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コラム
サステナビリティとは?
SDGsとの違いや企業の取り組み事例を解説
UPDATE : 2023.05.12
サステナビリティとは、「持続可能性」を意味する言葉で、持続可能な発展を目指す考え方や取り組みを指します。2030年までの世界共通目標であるSDGsと関連性が深いこともあり、近年ビジネスシーンで重要視されています。本記事では、サステナビリティの意味やSDGs 、CSRとの違い、サステナビリティ経営のメリット、企業の取り組み事例などをわかりやすく解説します。
INDEX
- サステナビリティとは?持続可能な発展を目指す考え方や取り組み
- サステナビリティ3つの柱
- サステナビリティが注目される背景
- サステナビリティ経営とは
- サステナビリティとSDGs、CSR、ESGとの違い
- サステナビリティとSDGsの違い
- サステナビリティとCSRの違い
- サステナビリティとESGの違い
- サステナビリティ経営に取り組むメリット
- ①企業価値の向上につながる
- ②事業拡大の可能性が広がる
- ③従業員エンゲージメントが高まる
- ④資金調達の面で有利になる
- サステナビリティのガイドライン、指標
- 国際的な情報開示ガイドライン「GRIスタンダード」
- ESG投資の観点から評価「DJSI」
- 企業のサステナビリティ取り組み事例
- ファーストリテイリング
- 楽天
- NECソリューションイノベータ
- サステナビリティ経営は新たな価値創造のチャンス
- まとめ
サステナビリティとは?
持続可能な発展を目指す考え方や取り組み
サステナビリティ(sustainability)とは、「sustain(持続する)」と「able(〜できる)」が組み合わされた言葉で、日本語では「持続可能性」「持続することができる」などを意味します。1987年、国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した報告書で「Sustainable Development(持続可能な発展)」という言葉が使われたことにより、広く知られるようになりました。
近年では、世界的に社会や環境などに対するサステナビリティへの取り組みが行われています。企業の経済活動においても、利益追求のみならず、社会的責任を果たして持続可能な発展を目指す考え方や取り組みが求められています。
サステナビリティ3つの柱
サステナビリティには「3つの柱(トリプルボトムライン)」があります。持続可能な発展を目指すには、この3つの柱の調和が重要であるとされています。
①環境保護(Environmental Protection)
サステナビリティの柱の1つ目は「環境保護」です。森林の保存や海洋汚染対策、水資源の節約、生物多様性の保全など、地球環境を保護する活動が推奨されています。また、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換など、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする脱炭素社会実現に向けた活動も求められています。
②社会開発(Social Development)
2つ目の柱は「社会開発」です。貧富格差やジェンダー、人種差別などのない平等な社会環境づくりが求められます。医療、衛生、住宅、交通などにおける社会サービスの改善や各国の文化の尊重、平等な教育の機会提供、多様性のある働き方推進なども必要とされます。
③経済発展(Economic Development)
3つ目の柱は「経済発展」です。企業においては健康的な労働環境を整備し、長期的にパフォーマンスを維持して利益を出し続ける「サステナビリティ経営」が求められます。また、サステナビリティ経営を行う企業への投資や、環境・社会へ配慮した取り組みを自社のマーケティングに活かすサステナブルマーケティングなども重要視されています。
サステナビリティが注目される背景
近年、サステナビリティが注目を集めている背景には、次のような点が挙げられます。
- 地球温暖化などの環境問題が深刻化している
- 消費者のニーズが変化している
- 投資家の投資判断基準が変化している
- 2015年の国連サミットでSDGsが採択された
企業による経済活動は発展を遂げた一方で、温室効果ガス排出や廃棄物などが増大しました。その影響で地球温暖化や気候変動、海洋汚染、資源枯渇といった環境問題が深刻化しています。このまま状況が改善されなければ、経済活動の継続が危ぶまれるため、環境問題解決に向けた企業の取り組みが必要とされているのです。
また、現在は消費者ニーズも変化しており、環境や人にやさしい商品やサービスが好まれるようになりました。企業が消費者に選ばれる商品やサービスを提供するためには、サステナビリティの観点が重要となります。加えて、投資家においては、投資先企業を選ぶ際の判断基準にサステナビリティの活動実績を重視する傾向が強くなっています。
サステナビリティの重要性は以前から有識者の間で認知されていましたが、2015年の国連サミットで「SDGs」が採択されたことで、多くの注目を集めました。SDGsの目標の中には、環境問題、貧困・飢餓、ジェンダー問題などが挙げられています。それらはサステナビリティ3つの柱と密接に関わり合っているため、SDGs採択により、サステナビリティの重要性が広く知られることとなったのです。
サステナビリティ経営とは
サステナビリティ経営とは、サステナビリティの3つの柱である「環境」「社会」「経済」を考慮することで、事業のサステナビリティ(持続可能性)を図る経営を指します。
