KPIとは?意味やKGIとの違い、KPIツリーについて解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

KPIとは?
意味やKGIとの違い、KPIツリーについて解説

UPDATE : 2023.03.24

KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語で「重要業績評価指標」と訳される指標です。目標達成に向けたプロセスの進捗管理に役立つため、ビジネスでは企業の経営戦略から個人の業務管理まで幅広く活用されています。

そこで本記事では、KPIの意味やKGIとの違い、KPIの設定手順、KPI管理のポイントなどをわかりやすく解説します。

INDEX

KPIとは

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳される指標です。KPIの論者は多数存在し多義的になっていますが、一般的には目標達成に向けたプロセスの進捗状況を定量的に評価・分析するための指標として使われています。例えば、BtoB営業で売上の達成を目標とする場合、商談数や成約率などをKPIとして設定。各KPIの数値から営業パフォーマンスを評価して戦略の最適化(アクションの修正やKPIの見直しなど)を進め、目標達成につなげます。

なお、KPIを達成するために下位のKPIを設定する場合もあります。先の例であれば、商談数というKPI(上位)達成のために、テレアポ数とアポイント獲得率というKPI(下位)で行動を管理するという使い方です。このようにKPIを活用して目標達成までのプロセスを管理する取り組みはKPIマネジメントと呼ばれ、経営戦略や組織全体の活動評価のほか、個人の日常業務まで幅広く活用されています。

● KPIとKGIの違い

KGIとは、「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」と訳される指標です。KGIは、ビジネスで達成すべき最終目標(ゴール)を定量的に表したもので、「年間売上〇〇億円」などと設定されます。なお、売上や利益など財務に関連する項目をゴールに設定している場合は、日本語で「重要財務指標」という意味のKFI(Key Finance Indicator)という指標を、KGIと同じ位置付けで使用するケースもあります。

KGI(KFI)はゴールそのものを客観的・定量的に示す指標であるのに対し、KPIはKGI達成に向けたプロセスを計画的に管理するための指標です。そのため、KPIの達成がKGIに直結するように、KGIからKPIを逆算して設定する必要があります。例えば、売上をKGIに設定した場合、売上に直結する顧客数や顧客単価などがKPIとして機能するという関係性になります。

● KPIとKSFの違い

KSFとは、「Key Success Factor」の略で、日本語では「重要成功要因」と訳される言葉です。広義にKSFは、目標を達成するための条件や要因を表したものとされており、同じ意味の用語としてCSF(Critical Success Factor)やKFS(Key Factor for Success)があります。

ビジネスにおいてKSFは、目標を達成するために自社のビジネスで優先して注力すべき領域を示した言葉であり、定量的とは限りません。そのためKSFは、定量的なKPIおよびKGIと紐づけてマネジメントに活用されます。

KPI、KSF、KGIの関係図

例えば、BtoB営業で、KGIである売上を達成するためのKSFとして「新規顧客の開拓」や「既存顧客の単価向上」が設定された場合、「新規顧客商談数 〇〇件/月」「既存顧客の客単価 〇〇%向上」などのKPIで、目標達成に向けたプロセスを管理します。このように、KPIはKSFを数値化し計測・監視できる状態にした指標として機能します。

なお、KSFは自社の内部環境だけでなく、市場動向や顧客ニーズといった外部環境を分析して抽出されます。そのため、ビジネス環境の変遷に合わせKSFを見直すことを前提にして、マネジメントする必要があります。

● KPIとOKRの違い

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「目標と主要な成果」と訳されている目標管理手法です。昨今では、米Google社が採用していることで注目を集めました。OKRは、組織全体の目標(Objectives)を設定し、その目標達成に向けた定量的な成果指標(Key Results)を、1か月や四半期程の短いサイクルで評価・管理する手法です。組織全体の目標と成果指標をチームや個人の取り組みに連動させ、組織と個人の方向性を合致できるようにして全体の活性化を図ります。

なお、OKRではKPIのように100%の達成を理想とせず、達成度60~70%で成功と評価できるほどのストレッチ目標を設定する点が特徴です。以下の表では、OKRと同じく、KPIと混同されやすい用語であるMBOも合わせて、それぞれの違いを簡単にまとめています。

