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DX認定制度とは?
認定事業者のメリットと申請のポイントを解説

UPDATE : 2022.06.10
DX認定制度とは、国がDX推進の準備が整っている事業者を認定する制度のことを言います。大企業はもちろん中小企業も無関係ではないこの制度。そこにはどんな狙いがあるのでしょうか?
今、多くの企業から注目を集めているDX認定制度について、制度の概要や取得することによるメリット、さらに実際に取得した企業担当者のコメントも交え解説します。
INDEX
- DX認定制度とは?
- DX認定制度創設の背景
- 経済産業省が示すDXの定義
- DX認定を取得するメリット
- ①DX推進における自社の課題が整理される
- ②社会的認知や企業価値が高まる
- ③税額控除などの支援が受けられる
- ④中小企業は融資などの支援が受けられる
- ⑤DX銘柄の応募資格が得られる
- DX認定の基準
- デジタルガバナンス・コードとは
- DX認定制度の申請方法
- DX認定事業者の公開
- DX認定事業者「NECソリューションイノベータ」のケース
- まとめ
DX認定制度とは?
DX認定制度とは、国がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の準備が整っている、“DX-Ready”な事業者を認定する制度を示します。対象は、法人から個人事業者、公益法人など全ての事業者となります。2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づき、2020年11月から開始。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が運営するDX認定制度事務局が各種相談、問い合わせ、認定審査事務を行い、経済産業省が認定します。
認定を受けたDX認定事業者は、名刺やWebサイトでDX認定ロゴマークによるアピールを行えるほか、認定の過程でDXへの取り組みを加速できるなど多くのメリットがあると言われています。
DX認定制度創設の背景
DX認定制度がスタートした背景には、2018年に経済産業省が発表して大変な話題となった『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』の存在があります。同レポートでは、企業が古い基幹システムを使い続けることによって競争力を失っていくことなどを指摘。今後もDXが進まなかった場合、「2025年以降に年間最大約12兆円もの経済損失が生じる」と警鐘を鳴らしました。
翌2019年に同省は「DX推進指標」を策定。これに基づいた2019~2020年の自己診断結果をIPAが分析した結果によると、約9割もの日本企業がDX未着手あるいは散発的な実施に留まっている状態にあることが判明しました。2020年春以降のコロナ禍による社会変化を受け、DXの取り組みへの格差が拡大していることも問題視されており、国内企業のDX推進はもはや待ったなしと言われています。DX認定制度は、DXが進まない状況を改善するための一手なのです。
経済産業省が示すDXの定義
前段で紹介したDX推進指標では、DXを次のように定義しています。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』
ここで大切なのは、社内にデジタル部門を設置する、ビジネスプロセスをデジタル化する、レガシーなシステムを刷新する(たとえばAIに置き換える)などの一部だけがDXではないこと。DX認定制度で求められているのは、経営戦略とデジタル戦略を一体化することで顧客価値を最大化(=競争力を最大化)することなのです。
DX認定を取得するメリット
DX認定を取得するメリットについては、次の5つが挙げられます。
①DX推進における自社の課題が整理される
DX認定を取得する最大のメリットは、実はその過程にあります。DX認定の審査の過程では、自社の状況について自己診断し、DX推進における課題を把握する必要があるためです。たとえば、申請時に記載する「DX認定制度 申請チェックシート」には『デジタル技術が社会や自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかについて認識し、その内容について公表しているか』といった、自社の取り組みを確認する項目があります。それらの設問に回答していくプロセスの中で、自ずとDX推進のための課題が整理されます。
②社会的認知や企業価値が高まる
DX認定を取得した事業者は、IPAが運営する「DX推進ポータル」の「DX認定制度 認定事業者の一覧」(https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/top)に掲載されます。そのため、DXに積極的に取り組んでいる企業として、社会的信用や企業価値、ブランドイメージの向上が期待できます。この一覧では企業規模を問わず等しく社名を掲載しているため、特に中小企業にとっては、大企業名が並ぶ中で自社の存在をアピールできるのもメリットと言えるでしょう。また、DX認定ロゴマークを自社のWebサイトやパンフレット、名刺に使うことができます。
③税額控除などの支援が受けられる
DX認定を取得した事業者は、「DX投資促進税制」による税額控除を受けることができます。DX投資促進税制は、部門・拠点ごとではない全社規模でDXに取り組む企業を税務面で優遇。具体的には、制度の趣旨に沿ったデジタル関連投資に対し、5%または3%の税額控除もしくは30%の特別償却が可能となります。この税制にはいくつかの条件がありますが、DX認定取得はその必須条件となっています。
④中小企業は融資などの支援が受けられる
DX認定を取得した中小企業は、設備投資などに必要な資金について、日本政策金融公庫から基準利率よりも低い利率で融資を受けることが可能になります。また、中小企業信用保険法の特例も。民間金融機関からの融資時に信用保証協会による信用保証が、普通保険などとは別枠での追加保証や保証枠の拡大を受けることができます。
⑤DX銘柄の応募資格が得られる
DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から『企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を、業種ごとに最大1~2社ずつ選定して紹介するもの』。昨年選定された「DX銘柄2021」には26社が選ばれ、投資家を含むステークホルダーからの評価を大きく高めました。DX銘柄に選ばれるにはDX認定の取得が必須となります。
DX認定の基準
DX認定制度で認定されるのは、DX推進の準備ができている状態(=DX-Ready)の事業者です。つまり、現時点ではまだDXが実現されておらず、これから推進する企業も認定されることを示しています。「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」の「制度全体像」によると、4つの段階に分類され(下図参照)、DX認定制度の対象はこのうちの「DX認定事業者(DX-Ready)」となります。
さらにDX認定事業者の中から、より優れた取り組みを行っている企業を選定。将来性が期待できると認定された企業を「DX-Emerging企業」、すでに優れた実績を上げている企業を「DX-Excellent企業」としています。先述したDX銘柄はこの2つの段階から選ばれます。

