ESG経営とは?意味や事例、メリットを解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

ESG経営とは?
意味や事例、メリットを解説

UPDATE : 2022.06.24

ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する経営方法です。気候変動や労働者の人権などの社会課題に関する問題意識の高まりとともに、長期的な企業の発展に不可欠な概念として普及しています。そこで本記事では、ESG経営のポイントをわかりやすく解説します。

INDEX

ESG経営とは

ESG経営とは、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3つの要素(ESG)を重視する経営方法です。
ESGという言葉は、2006年にコフィー・アナン国連事務総長(当時)が金融業界に向けて提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)で初めて登場しました。PRIは、財務情報に加えてESG要素を投資の分析や株式所有の意思決定、株主行動に組み込むことを定めた行動原則です。PRIでは、環境問題や労働問題などのさまざまな社会課題に関わる下図のようなESG要素が、長期的な企業の発展・成長に多大な影響を与えることを強調しています。

ESGとは?ESGの具体例を紹介

●ESG経営が注目される背景

PRIにより投資の判断基準としてESGの観点が重要視されたことに始まり、ESG投資は世界的に規模を拡大しています。その流れに呼応して、必然的にESGを重視するESG経営が求められました。
また、ESG要素は社会的、時代的な要請に合わせ絶えず変化します。長期的な企業の成長への要件であると同時にリスク要因にもなり得るため、企業経営で軽視できない要素と認識されています。
加えて、ESG経営に取り組む企業の増加により、ESG経営に取り組まないでいる状態が投資対象から除外されてしまうリスクとなることも、その普及に影響しているでしょう。

●ESGとSDGsの違いとは

SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の頭文字を略した言葉です。国際社会共通の目標として2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)が2015年で終了することを受け、後継として策定されました。SDGsは、「5:ジェンダー平等を実現しよう」「13:気候変動に具体的な対策を」などESGの要件を含む17の目標と169のターゲットから構成され、2030年までに達成すべき全世界共通の目標とされています。

ESGで示される課題と密接し重なる領域も多いSDGsですが、SDGsとESGの違いはその主体と関係性にあります。SDGsは世界全体の共通目標であり、主体は国連や国家、企業から各個人まで広範に及ぶのに対し、ESGは投資判断指標として誕生した言葉で主体は投資家や企業です。経営スタイルを示すESG経営や投資スタイルを示すESG投資は、SDGsという“目標”に対する“手段”という関係性になり得ます。ESG経営とESG投資の発展は、SDGs達成にもつながるでしょう。

●ESGとCSRの違いとは

CSRとは、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)という意味です。CSRにおいて企業は、社会の構成員として環境やステークホルダーに向けた責任ある行動が求められます。国内では産地偽装問題や消費期限偽装問題を契機に、2000年頃から注目を集めるようになり、CSRを推進する専門部署を設ける企業も増えました。
CSRの国際規格としては、ISO26000が知られています。ISO26000では、CSRに関して7つの原則と7つの中核主題を定めています。

7つの原則 7つの中核主題
説明責任
透明性
倫理的な行動
ステークホルダーの利害の尊重
法の支配の尊重
国際行動規範の尊重
人権の尊重
組織統治
人権
労働慣行
環境
公正な事業慣行
消費者課題
コミュニティへの参画及び発展

なお、各中核主題にはさらに細分化された課題が設定されています。企業は中核主題や課題の枠組みを活用し、7つの原則に基づく具体的なアクションや情報開示につなげてCSRを実践します。例えば、公平な社内公募制度の整備や健康経営の推進施策は「労働慣行」におけるCSR活動です。

CSRは企業が社会に向けて果たすべき責任を示す企業目線の概念ですが、ESGは投資家が投資活動の際に重視する要素を示す投資家目線の概念として誕生しました。時代の要請に適応し、社会との関わりにおける企業の責任を果たすCSR活動は、結果としてSDGsやESGに向けた取り組みが求められるでしょう。そのためCSR活動に関する非財務情報は、投資家が分析するESGの評価材料となります。

