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コラム
OKRとは?
意味やKPIとの違い、具体例、企業事例などを解説
UPDATE : 2023.03.10
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な結果」を意味します。すべての社員が同じ方向を向き、明確な優先順位を持ちつつ、一定のペースで計画を進行することを目的としています。ここではOKRの意味、類語との違い、職種ごとの具体例や企業事例などをわかりやすく解説します。
INDEX
- OKRとは?
目標の設定・管理方法のひとつ- OKRが注目されている背景
- OKRと類語・関連語との違い
- KPIとの違い
- KGIとの違い
- MBOとの違い
- OKRを導入するメリット
- 自社の目標を明確化して共有できる
- 社員同士のコミュニケーションが円滑になる
- モチベーションやエンゲージメントが向上する
- 仕事の優先順位が明確になる
- OKRを導入する手順と運用方法
- ①企業OKRを設定する
- ②部門やチームのOKRを設定する
- ③社員個人のOKRを設定する
- ④OKRの期間終了後に採点を行う
- 業種・職種別のOKR具体例
- 営業
- 人事
- 製造
- OKRを導入した企業事例
- メルカリ
- ユーザベース
- Sansan
- 花王
- ITを活用してOKRを導入する
- まとめ
OKRとは?
目標の設定・管理方法のひとつ
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。「達成目標(Objectives 以下O)」とその達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定して、企業が目指すべき目標と社員個人の目標をリンク。すべての社員が一丸となって同じ方向を向き重要課題に取り組むことを目的とし、目標を達成するための管理方法を指します。
特徴は、個人と企業の目標をリンクさせて、目標設定・進捗確認・評価という一連の流れを高い頻度で行う点にあります(達成目標と主要な成果の詳細については後述します)。
OKRは、社員および企業全体がモチベーションをアップさせるために、「容易には達成できない高い目標」を掲げ、達成率が60〜70%程度となるのが理想とされています。
なお、OKRはMBOの効果をより高めるために開発されたという経緯があります。「MBO(目標管理制度)」とは、「Management by Objectives」の略称で、1954年にP.F.ドラッガー氏が自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念です。個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決定します。
OKRが注目されている背景
OKRは、1970年代に半導体メーカーであるIntelが採用したのが始まりとされています。その後、Google、Oracle、Facebookなど、米国のシリコンバレーを代表する有名企業が次々と導入しました。日本国内においても、メルカリ、Sansan、花王などの大手企業がOKRを導入しています。
多様な国籍や文化を持つ社員が働くグローバル企業では、異なる価値観を持つ者それぞれが納得できる業績の評価を行う必要があります。変化の激しい時代において「社員と企業が一体となって、モチベーションを保ちながら邁進する」、そのために有効な目標管理方法としてOKRが注目されるようになりました。
OKRと類語・関連語との違い
OKRと似た用語には、KPI、KGI、MBOなどがあります。それぞれの意味や違いについて、OKRとの比較を簡単に説明します。
KPIとの違い
KPIとは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」の略称で、目標達成やビジネス戦略の実現に向けた業務プロセスが適切に実施されているかを測る定量的な指標のことです。
OKRとの違いは、OKRでは目標に対する達成率は60~70%が理想であることに対し、KPIでは達成率100%を目指します。また、OKRは1か月から3か月の単位で目標設定を見直しますが、KPIは業務のプロジェクトごとに変動します。
KGIとの違い
KGIとは「重要目標達成指標(Key Goal Indicator)」の略称で、プロジェクトや業務全体の目標達成指標です。「何をもって成果とするか」を定量的に定めたものを指し、「売上高」「営業利益率」「EVA(経済的付加価値)」などが主な例となります。