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KPI OKR MBO
目標達成の
成功判断基準
100% 60~70% 100%
評価の頻度 プロジェクトにより
さまざま
1ヶ月毎や四半期毎など
短いスパン
半期もしくは
年度に1回のペース
目標の共有と
運用の範囲
プロジェクト関係者 全社 当事者間
(上司と部下など)
管理事項の
タイプ
定量的 定性的・定量的 定性的・定量的

KPIの具体例

KPIは、経営戦略の策定から個人の業務管理まで幅広く活用されています。ここでは、KPIの具体例を職種別、業種別に紹介します。

● 職種別のKPI例

KPIは目標達成に向けたプロセスを管理する指標であるため、具体的な項目は組織や職種によってさまざまです。以下は、職種ごとのKPIの一例となりますが、KPIはあくまで組織のKGIおよびKSFに基づいて設定することに留意してください。

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職種 KPIの具体例
経営企画・財務関連 ROE (自己資本利益率)・ROA (総資産利益率)・棚卸資産回転率・固定資産回転率・売上高経常利益率・売上高営業利益率・当座比率・固定比率・負債比率 など
営業 テレアポ数・アポイント獲得率・新規顧客商談数・商談化数・受注数・成約率・コンタクトしてから成約までの平均日数・リピート率・平均顧客単価・解約件数 など
マーケティング 広告インプレッション数・広告CTR(クリック率)・広告コンバージョン数・広告コンバージョン率・広告CPA(顧客獲得単価)・SNSからの流入数・SNSエンゲージメント数・メール開封率・メール配信解除率・WEBサイトユーザー数・WEBサイト直帰率・資料請求数・リード獲得数(全数/MQL数/SAL数/SQL数) など
人事 インターン参加者数・説明会参加者数・採用選考応募者数・面接数・内定辞退数・採用人数・定着率・離職率・研修実施数・従業員満足度・従業員エンゲージメントのスコア・管理者比率・非正規社員比率・有給休暇取得率・平均残業時間 など
カスタマーサポート 一次応答までの平均時間・応答率・AHT(平均処理時間)・解決率・解決までの平均やりとり回数・平均エスカレーション回数・顧客満足度 など

● 業種別のKPI例

KPIには、業種特有の指標もあります。それぞれのビジネス特性に合わせ、業績につながる要素をKPIとして採用し、業務プロセスの改善につなげます。

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業種 KPIの具体例
製造業 労働生産性・総合設備効率・製造リードタイム・稼働率・不良数・不良率・段取り率・歩留まり率・製造原価率・事故(ヒヤリハット)発生件数・クレーム件数・多能工比率 など
物流運送業 倉庫の保管効率・倉庫作業の人時生産性・実車率・積載率・棚卸差異・誤出荷率・配送遅延および時間指定違反率・汚破損率・クレーム発生率・出荷ロット・出荷指示の遅延数・配送頻度 など
小売業
(実店舗経営)
来店客数・来店頻度・来店率・購入件数・購買率・平均顧客単価・平均買上点数 など
飲食業 WEBサイトアクセス数・予約数・顧客満足度・リピーター率・平均顧客単価・回転率・FL比率(材料費と人件費の比率)・原価率 など
宿泊業 客室稼働率・客室平均単価・RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)・定員稼働率・リピーター率・顧客満足度・宿泊比率・インバウンド宿泊者比率・自社予約サイトのコンバージョン率 など
SaaS事業 MRR(月次経常収益)・ARPA(1アカウントあたりの平均売上)・CAC(顧客獲得費用)・CAC Payback Period(顧客獲得費用の回収期間)・LTV(顧客生涯価値)・解約率・平均契約継続期間 など

KPIを活用するメリットと重要性

KPIには「活動指針が明確になる」「目標達成に向けたプロセスを可視化・共有できる」「社員の取り組みに対して公平な評価ができる」などのメリットがあるため、多くの企業で重宝されています。

● 活動指針が明確になる

KPIを設定すると、目標を定量的に把握できるため、組織や個人が取るべきアクションが明確化されます。進捗状況を数値で客観的に判断でき、行動の改善や軌道修正も必要なタイミングで行えるようになるでしょう。反対に、KPIを設定せず漠然とした目標のもとで活動していると、現状をどのように捉えるか、そして、どのような行動を取っていくかの方針が個人の判断に委ねられてしまいます。結果として、非効率的な活動や属人的な行動につながるリスクが高まります。

