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コラム
VUCAとは?
意味や読み方、VUCA時代の組織作りのポイントを解説
UPDATE : 2023.06.23
VUCAとは、将来の予測が困難な状態を指します。昨今では、世界情勢の変化やAI(人工知能)などテクノロジーの急速な進展により、ビジネス環境は大きく変化しています。物事の不確実性が高く、急激な変化が起こる時代を指す言葉として、VUCAは注目されています。本記事では、VUCAの意味や、VUCA時代を生き抜くためのポイントなどについて解説します。
INDEX
- VUCAとは
- 変動性(Volatility)
- 不確実性(Uncertainty)
- 複雑性(Complexity)
- 曖昧性(Ambiguity)
- VUCAが注目されている背景
- VUCA時代を生き抜くために企業に求められる施策
- イノベーションの創出を目指す
- 多様性を重視した人材戦略
- VUCA時代に対応できる組織作りのポイント
- 臨機応変な対応力を磨く
- 情報収集と分析を怠らない
- 自ら考える人材を育成する
- デジタル人材を育成する
- VUCA時代にリーダーが身につけるべきスキル
- 迅速な判断力
- リーダーシップ
- 多様性を受け入れるコミュニケーション能力
- テクノロジーへの理解力
- VUCA時代に有効なOODAループとは
- PDCAとの違い
- VUCA時代における日本政府の動き
- 経済産業省がVUCAに言及、企業変革が重要課題
- 日本が目指すべき未来社会「Society 5.0」の提唱
- VUCA時代に不可欠なDX推進
- まとめ
VUCAとは
VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取ったもので、物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態を指す造語です。
VUCAはもともとアメリカで軍事用語として使用されており、国家間の戦略がより複雑化している状況を表す言葉でした。しかし昨今では、移り変わりが激しい時代や不確実な要素が多い状況下を示す言葉として知られています。
変動性(Volatility)
変動性(Volatility)とは、テクノロジーや社会の仕組み、人々の考え方やニーズなどが大きく変化することを意味します。加えて、短期間のうちに急激に変化するのが特徴です。変化の幅が大きくかつスピードも早いため、ビジネスシーンにおいては、時代の変化の流れを機敏に察知して的確な判断を迅速に下す必要があります。
不確実性(Uncertainty)
不確実性(Uncertainty)とは、地球規模での気候変動の発生や新型コロナウイルスの感染拡大など、将来何が起こるか予測できない状況を指します。さらに日本では、終身雇用や年功序列など従来の雇用形態が変化しつつあり、制度や方針など一昔前は「確実」と思われていたのが「不確実」になる状態も含みます。不確実な要素が多いVUCA時代では将来の予測が難しいため、新規または既存ビジネスの展開方法など経営判断をする際、不安要素が多くなります。
複雑性(Complexity)
複雑性(Complexity)とは、さまざまな要素が複雑に絡み合っている状況を指します。インターネットの普及によりビジネス市場は広がりましたが、同時に複雑性が増しています。常識や習慣、法律などの違いにより、日本国内で成功したビジネスが他国でも成功するとは限りません。様々な要因が重なり合うことによってビジネスは複雑化し、最適なビジネスモデルを構築するのは容易ではなくなっています。
曖昧性(Ambiguity)
曖昧性(Ambiguity)とは、物事の因果関係が曖昧になっている状況を指します。先の3つの要素「変動性」「不確実性」「複雑性」が重なることで生じると言われています。何か問題が起きた場合、物事の因果関係が曖昧なため、原因の特定や改善の方向性を把握するのが難しくなります。また、インターネットやSNSの普及により顧客ニーズが多様化しているため、ビジネスの成功要因も捉えにくくなっています。
このようなVUCA時代においては、過去の成功体験にとらわれず、新しい状況に順応した対応が求められます。
VUCAが注目されている背景
