都市の見える化サービス: サステナビリティ事例 | NECソリューションイノベータ

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Sustainability Report 2022

都市の見える化サービス

Smart City

人間の感覚を超えた
「俯瞰する視点」で、
新しい街の形をつくっていく。

東北支社 望月 智也

今までの経験が通じない時代。
街にはどんな変化が起きているのか?

大胆な規制改革、複数分野のデータ連携、AIやビッグデータなどの先端技術を活用したサービスの提供によって、未来の生活を先行して実現する都市を目指す。そうした「スーパーシティ構想」を推進する宮城県仙台市には、今後のまちづくりのために、街の人流にどのような変化が起きているのかをデータで把握したいという思いがありました。

今までの一般的な人流の調査方法でも、目視で性別や年齢を確認し集計することはあったのですが、人の見落としや先入観が入り込みやすいといった課題があったのです。

そこで、NECグループの画像解析技術を取り入れたカメラによって、人の流れを把握し、集計・分析する「都市の見える化サービス」を提案することになりました。このサービスを提案したいと思った背景には、私のルーツでもある東北が甚大な被害を被った東日本大震災をきっかけに、「東北に住む方々の生命や財産を守りたい」という思いが、私の中で一層強くなっていたこともあげられます。

当時は東京で勤務していて、仕事で直接東北と関わることができなかったからこそ、今「都市の見える化サービス」を通して東北に貢献できていることに、改めて大きなモチベーションとやりがいを感じています。

都市の見える化サービス

本サービスに活用している人物像分析システム『FieldAnalyst』は、NECグループの画像解析技術により、傘をさしていてもマスクをしていても、人を立体的に認識できるシステム。今後、「都市の見える化サービス」によって測定された人流データは仙台市のデータ連携基盤(都市OS)上でオープンデータとして公開される予定であり、将来的にはさまざまな地域課題を解決するための施策検討などに利活用することが想定されている。

大学キャンパス内や地下鉄出入口などの特定エリアにカメラを設置し、AI・画像処理によって人流情報を測定することで、人の密度などを可視化。持ち運び可能なカメラを活用するため、柔軟に設置場所を調整することもできる。

「都市の見える化サービス」によって測定された人流データは、今後オープンデータとして公開される予定。自治体における活用だけでなく、企業や個人が自由に活用できるようになることで、さらなる街の活性化にもつながることが期待されている。

感覚を超えた客観的な分析が、
当たり前ではない気づきをくれる。

まず、道路空間を活用した社会実験等にあわせた人流測定を検討しています。「車線を減らして歩行者空間を拡大し利活用を行った場合、どういった人流が生まれるか」などを本サービスで分析し、将来的なまちづくりへの反映を想定しています。また、大規模イベントにおける来場者の属性判断などにもこのサービスの活用を検討しています。天候や時間帯による人の流れ、これまでに開催されたイベントなどの属性をデータ化して分析し、仙台市に訪れる人の傾向を見える化します。それを今後のイベント企画に活かすことで、仙台市の活性化につなげたいと考えています。

「都市の見える化サービス」は、人流を測ることがゴールではなく、このサービスによって把握・分析できたデータを、何と結びつけてどのような価値を生み出せるかが重要だといえます。たとえば、通学時間を除くと人通りが少ない小学校の通学路があるとします。16時~18時をハッピーアワーにする野外カフェを出店することで、若者たちが集まる人流をつくれるかもしれません。それは街の活性化だけでなく、通学路の防犯性を高めることにもつながるはずです。今まで人間の感覚でしか判断していなかったものを客観的にデータ分析することは、必ずまちづくりに役立つ気づきにもなると思っています。

オープンデータをみんなが使えれば、
住んでいてよかったと思える街になる。

都市構想を考えるうえで人流とは、たとえるなら血液のようなもの。血液検査をして血中コレステロールや血糖を数値化し、適切な対処をする。それと同じようなことを街に対してもできると考えています。これまで人の感覚で局所的に対処してきた街の人流を、本サービスで確実にデータ化し、さらに他のデータと組み合わせることで街全体の情報を網羅する。そして、情報をもとに仙台市のイメージに共通認識が生まれ、住民の誰もが自由にデータにアクセスできれば、市民の力も借りて、これまでにない方法で街を活性化できるようになります。それこそが、「都市の見える化サービス」の素晴らしいところです。

私が思うスマートシティとは、「データを人や企業が自由に活用して、やりたいことができる」都市のこと。人流の情報をオープンデータで誰でも見ることができるようになれば、一人ひとりが自分の着想から事業をスタートしたり、行動できたりする時代が来るはずです。仙台市の人の生命や財産を守りながら、住んでいてよかったと思える街をつくることが、私の最終目標。これからの時代のまちづくりを、東北エリアから発信していくことができたら、これほど嬉しいことはありません。