● 目標達成に向けたプロセスを可視化・共有できる

KPIとKGIがリンクしていると、ゴールへの道程が可視化され、組織間でのプロセス共有が容易になります。組織として“とるべき行動”が見える化できていれば、問題が発生したときでも組織でフォローしやすくなるでしょう。ビジネス環境の変化が激しい昨今では、状況に応じて組織で素早く軌道修正していくためにも、KPIによる管理が重要視されています。

● 社員の取り組みに対して公平な評価ができる

KPIは人事評価の基準としても有用です。客観的な数値で個人の実績を比較できるため、公平かつ納得感のある評価が可能になります。また、評価基準が定量化されていることで、“評価する側”となるマネジメント層の業務負荷軽減も期待できます。加えて、KPIにより各人の課題が把握できている状況は、人事考課だけでなく人材育成や業務サポートを進めやすくなる点でも、マネジメント業務の効率化に貢献するでしょう。

KPIの設定手順

ここではKPIを正しく設定するための方法を、「KGIの設定」「KSFの設定」「KPIの設定」の3つの段階に分けて解説します。

【STEP①】KGIの設定

KPIは目標達成に向けたプロセスを評価する指標のため、前提としてKGIの設定が必要です。KGIは、期限を明確にして、現実的かつ具体的な数値目標を設定します。例えば「2023年度の年間売上を〇〇億円にする」などです。

【STEP②】KSFの設定

KGIの次は、KSFの明確化です。「3C分析」「5F分析」「PEST分析」「バリューチェーン分析」「SWOT分析」などのフレームワークを活用して、内部環境と外部環境から多角的にKGIを達成するための成功要因を洗い出します。例えば、「2023年度の年間売上を〇〇億円にする」というKGIを設定した場合では、分析結果から「顧客数増加」や「顧客単価アップ」などのKSFを導き出します。

【STEP③】KPIの設定

成功(=KGI)に必要な要因(=KSF)を明確化できたら、数値目標を設定してKPIとします。なお、具体的なアクションにつなげるには、KPIを細分化して、“行動の目標値”となるまで分解することが重要です。KPIの適切な分解・設定例については、次に紹介する「KPIツリー」で詳しく解説します。

KPIを設定するうえで欠かせないKPIツリーとSMARTの法則

ここでは、効果的なKPIの設定に役立つフレームワークである、KPIツリーとSMARTの法則について解説します。

● プロセスの可視化に欠かせない【KPIツリー】

KPIツリーとは、KGIを達成するための要因を分解し、ツリー構造でプロセスを可視化した図を指します。KPIツリーを作るメリットには「ボトルネックの把握」「具体的なアクションの特定」「組織目標の共通認識を得られる」等があります。効果的にKPIツリーを作成できれば、目標達成に向けて必要な要因を網羅的に把握でき、優先して取り組むべき課題を組織で共有しやすくなるため、KPIを管理するうえで、特に重要視されています。

KPIツリーの作成イメージ図

KPIツリーを作成する際には、以下の4つのポイントに注意する必要があります。

  • ①四則演算(+-×÷)の関係性で組む
  • ②計測可能で数値化できる指標を選ぶ
  • ③上下関係の指標で単位の整合性をとる
  • ④行動の指標となるレベルまで細分化する

【①四則演算(+-×÷)の関係性で組む】ができると、状況が変動した際の対応策をシミュレーションしやすくなります。例えば「商談数=テレアポ数×アポイント獲得率」という関係が成立していると、「テレアポ数が伸び悩んでいる時は、アポイント獲得率は何%伸ばす必要があるか」を、掛け算(×)の関係から容易に把握できます。

こうした管理をするためには、四則演算の関係性を組むと同時に、【②計測可能で数値化できる指標を選ぶ】【③上下関係の指標で単位の整合性をとる】が必要です。単位の整合性とは、四則演算における単位のルールです。例えば、数式「A=B+C」が成り立つには、A・B・Cの単位が同じでなければなりません。

