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関係人口の関心はどこに?データによる関心データの可視化

DATE:2020.09.28
研究テーマ:エンゲージメント

こんにちは! NECソリューションイノベータで研究をしているファンです。

本日は日本の地方を救う可能性のある「関係人口」についてお話させて頂きます。

本ブログを通じて、関係人口ツアーにて得た知見を共有いたします。地方創生などに携わっている方々はどのようにすれば関係人口を引き留める企画の立案のお役に立てると考えております。

関係人口とは?

new window総務省によると関係人口とは『移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々』の事を指します。

簡単に言うと、ある地域に住んではいないが、(仕事や遊びなどで)定期的にその地域に訪問している人の事です。

ではなぜこの関係人口が日本の地方を救うといわれているかと言いますと、それは地方に変化を生み出すポテンシャルがあるからです。

従来の地方創生の施策は、首都圏から地方に移住者を増やし、地域外の新しい人材・アイディアを地方創生に生かそうというものでした。ですが、これはなかなか成功しません。誰もが、自分が住み慣れている地域を離れ、新しいライフスタイルで働くことは難しく、仮に地方へ移住したとしてもその地域に溶け込むのにも時間がかかります。

そこで、首都圏に住んでいながら、定期的に特定の地域へ訪問する機会がある人材という定住人口と交流人口の良いとこ取りしたような人材に注目が集まりました。

関係人口ツアー

昨年度、弊社は、復興庁より関係人口増加プロジェクト事業を受託し、株式会社Ridiloverとともに関係人口を増加させることを目的とした東北の被災地への new windowスタディツアーを実施しました。
本ツアーは、首都圏に住んでいる方々を対象として、宮城県石巻市・福島県南相馬市・岩手県陸前高田市で行いました。
本ツアー企画にあたり、参加者の関心を収集するための関係人口アプリ(図1)を作成しました。参加者には、本ツアー参加中に関心を持った事をコメント・スタンプ形式で随時登録(図2)してもらいました。関心先は事前に「ヒト・モノ・コト」の観点であらかじめ登録しておき、関心を持ったらすぐに登録できるようにしました。

本ツアー後にアプリに登録されている情報を分析し、ツアー中の参加者の関心を考察しました。

図1 関係人口アプリ
図2 関心登録画面

データ分析

本ツアー後の分析ではアプリを通じて収集した関心データについてネットワーク分析を行いました。

具体的には、関心先データでコミュニティ抽出を行い、コメントデータに関しては共起分析(連想された単語同士の出現頻度を分析する手法)を行いました。

コミュニティ抽出

コミュニティ抽出は難しい言葉で説明すると「ネットワーク構造からリンクが密な部分集合を抽出する」事です。

イメージしやすくするため、学校のクラスを想像してください。クラスがあるとどうしても同じような人間が集まる複数のグループ(帰宅部グループ、体育会系グループ、アニメ好きグループなどなど...)に分かれます。それがコミュニティです。

関心のコミュニティ抽出(図3)を行うと、参加者の同じような関心先を抽出する事ができます。

コミュニティ抽出の結果、3回にわたる関係人口ツアーはそれぞれ、3つ以上のコミュニティ(図4)に分けられることがわかりました。

関心先を「ヒト・モノ・コト」にわけたのですが、本ツアー参加者は複数の関心先でコミュニティを形成していました。ヒトとコトの2つで構成されているコミュニティもあれば、ヒト・モノ・コトの3つで構成されているコミュニティもあります。
これは、複数の関心がお互いに相互作用をもたらし、その結果関心を集めているといえます。

また、どのコミュニティでも「コト」が含まれているのですが、ツアーに体験機会が必要である事を示唆しています。ツアーとなると「見る」だけとか「聞く」だけなどだと思いがちですが、「する」ことも大事だという事ですね。

今回のツアーは被災地を中心としたツアーだったのですが、ツアー中には被災地の悲しい話があった一方、そこで活躍している方々の話を聞くという、一見相反する2つの経験がツアー参加者の関心を掻き立たのかなと思います。

私も現地で活躍するイケてる社長の方々の話を聞いたときは衝撃でした!自分の中の被災地のイメージがアップデートされたので、この経験はすごく印象に残っています。

図3 コミュニティ抽出の結果

共起分析

共起分析はある文章中に同時に現れる頻度が高い単語を抽出し、近くに出現した単語をつなげてネットワーク図化したものです。共起分析を行うことで、ツアー参加者が利用する言葉の特徴を見つける事ができます。

