です。「1:5の法則」とは、顧客維持と比べて新規顧客獲得は5倍のコストを要するという法則で、「5:25の法則」とは、顧客の離脱を5%抑えることができれば利益率が25%向上するという法則です。
事業の収益性を改善できる可能性がある“顧客維持の重要性”は広く認知されており、リピート商材を扱うEC通販業界ではF2転換率という指標で、顧客の継続率や離脱率を追求しています。F2転換率とは、新規顧客が2回目の購入へ至った割合を示す指標で、顧客との継続的な関係性構築からLTV向上を図るために重んじられています。
このように顧客維持にフォーカスしたマーケティング戦略が重視されることで、管理指標としてのLTVが注目を集めています。
ファン化、ロイヤルカスタマー獲得
OEMやデジタルマーケティングツールが浸透し、ブランドオーナーとしてビジネスを始動するハードルは以前よりはるかに低くなりました。インターネット販売によるD2C(Direct to Customer:消費者直接取引)市場も盛況です。ただし見方を変えると、新規参入者が増えることで市場競争が激化している状況とも言えるでしょう。供給過多に加え、機能面でのコモディティ化や人口減少による市場縮小が進むと、新規顧客獲得の難易度はさらに上がり、コストの高騰が懸念されます。
そのため、ブランドやサービスに愛着を持つファンやロイヤルカスタマーへの顧客育成、顧客ロイヤリティの向上が重要視されています。昨今では、CX(顧客体験)向上を目指して囲い込み施策を展開するためのカスタマーサクセスという役割が浸透したほか、CRMやDMPなどのデジタルツールの活用も普及しました。CRMは、パーソナライズされた施策の実施や顧客データの収集・分析を実現します。データ管理に優れるCRMを活用することで、LTVによる施策評価や指標管理を効率的に行えるようになりました。
売り切り型からサブスクリプションの時代へ
昨今、注目を集めているビジネスモデルがリカーリングとサブスクリプションです。いずれも継続的な契約関係により長期的な収益拡大・安定化を狙うビジネスモデルです(一般に、リカーリングは従量課金制、サブスクリプションは定額制という違いで認識されています)。
消費者ニーズの転換に合わせ従来の「売り切り型」からビジネスモデルの転換を図る企業は、継続的な契約関係を目指して、さまざまな施策を展開しています。LTVは、顧客維持のための施策が機能し、ビジネスの収益性を高められているかを判断する基準として活用されています。
3rd Party Cookie規制の影響
3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)とは、第三者により発行・活用されるCookieデータです。アドネットワークのリターゲティング広告(Webの閲覧履歴を基に、サイトをまたいで個人最適化された広告を表示する手法)などに使用されている技術です。近年、この技術をプライバシーの観点から規制する動きが強まっています。そのため今後は、閲覧しているサイトのみで機能し活用される1st Party Cookieや既存顧客データの活用が鍵を握ります。
従来と比べて外部集客が困難になると、既存顧客からの収益拡大が重要度を増すことになります。必然的に、顧客維持という観点での収益状況把握にも役立つLTVが重宝されるでしょう。
LTVの計算方法
LTVはさまざまな算出方法で求めることができますが、代表的でシンプルな計算式が下記です。
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年)× 平均継続期間(年)
粗利率50%で単価10,000円の商品を毎月1つ、3年間継続して購入してくれた顧客でイメージすると、LTVは「10,000円×50%×12回×3年」で、180,000円となります。粗利率を乗算することで、利益ベースでLTVを算出しています。なお、この計算式から1人あたりの顧客獲得コストと顧客維持にかかるコストを差し引くと、コストを鑑みたLTVを算出することが可能です。新規施策のためにマーケティングの予算を求めたい場合には、LTVから逆算することで、許容範囲とするコストの目標値も導き出せます。
上記以外では、チャーンレート(=解約率)を活用して算出する計算式もあります。
LTV = 平均購入単価 ÷ チャーンレート
