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コラム
AI(人工知能)とは?
意味やビジネスの例も交えわかりやすく解説

更新:2024.07.09(公開:2023.05.26)
あたかも人間と会話しているようなやり取りができる対話型AI「ChatGPT」の進化などにより、これまでにない盛り上がりを見せているAI(人工知能)。日常生活からビジネスまで、あらゆる領域に絶大な影響を与えるというAIとはどんな技術なのか。本記事では、AIの基本的な知識から、ビジネスシーンにおける具体的な活用事例までをわかりやすく解説します。
INDEX
- AI(人工知能)とは?
- AIの定義
- AIの対義語とは
- AIの歴史
- 第1次AIブーム:探索と推論(1950~1960年代)
- 第2次AIブーム:知識表現(1980~1990年代)
- 第3次AIブーム:機械学習(2000年代~)
- AIの分類
- 一定の領域に特化した「特化型AI」
- 人間と同様な能力を持つ「汎用型AI」
- AIの技術用語
- 機械学習
- 深層学習(ディープラーニング)
- 自然言語処理
- AIができること
- AI導入のメリット・デメリット
- 【AI導入のメリット】
- 【AI導入のデメリット】
- ビジネスにおけるAIの活用事例【NECソリューションイノベータの例】
- 健康診断の結果予測
- 製造ラインでの良品・不良品判定
- AIチャットボット
- AIのこれからと今後の課題
- まとめ
AI(人工知能)とは?
AIとは、「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」を略した言葉で、日本語では「人工知能」を意味します。AIは一般的に、人間の言葉の理解や認識、推論などの知的行動をコンピュータに行わせる技術を指します。人工知能の概念は1950年頃から存在していましたが、「AI」という言葉を用いたのはダートマス大学の計算機科学者、ジョン・マッカーシー教授です。1956年に同大学で行われた研究会において、初めて公に「AI」という言葉が使用されたと言われています。
AIの定義
では、AIの定義とはどのようなものなのでしょうか? AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授は、AIを「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」※と説明しています。しかし、AIの定義は今日に至るまで確定していません。研究者によって定義が異なっているというのが現状です。
その理由の一つが、そもそも「知能」や「知性」を現在の人類が定義できていないこと。大元の概念を定義できていない以上、「人工知能」も定義できないというわけです。また、AI研究には基礎分野から応用分野まで無数の領域が存在し、全てを包括するような定義が難しいという実情もあります。そうした事情を踏まえた上で、総務省の情報通信白書などでは国内の主な研究者による定義を以下のようにまとめています。
研究者 | 所属 | 定義 |
---|---|---|
中島秀之 | 公立はこだて未来大学 | 人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である |
武田英明 | 国立情報学研究所 | |
西田豊明 | 京都大学 | 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である |
溝口理一郎 | 北陸先端科学技術大学院 | 人工的につくった知的な振る舞いをするためのモノ(システム)である |
長尾真 | 京都大学 | 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである |
堀浩一 | 東京大学 | 人工的に作る新しい知能の世界である |
浅田稔 | 大阪大学 | 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない |
松原仁 | 公立はこだて未来大学 | 究極には人間と区別がつかない人工的な知能のこと |
池上高志 | 東京大学 | 自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステム |
山口高平 | 慶応義塾大学 | 人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム |
栗原聡 | 電気通信大学 | 人工的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を超えているものを想像している |