共起分析の結果(図4)、ツアーごとに参加者の利用する言葉に違いが現れました。

石巻市のツアー参加者は『魚』という単語が他の言葉と同時に出現していることがわかります。石巻市は漁業を中心とした一次産業の街で、ツアー参加者の関心が魚に集まっていることは不自然ではないと思います。

南相馬市に関しては、『馬』という単語が他の言葉と同時に出現する回数が多いです。南相馬市は馬が地域文化として根付いていたので、ツアー中に馬と触れ合う機会がありました。馬と触れ合う機会はツアー参加者にとって、衝撃的だったのではないでしょうか。
普通に生きていく中でなかなか馬と触れ合う機会はないので、そこが参加者の関心を刺激したかもしれないですね。

陸前高田市に関しては、「木」や「エネルギー」という単語が他の単語と一緒に出現しています。ツアー時に自然と町に関する講演がありました。ツアー参加者は講演を通じて陸前高田市のエネルギー産業に関心を持った可能性があります。

また、南相馬市と陸前高田市のツアーの最後に参加者に対して、最も関心を持った関心先を聞きました。最も関心を集めた関心先を集計した結果、上位3つは南相馬市の人に関心が集まっていました。また、陸前高田市は団体に関心が集まっていました。

南相馬市は地域文化についての話が多く、その文化を作っている方々に関心が集まったのではないでしょうか。また、陸前高田市は自然と町の話があったことから、町のあり方を決めるためには個々人だけでなく団体の力が必要だという事から、関心が集まっている可能性があります。

図4 共起分析の結果

まとめ

3回に渡るツアーを通じて、アプリによる関心の可視化及び関心の傾向をつかむことができました。これは、関係人口の定着性を向上させるためのポジティブな結果ととらえる事ができます。

例えば、ツアー中は参加者の関心事をできるだけ集め、ツアー後に関心データを利用しアフターフォローイベントを開催することでツアー参加者との接点を維持する事ができます。地域への関心は地域資源となる可能性があります。それを可視化する事は、地域資源の可視化と同義です。観光や移住・定住などの政策立案者はツアーを通じて可視化した関心を利用し、外部からさらに多くの観光客や移住や定住を興味ある人を呼び込む事ができます。
また、ツアーには一過性という性質があり、中々何度も同じ地に行くという事がありません。そこでも、関心データを利用する事で、ツアー終了後も定期的にツアー参加者との関係性を維持する事ができます。例えば、ツアー参加時に町の農産物に関心を持っていた方には季節に合わせて農産物の情報を定期的にフィードバックすることで、関心を維持する事が出来ます!

また、今回3回にわたる関係人口ツアーを実施したのですが、どのツアーでも講演会や現地の方々との交流がなければ関心を持つことがないことに関心が集まっていました。これは、関心をある程度企画の時にデザインできるということを示しているのではないでしょうか。ツアー参加者に関心を持ってほしいコトをツアーの中に組み込むことで、関心を持ってもらえるようになります。

ツアーを通じて、ツアー参加者が関心を持ったことを分析できたのですが、関心を持った具体的な要因まではわかっていません。それをあきらかにするために、今後はアプリを通じて取るべきデータの再設計が必要だと思います。

最後に、僕のいたベトナムでは人口ボーナス期に入り、人がすごく増えています。どこに行っても人がおり、すごくにぎやかです。ベトナムと対照的に日本は人口減少の傾向があり、特に地方ではその傾向が顕著に現れ、すごく寂しく感じます。

僕は賑やかな方が好きなので、いつか日本もベトナムのように活気づける事が夢です。その夢を実現させるため、今後も日本や地方を活性化させるための方法を試していきたいと思います。

担当者紹介

研究テーマ:エンゲージメント
担当者:ファン タァンクァン
コメント:心理学の観点から組織論について研究を行っております。熱帯(ベトナム・ハノイ)出身で実家のパイナップル園と共に太陽に育てられたため、性格は明るい方です。趣味はテニス、読書とサーフィンです。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部
ai-oxd@nes.jp.nec.com