VUCAという言葉がビジネスシーンで使われるようになったのは、2010年頃。グローバル企業のアニュアルレポートなどで使用され、ビジネスの場で広がり始めます。注目を集めたのは、2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、「VUCA world」という言葉が使用されたのがきっかけと言われています。
現在は、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、量子コンピュータなど最新テクノロジーが目覚ましい発展を遂げています。また、CRMやSFA、MA、データ活用などデジタルツールを駆使したビジネス様式が当たり前の時代となりました。営業やマーケティング手法が変化し、既存の価値観やビジネスモデルが通用しない今の時代を指す言葉として、VUCAが注目されています。
VUCA時代を生き抜くために企業に求められる施策
ここでは、企業がVUCA時代を生き抜くために有効とされる施策を解説します。
イノベーションの創出を目指す
VUCA時代においては、過去の成功事例や固定概念にとらわれると業績を悪化させることがあります。新しい状況に素早く対応できる企業になるためには、イノベーションの創出が有効です。イノベーションとは、革新的な技術や仕組みなどによって新しい価値を生み出し、社会に大きな変化をもたらす取り組みを指します。自社だけに留まらず、異業種の企業や大学、研究機関など外部と連携して共同開発などを行うオープンイノベーションも効果的です。
イノベーションを創出するためには、多様な人材が働きやすく、活躍できる環境を作り、さまざまなアイデアや視点を素早くビジネスに取り入れることが必要です。そのためには、テレワークなどの新しい価値観を受容する文化や、失敗から学ぶ姿勢でチャレンジする文化を、企業全体で醸成するための取り組みが求められます。
多様性を重視した人材戦略
VUCA時代では、新卒一括採用で画一的に従業員を教育するのではなく、多様な人材を適材適所で採用する人材戦略が求められます。経験やスキル、考え方の異なる人材を採用することで、ビジネス環境の変化にも迅速な対応が可能になるからです。
近年、ビジネスシーンにおいてもダイバーシティが推進されています。ダイバーシティ(Diversity)には「多様性」という意味があり、人種・性別・宗教・価値観など異なる人々が、組織や集団において共存する状態を示します。多様な人材の受け入れは雇用対策や競争力向上につながり、VUCA時代における経営戦略の一環となります。
VUCA時代に対応できる組織作りのポイント
ここでは、VUCA時代に対応できる組織作りのポイントを解説します。
臨機応変な対応力を磨く
VUCA時代では急激な変化が起きやすいため、予想外の事態が発生しても臨機応変に対応できる力が重要です。「こんなはずではなかった」と消極的にならず、「今何をすべきか」「どこに突破口があるのか」など冷静に状況を分析し、当初の計画とは違っても最善の解決策を見つける対応力が求められます。
臨機応変な対応力を養うのに役立つ方法として、リスクマネジメントがあります。リスクマネジメントとは、企業がビジネスを展開する際に起こり得る問題を事前に抽出して、計画的に対応することです。「予想外の事は起こるもの」という前提でリスクマネジメントに努め、急な変化が起きた時に素早く意思決定を下せるようになると、VUCA時代に対応しやすくなるでしょう。
情報収集と分析を怠らない
新しいビジネスが登場しては消えていくVUCA時代では、最新の技術やサービスに関する情報収集も重要です。特にITテクノロジーは技術革新が速く、数年で技術が時代遅れになってしまうケースもあるので、最新情報を得るようにしましょう。
また、変化の波が海外市場から生まれることも多いため、国内だけでなく海外企業が発信する情報にもアンテナを張っておきましょう。加えて、消費者ニーズも刻々と変化するため、「今市場でどのようなサービスが人気を集めているのか」「人気の理由は何か」などを分析して、変化に対応できるようにする必要があります。
自ら考える人材を育成する
ビジネス環境の移り変わりが激しい時代では、自ら考えて行動できる主体性が高い人材の育成が求められます。経営陣や上司からの指示を待つのではなく、個々の従業員が自発的に動き、変化に対応する必要があるためです。
従業員一人ひとりが自発的に解決策を見つけられるようにする方法としては、ロジカルシンキング研修が挙げられます。ロジカルシンキング研修では、論理的な思考や会話、コミュニケーション能力、判断力などを身につけられます。VUCA時代においては、変化に対応できる経営戦略に沿った人材育成や取り組みが求められます。