●ESGとSRIの違いとは

SRIとは、社会的責任投資(Socially Responsible Investment)の意味で、非財務情報を考慮する投資を示します。米国で、宗教倫理の観点から武器やタバコ、ギャンブルなどの教義に反する製品に関わる企業を投資対象から排除したことが始まりとされています。その後は、社会課題に対して優れた取り組みを実施している特定の企業を選別する投資手法(ポジティブスクリーニング)も展開されました。
非財務情報を重視する点でESG投資はSRIと共通しており、同義と解釈されるケースも多々見受けられます。しかしながら、ESG投資はESG要素が長期的な企業価値の向上および経済的リターンへ重大な影響を与えることを強調している点で、SRIと一線を画すものです。また、ESGはすべての企業に関わる要素であり、すべての投資家と企業が取り組むべき要件である点も、宗教的倫理観から展開したSRIとは成り立ちを違えます。

ESG経営のメリットと課題

ここでは、ESG経営で期待できる効果や注意点を解説します。

ESG経営のメリットや効果

ESG経営推進のメリットや効果には下記が挙げられます。

  • 投資家からの評価向上
  • 企業およびブランドイメージの向上
  • リスクマネジメントによる経営リスクの軽減
  • 労働環境の改善や整備の促進
  • 新しいビジネスの創出

企業がESGを重視した経営を推進すると、投資機関・投資家からの評価向上つまり資金調達への貢献が見込めます。グローバルな評価機関によりESGの取り組みが格付けされ、投資指標の構成銘柄に組み込まれれば、PR効果によるブランドイメージの向上も期待できるでしょう。
また、経営リスクにもなり得るESG要素を適切にマネジメントすることは、経営リスクの軽減にほかなりません。コーポレート・ガバナンスの強化や労働環境の改善により強固な経営基盤を確立できれば、生産性向上や人材の確保・定着につながります。
さらに、社会課題との関わりの中で自社のビジネスと向き合うことは、新たなビジネスやイノベーション創出の機会でもあります。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進による、多様な人材が活躍できる環境の整備も、新規ビジネス創出の原動力となるでしょう。

ESG経営の課題や注意点

企業の長期的・持続的な成長のために有効なESG経営ですが、取り組みを進めるうえで下記の留意点があります。

  • 情報開示の方法や評価の基準がさまざまに存在する
  • 中長期的な取り組みが求められる

ESG経営のメリットを最大限享受するためには、ESG要素を含む非財務情報の適切な情報開示が必要です。しかしながら、現状はさまざまな情報公開の枠組み(フレームワーク)と評価指数が存在するため「どの評価機関の評価基準に向けて、どのように情報を公開するか」の決定と実行にも負担が生じます。また、ESG経営は中長期的な取り組みが求められるため、成果を得るまで時間を要するという一面もあります。短期的には費用対効果に見合わなくても、近視眼的な視点に陥らず腰を据えて取り組む姿勢が重要です。

ESG経営導入のアプローチと事例

ESG経営は、企業が目指すビジョンの設定というトップダウンのアプローチから始まります。次に、ビジョンの実現に向けて重点的に取り組むべき課題を特定し、長期的な経営計画から具体的な戦略である中短期の経営計画へと落とし込んでいきます。この際、取り組みを実践していくためのガバナンス体制・監督体制の構築と成果の定義と成果指標(KPI)の設定も必要です。また、継続的に進捗状況をモニタリングし、必要に応じて戦略を見直すことも念頭に置くべきです。
ESG経営の情報開示は、報告書(統合報告書、CSR報告書、サステナビリティレポートなど)や自社WEBサイトを通じた継続的な取り組みが肝要です。第三者にとって透明性の高いレポーティングを心掛けましょう。

以下、経営戦略の策定などESG経営の実践に役立つ重要キーワードを紹介します。

【マテリアリティ】

マテリアリティとは、一般に自社の企業価値に影響を与える重要な課題を示します。マテリアリティの特定は、情報開示の枠組みや評価機関の基準などを参照し、自社に関係する課題の洗い出しから始めます。次に「ステークホルダー・社会・環境への影響度」や「自社の価値観およびビジネスへの影響度」などから各課題の優先順位を付け、特に重要な課題(マテリアリティ)を明確にします。情報開示の際にはマテリアリティ特定のプロセスも合わせて開示すると、ステークホルダーからの理解を得やすいでしょう。

