AR(拡張現実)とは? 技術やVR、MRとの違いを解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

AR(拡張現実)とは?
技術やVR、MRとの違いを解説

UPDATE : 2022.10.07

「Augmented Reality」の略称で、「拡張現実」を意味する「AR」。昨今では、VRなどと並んでビジネスからエンターテインメント、日常生活まで幅広いシーンで語られるようになりました。現実世界とデジタル情報を融合させ、より効率的に、より便利な社会を実現するAR。AR技術の仕組みや種類、VR・MRとの違い、活用事例などを解説します。

INDEX

ARとは?
デジタル情報を重ね合わせ現実を拡張する技術

ARとは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」を意味します。現実世界での体験にデジタル情報を重ね合わせ、新たな価値を生み出す「XR(Cross Reality)」と呼ばれる先端技術のひとつです。おもにスマートフォンやスマートグラスを通し、目で見ている光景にCG映像などが合成されあたかも実存するように見える技術を指します。

一般には、2016年にリリースされ世界規模で社会現象となったスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモン GO」に活用された技術として広く知られています。現在では、ゲームなどのエンターテインメント分野に留まらず、インテリア、アパレル、マーケティング、製造業、物流業、建設業などさまざまなシーンで活用されるようになりました。

ARの歴史

近年になり実用化されたARですが、実は100年以上前にARにつながるアイデアが生まれていました。「オズの魔法使い」で有名な米国の劇作家ライマン・フランク・ボームが、1901年に出版した小説「マスターキー」。この物語の中で描かれたARグラスのような装置が 嚆矢 こうし とされています。

時は流れ、現在のようなAR技術が誕生したのは1990年代のこと。米国アームストロング空軍研究所が開発したパイロット向け訓練デバイス「Virtual Fixtures」や、米国コロンビア大学が開発したレーザープリンターメンテナンス要員向けの補助システム「KARMA」で、ARヘッドセット(ARグラス)を使った仕組みが使われ始めました。さらに1990年代後半には、アメリカンフットボールのテレビ中継でプレイ映像にフィールドラインを重ね合わせて表示するアイデアが登場。ヘッドセットなどは使いませんが、これも広義のARと呼んで差し支えないでしょう。

2000年代に入ってからは、AR技術を使ったゲームやスマホアプリなどが続々と登場。そして「ポケモン GO」の爆発的ヒットにより、加速度的に普及が進みました。今では多くのシーンでAR技術が日常的に使われています。

ARとVR、MRの違い

ARは冒頭で紹介したように、XR技術のひとつです。XR技術にはARのほか、VR、MRなどがあります。ここではARとVR、MRの違いについて解説します。

ARとVRの違い

VRとは「Virtual Reality」の略称で、日本語では「仮想現実」を意味します。VRヘッドセットを装着することで視覚的に現実世界を遮断し、デジタル上に再現された仮想空間をまるでその場にいるように体感できる技術です。VRは仮想空間を現実のように体験できる点が最大の特徴で、現実世界での体験をベースとするARとの明確な違いです。最近ではインターネット上に作られた仮想世界「メタバース」に没入するための手段として、VRは大いに関心を集めています。

ARとMRの違い

MRとは「Mixed Reality」の略称で、日本語では「複合現実」を意味します。ARと同様、現実の光景にデジタル情報を重ね合わせる技術ですが、ARと比べてその情報量が非常に大きい点が違いとされています。たとえば、ARでは視界に文字情報や2D映像を重ね合わせる程度であるのに対し、MRでは3Dオブジェクトなどをまるでその場にあるかのように配置できるのです。後発の技術であるため、本格的な活用はこれからとなりますが、今後はエンターテインメント分野からビジネス分野まで幅広く高度に活用できると期待されています。

ARのおもな仕組み・種類

現実世界にデジタル情報を重ね合わせ現実を拡張するAR技術ですが、いくつかの種類が存在します。ここでは種類およびその仕組みについて解説します。

ARの種類・認識方法・活用例

ロケーションベースAR

ロケーションベースARは、スマートフォンなどに内蔵されているGPSから取得した位置情報を基に、磁気センサーや加速度センサーなどでユーザーの動きや向きを検知し、デジタル情報を表示させる仕組みです。ユーザーが実際にいる場所の位置情報に紐付けている点が特徴で、ゲームのほか、観光案内サービスやナビゲーションなどの用途に適しています。