山川宏 | ドワンゴ人工知能研究所 | 計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う |
松尾豊 | 東京大学 | 人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術。人間のように知的であるとは「気づくことのできる」コンピュータ、つまり、データの中から特徴量を生成し現象をモデル化することのできるコンピュータという意味である |
※出所:一般社団法人 人工知能学会「マッカーシー教授がまとめたFAQ(質問と回答)形式のAIの解説(原文: What is Artificial Intelligence)」より
AIの対義語とは
AIの対義語は「NI」です。NIとは「Nature Intelligence(ネイチャーインテリジェンス)」の略で、日本語では「自然知能」と訳されています。NIは人間などが自然に持ちうる知能を意味します。
AIの歴史
「ChatGPT」などの進化で大きな盛り上がりを見せているAIですが、その研究は1950年代から始まり、今日までたゆむことなく続いています。その中で、大きく3度のブームがあったとされています。
ここでは、そうしたブームと冬の時代が交互に繰り返されたAIの歴史を簡単にまとめました。

第1次AIブーム:探索と推論(1950~1960年代)
最初のAIブームと呼ぶべき盛り上がりは、「AI」という言葉が初めて用いられた1950年代後半~1960年代に欧米で起こりました。同時期に、普及し始めていたコンピュータをAIの開発・研究に活用できたことで大きく進展。「推論」や「探索」の技術を用いた、オセロやチェスなどのテーブルゲームをプレイできるAIが生まれます。また、チャットボットと呼ばれる簡単な受け答えができる対話型AIの元祖「ELIZA」は、1964年に誕生しました。
しかし、当時のAIは、現在のAIと比べて単純かつ小規模でした。ルールが明確に定められた単純な問題には対応できるものの、さまざまな要素、条件が複雑に絡み合う社会課題の解決などには対応できず、ブームは終焉を迎えます。
第2次AIブーム:知識表現(1980~1990年代)
第2次AIブームは、コンピュータの活用が当たり前になっていく1980~1990年代に起こりました。特定分野の「知識」を取り込んだコンピュータが専門家のように推論を展開する「エキスパートシステム」が登場し、ビジネス(株価予測)や、医療(病理診断)など幅広い分野で実用化されていきます。
しかし、精度を高めるために必要な「知識(=コンピュータが理解できる形で記述された膨大な量のデータ)」を、人間が用意しなければなりませんでした。また、「暗黙知」と呼ばれる言語化しにくい知識のデータ化が困難だったこと、例外的なルールや処理に対応しきれないことなどから、次第に勢いを失っていきました。
第3次AIブーム:機械学習(2000年代~)
2000年代になるとコンピュータの性能が飛躍的に向上し、現在まで続く第3次AIブームとなります。大きな飛躍の契機となったのが、コンピュータが大量のデータからルールやパターンを発見し、自動で学習する「機械学習」の登場です。その後、2006年にはこの技術を発展させ、さらに複雑な判断が可能となる「深層学習(ディープラーニング)」が実用化され、歴史的なブレークスルーとなりました。第2次AIブームの課題となっていた、データを用意する手間が劇的に軽減されたことで、さまざまな分野に導入され実用化が進んでいます。
そうした中、最先端として注目を集めているのが生成系AI(ジェネレーティブAI)です。入力したテキストの指示に基づいて画像データを出力するAI(Midjourneyなど)や、人間と話すような感覚で文章生成や情報収集を行ってくれるAI(ChatGPTなど)などが大きな話題となっています。倫理的・法的なリスクが指摘されている面はあるものの、今後、さらに多くの場面で活用されることが予測されています。
AIの分類
AIは「特化型AI」と「汎用型AI」の2種に大別することができます。それぞれについて解説します。
一定の領域に特化した「特化型AI」
「特化型AI」とは、特定の分野に特化したタスクへ対応したAIです。具体的には、画像認識や音声認識、翻訳、要約、株価予測、天気予報、自動運転などが挙げられ、すでに日常生活やビジネスの現場で活用されています。なお、特化型AIは「弱いAI」と呼ばれることもあります。
人間と同様な能力を持つ「汎用型AI」
「強いAI」とも呼ばれる「汎用型AI」とは、人間の知性を完全に模倣し、人間と同様の知的行動ができるAIを示します。遠い未来を描いたSF映画などに登場するAI(『2001年宇宙の旅』のHALなど)は、汎用型AIの目指す境地と言えるかもしれません。実現するのはまだ遠い先のことと考えられていましたが、「ChatGPT」に代表される生成AIが近年、驚異的な進化を遂げています。生成AIは幅広い領域でのタスクにも対応可能となってきており、部分的には汎用型AIの特徴を持っていると言えます。生成AIは今後さらに、強いAIに近づいていくと考えられるでしょう。