デジタルガバナンス・コードとは
経済産業省はDXを推進していくための指標の1つとして、「デジタルガバナンス・コード」を公開しています。デジタルガバナンス・コードとは、「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」によると『企業が、経営において、デジタル技術による社会変化への対応を捉え、ステークホルダーとの対話を基盤として、行動していくにあたっての原則のこと』。経営者にはデジタルガバナンス・コードに基づくDX推進が求められます。デジタルガバナンス・コードは、「経営ビジョン・ビジネスモデル」や「戦略」など、大きく6つの項目で構成。それぞれが下図のようにDX認定制度の申請項目に対応しています。

DX認定制度の申請方法
DX認定制度の審査事務はIPAが担当しています。申請手順は以下の通りです。
- 申請の準備や手順をまとめた「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」を確認する。
- 申請書類「DX認定制度 認定申請書」「DX認定制度 申請チェックシート」をダウンロードする。
- 申請書の記入、および補足資料を用意する。
- 「DX推進ポータル」上で申請する。
※システム利用の際にはGビズIDが必要です
- 認定されるとDX推進ポータルの「DX認定制度 認定事業者の一覧」に掲載される。
※認定申請書と共に掲載されます
※認定後にロゴマークの使用が可能となります
認定結果は申請の受理後、60日の審査期間を経てメールで通知されます。なお審査期間には土日祝日などを含まないため、カレンダー上では約3か月後です。また、内容や混雑具合により60日を超えるケースもあります。そのため、申請から認定取得までは通常4か月程度を想定しておいた方がよいでしょう。
DX認定事業者の公開
審査を通過し、DX認定事業者に選ばれた企業は「DX推進ポータル」の「DX認定制度 認定事業者の一覧」に掲載されます。DX推進ポータルでは取得年月別にカテゴライズされ、企業名のほか、代表者氏名、所在地などが掲載されます。また、申請時に作成した申請書も公開されており、ダウンロードして各社の取り組みを確認することが可能です。
DX認定事業者「NECソリューションイノベータ」のケース
最後にDX認定のケーススタディとして、NECソリューションイノベータの事例を簡潔に紹介します。

NECソリューションイノベータがDX認定事業者として認定を取得したのは2022年1月。前年4月に掲げた「NECソリューションイノベータ 2030ビジョン」でDXを自社の重要戦略のひとつと位置付け、次の3つの取り組みを推進しています。
- ①システムインテグレーションの高度化
- ②経営管理業務のデジタル化
- ③デジタル技術を用いた業務プロセス変革
以下はDX認定取得の担当者による一問一答です。
Q1:NECソリューションイノベータがDX認定を取得しようと考えた理由を教えてください。
A1:まず、ITベンダーである我々がDXに取り組むことで、お客様に貢献できるという思いがありました。DX認定の取得はそんな我々の思いを社会やお客様へアピールするのに役立ちます。また、NECグループ全体でのDX推進体制を強化する方針もあり、DX認定を取得しようと考えました。
Q2:DX認定の取得にあたり、社内で変化したことや改善されたことはありますか?
A2:NECソリューションイノベータは、テレワークの早期導入やITツールを活用したコミュニケーションの活性化など、申請前から社内DXに積極的に取り組んできました。今回、DX認定を取得するにあたり、各部門で進めてきた社内DXの取り組みをあらためて体系的に整理でき、社内に発信できたと考えています。
Q3:DX認定事業者としての今後の展望を聞かせてください。
A3:社内DXの取り組みをさらに加速させることで、急速な社会変化にタイムリーに適応し、社会やお客様が進める変革や新たな価値創造に貢献していきます。また、社内DXのベストプラクティスを提供し、世の中のDX推進に貢献したいと考えています。
Q4:申請を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
A4:DX認定は、「デジタルを使い、経営を伸ばしていく」という企業の宣言と言えます。対外的なメリットが広く注目されていますが、社内に対しても「デジタルを使い、会社を変革していく」という大きなメッセージとなります。この宣言が社員の意識を変え、やがては組織風土を変える大きな流れになります。宣言をした企業とそうでない企業では、変革や成長のスピードが異なってくるのではないでしょうか。
デジタル活用での企業変革に向けた「準備が出来ている」状態を認定するので、まだDXが進んでいない企業でも「準備」を進めていくことで認定を受けることができます。認定取得にあたっては、ポイントを外さないようにする必要があります。
NECソリューションイノベータは、企業の実情に合わせ最適なご支援をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
経済産業省「DXレポート」が警告する2025年に向け、国を挙げたDX推進が加速しています。取り組みを進めなければ、激しさを増す企業競争に立ち向かうことが難しいと言えます。しかし、多くの企業がDXをどのように推進していくべきか、考えあぐねているというのもまた事実。DX認定はそうした課題を持つ企業がDX推進していくための道標の1つです。まずは「DX認定制度 申請チェックシート」で自社の状況を客観的に把握し、DX推進における課題を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。