最後の【④行動の指標となるレベルまで細分化する】は、組織全体で具体的なアクションにつなげるために欠かせないポイントです。例えば「顧客数」というKPIの場合では、「顧客数=商談数×成約率」からさらに「商談数=テレアポ数×アポイント獲得率」と細分化。“行動の目標値“となるKPIまで分解することで、目標達成に必要な行動を可視化できます。細分化が甘く、売上などの財務情報のように行動の結果となる指標をKPIにしているだけでは、達成に向けてどのような行動をとるべきかの判断が個人に委ねられてしまうため、注意が必要です。

● 目標設定に効果的な【SMARTの法則】

SMARTの法則とは「Specific(明確な)・Measurable(測定可能な)・Achievable(達成可能な)・Relevant(関連した)・Time-bound(期限を定めた)」の観点を活用した目標設定のフレームワークです。KPIとして設定される目標は、SMARTの法則で示される5つの観点を満たしている必要があります。

Specific(明確な) 誰もが理解できるように、曖昧な表現を避けて具体的な表現で設定する。「売上を増やす」などと曖昧に設定するのではなく、「製品Aの売上を昨対比150%」と具体的に定め、必要な行動を明確にしていく。
Measurable(測定可能な) 達成度を正しく評価できるように、数値で計測できる内容で設定する。「品質を向上する」と設定するのではなく、「99%の良品率を達成する」など、誰もが同じ理解をできるように目標を数値化して設定する。
Achievable(達成可能な) 根拠のない目標ではなく、現実的で達成が見込める目標を設定する。例えば「年間2個の新製品を開発していた」メーカーが、従来のリソースで「年間12個の新製品開発」と目標を設定しても、上手く機能しない恐れがある。
Relevant(関連した) 部署や組織の目標と個人の目標が乖離することのないように、関連する内容で設定する。例えば、組織として「新規顧客数○〇%増」という目標を設定した場合、個人が「アポイント獲得率△△%向上」という目標を設定すると、個人の目標達成が全体の利益につながる。
Time-bound(期限を定めた) いつまでに目標を達成するかの期限を明確に定める。「年間目標〇〇円の売上」などの大目標がある場合、半期・四半期・月間・週間と、期間レベルで目標値を細分化すると、計画的に行動を管理できる。

KPIを機能させるためのポイントと注意点

ここでは、KPIマネジメントの失敗を避けて、KPIを効果的に機能させるためのポイントを解説します。

①MECEに分解してボトルネックを把握する

MECE(ミーシー)とは、「Mutually(互いに)・Exclusive(排外的な)・Collectively(全体的に)・Exhaustive(網羅的な)」の頭文字を取った言葉です。日本語で「もれなく、ダブりなく」と訳されることもあるMECEは、物事の必要な要素を網羅しつつ重複させずに整理して考えるために有効で、ロジカルシンキングの基礎としても知られています。

KPIは成功に必要な要因を精査して設定されるべきです。重要な要因を見落とし、MECEでない状態で管理していると、いくらKPIを達成してもKGIの達成につながらない恐れがあります。例えば、KGIとして「利益」を設定した場合、KPIとして「売上」だけを追求していても、「コスト」を適正値に抑えられないでいると、KGIの達成は困難です。

そのほか、KPIが重複して設定されている場合では、業務の重複やリソースの無駄を引き起こす危険性があります。こうした事態を避けるためにも、網羅的にプロセスを可視化できるKPIツリーの作成が重要です。

②取り組みの優先順位を決める

KPIツリーでMECEにプロセスを分解していくと、当然ながら数多くのKPIが生じます。そのため、KPIの優先順位を明確にして取り組むことが重要です。KPIの数が多すぎるとデータ集約の負荷が増すだけでなく、それぞれの施策で十分なアクションを実行できない危険性があります。

KPIの優先順位は、上位のKPIに対する影響度や実現性の高さから判断します。そのためには、商品や顧客のタイプ(法人・個人など)、集客チャネルなどの視点をKPIツリーに組み込むことが大切です。例えば、商材Aと商材Bがあり、KGIとして「売上」を目指す場合には、売上貢献の高い商材の見極めがポイントとなります。どの施策にリソースを割くべきかの優先順位を判断するためにも、実績データを収集分析できる環境づくりが必要です。

③現状に合わせて柔軟に設定を調整する

KPIツリーはあくまで事前に設定するロジカルな仮説です。KPIマネジメントでは、実績を基に問題点を把握しKPIを再設定するなど、継続的にアップデートさせていく取り組みが求められます。