【バックキャスティング】

バックキャスティングとは、望む将来像から逆算して、今取り組むべき課題を明らかにする方法です。SDGsの目標設定もバックキャスティングの発想で成立しています。経営戦略を策定する際には、ムーンショットと呼ばれる簡単には到達できない高いゴールの設定がポイント。視座を高められ、イノベーションを促す効果が期待できます。また、長期的に目指すゴールおよび中期・短期目標に対する、定量的なKGIおよびKPIの設定も重要です。

【フォアキャスティング】

フォアキャスティングとは、企業が現在置かれている状況を起点に、実現可能な取り組みを繰り返して成果に結びつけていく方法です。バックキャスティングとは対となる考え方で、自社の優位性や強み・リソースの活用を強調している点が特徴。抜本的なアイデアの創出には不向きですが、現実的で堅実なアクションとなるため、失敗のリスクを抑えた短期的な現状改善に有用です。

【シナリオ分析】

シナリオ分析とは、複数の異なる条件下での戦略を分析・策定するアプローチ方法です。不確実なリスクに対応するための、柔軟な経営戦略の策定が目的です。そのため、異なる条件(シナリオ)に幅を持たせ、想定外を無くすように努めることが肝要とされています。
なお、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のTCFD提言では、気候変動リスクに対するシナリオ分析の実施とその情報開示を求めています。

ESG経営の事例

①花王株式会社の取り組み

花王株式会社は、2019年に「Kirei Lifestyle Plan」を策定しました。このプランでは、19の重点取り組みテーマ(マテリアリティ)を選定し、それぞれで中長期の目標を定めて活動を推進しています。例えば、脱炭素領域においては、TCFD提言で求められた気候変動のシナリオ分析を実施。事業への組み込みを図っています。そのほか、パーム油の持続可能なサプライチェーン構築を目指すプログラム「SMILE」では、インドネシアの小規模パーム農園の生産性向上を支援しています。
同社の取り組みは国内外で高く評価されており、2021年には国際的な環境非営利団体であるCDPから、「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」分野で最高評価(A評価)を獲得しています。

②エーザイ株式会社の取り組み

「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を旗印に事業展開するエーザイ株式会社は、ESG経営の取り組みが世界的に注目されている企業の1つです。ESGの取り組みとして「神経・がん領域の創薬パイプラインの進展」「開発途上国・新興国の医薬品アクセス向上」などさまざまに展開しています。
特筆すべきは、同社が公開する『価値創造レポート(旧 統合報告書)』において、非財務的要素であるESGが企業価値に貢献することを定量分析で明示している点。例えば、同レポートでは《女性管理職比率と営業利益》《育児時短勤務制度利用者数とROE(Return On Equity:自己資本利益率)》の正の相関関係が示されています。非財務情報を高度に可視化した情報開示により、ESGと企業価値の関係性を示した好例です。

ESG投資とは

ESG経営において、投資家の視点を得ることは、非常に重要です。ここでは、ESG経営を効果的に推進するために理解しておくべき、ESG投資の概要とポイントを解説します。

●投資規模を拡大するESG投資

ESG投資を支援するPRIは、2006年に提唱された後、2008年のリーマンショックにて短期的な利益を過剰に追求する在り方が問題提起されたことで、署名する投資機関を増やしました。その後も着実に成長を遂げ、2021年には世界中で4,000を超える投資機関がPRIに署名しており、署名投資機関の運用資産総額は120兆米ドルを超えています。

日本国内の動きとしては、2014年に金融庁により策定された日本版スチュワードシップ・コードが1つの契機となりました。スチュワードシップ・コードとは、“責任ある機関投資家”としての行動規範です。日本版の原則3には「投資先企業の持続的成長に向けた責任を果たすための、的確な状況把握」について言及があり、この状況把握に非財務情報であるESGの領域が含まれている点が特徴です。翌2015年には、東京証券取引所と金融庁によりコーポレートガバナンス・コードが公表され、非財務情報に関する情報開示の原則が全上場企業に適用されました。
さらに同年、世界の年金基金の中で最大規模の資産を抱えることで知られる日本の投資機関、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名。年金積立金の管理・運用を担い、長期的・持続的なリターンが求められるGPIFがESG投資を推進していることで、さらに注目を集めました。