デジタル人材を育成する
VUCA時代に対応するためには、デジタル人材の育成も欠かせません。デジタル人材とは、ビックデータ解析やAI、クラウド技術などの最新技術に通じており、その技術を企業利益に反映させられる人材を指します。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に貢献する人材もデジタル人材に含まれます。
ただし、現在はデジタル人材不足が国家レベルで問題視されている状況です。外部のデジタル人材を採用するのは、容易ではありません。そこで注目を集めているのが、社内人材のデジタルスキルを再開発する「リスキリング」です。リスキリングが実現すれば、「販売員がデータサイエンスのスキルを習得して、企画職としてビッグデータの分析施策を展開する」など、社内におけるデジタル技術の活用を進められます。
VUCA時代にリーダーが身につけるべきスキル
VUCA時代のリーダーに求められるスキルは、以下があります。
迅速な判断力
VUCA時代では、市場環境の変化が多発する傾向にあるため、意思決定は迅速に下さねばなりません。なぜなら、必要以上に時間をかけると、さらなる変化が訪れて機会損失を生んでしまう恐れがあるからです。最適な判断を迅速に下すには、状況を客観的に分析して原因を突き止め、的確な解決策を導き出すことが求められます。迅速に判断できるように、日頃から社会動向や市場にアンテナを張り「自分だったらどうするだろうか」と自問自答を繰り返すと良いでしょう。
リーダーシップ
先を予測するのが困難なVUCA時代では、目的や目標達成のために目指すべき方向を示すリーダーシップが重要です。方向性が見えないとメンバーが十分に力を発揮できなくなり、目標達成に影響が出てしまうでしょう。また、方向性を示すだけでなく、メンバーが実際に行動できるよう動機づけや、能力を活かせるよう後押しすることなども必要です。方向性を示し、かつメンバーの自主性を引き出して行動を促すリーダーシップが求められます。
多様性を受け入れるコミュニケーション能力
VUCA時代の企業において、人材の多様性が肝要ですが、それに伴い多様性を受け入れるコミュニケーション能力が求められます。個人の文化的背景や価値観・考え方の違いによって、コミュニケーションロスが発生する可能性があるからです。「きちんと説明したのに意図が伝わっていなかった」「言葉のニュアンスが上手く伝わらない」といったことが、顧客トラブルや製品品質の低下などにつながる恐れがあります。リーダーは質問力や傾聴、相手の考えをくみ取るコミュニケーションスキルを磨くと良いでしょう。
テクノロジーへの理解力
テクノロジーへの理解力も欠かせないスキルと言えます。テクノロジーへの理解力を深めるには、最新のIT技術にアンテナを張り、自己学習するなどの努力が必要です。オンラインで学習したり、セミナーに参加したりするなどして、実際に触れてみましょう。また、情報収集するだけでなく、「自社サービスに最新テクノロジーを加えると、どのように生まれ変わるか」「顧客に求められるサービスはどのようなものか」などの視点を持ち、必要に応じてITツールの導入を検討してみるとよいでしょう。
VUCA時代に有効なOODAループとは
VUCA時代では、最適な決定を迅速に行う必要があります。素早い意思決定を行う方法として注目されているのが、OODA(ウーダ)ループです。OODAループは、アメリカの戦闘機操縦士・航空戦術家のジョン・ボイド氏が提唱した意思決定方法です。即応性に優れており、危機的な状況下で最良の決定を素早く行えるので、現代ではビジネスや教育シーンでも活用されています。
OODAとは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(実行)の4つの頭文字をつづった言葉です。それぞれの意味を解説していきます。
Observe(観察)
単に「見る」だけでなく、自分の置かれている状況や市場・競合・製品などを観察して、情報収集を行います。憶測や予想ではなく、事実を幅広く収集することが重要です。
Orient(状況判断)
今までの個人の経験や知識に基づいて、観察によって得た情報を分析します。そして、行動の順番やどうすればよい結果になるかを考察し、成功するための手段を見極めます。
Decide(意思決定)
状況判断のプロセスで考察した情報を整理して、どの手段を実行に移すかを決定します。この時点で実行することに不安を感じる場合、「観察」に戻って再度ループを行います。