ロケーションベースARを採用した代表例は、先に紹介した「ポケモン GO」のほか、「Ingress」「ドラゴンクエストウォーク」などが挙げられます(それぞれマーカーレス型ARも併用)。ゲーム以外の用途では「Googleマップ」がARを利用したナビゲーション機能「ARナビ」を提供し、話題になりました。

ビジョンベースAR

ビジョンベースARは、スマートフォンのカメラなどから得た映像やマーカー情報を通じて空間を認識し、認識した場所にデジタル情報を合成して表示させる仕組みです。空間の認識方法によって次のように分類できます。

●マーカー型

マーカー型は、実在の場所に配置された図形(マーカー)をカメラなどで読み取り、マーカーに合わせてデジタル情報を配置します。実際にマーカーを用意する手間がかかるものの、技術的にはシンプルで場所を選ばず比較的自由に表示できることが特徴です。マーカー型の代表例は、携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」で利用されたARカードなどが挙げられます。

●マーカーレス型

マーカーレス型は、スマートフォンカメラなどを通じて得た現実の風景を解析し、周囲状況に合わせてデジタル情報を合成表示する仕組みとなっています。マーカー設置が不要というメリットが大きいですが、技術的な難易度は高めです。マーカーレス型の代表例には、デジタル家具を配置できるアプリ「IKEA Place」や豊富な機能で話題のカメラアプリ「SNOW」などが挙げられます。

ARを体験するために必要なツール

ARを体験するためにはデジタルデバイスが必要です。代表的なデバイスを紹介します。

スマートフォン、タブレット型端末

AR体験のために使用するデバイスは、スマートフォンやタブレット型端末が主流です。普段使っているデバイスで手軽にARが体験できます。スマートフォンやタブレット型端末でARを表示させる方法は2タイプあります。ひとつはサービス専用アプリを使用する方法、もうひとつはWebブラウザ内のコンテンツとして表示させる方法です。前者は幅広い用途で一般的に活用されており、後者はユーザー側でアプリをダウンロードする手間が不要なことから広告での活用が多くみられます。

ARスマートグラス

メガネのように身に着ける「ARスマートグラス」も、ARを体験できるデバイスのひとつです。レンズ越しに、実際の風景とデジタル情報が重ね合わさって表示されます。スマートフォンを介さず、両手がフリーの状態で利用できるため(表示するデータの取得や情報処理などにワイヤレス接続したスマートフォンを使う場合もある)、ビジネス現場での活用に最適です。製造業や物流の作業現場、技術的なトレーニング、医療現場におけるサポート、スポーツのアシストなど、すでに多くのビジネスシーンで活用が始まっています。

さまざまな分野でのAR活用事例

ARは未来の技術ではなく、すでに多くのシーンで活用されています。ここではどのようにARが活用されているか、事例を5つ紹介します。

【ゲーム】ポケモン GO:街中を歩いてポケモン探し

ARゲームアプリとして世界最大級のヒットを記録したのが、米Niantic社と株式会社ポケモンの「ポケモン GO」です。スマートフォンを持って街中を歩いて周り、出会ったポケモンをタッチスクリーン操作で捕獲、育成したりバトルしたりといった楽しみ方ができます。「ポケモン GO」はロケーションベースAR技術とマーカーレス型ビジョンベースAR技術を併用。ユーザーが画面上に再現された現実空間を模したフィールドを歩き回るシーンに前者が、遭遇したポケモンを捕獲するシーンで後者が使用されています。こうしたAR技術により、まるで現実世界にポケモンが存在するかのように感じられ、実在するかのような写真の撮影が可能になりました。

【インテリア】イケア:家具の試し置き

大手北欧家具メーカーのイケアは、2017年オンラインストア開始と同時期に、ARを活用した家具の試し置きアプリ「IKEA Place」をリリース。自宅に目当てのIKEA家具を置けるのか、置くとどうなるのかをARを通じて確認できるようにしました。また、同社はすでに利用している家具を含め部屋中の家具をAR上で再配置し、自由な模様替えをできる「IKEA Studio」の取り組みにも挑戦(2021年にβ版として提供。2022年9月現在は提供停止)するなど、ARの積極活用を進めています。

【広告】ドミノ・ピザ:実寸大のピザを表示

大手宅配ピザチェーンのドミノ・ピザは、スマホのカメラを通じて撮影された室内映像に実寸大のピザを表示させるARアプリを提供中。これから注文しようとしているピザが、自宅の部屋など今いる空間にちょうど良いサイズ感なのかを確認できるようにしました。同社はほかにも「世界のチーズを巡る旅」と題した新商品を詳しく知るための体験型ARを提供。同ARには、アプリダウンロードが不要で広告などに適したWeb AR(Webブラウザ内のコンテンツとして表示)技術が使われています。