加えて、現在ではSDGsや2050年カーボンニュートラル宣言などの取り組みも進展しています。気候変動や脱炭素への取り組み、働き方改革への対応は、喫緊のビジネス課題としての認識も広め、以前にもましてESGを軽視できない情勢へと移行しました。ニーズの高まりとともに、グリーンローンやグリーンボンド、SLL(サステナビリティ・リンク・ローン)などサステナブルファイナンスの市場規模も拡大しています。資金調達および投資手段の多様化も、ESG投資の普及をさらに後押ししています。

●ESG投資の分類とは

注目を集めているESG投資は、GSIA(世界持続可能投資連合)により7つの投資戦略に区分されています。

ネガティブ
スクリーニング
倫理的観念や投資リスクから、武器やギャンブルなど、特定業界の企業を投資先から除外する方法。
ポジティブ
スクリーニング
ネガティブ・スクリーニングとは反対に、ESG評価の高い特定企業・銘柄を選定して投資する方法。各業種内でトップ評価の企業を選別することは、ベスト・イン・クラスと呼ばれる。
国際規範に基づく
スクリーニング
ESGにおける国際規範を軸として、基準を満たさない企業を投資対象から外す方法。環境や労働、人権侵害など、どの規範に基づくかは、投資家の判断に委ねられる。
ESGインテグレーション 財務情報だけでなくESGに関わる非財務情報も組み込んで体系的に分析し、投資判断する方法。GSIAの調査レポート『Global Sustainable Investment Review』によると、2021年で最も多くの投資残高を記録した投資戦略。
サステナビリティ
テーマ型投資
クリーンエネルギーなど、ESG分野の特定テーマに特化した企業やファンドに投資する方法。社会課題解決を目指す事業のための債権であるソーシャルボンドなども該当する。
インパクト投資 環境や社会課題の解決を目的とした技術やサービスを提供する企業に投資する方法。
エンゲージメント
議決権行使
企業との建設的なエンゲージメント(対話)や株主総会での議決権行使などの株主行動を通じて、企業に働きかける方法。いわゆるモノ言う株主(アクティビスト)。

「サステナビリティ・テーマ投資」に該当するグリーンボンド(環境債)は、環境改善事業(グリーンプロジェクト)における資金調達手段です。これに加えて、グリーンボンドの発行基準には満たないものの、長期的な低炭素・脱炭素社会への移行を使途とする債権のトランジションボンド(移行債)も登場。こうした投資手段の多様化により、ESG投資のさらなる活性化が期待されています。
ESG投資の規模が拡大する一方、表面だけの取り組みで環境保全を装うグリーンウォッシュが国内外で問題視されています。グリーンウォッシュを防ぐためには、情報開示の充実化や外部評価基準の適正化などが肝要であるため、国家的な金融行政の対策が必要とされています。

●ESGスコアと評価機関、ESG情報開示基準の枠組み

企業が正しくESGを推進しているかを判断するために有効な情報が、ESGスコアおよびESG指数です。
ESG指数は、ESGのすべての要素からスコアリングする「総合型」と、特定のESG要素に基づいてスコアリングする「特化型(テーマ型)」の2種類に大別されます。ここでは、さまざまな評価機関によりスコア付けされているESGスコアと、それに基づくESG指数の例を紹介します。

【S&Pグローバル社のCSA、Trucostエンバイロメンタル・レジスター】

米格付け大手S&Pグローバル社のCSA(コーポレート・サステナビリティ評価)は、1999年から実施されており、歴史と実績のあるESG評価です(2020年にS&Pグローバル社がRobecoSAM社のESG評価事業を買収)。CSAは、アンケート形式の調査票の回答によりレーティングします。CSAのESGスコアを基にした「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」は、最も著名なESG指数でしょう。そのほか、Trucostエンバイロメンタル・レジスターという炭素排出量などの環境負荷に関するデータに基づく、特化型(テーマ型)のESG指数も提供されています。