なお、「強いAI」「弱いAI」という言葉は、米国の哲学者、カリフォルニア大学バークレー校の元名誉教授ジョン・サール氏が提唱しました。
AIの技術用語
ここでは「機械学習」や「深層学習」など、AIで用いられる主な技術用語について解説します。
機械学習
「機械学習」とは、コンピュータがデータを分析する手法の一つです。文字や数値、画像、音声などの学習データから、パターンやルールなどを見つけだす学習技術を示します。機械学習には以下の3つの学習方法があります。
●教師あり学習
「教師あり学習」は、正解データの用意された教師データを元に、ルールやパターンなどを学習する方法です。需要予測や画像認識などに使われます。
●教師なし学習
「教師なし学習」は、正解データのない大量のデータをクラスタ分け(グルーピング)しながら、ルールやパターンなどを見いだす学習方法です。ECサイトにおけるレコメンドやターゲットマーケティングなどに用いられます。
●強化学習
「強化学習」は、データが用意されていない状態からスタートし、自ら試行錯誤を繰り返し、結果を学習していく方法です。囲碁や将棋のゲームシステム、二足歩行ロボット、掃除ロボットなどに活用されています。
深層学習(ディープラーニング)
「深層学習(ディープラーニング)」とは、ニューラルネットワークを用い、より高精度な分析を可能にする学習手法です。データ群からルールやパターンを見つけだす際に、処理を多層化することで、より正しい判断が下せるようにしています。この手法によって、学習が難しいとされてきた画像や自然言語などの非構造化データも学習できるようになりました。
なお、「ニューラルネットワーク」とは、入力と出力の間に中間層と呼ばれる構造を設け、分析を多層化して学習する数理モデルのこと。さらに、個々の分析に重要度を設定する「重み付け」という処理を加えることで、精度を高めています。人間の神経細胞の構造(ニューラルネットワーク)を模倣していることからこの名称が付けられました。
自然言語処理
「自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)」とは、人間の言語に対してコンピュータが意味の解析を行うための処理の総称です。機械翻訳や音声認識、文字認識(AI-OCR)などに用いられています。なお、自然言語処理のうち、その言葉が何を意味しているのかを分析する「自然言語理解」は深層学習の実用化によって大きく発展。人間とAIの自然な会話の実現に一歩近付きました。
ChatGPTなどで話題の「大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)」は、自然言語処理によって、ケタ違いに大量のデータを深層学習して生み出された数理モデルです。これまで難しかった自然な質疑応答や、あたかも人が書いたような文書生成が可能となり、今後もさまざまな用途に応用されていくと期待されています。
AIができること
すでに幅広い用途で利活用が進んでいますが、AIができることは「識別」「予測」「実行」の3つに大別できます。それぞれを表にまとめました。
AIの実用化における機能領域 | ||
---|---|---|
識別 | 予測 | 実行 |
音声認識 | 数値予測 | 表現生成 |
画像認識 | マッチング | デザイン |
動画認識 | 意図予測 | 行動最適化 |
言語解析 | ニーズ予測 | 作業の自動化 |
「識別」機能を活用すれば、顔認証や手書き文字認識、音声入力、迷惑メール判定などが可能となります。「予測」機能では、売上需要予測や商品レコメンド、検索連動広告、興味の推定、発注予測など、「実行」機能では、画像の生成や文章の生成・要約、翻訳、配送経路の最適化などが行えます。
また、車の自動運転のように画像認識、音声認識、状況判断、経路分析など、さまざまな機能を組み合わせて実現されている場合もあります。今後も、個々の機能の進化や組み合わせの多様化によって、さらにできることが広がっていくでしょう。
AI導入のメリット・デメリット
今後、さらなる活躍が期待されているAIですが、企業活動にAIを導入する場合のメリットとデメリットを解説します。
【AI導入のメリット】
企業がAIを導入する場合の主なメリットは以下の通りです。
- 生産性の向上
- 労働力不足の解消
- ミスの減少や安全性の向上
- 精度の高い分析や予測が可能
- コスト削減