【広告】相模鉄道:沿線をめぐるスタンプラリー

神奈川県の相模鉄道は2022年3月にARを利用した「春のそうにゃんARスタンプラリー」を実施しました。このスタンプラリーは紙を使用せず、相鉄ジョイナスなど相鉄線沿線にある3つの商業施設に設置されたQRコードをスマートフォンで読み込み、コンプリートするとオリジナル賞品がもらえる形式。設置されたQRコードを読み込むと、スマートフォン上に動くそうにゃんが現れます。同ARにも、より多くのユーザーに使いやすいアプリ不要のWeb AR技術が採用されました。同社はスタンプラリーにARを活用したことで、「さらにそうにゃんへの親近感とワクワク感を感じていただけるほか、紙資源の削減によりSDGsの目標達成にもつながります」としています。

【教育】新潟医療福祉大学:心肺蘇生の訓練アプリ

ARは教育や学習の分野でも役立っています。その一例が、新潟医療福祉大学とVR・AR・MRなど先端技術とコンテンツの融合を目指す開発会社Gugenkaの協業で生まれた「心肺蘇生AR」。ARスマートグラスを通して任意の場所に心肺停止した傷病者アバターを出現させ、心臓マッサージやAED操作などの手順を学べるようにしたARです。従来はマネキンを使って行われていた学習を、ARを通して3DCG化したことで、心停止直後の傷病者の状況をリアルに再現。マネキンではこれまで不可能だった部分の学びが得られようになりました。

ビジネス用途でのAR活用事例

さまざまな分野でARの活用が広がっていますが、ビジネスの現場においてもAR活用は加速しています。ここではビジネスシーンで活用されているARについて、NECソリューションイノベータが提供する「NEC 遠隔業務支援サービス」を用いたAR活用事例を紹介します。

【製造業】遠くにいる熟練者が現場作業者をサポート

製造業では、ARを製品の保守メンテナンスの現場で活用しています。これまで製造業を支えてきたメンテナンス熟練者が次々と引退し、まだ経験の浅い作業者へ指導できる熟練者が限られている状況です。そこでARを活用すれば、熟練者が現場に出向かなくても作業者へリモートでのサポートが可能となります。熟練者は、現場作業者が装着したARスマートグラスに内蔵されたカメラ越しに現場が見えるため、目印をつけるなど詳細な場所を指定できます。現場作業者は、実際に見ている光景に沿った具体的な指示をもらえるため、作業効率が向上。コミュニケーション齟齬が減り、作業の精度が高まりました。

「NEC 遠隔業務支援サービス」現場作業者と遠隔地の支援者による活用イメージ
「NEC 遠隔業務支援サービス」現場作業者と遠隔地の支援者による活用イメージ

【物流業】遠隔地のベテランが新人のピッキング作業を支援

物流業の現場では、倉庫のピッキング作業にARを活用しています。どの商品がどこにあるのかを正確に把握できていない新人作業員でも、遠隔地にいるベテランの指示に基づき、ARデバイス越しにピッキングする商品の位置を確認できます。また、目的の商品に向かうための最短距離ルートをARで指示。ピッキングミスを未然に防ぎ、移動時間を最小化するなど、より効率的な物流倉庫運営に役立っています。

物流倉庫での「NEC 遠隔業務支援サービス」活用イメージ物流倉庫での「NEC 遠隔業務支援サービス」活用イメージ
物流倉庫での「NEC 遠隔業務支援サービス」活用イメージ

【建設業】離れた場所から複数現場をリモートで監督

建設業の現場では、危険対策の監督などにARが利用されています。これまでは、危険対策が正しく講じられているか、整理整頓がなされているかといった確認は、監督者が実際に現場に赴く必要がありました。ARを導入すると、監督者は各現場の作業員が装着しているARデバイス越しに状況を確認し、是正指示できるようになります。離れた場所から監督できるため、移動コストが劇的に低下。さらに、複数の現場を一人の監督者が担当するのも容易となります。

まとめ

100年前はフィクションの技術とされていたARですが、今では多くの現場で多くの人が活用する一般的なテクノロジーになりつつあります。NECソリューションイノベータ「NEC 遠隔業務支援サービス」のようなソリューションも増えてきているため、導入する敷居も大きく下がりました。顧客満足度の向上や人手不足の解消など多くの企業が抱えている課題を、最先端のARを駆使して解決しましょう。