KPIは「過程」を測る指標であるのに対して、KGIは「結果」を測る指標となります。また、KGIは年間目標、月間目標など期間ごとに設定して達成率100%を目指します。たとえば、KGIが「月売上○○○万円」や「月来店数○○○人」などの場合、KGIを達成するためのプロセスを測るKPIは「チラシ○○○枚配布」や「Webアクセス○○万」などとなります。
MBOとの違い
MBOとは「目標管理(Management By Objective)」の略称で、最終的な目標の達成度を測る指数です。「1年ごとの業績にもとづいて社員を評価すること」が主な目的となります。MBOは、個人の自主性を尊重しつつ業績アップを目指し、社員の報酬を決める際に用いられます。そのため進捗率は100%が理想とされています。
一方、OKRはモチベーションアップのために進捗率60〜70%で成功と言えるような高い目標を設定します。
MBOと異なり、OKRは原則として人事評価と結びつけることはしません。もし、OKRの評価を人事評価と結びつけてしまうと、達成しやすいレベルの目標設定となる傾向があり、OKR本来の目的を実現できない可能性が高くなります。
目的 | 期間 | 達成水準 | |
---|---|---|---|
OKR | 容易には達成できない目標(ストレッチゴール)を掲げ、全社員が目標を共有し計画を進行する | 1~3か月 | 60~70% |
KPI | 業務プロセスが適切に実施されているかを測る | プロジェクトにより変動 | 100% |
KGI | KPIの結果を測る | プロジェクトにより変動 | 100% |
MBO | 業績にもとづいて社員を評価する | 1年 | 100% |
OKRを導入するメリット
OKRの導入には次の4つのメリットがあります。
- 自社の目標を明確化して共有できる
- 社員同士のコミュニケーションが円滑になる
- モチベーションやエンゲージメントが向上する
- 仕事の優先順位が明確になる
それぞれのメリットについて、簡単に説明します。
自社の目標を明確化して共有できる
OKRでは、まず自社の目標を設定して、その目標に対して各部署、各課、社員一人ひとりの目標や具体的なアクションに落とし込みます。自社の目標が社員の業務とリンクするので、自社の目標を社員全員が共有できるようになります。
社員同士のコミュニケーションが円滑になる
OKRは、自社が目指す目標を全社員と共有してモチベーションアップをはかります。全社員が目標を把握し、目標に対しする達成度を1か月~3か月程度の短期サイクルで評価し、その都度目標を確認するため、社員が自社の目標や課題を把握しやすくなります。
前述したようにOKRは、人事評価には反映されません。また、60%程度の達成率でも十分なので、評価のミーティングをする時も、気軽にかつ前向きな気持ちで行うことができます。さらに、同じ目標に向かってそれぞれの部門や個人がどう取り組むのかをテーマとする、部門間のコミュニケーションも促進されるでしょう。
モチベーションやエンゲージメントが向上する
OKRでは、自社の目標達成に向けて、社員一人ひとりが取り組むべき業務が明確となり、貢献度合いが実感しやすいと言われています。自分の仕事が自社の目標達成に貢献しているとわかれば、社員のモチベーションが向上するでしょう。
仕事の優先順位が明確になる
OKRでは、自社の目標に対してチームのOKR、チームのOKRに対して個人のOKRと、大きな目標にもとづいて段階的に個人まで落とし込んでいきます。個人の仕事が会社の目標に直結するため、仕事の課題を抽出し優先順位をつけやすくなり、業務効率が向上すると言われています。
OKRを導入する手順と運用方法
OKRの導入から運用は、以下に挙げる4つの手順で行います。それぞれについて、簡単に紹介します。
①企業OKRを設定する
まず、自社全体のOKRを設定します。基本的には1つの企業に1つのOKRで十分です。なお、複数の事業を行っている企業であれば、事業ごとに異なるOKRを設定するケースもあります。設定する際は、経営陣からの一方的なトップダウンだけではなく、社員や部門長からヒアリングを行うなど、ボトムアップの意見やアイデアを取り込んでいく方が、企業全体のモチベーションアップにつながりやすく効果的だとされています。
なお、OKRの設定は「達成目標(O)」と「主要な成果(KR)」にわけて行います。
達成目標(Objectives)の設定
「達成目標(O)」は、自社が目指すべき理想の姿であり、いわばツリーの頂点のような存在です。達成目標はシンプルで、なおかつ社員のモチベーションが上がるようなワクワク感があるものが理想と言われています。なお、目標は定量的な数値ではなく定性的なものがよいでしょう。具体的には、「売上○○○億円を目指す」ではなく「最新技術で業界をリードする企業となる」などです。