進捗が芳しくない取り組みに対して、目標値を見直すことで達成可能性を高められるのは、中間指標であるKPIの強みです。例えば、KPIツリーにより「顧客獲得数=商談数×成約率」という関係性でKPIを設定し、最初のアポイントから契約に至るまでのリードタイムが平均して30日とします。このケースでは月半ばに「商談数」が一定数に満たないと、リードタイムの関係から「顧客獲得数」の当月内での達成は困難と言えるでしょう。ところが、この時KPIツリーで各指標の関係性が整理できていると、「成約率」を高める施策に注力するという現実的かつ効果的な軌道修正を素早く判断できるのです。

KPIを結果の評価だけに活用するのではなく、中間指標である利点を活かし、PDCAを回転させて素早い意志決定や改善アクションにつなげていくことが大切です。そのためには、リアルタイムにKPIを可視化・管理できる仕組みづくりが求められます。

KPI活用の企業事例

ここでは、KPIを上手に活用している国内企業の取り組みを2件、ピックアップして紹介します。

【企業事例①】アスクル株式会社

オフィス用品通販大手の「ASKUL」や個人向けショッピングサイト「LOHACO」を運営するアスクル株式会社は、持続可能な社会の実現に向けた企業活動を推進しています。同社は、サステナビリティ経営を進めるうえでの重要課題を「DX・共創・環境・サプライチェーン・人材・基盤」の領域に設定。それぞれにKPIとアクションプランを定めています。

例えば「DX」の領域では、2025年度を期限とした「配送品質向上・配送遅延ゼロ達成」をKPIに定め、ドライバーが携行する端末への遅配アラート機能実装などの取り組みを実施しています。また「環境」の領域では、再生エネルギーの導入や配送自動車のEV転換を進めているほか、「2030年CO2ゼロチャレンジ」を策定し、関連施設のCO2排出量削減を進めています。

【企業事例②】エーザイ株式会社

大手製薬会社であるエーザイ株式会社は、KPIに関して先進的な取り組みを行っている点でも有名です。ESG経営にも積極的な同社は、蓄積した過去10年にわたるデータを駆使して、ESGに関連する非財務的なKPIと企業価値との相関関係を分析。同社において「女性管理職比率」や「育児短時間勤務制度利用者」などと「PBR(株価純資産倍率)」が正の相関関係にあるという事実を明らかにしました。従来、業績への影響が見えにくかったESG領域における各KPIの重要性を示したのです。

同社は、こうした調査を経営判断に用いているほか、その成果を『価値創造レポート』で公表しIR活動にも活かしています。これらのESGに関わる取り組みは世界的に高く評価されており、カナダのコーポレートナイツ社が選定する『2023 Global 100 Most Sustainable Corporations in the World(2023年 世界で最も持続可能な100社)』に選ばれるなどしています。

KPI管理に役立つITツール

KPIを効果的に活用するうえでは、ITを活用してデータを見える化する環境づくりが大切です。データをスムーズに収集分析できず、現状確認のためだけに労力を使ってしまう状況では、改善施策へ手を回すまでに時間がかかってしまい、中間目標であるKPIの強みを活かしきれないでしょう。反対に、BIツールなどでデータ収集環境を整えられれば、社内のKPI関連データをリアルタイムに可視化できるほか、AIによる高度な分析で新たな知見を得られる可能性もあります。

加えて、他の最新ITソリューションを組み合わせられると、KPIマネジメントのさらなる高度化が実現します。例えば、製造工場にIoTを導入すると、社員の負担を増やさず製造現場のデータ収集が可能に。画像や映像などの非構造化データをKPIに適用する可能性も広がります。KPIマネジメントを効率化・高度化するために、自社でどのようなデータを収集でき、どのような形で管理・運用ができるかをITの専門家に相談してみることも方法です。

まとめ

KPIは、目標達成に向けたプロセスの管理に役立つ指標です。KPIマネジメントが機能すると、組織や個人の活動指針が明確になり、状況に応じて速やかな軌道修正を実行しながら目標達成を目指せます。
ただし、KPIを効果的に活用するためには、リアルタイムに指標の状況を把握できるデータ環境の構築が求められます。素早くKPIデータを収集・管理して、KPIマネジメントを効率化・高度化するべく、IT環境の整備を進めてみてはいかがでしょうか。