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スマートワーク推進&ワークスタイル変革・コラム三田に小さなビルを一人で
建てています

人類は飛躍的に生産力を上げた、これは大きな大きな潮目だ。
あらためて問う「働く喜び」と「時間の価値」

今回は、NEC本社の近くに「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」をデザイン〜施工している一級建築士の岡啓輔氏に「働く喜び」と「時間の価値」についてコラムを執筆いただきました。

岡啓輔、あまりに微力です

妻と暮らす家を作ろうとNEC本社近くの三田に12坪の小さな土地を買ったのが2000年、どういう建築を建てるべきか悩みに悩み「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」という名前をつけどうにかこうにか着工したのが2005年暮れのことである。

30年前「建築家になるぞ」と九州から上京して建築のデザインを学びながら、さまざまな建設現場で働き経験を積んだ。土工、鳶、鉄筋工、型枠大工、、、。一級建築士の資格もラクにとったクチだったので、《建築を作る能力》は充分に高まっているはずだと信じたかった、ビビる気持ちを抑え自宅建設をスタートしたのだけれど、具体的な工事がはじまると上手くいかないことだらけ、わずかにあった自信はあっという間に木っ端微塵、それから数年間は目の前の肉体労働に明け暮れ「何のためにつくるのか?」ただただ考え続ける日々だった。

僕独自の製法によるコンクリートの寿命は200年以上と言われている。
この強固なコンクリートを使って「モノをつくる悦び」を伝えられるようなイキイキとした建築を作る!この考えが肚に座ってきたのはやっとやっと最近のことである。

まだまだ全然終わらない

工事をはじめてから、すでに13年半が過ぎた。なのに工事は途上だ、理由は多々ある。でも一番の理由は「見える仕事しか見ていなかった」ということだろうか。「電球が切れた」「今日はゴミの日だ」「隣の人が怒ってる菓子折買って来なきゃ!」「道路が汚れている、掃除だ」、、、今まで気にもかけなかった誰かがやってくれていた仕事をすべて自分でやらなきゃならない、興味のある仕事しか見ていなかったのだ。

企業は、ひとつの仕事を一人でやるのではなく、分業化し、得意なことを得意な人がやり効率を上げリスクも分散させる。ときには《ロケットを飛ばす》ような巨大で複雑で何十年もかかるような、プロジェクトもチームワークでこなしてしまう、すごいことだ。
でも、僕の《一人でやる》もなかなかおもしろい。効率のために分業化してしまった仕事を、もう一度まとめて考えることでさまざまな気づきを得ている。建築の(デザイン)と(施工)を一緒にやることで「手でつくる悦びが建築の表現に大きく関わること」を知った。

(型枠工事)と(コンクリート打設工事)と(型枠解体工事)を一緒にやることで、「新しい型枠」が生まれ、「コンクリート養生の大切さ」を知った。こういううれしい気づきや発見がまたドンドンと完成を遅らせている、、、うれしさ辛さ糾える縄の如しである。

モノづくりの素晴らしさ

僕は建設現場で働きながらさまざまな疑問を得た。その中で最も大きいのはモノづくりの主役であるはずの職人がもっと大切にされてもよいのでは?ということだった。結果、夢のあるはずの建築の仕事は、僕にとって、押し付けられた作業としか思えなかった。危険で、汚れにまみれて、人生の一部を費やしているのに。だから、僕は、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)づくりでは「モノをつくる悦び」を何よりも大切にしたいと考えた。

そもそもモノづくりは「食べる物がない、服や家も足りない、、」そういう辛い状況を克服し、より豊かに暮らしたいと望み頑張ってきたことで、希望のある仕事だったはずだ。

それが、いつのまにか効率だけが重視され、その大切な真ん中の部分が見えなくなってしまっている。
だけど、見えないくらいガムシャラに頑張った結果、ここ数十年で飛躍的に生産力を高め、ついに人類は(多くの国で)服も食べ物も家も足らせたのだ!長い年月の努力の末に、最大の夢を成し遂げたのだ、これはとても素晴らしいことだ。