まず、人間が行っていた仕事を人間よりもスピーディに休みなく、しかもミスなく行えるため、生産性が向上します。一部の業務においては省人化や無人化も可能になるため、昨今の労働力不足や人件費高騰を補えるのではないかと期待されています。また、単に人間の仕事を置き換えるだけでなく、高精度な予測によって人間の判断をサポートすることも可能に。具体的には投資における株価予測や、医療分野での早期診断などへの活用がすでに始まっています。
【AI導入のデメリット】
企業がAI導入する場合の主なデメリットは以下の通りです。
- 雇用の減少
- 責任の所在が不明瞭
- 情報漏洩のリスク
- リスク管理が困難
- 一時的なコスト増
AIに関するデメリットとしてクローズアップされているのが、これまでの業務がAIに置き換えられて雇用が失われるのではないかという不安です。特に、単純作業を中心とした定型業務については、実際にそうした動きが起きると言われています。加えて、画像生成AIや音楽生成AIなどの登場により、クリエイティブ領域に及ぼす影響も無視できない状況となってきました。(一方で、AIを活用する仕事や、AIで代替できない仕事などはむしろ新たな雇用を創出する可能性もあります。)
そのほか、AI自動運転車が事故を起こした場合に責任の所在が不明確になるリスクや、外部のAIサービスを利用する際に入力(送信)したデータが漏洩する(学習に使われてしまう)リスク、AIの学習データが著作権や個人情報保護法などを侵害しているリスクなども、AIのデメリットとして挙げられます。
AIを導入する際は、そうしたリスクへの対策をあらかじめ考えておく必要があるでしょう。
ビジネスにおけるAIの活用事例
【NECソリューションイノベータの例】
ビジネスシーンですでに始まっているAI活用の事例として、NECソリューションイノベータが提供しているユースケースを紹介します。
健康診断の結果予測
NECソリューションイノベータでは、健康診断結果と生活習慣データを機械学習により数理モデル化した『NEC 健診結果予測シミュレーション』を提供しています。NEC 健診結果予測シミュレーションは、従業員の健康診断結果と直近1年分の生活習慣を入力すると、1年後、2年後、3年後の健康状態を予測。喫煙や食事、運動など、将来の生活習慣を見直すことで、どれくらい予測が変化するかを比較できることがユニークだと評価されています。
現在はNECグループ全体に導入され、約5万8000人の従業員が利用中。企業における健康経営の取り組みへの活用や、病院など予防医療の現場でも導入が進んでいます。

製造ラインでの良品・不良品判定
主に製造工場などで使われている『NEC AI・画像活用見える化サービス』は、深層学習によって高度な画像認識を実現したソリューションです。製造ライン上に配置されたカメラの映像を学習したAIが、ラインを流れる製品の良品判定や進捗をリアルタイムに解析・可視化してくれます。
良品・不良品の判定はこれまで人間の目に委ねられていましたが、判定基準が属人化してしまう課題がありました。これをAIに委ねることで、自動化と均一化が可能になります。

関連情報
AIチャットボット
NECソリューションイノベータでは、異動の時期などにスタッフ部門への問い合わせ電話が殺到し、業務に支障が出ていました。そこでAIチャットボットを導入し、この課題を解決したのです。まずはAIチャットボットが問い合わせに回答し、AIチャットボットでは回答できない問い合せのみを人間が対応。これにより、電話対応が激減し、年間約4.7億円ものオペレーションコスト削減に成功しました。また、多くの社員が利用する仕組みにAIチャットボットを導入したことで、DXに向けた意識改革にもつながったと言います。

AIのこれからと今後の課題
すでにさまざまなシーンで導入の進んでいるAIですが、ChatGPTなど生成AIの進化で、ますます活用の幅が広がっていくと期待されています。企業活動においては、労働力不足の解消や市場ニーズへの対応など向け、AIを用いたDX推進がカギとなるでしょう。
一方、AIがもたらす、これまでは存在しなかったリスク、インシデントへの対応も求められるようになります。AI時代に向けたガバナンスの強化や、社内外に理解を深める取り組みも必要となるでしょう。専門家を交えた情報交換などが、これまで以上に重要になると考えられています。
まとめ
Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略称で、日本語では「人工知能」を意味する「AI」。ビジネスシーンにおいても、AI技術を活用したDX推進は、自社が成長を続けていくためのキーポイントとなるでしょう。しかしながら、AIには今までにないリスクも存在し、AIを活用する際にはガバナンスの強化なども求められます。自社のビジネスにAI活用を検討している企業は、専門知識のあるITベンダー企業に相談してみてはいかがでしょうか。