Act(実行)
決定した手段を実行します。OODAループは繰り返すことが重要なので、実行した後は再度「観察」に戻ってループを繰り返します。
PDCAとの違い
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのステップから成り立っています。OODAループでは、「観察」から「実行」までのプロセスを、必要に応じて前の段階に戻ってループを再開します。一方で、PDCAサイクルは「計画」から「改善」までを一方向に繰り返します。
元来、PDCAは工場生産の効率性を高めるためのフレームワークで、工程が明確になっているプロセスに対して効果を発揮します。「新商品を開発する」「起業する」など工程が明確になっていない場合や先行きが不透明な状況下では、PDCAではなくOODAループが適しているでしょう。
VUCA時代における日本政府の動き
VUCA時代への言及など、ここでは日本政府の動きを紹介します。
経済産業省がVUCAに言及、企業変革が重要課題
経済産業省は、2019年に発表した「人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~」で、VUCAに言及しています。同資料で経済産業省は、VUCA時代に対応するには、「経営戦略を実現する重要な要素として人材戦略を位置づけること」や「多様化する個人のあり方をふまえ、個人と企業の双方の成長を図ること」などの重要性を解説。具体的な方策として、「多様な人材確保を可能とする柔軟な報酬制度やキャリアパスの整備」や「変革や人材育成を担う経営人材の計画的育成」などを提唱しています。また、「経営トップが率先してミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること」も原則としています。
このように経済産業省の資料からは、VUCA時代に対応し経営競争力を強化するためには、人材戦略の重要性と経営トップの率先力を中心とした企業変革が不可欠であることが伺えます。
日本が目指すべき未来社会「Society 5.0」の提唱
Society 5.0とは、日本が目指すべき未来社会の姿として、2016年に「第5期科学技術基本計画」において内閣府が提唱した概念です。サイバー空間と現実空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を目指します。現在の情報社会(Society 4.0)では、情報共有の不十分さや、過疎化、少子高齢化が問題となっています。一方Society 5.0では、ヒトとモノがインターネットでつながることで問題の解決を図ります。例えば、ロボットやAIによって、労働力不足の解消や過疎地域の移動手段などの問題解決を図るのです。
先行き不透明なVUCA時代において、政府が提唱する日本の目指すべき未来社会の姿であるSociety 5.0は、変革の方向性を指し示す要素であることが伺えます。
VUCA時代に不可欠なDX推進
Observe(観察)とOrient(状況判断)がOODAループの構成要素となっていることからもわかるように、VUCA時代では情報収集と分析をいかに効率化・高度化するかが重要です。すでにビジネスの現場では、DX推進を旗印に、それらを実現するIT基盤づくりが進んでいます。
例えば、IoTデバイスを活用したリアルタイムなデータ収集や、AIを活用した高度なビッグデータ分析が、ビジネスのスピーディな意思決定に貢献しています。VUCA時代における変化の発生を、いち早く正確に掴むために、デジタル技術が活用されているのです。
しかし、DX推進の重要性は認識しているものの、具体的にはどこから始めたらよいか分からないという企業も少なくありません。NECソリューションイノベータが提供する「NECデジタル変革支援サービス」は、ありたい姿を描くデジタル化ビジョンの策定から、目指す価値の実現・検証サポートまでを行っています。専門家が伴走することで、自社に合致したDX推進が可能となります。
まとめ
VUCAとは、物事の不確実性が高く、将来の予想が困難な状況を意味する造語です。近年の移り変わりが激しい時代を表す言葉として注目されています。企業がVUCA時代を生き抜くためには、情報収集と分析の効率化・高度化が肝要であり、それらを実現するためのIT基盤づくりであるDX推進がカギとなります。
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