ならば、さあ、次だ!次何をやる?
僕がはじめたのは《モノをつくる悦び》を取り戻す作業だ、ちょっと歪んでしまっている《モノづくり》をただすのだ、人々のことを想い、自然と向き合い、物質を見つめ、道理を考え、意匠を凝らし、沢山のことを学び、大きな悦びを感じながらモノづくりをしたいのだ。僕は、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)を作っていて楽しくってしょうがない。でもこれは特別なことじゃない。《モノをつくる悦び》は人類のDNAに刻まれた本質だと思っている。

人類史上最大のパラダイムシフトなう

ずっと足りなかった《衣食住》を足らせてしまった。
今、世の中はガラガラガラー!と大きく変わろうとしている、僕はあまりわかってないけどAIとかロボットとかもドンドン世界を変えていってしまうんだろう。なので「働き方改革」なんてあたり前のことなのだ。国が言い出すまでもなく《働き方》を一から創るくらいじゃなきゃ追いつかない時代なのだと思う。企業というのは、そこが上手いはずだし、きっと使命です、期待しています。

企業で働いていた妻は、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)が完成したら、一階で《フィンランドの古い食器屋》を開店しようと準備していて、時々フィンランドへ行く、僕も時々ついていく。この国は沢山の人が褒めるようになかなか凄い。友人の一人は公務員だけど、10時くらいに仕事に出かけて行って4時前に帰ってきたりする。ある時、友人たちと「今年の夏休みどれくらい、6、7?」みたいな会話をしていた。daysじゃないweeksだ。ちなみに今年は12らしい。長い休みは、森へ行ったり、海へ行ったりしてゆったり過ごす。

去年、アメリカの大学に呼ばれた時も驚いた。「せっかく来たんだから全力で働きますバシバシ言ってください」と言ったのだが、ほぼ暇だった。「先生である岡さんが、学生と直接会って同じ時間を過ごしてくれるのに意味があるんだ。それ以外は頑張ろうが、ユックリしていようがどっちでも良い。岡さんのレクチャーを聴き刺激を受けた学生が良い結果を出せば、私の評価に繋がる、それだけです」と、あー、世界最強の国なわけだ。

僕の大好きな高円寺の蕎麦屋は曜日の定休日はない、月の後半五日間連続の休みがあるだけだ。ストレスも疲れもなく、毎日淡々と働いている。僕はこの働き方に憧れた。だから蟻鱒鳶ルの作業は、毎日疲れない程度で作業はやめ、その代わり土日も働く、雨の日が休み。

僕は「働き方」のことばかり考えていたのかも知れない。心臓病で虚弱体質だったからデスクワークだけやってたら、すぐに身体が弱ってダメだろう。設計と大工仕事の両立が重要だ、と学生の頃考えたのがそもそもの始まりだったように思う。

僕は、これからも蟻鱒鳶ルを作り続ける。食うために作るのではなく、作りたいから作る。身体はきついし、決して楽ではないが、我ながら贅沢な労働だと思う。5年後(?)の完成時には、10メートルほど曳家をして、少し違う場所に移る予定。僕が楽しんで働いた結果が、残り続ける。

労働の後。蟻鱒鳶ルの3階のお風呂にはいって、聖坂から東京タワーを眺める。楽しみだ。
大きなNEC様、こちら小さな蟻鱒鳶ルですが、これを機会に御近所づきあい末永くヨロシクお願い致します。

執筆者プロフィール

岡 啓輔氏(一級建築士)

岡 啓輔氏(一級建築士)

1965年
福岡県生まれ。
1986年
国立有明工業高等専門学校建築学科卒業。
1988年
高山建築学校(夏季に行われる建築合宿)に初参加、2000年からは運営。
1989年
上京し、土工、鳶職、鉄筋工、型枠大工など様々な建設現場で働く。
舞踏家・和栗由紀夫に師事しダンサーとして活動。
高円寺で8年間「岡画郎」(不特定多数でアートを考える場)を運営。
2005年
自力建設開始「蟻鱒鳶ル(ありますとんびる)」と名づけ200年もつといわれる強固なコンクリートで即興的な建設を続けている。

*著書に『バベる!:自力でビルを建てる男』(筑摩書房,2018)
*新井英樹によってマンガ化された(『せかい!! ―岡啓輔の200年―』)