以前から社会貢献活動(CSR)を行う企業はありましたが、経営や事業とは切り離された別の活動として捉えられていました。しかし、世界的に2030年を目指してSDGsの目標達成を推進する中、企業が長期的に存続するためには、サステナビリティ経営が欠かせないとの認識が広がっています。
サステナビリティとSDGs、CSR、ESGとの違い
サステナビリティに関連する用語がいくつかありますが、ここでは「SDGs」「CSR」「ESG」について解説します。
サステナビリティとSDGsの違い
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」を意味します。2015年9月の国連サミットにおいて、参加した193か国全会一致で採択された、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。「経済」「社会」「環境」に関する17の目標と、その目標を達成するための169のターゲットにより構成されています。
サステナビリティは持続可能な発展を目指すという考え方で、その具体的な目標を示したのがSDGsです。また、SDGsは2030年までに達成すべき目標であり、サステナビリティは期限の定めはなく長期的な取り組みを求められる点も違いと言えます。
サステナビリティとCSRの違い
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、日本語では「企業の社会的責任」を意味します。企業は経済活動において、自社の利益追求や法令遵守だけでなく、顧客、取引先、従業員、投資家などステークホルダーに配慮した経営が求められます。適切なコミュニケーションや情報開示など、ステークホルダーの要望に応えて信頼を得るための取り組みがCSRです。
サステナビリティとCSRは、持続可能な成長や発展を目指す考え方という点では同じですが、主体が異なります。CSRは企業が主体で、サステナビリティは企業も含め、国家や各個人まで広範囲に及びます。
サステナビリティとESGの違い
ESGとは、Environment(環境)・Society(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉です。環境や社会に配慮し、適切な企業統治を行うというESGの3要素を重視する経営方法を「ESG経営」と言い、近年、ESG経営をする企業は企業価値が高まる傾向にあります。また、ESG経営に取り組んでいる企業に投資するのが「ESG投資」です。
サステナビリティは持続可能な成長や発展を目指すという考え方であり、ESGは経営や投資のスタイルを意味する言葉なので、ESGはサステナビリティを実行する手段とも言えます。
サステナビリティ経営に取り組むメリット
サステナビリティ経営に取り組む主なメリットは、次の点が挙げられます。
①企業価値の向上につながる
サステナビリティへの取り組みは、企業イメージや企業ブランドの向上につながります。昨今、投資家や消費者においてもサステナビリティへの関心は高まっており、環境問題や社会問題に取り組む企業を重要視するようになりました。したがって、サステナビリティ経営を行う企業は、企業イメージを向上させやすくなるのです。顧客や取引先、消費者などのステークホルダーから信頼を得られれば、企業価値も高まるでしょう。
②事業拡大の可能性が広がる
サステナビリティの取り組みは、新たな市場開拓や事業創出につながる可能性も秘めています。2017年に「ビジネスと持続可能な開発委員会(Business and Sustainable Development Commission)」が発表した報告書では、「グローバル目標を達成することで12兆ドルの機会創出になる」と予測されており、サステナビリティ関連の事業拡大が期待されています。環境関連の製品やサービスに対するさらなる需要の高まりや、サステナビリティに取り組む企業同士の連携による新規事業開拓のチャンスも広がっていくでしょう。
③従業員エンゲージメントが高まる
サステナビリティに取り組む企業は、ステークホルダーをはじめ社会全体から高い評価を受ける傾向があります。社会から評価され、職場環境などにも配慮した企業で働く従業員は、自社へのエンゲージメントが高まるでしょう。エンゲージメントが向上することで、従業員のパフォーマンス向上や離職率の低下が期待できます。また、採用面でも優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
④資金調達の面で有利になる
先述したようにESG投資が世界のトレンドとなっており、最近では投資の基準としてESGが重視されています。したがって、環境や社会の課題に配慮し、サステナビリティに力を入れている企業は資金を集める際にも有利であると言えます。
サステナビリティのガイドライン、指標
企業がサステナビリティに取り組みメリットを享受するには、適切な情報開示を行い、社会的に評価される必要があります。適切な情報開示のために、国際基準のガイドラインや投資家向けのESG観点の指標を紹介します。
国際的な情報開示ガイドライン「GRIスタンダード」
国際基準のガイドラインの1つである「GRIスタンダード」は、世界中の数多くの企業がサステナビリティ報告書を作成する際に活用しています。企業における説明責任の基準策定を目的とした、国際的な非営利団体GRI(Global Reporting Initiative)により作成されたフレームワークです。GRIスタンダードは、すべての企業に共通する「GRIスタンダード」、項目別の「GRI項目別スタンダード」、個別に適用される「GRIセクター別スタンダード」から構成されています。「GRI項目別スタンダード」では、自社に合致する項目を選択して報告します。