【FTSE Russell社のESGレーティング】

ロンドン証券取引所グループのFTSE Russell社によるESGレーティングは、ESGを14のテーマに分け、各テーマで業種によって最適化した調査項目を適用し評価します。企業の公開情報を基に、ESGのリスクとそれに対する取り組みを評価する点が特徴です。
同社が提供する「FTSE Blossom Japan Index」は、GPIFが採用したことで注目を集めている総合型ESG指標。市場を反映するために、特定の業種への偏りを抑えて設計している点が特徴のESG指数です。

【MSCI社の日本株女性活躍指数】

MSCI社の「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」は、女性の活躍や性別多様性の特化型(テーマ型)ESG指標です。構成銘柄の選定には、女性活躍推進法に基づく開示情報から算出した性別多様性スコアなどを用いています。性別多様性スコアは「男性と女性社員における平均勤続年数の差」「取締役会における女性比率」「多様性を促すプログラムの有無」などでレーティングされます。

ESGスコアは、企業が開示する公開情報に基づくため、企業は自社のESG情報を適切に開示する取り組みが求められます。ESGなどの非財務情報の開示にあたっては、グローバルな情報開示の枠組みを利用することが効果的です。具体的な枠組みとしては、GRIスタンダード(策定機関:GRI)、国際統合報告フレームワーク(策定機関:IIRC)、SASB スタンダード(策定機関:SASB)、CDP(策定機関:CDP)、TCFD提言(策定機関:TCFD)などがあります。

※IIRCとSASBは、2021年6月に合併しVRFを設立。2022年6月にVRFは、IFRS傘下のISSBおよびCDSBと統合。

それぞれの特徴や共通点・差異(原則主義と細則主義など)を把握したうえで的確に情報開示することが有効ですが、さまざまなフレームワークが乱立している状況では容易ではありません。加えて、この乱立状況は開示する側だけでなく開示される側にも混乱を招く恐れがあります。そうした状況を憂いて、現在はESC情報開示枠組みの策定機関間での連携強化による、フレームワーク間での整合性の確保や補完性向上の動きが進んでいます。

ESGなどの非財務情報開示に関しては、国家的なレベルでの規制に関する動きも進展しています。EUでは金融機関等を対象としたサステナビリティ関連の情報開示規則であるSFDR(サステナブルファイナンス開示規則)が2021年に一部施行。非財務情報の開示に関する取り決めを策定し、サステナブルファイナンスの透明性向上を図っています。

ESGに不可欠なITの活用

ESG経営による企業価値への貢献度を開示情報で示すには、非財務データの見える化が欠かせません。そのためには「非財務領域データを正しく収集すること」「適当な指標をKPIと定め継続的に管理すること」「的確な分析方法を用いて状況を可視化すること」が求められます。ESG経営の効果を最大化するべく、デジタル技術を活用したデータ収集・分析基盤の整備に努めるべきです。

また、ITソリューションはESG課題の解決にも効果的です。例えば、下記のITソリューションがESG領域で真価を発揮しています。

  • センシング技術を用いたスマートビルディングによるエネルギー管理の最適化
  • タレントマネジメントシステムによるダイバーシティへの対応と人材開発
  • ウェアラブル端末による社員の健康増進
  • RFIDを活用したトレーサビリティの確保とサプライチェーンの透明性獲得

今後も技術革新により、難解な課題を抜本的に解決できる可能性があります。日進月歩で発展を遂げるITをESG経営に活かすためにも、最新IT技術への情報感度を高めるべきでしょう。

まとめ

ESG要件に関する社会的・時代的な要請も強まり、現在では企業価値への影響が明白です。経営者には、長期的・持続的な企業成長のため、早々にESG経営を推進することが求められるでしょう。
ITの活用は、ESG課題の解決に貢献する可能性を秘めています。ESG経営により自社の企業価値をさらに高めるためにも、最新テクノロジーの知見と実績のあるITの専門家に相談することから始めてみてはいかがしょうか。