主要な成果(Key Results)の設定
主要な成果(KR)では、達成目標に対する評価指標を設定します。主要な成果では達成目標に対する進捗度をはかるため、細かく数値を定めます。数値は達成可能なラインより高くするのがポイントです。ただし、あまり高すぎるとモチベーションが下がるので、「難しいが不可能ではない」程度の難易度に設定します。
1か月〜3か月ごとに行う評価の際、60~70%の達成度(ストレッチゴール)になっていることが理想的です。
②部門やチームのOKRを設定する
自社全体のOKRを設定したら、次に部門やチームごとのOKRを設定します。この際、自社のOKRと連動したOKRにします。自社全体の場合と同様に、「達成目標(O)」を設定したのちに、その進捗をはかるための定量数値となる「主要な成果(KR)」を設定します。
モチベーションをアップさせるためにも、設定するOKRはチームメンバーが納得できるものでなければなりません。ここでもボトムアップの意見やアイデアの取り込みが重要となります。
③社員個人のOKRを設定する
続いて、企業ORK、部門・チームORKと連動した、社員個人のOKRを設定します。この際、部門長やチームリーダーと社員個人が十分に話し合い調整しながら、お互いに納得したOKRを設定することが重要となります。
④OKRの期間終了後に採点を行う
OKR導入後は、1か月〜3か月程度の期間で定期的に目標と成果について評価します。「主要な成果(KR)」で設定した指標に対して、達成度を%で採点します。すべての主要な成果(KR)の平均が達成目標(O)のスコアとなります。このスコアが60%〜70%程度であれば、順調であると評価されます。
その後、評価で得られたスコアと、ボトムアップで寄せられた意見やアイデアをもとに、OKRを調整して次のサイクルに入ります。
業種・職種別のOKR具体例
続いて、業種や職種別のOKR設定例を紹介します。前述したように、これらは企業全体のORKと連携する必要があります。以下で、企業の達成目標(O)が、「業界をリードするトップ企業へと成長する」だった場合の業種・職種別OKRの例を挙げます。
営業
営業職のOKRとしては、企業やチームの売り上げ増加に直接つながるものがあるでしょう。具体的には新規顧客獲得などが挙げられます。その場合、新規顧客獲得につながるアプローチの方法や具体的な数値が指標となります。営業職の場合、目標にも定量値を設定しがちですが、具体的すぎるとワクワク感が減少しプレッシャーばかりが高まるので、言葉選びには注意する必要があります。
【営業職のOKRの例】
目標(O):売り上げ倍増を達成する
達成指標(KR);新規売上1,000万円。既存顧客からの売上20%アップ
人事
人事職のOKRとしては、人材確保に関するものがあります。もし新たなチームを結成するために人材が必要であれば、どのような人材を、何人、どのような方法で獲得するかが指標として考えられます。
【人事職のOKRの例】
目標(O):半年以内に世界に通用するマーケティングチームを結成する
達成指標(KR):チームに必要な人材を3ヶ月以内に社内外から5人以上確保する。チーム結成と同時に教育プログラムを実施。
製造
製造職のOKRとしては、製品の品質向上に関するものがあります。企業OKRである「業界をリードするトップ企業へと成長する」を達成するためには、製品の品質向上は不可欠です。部署やチームごとにOKRを設定して、社員一人ひとりの意識を品質向上に向かって行動できるようにします。
【製造職のOKRの例】
目標(O):不良品を出さない高度な生産ラインを構築する
達成指標(KR):年間クレーム件数0件、納期1日前完了率100%
OKRを導入した企業事例
ここまで、OKRの概要について紹介してきました。次に、実際にOKRを導入している企業の事例を紹介します。シリコンバレーが発祥であるOKRは、国内外のIT企業を中心に広がりをみせています。
Googleでは、2000年の初期からOKRを導入しています。当時、Googleの出資者だったジョン・ドーア氏が、OKRの提唱者であるIntelの元CEOであるアンディ・グローブ氏から直接学び、GoogleにOKRを持ち込んだとされています。
Googleの目標管理スパンは3か月に1回となっており、定期的なミーティングでOKRの評価を行います。OKRの評価は全社員に公開され、誰もがお互いの作業状況を確認できるようにします。なお、Googleでは、70%を達成すれば成功とするOKRを設定しています。導入して20年以上が経過した現在では、OKRが完全に浸透しており、Googleを世界的企業に成長させた原動力とも言われています。