ESG投資の観点から評価「DJSI」
DJSI(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)は、米国S&P Dow Jones Indices社とスイスSAM社(2020年以降はS&Pグローバル)によって開発された投資家向けの指標です。長期的な株主価値を重視しており、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から評価されます。2023年時点では世界の13,000社以上が対象で、うち時価総額※の上位2,500社がDJSIワールドインデックス、アジア太平洋地域の時価総額※上位600社がDJSIアジア太平洋の対象となっています。
※浮動株調整後時価総額加重指数
企業のサステナビリティ取り組み事例
ここでは、サステナビリティに取り組む企業事例を3つピックアップしてご紹介します。
ファーストリテイリング
日本の代表的なアパレルブランドであるユニクロをはじめGUなどを傘下に持ち、衣料品事業をグローバル展開するファーストリテイリング。同社は「服のチカラを、社会のチカラに。」をサステナビリティステートメントに掲げ、「People(人)」「Planet(地球環境)」「Community(地域社会)」の3つの柱でサステナビリティ活動に取り組んでいます。
取り組み例のひとつとして、小中高校生が対象の参加型学習プログラム「届けよう、服のチカラプロジェクト」があります。地域で不要になった子ども服を回収し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、服を必要としている難民などに寄贈する取り組みです。
ほかにも、サプライチェーンで働くすべての人の人権尊重、従業員への機会均等や多様性の推進、人材教育・育成、健康経営などの活動にも積極的に取り組んでいます。
楽天
日本最大のECモール「楽天市場」運営を中心に、多角的に事業展開をしている楽天グループ。同社はサステナビリティについて、「私たちが考える持続可能な未来とは、世界中の人々が夢を持って幸せに生きられる社会が何世代にもわたって続いていくこと」と定義し、イノベーションとパートナーシップの力で持続可能な社会の実現を目指し続けるとしています。
同社はサステナビリティ活動の重点分野として、「従業員と共に成長」「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」「グローバルな課題への取り組み」「事業基盤」を掲げています。
具体的には、サステナビリティに基づいてつくられた商品を選びやすくした「EARTH MALL with Rakuten」の展開やダイバーシティと機会均等を重視した職場環境づくり、温室効果ガス削減など気候変動に対応する取り組みを行っています。また、楽天はサステナビリティを追求することで、すべての人のwell-being(肉体的、精神的、社会的にすべてが満たされた良好な状態にあること)を実現するとしています。
NECソリューションイノベータ
NECソリューションイノベータは、「社会課題を起点とした事業創造により、持続可能な社会をつくるソフトウェア&サービス・カンパニーを目指す」という考えのもと、サステナビリティ経営を推進しています。
同社のサステナビリティの取り組みにおける基本方針は、「リスク管理・コンプライアンスの徹底」「事業活動をとおした社会課題解決への貢献」「個人、組織の持続的成長の実現」「サステナビリティ経営基盤の整備・強化」です。
具体的には、社員の環境意識の向上を目的とした環境講演会や、創立記念日の前後に地域への感謝を込めた全国一斉清掃キャンペーンの実施、環境保全の取り組みとして「NEC田んぼ作りプロジェクト」などを行っています。また、「インクルージョン&ダイバーシティを成長戦略とした職場環境づくり」「チームを意識しつつ一人ひとりが最適な働き方ができるよう働き方の選択肢を増やす」など、最適な働き方の実現に向けた取り組みも進めています。
サステナビリティ経営は新たな価値創造のチャンス
世界共通目標である2030年までのSDGs達成を目指す今、サステナビリティの取り組みは今後ますます必要とされます。企業においても、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営の重要性が高まるでしょう。自社の事業や課題および社会全体に求められることなどを考慮し、自社にサステナビリティを取り入れ実践していきましょう。
サステナビリティ経営の実践には、事業活動や体制の変革が必要となることもありますが、大きな変化が伴う一方、新たな価値を創出するチャンスでもあるのです。新たな価値を創造するためには、自社のみならず他社との協働で新たな商品・サービスなどを作り出す「共創」も検討するとよいでしょう。共創することで、自社だけでは得られなかった視点や技術が獲得でき、これからの社会に必要とされる新たな価値の創造につながる可能性が広がります。
まとめ
日本語で「持続可能性」を意味するサステナビリティ。昨今、サステナビリティの考え方はさまざまな分野で用いられています。企業における経済活動においては、利益追求だけでなく社会的責任を果たし、持続可能な発展を目指す取り組みを示す言葉として使われています。今後も自社が成長を続けるためには、サステナビリティ経営の実践が欠かせなくなるでしょう。
サステナビリティ経営には、企業価値の向上や資金調達面などのメリットがあります。さらに、新たな価値創造のチャンスでもあります。サステナビリティ経営に向けて共創などに関心のある企業は、専門知識のあるITベンダー企業に相談してみてはいかがでしょうか。