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学会・研究成果発表

日本認知・行動療法学会 第42回大会にて、CBT-I研究の成果を報告いたしました

CBT-Iプログラムの効果検証

DATE:2017.03.03
研究テーマ:睡眠日誌

不眠や睡眠障害は、産業事故のリスク向上や生産性の低下などの、社会的な問題を引き起こすことが知られています。職域でも、日勤労働者の30~40%が睡眠の質に問題があると報告されており1、不眠解消のための方策のひとつとして,Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia (CBT-I)は有効であるとの報告があります。

しかし、国内でのCBT-Iの普及率は低く、多くの人がアクセスできるCBT-Iツールの開発の必要と考えられます3。また、ツールに対する動機づけのためのEメールを使ったフィードバックで介入効果が高まることが示され、それが個人に合わせたものであるとより効果が高まる可能性が指摘されています4。その一方で、職域では、より多くの人が参加、実行しやすく、最後まで継続可能な介入方法が望ましいと言われています。

そこで今回私たちは、メールとWebサイトのみを通じてCBT-Iプログラムを提供し、対象者の不眠重症度(ISI)と日常生活の支障度(SDISS)がどのように変化するかを観測すると共に、CBT-Iツールの完遂率の測定を行いました。

まとめ
21人の対象者に対して、評価実験の募集時、プログラムの実施前(pre)、実施後(post)、実施後4週間後(follow-up)のタイミングでアンケートを実施して測定した対象者の不眠重症度(ISI)と日常生活の支障度(SDISS)は、以下の「図3」「図4」のようになりました。

ISIとSDISSの「仕事学校」「家庭生活」に関して、プログラムの実施前と実施後では、統計的に優位にスコアが改善されているということが分かりました。特に注目するべきはfollow-upの項で、プログラムの実施後4週間という期間が開いているのにも係わらず、プログラム実施終了後よりもスコアが改善しているという結果が得られました。これは、対象者がプログラム終了後も自主的にプログラムを継続していた可能性も考えられ、本プログラムが継続性に優れたものであることを裏付ける結果であると考えられます。

実際に本プログラムの完遂率は、先行研究で報告されている78%を上回る95%となっており、本プログラムにおけるEメールを使った介入による完遂率の向上が実証されたものと言えます。今後は、更に対象者を増やし、規模を拡大させた実証実験を行うことによって更なる効果の検証を行うと共に、より効果的な介入手法の検討を進めて行きたいと考えています。

【参考文献】

  1. Doi et al., (2003). “Impact and correlates of poor sleep quality in Japanese white-collar employees.” SLEEP, 26(4): 467-471.
  2. Okajima, (2011). “a meta-analysis on the treatment effectiveness of CBT for primary insomnia” Sleep and Biological Rhythms 9: 24-34.
  3. 井上・岡島,(2012). 不眠の科学 朝倉書店
  4. Lancee et al., (2012). “Internet-delivered or mailed self-help treatment for insomnia” Behaviour Research and Therapy 50: 22-29.

担当者紹介

研究テーマ:不眠改善支援
担当者:秋冨 穣
コメント:DNA配列解析からアワビの世話までやっている睡眠担当です。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーションラボラトリ cft-sleep-contact@nes.jp.nec.com