メルカリ
メルカリでは、2015年からOKRを導入しています。急速に成長したメルカリでは、社員の増加にともなって会社と社員との間に目標のズレが生じていました。そのズレを解消し、会社と社員の目標による連携を強化する手段として、当時日本国内では珍しかったOKRの導入に踏み切りました。
OKRの運用で特に重要視したのは社員とのコミュニケーションです。定期的に上司と部下が「1on1ミーティング」で話し合い、それぞれの意見を尊重しながら、モチベーションが向上する目標をすり合わせていきます。
メルカリの OKRは、グループ全体、事業部ごと、部署ごと、チームごと、社員ごとに設定され、3か月に1回のサイクルで評価が行われています。
ユーザベース
さまざまな経済情報関連サービスを提供しているユーザベースでは、クラウド型経済情報プラットフォーム「SPEEDA」の事業部にて、2016年からOKRを導入しています。具体的な導入としては以下のようなものがあります。
●総務チーム
日常業務に忙殺され、オフィスの汚れが目立つという課題がありました。課題解消のため、「ウユニ湖みたいなきれいなオフィスにする」「メンバーが(地球の裏の)カリブにいけるぐらい強いチーム体制をつくる」という目標を掲げOKRを実施。IP電話を導入し各チームに電話対応を移管して電話対応の負荷を軽減することに成功しました。またクリーンデーをつくりオフィス美化も実現しています。
●労務チーム
新入社員をケアできないという課題を解消するため、「強くてやさしい労務チームになる」という目標を掲げOKRを実施。新入社員のウェルカムランチをスタートさせ、新メンバーの自己紹介をSlackで共有したり組織図を公開したりするなど、新入社員をケアする情報発信に取り組みました。
Sansan
名刺管理サービスを提供するSansanでは、2015年よりOKRを導入しています。Sansanでは、生産性向上のため多くの定量目標を設定していました。ただ、現場の社員には、その目標が設定された理由がわかりにくく「なんのためにやっているのか」が見えなくなっていました。
そのような状況を解消する手段としてOKRの導入を決定し、各部門の社員が行なっている業務が、企業のどのような目標とつながっているのかを見える化。社員のモチベーションアップにつながりました。
なお、同社のOKRは「四半期ごとに個人のOKRを立てて運用するのは手間がかかる」ため、社員個人のOKRは設定していません。また、OKRは人事評価とは直結しないことが原則ですが、同社では独自の手法を用いて、OKRも人事評価に結びつけています。
花王
大手消費財化学メーカーである花王は、2021年に「社員活力の最大化」を目標の1つとして掲げ、達成に向けてOKRを導入しました。その狙いは「夢や目標を臆することなく掲げてもらう」ことで、「事業貢献」 「ESG(環境・社会・ガバナンス)」 「One team & My Dream」という3つの観点から目標を設定します。
OKR導入以前は、目標達成率そのものを評価基準としていたため目標が達成可能な範囲にとどまってしまう傾向がありましたが、新たな制度の下では「あるべき姿」や「全国レベル」のように高い目標を掲げる例も生まれており、社内のモチベーションが向上しています。
ITを活用してOKRを導入する
企業と社員の目標を連携させ、モチベーションを向上させる手段としてOKRは有効な手法です。ただし、OKRを機能させるためには、社員の能力や人数に応じた適切な目標設定が不可欠となります。また、OKRは1ヶ月〜3ヶ月の比較的短いサイクルで運用するものなので、企業が抱えている課題や社員の能力、業務内容など、わかりやすく管理するためのツールが不可欠です。
NECソリューションイノベータが提供する「統合HCMシステムPOSITIVE」は、スキルや人事考課歴、職務歴などの情報を集約した人材データベースを構築可能です。また、タレントマネジメント機能で職務スキルのレベル判定・ギャップ分析などを行い、最適な能力開発を支援できます。OKRを機能させるのに有効なツールとなるでしょう。
まとめ
ここまで紹介したように、日本においてもOKRを導入して効果を上げている企業は増えています。
ただし、OKRの本質を理解せず、形だけを真似ても効果は出ません。今回紹介した事例は、試行錯誤しながらそれぞれの企業風土にあわせてOKRをカスタマイズした結果、効果を生んでいます。OKRを成功させるためには、相応の苦労が伴いますが、OKRが企業の文化として根付けば、過去の事例を見ても、企業に大きな成長をもたらす可能性は高いと言えるでしょう。