この計算式は、おもにサブスクリプション型のサービスなどで活用されています。「平均購入単価を引き上げること」と「解約率を低く抑えること」の重要性が、ひと目でわかる計算式です。この計算式に粗利率を乗算すれば、利益ベースでLTVを把握することも可能です。自社に合った算出方法を採択しましょう。
LTVと合わせて押さえておきたい重要指標
ここでは、LTVを正しく理解し活用していくために役立つ用語・指標を解説します。
【重要指標① ARPA】
ARPAとは、Average Revenue Per Accountの略で、1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標です。ARPAは以下の計算式で算出されます。
ARPA = 売上 ÷ アカウント数
例えば、毎月の売上が1億円で、アカウント数が2万人の場合、ARPAは5,000円となります。LTVで必要な平均購入単価をアカウントベースで求めることが可能になります。
注意すべきは、1ユーザーあたりの平均売上金額であるARPU(Average Revenue Per User)との区別が必要な点です。ARPAは、1アカウントで複数のデバイスを利用するケースや、1契約アカウントで複数ユーザーが存在するケースが増えたことから考えられた指標です。ユーザーやデバイスベースとするのか、アカウントベースとするのか、分析するサービスの実情に近い指標を参照する必要があります。指標を明確に定義して、LTVの解像度を高めることが肝要です。
【重要指標② CAC】
CACとは、1顧客を獲得するのに生じたコストを示すCustomer Acquisition Costの略で、以下の計算式で算出します。
CAC = 獲得に要したコスト(営業・マーケティング・広告費 など)÷ 新規顧客獲得数
新規顧客獲得のためのコストは、訪問、テレアポなどの営業活動にかかった費用、広告制作・出稿、イベント出展などの広告・マーケティング費用が該当します。コストを加味してLTVを把握するためにも、CACと顧客維持に要するコストを正しく算出できるように管理しましょう。
【重要指標③ MQL】
MQLとは、Marketing Qualified Leadの略で、マーケティング活動により得られた有望なリード(見込み顧客)のことを示します。マーケティング担当者がメルマガやWebサイト、イベントなどを通じて取得した見込み顧客の中でも、啓蒙活動(リードナーチャリング)の効果が大きいと想定される層がMQLです。このMQLの中でも特にサービスへの関心や温度感の高い見込み顧客をSQL(Sales Qualified Lead)として定め、インサイドセールスや営業担当が効率的にアプローチを展開していきます。どの顧客をMQLやSQLに分類するかの判定は、過去の実績などから定量的な基準を設けて実施することが肝心です。
的確に定めたMQLやSQLを基に営業活動を効率化することで、限られたリソースにおいても収益向上が実現できるでしょう。またリードナーチャリングによる確かな関係性構築から、長期のサービス利用や高単価で高付加価値な契約につなげられれば、単価アップによるLTV向上も期待できるでしょう。
【重要指標④ チャーンレート】
チャーンレート(解約率)とは、サービスの解約や離反・離脱の程度を示す指標です。顧客数ベースのカスタマーチャーンレート、収益ベースのレベニューチャーンレートがあります。
カスタマーチャーンレートでは、顧客数ではなく契約アカウントベースでの算出も可能です。ただし複数の料金プランがあるサービスの場合は、カスタマーチャーンレートに加えてレベニューチャーンレートも把握すべきです。
また、チャーンレートは月次と年次で大きく数字が異なる点も留意しなければいけません。LTVを含め、自社にとって最適な計算方法と管理方法を定めて取り組みましょう。
【重要指標⑤ ユニットエコノミクス】
ユニットエコノミクスとは、ビジネスの採算性、健全性を可視化するための指標です。主にサブスクリプション型サービスで用いられており、下記の計算式で算出可能です。
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
一般にユニットエコノミクスは、3~5が目標とすべき基準とされています。ユニットエコノミクスの数値が低い場合は、その事業の収益性が悪化しているという評価ができますが、数値が高すぎる場合には新規獲得コストの活用余地があり機会損失を生んでいる可能性もあります。
ユニットエコノミクスの活用は、長期的な視点で採算性を評価し、適正な経営判断を下すのに役立ちます。
