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スマートワーク推進&ワークスタイル変革・コラムDXの成否を左右するものとは

経済産業省が発表したDXレポートの中にある、
「技術的負債」の存在と、その解消が為されなかった場合に
見えて来た「2025年の崖(最大12兆円/年の経済損失が生じる
恐れ)」は、世間に大きな衝撃を与えた。

昨年9月に経済産業省が発表したDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート「ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」。その中にある、「技術的負債(既存情報資産の維持・管理にIT投資予算の大半が費やされ、競争環境に必要な未来へのIT投資が出来ない状態)」の存在と、その解消が為されなかった場合に見えて来た「2025年の崖(最大12兆円/年の経済損失が生じる恐れ)」は、世間に大きな衝撃を与えた。ここではその技術的負債の根因を探り、レポートで語られた全国規模の処方箋とは別に、個別企業で直ぐにでも取り掛かれるアプローチ策を提言する。

1.DXレポートに見る脅威と可能性

同レポートでは、我が国企業の大半は、DXについて必要性を十分理解し進めようとしているが、それを進めるに当たっては「経営戦略上の課題」と「IT資産・資源管理上の課題」と言う2つの大きな壁がある事を明確にしている。特に、IT資産・資源面における「技術的負債」を抱えたまま放置する事の脅威に触れ、その負債解消に向けた処方箋として「DXを推進するための新たなデジタル技術の活用とレガシーシステム刷新に関するガイドライン」を策定し、このガイドラインに従って①既存情報資産の分析・評価を行い、②仕分けして、③戦略的なシステム刷新を行うべき、と提言している。

確かに、この道筋に従えば2025年の崖問題からは脱却できるかも知れない。しかし、そもそも「なぜ負債化したのか」について検証とその改善を行わないと、刷新された新システムが又新たな負債にならないとも限らない。

どうして多くの企業は、技術的負債を抱え込むことになったのか?その要因を、レポートでは「経営層・CIOや情報システム部門・事業部門」に分け、それぞれの課題として明らかにしている。ここで特に注目したいのは「事業部門が抵抗勢力となって前に進まない」「事業部門と情報システム部門でコミュニケーションが十分にとられていない」「経営の関与が薄い」など、根本要因が「ヒト」に関わる、と言う点である。財務的な負債ならある意味「カネ」さえ調達すれば解消出来るが、「ヒト」の問題であればまた別の解消法が必要となる。そしてそれが出来れば、DX推進に拍車がかかる可能性が大であると考えられる。

2.DX時代における経営の「守・破・離」

筆者がこれまで見てきた、新たなシステム導入に反対しレガシーシステムを結果的に守ってしまう「ヒト」のそれぞれの理由を挙げてみる。先ず、事業部門。ここは、システムが変わると今までの慣れた業務プロセスが変化してしまうことを恐れて反対する。次に、情シス部門。ここは、既存システムのお守りで大変(ブラックボックス化している場合は特に)なのに、更なる負荷を負うことを恐れて反対する。最後に経営層。ここはレガシー投資を「サンクコスト」と見なせず、2重投資を恐れて反対する。いずれも「心理的な抵抗感」であるのが特徴だ。心理的抵抗感を打ち破るためには、先ず現状を肯定した上で「次の一手の大切さ」を認識させる策が効果的である。

武術・芸術などの世界に「守・破・離」と言う言葉がある。「守」は、先ず伝統の型を覚えて固めることの大切さを説いており、従来のやり方の踏襲が基本となる。「破」は、基本の型にいつまでもこだわっていては先人を超えられず技の進展も無いため、どこかの段階で従来にないやり方を試みることである。「離」は、破によって試みた従来にないやり方を完全に新たな型にしていくことである。

前述のレガシーシステムを変えない「ヒト」たちを敢えて肯定的な「守」段階だと考えると、誰かがどうにかして次の段階の「破」に挑めるようにしないといけない。「破」は誰が担うのが良いのか?武術・芸術的に言えば、「実務を極めた人」と言う事になる。であるならば、経営では「事業部門」のエースクラスが適任だろう。優秀なヒトほど「現状業務プロセス」に疑問を抱いており、武器さえ手に入れれば新たなやり方を追求してくれる。武器は「自分たちの業務を自分たちで上手く変えられるもの」、例えばRPAやBIツールなど、プログラム知識なしで目的物を作成できる簡易なツールが良い。簡易なツールは、機能に制限はあるが、「直感的な思考をデザイン化するのに優れる」ので最適だ。この事業部門のエースクラスが考える身近な業務の改革が、レガシーシステムからの脱却突破口になる。

「守」から「破」につなげて行くのをバックアップするのは、経営トップの役割だ。武器を与えるくらいならばそれほど大きな投資は要らないので、保守的な経営層からも理解を得やすい。経営トップは、保守的で抵抗勢力化する一般の事業部門の中から、いかに「問題意識の高い改革派」を見出すかがポイントとなる。仕事はできるが「何かと文句をよく言う問題児」などが、武器を手にすると一番効果を出すものだ。

3.カギは「社内情シス」「外部システムベンダー」をビジネスモデルにどう位置付けるか

「離」の段階になると、社内情シス部門の出番だ。事業部門が考えた「破」によって具現化された突破口を広げて全社展開するには、全体最適の視点と運用面を見据えた専門知識が必要となるからである。事業部門の先行アイデアが良ければ良いほど、社内情シスの心理的抵抗は薄れエンジニア魂に火が付く。

もちろん「破」から「離」に移行するためには、経営層の関与が必須である。最も重要なのは、システム開発における「事業部門」の位置付けを、「社内情シス」と「外部システムベンダー」の間に置くよう体制を変える事である。システムをブラックボックス化しない、させないためには事業部門中心の開発体制に変えないといけない。場合によっては、事業部門の中に情報システム担当を配置し、独立した情シス部門を排す体制も考えられる。これが「デジタル企業」になる、と言う事なのである。

4.「デジタル企業」が当たり前の時代に

経営にとって必要な資源には「ヒト・モノ・カネ・情報」等があるが、本文では「DXの成否を左右するのは、カネの面での財務的負債ではなく、変化を嫌うヒトの面での心理的負債である」旨を説いた。

今後、労働人口は益々減っていく。限られたヒト資源を有効活用して行くためにも、業務のデジタル化による生産性向上は避けられない。最先端のデジタル技術開発は外部に任せ、内部人材は「いかにそれを上手く活用するか」が焦点。そのためにも、事業部門のヒトたちが簡易にデータを活用できる「業務&システムの見える化」が重要なのである。心理的負債を解消し、デジタル企業として現場が常に新たなIT活用法を模索しながら業務を進化させて行く、それが当たり前の時代がもうそこまで来ているのである。

執筆者プロフィール

児玉 学氏

児玉 学氏

大手情報出版会社グループ・大手経営コンサルタント会社・都市再開発コンサルタント会社勤務を経て、1999年経営コンサルタントとして独立。2000年、株式会社ファインサポートを設立、代表取締役就任。ITコーディネータ/インストラクタ、中小企業診断士、知的財産アナリスト。経営とITに詳しいコンサルタントとして多くの中小企業の「IT経営」実現を推進中。

現在、NPO法人ITコーディネータ広島・理事長、NPO法人中四国マネジメントシステム推進機構・理事を兼務。その他、広島県知財総合支援窓口・登録専門家、ひろしま創業サポートセンター創業サポーター、広島市中小企業支援センター相談員、広島商工会議所相談員、などの公職、並びに県立広島大学大学院・非常勤講師なども歴任。