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学会・研究成果発表

主観的生産性尺度の開発研究をまとめた論文が採択されました

UPDATE:2024.10.31
研究テーマ:心理学的行動変容

このたび、我々の研究グループで開発した主観的生産性尺度についての一連の研究をまとめた論文が「心理学研究」誌に採択されました。

我々の研究グループでは、就業者を主なターゲットとしたアプリを複数開発しており、効果指標として就業中の生産性の高さを測定する必要性を強く感じておりました。しかし、労働生産性に関する既存の心理尺度には、健康問題による欠勤状況を軸として就業者の生産性を測定する尺度[1][2]が多く、慢性的に健康上の問題がない対象者における生産性(業務上のパフォーマンス)の個人差を測定することができる尺度が不足しておりました。

また、就業者の生産性の高さは、業務上のパフォーマンスの高さに直結するだけでなく、さまざまな要因と相互に関連し合うことが先行研究で示されています。たとえば、報酬体系[3]や組織風土[4]、家庭生活[5]などの要因が生産性に影響を及ぼすことが示されています。したがって、業務上のパフォーマンスの高さに加え、関連する要因を含めて就業者の状態を包括的に測定することによって、各個人が能力を有効に発揮するために必要な要素を多面的にアセスメントできるのではないかと考えました。

以上のことから、我々は主観的生産性尺度(Subjective Productivity Scale:SPS)を開発しました。質的研究と量的研究を組み合わせ、ボトムアップ的に収集した「生産性が高い状態の特徴」を集約することで項目案を作成し、複数回の調査を実施することで項目の精選を行いました。その過程で、科学的研究で用いる心理尺度に必要な信頼性と妥当性が十分に備わっていることを検証いたしました。

SPSは「仕事のパフォーマンス」、「仕事仲間との関係の良さ」、「余裕のなさ」、「プライベートの充実感」、「経済的満足」5つの下位尺度から構成されています。これにより、従来の労働生産性に関する心理尺度のみでは測定できない多様な側面を測定することができます。

本論文は既に公刊されており、オンライン上で全文が公開されておりますので、ぜひご参照ください[6]。また、尺度の使用にあたっては、研究目的であれば許諾を必要としませんので、PDFこちらの資料を参照の上、ご自由にお使いください。(商用目的でのご使用につきましては、下記連絡先にお問い合わせください。)

参考:

  • [1]
    Reilly, M. C., Zbrozek, A. S., & Dukes, E. M. (1993). The validity and reproducibility of a work productivity and activity impairment instrument. PharmacoEconomics, 4, 353–365.
  • [2]
    Lerner, D., Amick III, B. C., Rogers, W. H., Malspeis, S., Bungay, K., & Cynn, D. (2001). The work limitations questionnaire. Medical Care, 39, 72–85.
  • [3]
    黒田 祥子(2017).長時間労働と健康,労働生産性との関係 日本労働研究雑誌, 679, 18–28.
  • [4]
    Ederer, F., & Manso, G. (2013). Is pay for performance detrimental to innovation? Management Science, 59, 1496–1513.
  • [5]
    Meijman, T. F., & Mulder, G. (1998). Psychological aspects of workload. In P. J. Drenth, H. Thierry, & C. J. de Wolff (Eds.), Handbook of Work and Organizational Psychology (pp.5-33). Psychology Press.
  • [6]

担当者紹介

研究テーマ:心理学的行動変容
担当者:市川 玲子
コメント:心理学に関する研究業務全般を担当しています。博士(心理学)・公認心理師です。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーションラボラトリ
bt-design-contact@nes.jp.nec.com