LTVを向上させるためのマーケティング施策
ここでは、LTVを向上させるためにどのような施策が有効なのかを解説します。
●購入単価を上げる
顧客の購入単価を上げることでLTVは向上します。そのためには「製品・サービスの単価を上げる」「上位の製品・サービスへの移行を促す(アップセル)」「関連する製品・サービスの購入、セットパッケージの購入を促す(クロスセル)」などの施策が必要です。例えば、ECサイトで活用されているアップセルやクロスセルにつながるレコメンド機能は、顧客に商品検索の利便性をもたらしつつ、顧客単価向上を企図する施策です。
ただし、製品単価アップは顧客離れのリスクと表裏一体です。特にUSP(Unique Selling Proposition)と呼ばれる、製品やサービスが誇る唯一無二の強みが、価格面のコストメリットにある場合は注意しましょう。価格に頼らない製品設計や、製品で享受できるメリットやベネフィットを顧客に理解してもらえるような取り組みが肝要です。
●購入頻度を上げる
製品・サービスの購入頻度を高めることでもLTVは向上します。購入頻度を高めるためには、メールマガジン(メルマガ)やSNSなどのコミュニケーションツールで、自社の製品・サービスを顧客にリマインドするリテンション施策を展開し、継続的な関係性構築を図ることが欠かせません。
情報発信の内容に関しては、製品やサービスを利用できる場所や時間、用途を拡大して提案することも心がけましょう。顧客にとって新しい利用機会や可能性を提示できれば、購買のきっかけになる可能性があります。
その他の方法としては、より魅力的な新製品を出すことによって、既存製品からの買い換えを促す「計画的陳腐化」もあります。ただし現在は、持続可能を旨とするSDGsの取り組みが世界的に進んでいます。特に有形商材の場合は、施策の与えるブランドイメージを深慮すべきでしょう。近年広がりを見せている “製造業のサービス化”などを含め、顧客に新しい顧客価値が提供できる収益モデルへ変革していくことも検討すべきです。
●コストを下げる
コストを適正に抑えることでも、LTVは向上します。SFAやCRMをフル活用し、リソースを最適化した効率的なマーケティング・営業施策は、CACや顧客維持コストの抑制に寄与します。
また粗利率により利益ベースで数値管理ができている場合は、製品の原価率を抑制することも方法の一つです。ただし、過度にコストを下げて製品やサービスの品質が低下すると、顧客数や継続期間などの指標が悪化してしまう恐れがあります。顧客ロイヤリティや顧客体験を損なわないための工夫が必要です。
●解約率を下げる
チャーンレートを下げ、顧客に長く製品やサービスを活用してもらうこともLTV向上には不可欠です。顧客ロイヤリティを向上させ解約や離反を防止する施策としては、自社の製品やサービスで顧客が充分な成果を引き出せるように導くカスタマーサクセス部門の設置や、長期利用者を優遇するポイントプログラムの実施などがあります。
また利用動向データから解約の予兆をいち早く察知し、先回りしたコミュニケーションで解約を阻止する取り組みも効果的です。ITツールの導入や組織体制の構築などにより分析環境を整備すれば、担当者の技量に左右されない標準的なデータ活用が見込めます。
LTVを向上させるためにデータ・AIをフル活用する
テクノロジーの進展によりデジタルマーケティングが高度化され、消費者が求める「体験」の水準は高まりました。また3rd Party Cookieの利用規制の影響で、従来の顧客獲得や集客手段からの進化も求められています。
そうした状況下で、次世代のデジタルマーケティングに求められているのは自社データ収集基盤の強化と、AIや機械学習を活用した高度なデータ利活用です。すでにAIや機械学習を用いた解約予兆把握や、顧客に合わせパーソナライズした効率的で効果的な顧客コミュニケーションなどの取り組みが進んでいます。競合に後れを取らないためにも、データドリブンなアクションを徹底し、顧客ロイヤリティを高めてLTV向上を目指しましょう。
まとめ
新たな時代のビジネスを効率的かつ効果的に推進していくためには、LTVを指標に置いてマーケティング施策のPDCAを回転させることが肝要です。テクノロジーが進化した現在では、それをサポートするSFAやCRM、MAやBIツールなどのデジタルマーケティングツールが充実しています。
早々に最新ツールを活用し、自社に合ったLTVの算出や管理方法の策定、環境整備への取り組みを進めましょう。