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【SXSW2023レポートPart1】SXSW2023で語られた未来

DATE:2023.05.25
研究テーマ:ウェルビーイング

こんにちは。ポスト・ウェルビーイングや感謝、エンゲージメントなどの研究をしている菅原です。

今回、3月10日から3月19日にアメリカのテキサス州オースティンで開催されたSXSW2023に視察に行ってきました。私が現地で感じたSXSW2023の注目ポイントやトレンドをお届けします。

SXSWとは

SXSWはSouth by South Westの略で、毎年3月にオースティンで開催される音楽・映画・インタラクティブを中心とした大規模イベントです。もともとは1987年に音楽祭として始まり、今ではテクノロジーや映画、アート、教育など、さまざまな分野が融合した祭典となっています。

インターネット関連技術が集まるインタラクティブ部門は、2007年にTwitterがブログ領域で受賞したことがきっかけとなり、世界から注目されるテックイベントの一つとなりました。2011年にはAirbnb、2012年にはPinterestが表彰されるなど、新しい事業や技術、アイデアが発掘されるイベントとして注目されています。

SXSW2023は、2019年以来、4年ぶりのオフライン中心の開催となりました。350以上のセッションが実施され、メイン会場となるコンベンションセンターや周辺のホテル会場はもちろんのこと、街中にある企業ブースやミートアップイベントなど、たくさん人々の熱気に包まれていました。

オースティンの様子。バッジを付けた参加者が街中に見受けられる。

では、さっそく現地で見てきた注目ポイントをご紹介します。

SXSW2023で語られた未来予測

SXSWでは、AIやメタバース、Web3などの最新テクノロジーをはじめ、気候変動やヘルスケア、ワークプレイスなど、さまざまな領域に関するセッションが用意されています。そのなかでも、今回注目してみたのが「未来」に関するセッションです。SXSWでは、中長期的かつ大局的な目線から未来について語られるセッションが多くあります。今回は、そのなかでも2名のFuturist(未来学者)のセッションの概要と気づきをご紹介します。

インフォメーション・テクノロジーのこれまでと未来
デロイトの未来学者であるMike Bechtel氏は、インフォメーション・テクノロジー(情報技術)がこれまでたどってきた進化とこれから先の未来について語っていました。

とても印象的だったのが、「インフォメーション・テクノロジーは、これまで革命(Revolution)ではなく進化(Evolution)を繰り返してきたんだ」という発言です。初期のころのコンピュータと現在のスマートフォンやVR、AI、ブロックチェーンなどを比較すると、大きな革命・革新が起きているのではないかと思ってしまいますが、一体どういうことでしょうか?

Bechtel氏によれば、コンピュータの機能を「interaction; 相互作用」「information; 情報」「computation; 演算」の3つの領域に分けてみることで、進化をたどることができます。
例えば「相互作用」の領域では、もともとはパンチカードだったものがコマンドライン、GUI、タッチデバイス、VRへと変化し、「よりシンプル」になるような進化を遂げてきました。より単純で直感的にわかりやすい方向に進化が起こるのが、「相互作用」領域の特徴だと言えそうです。同様に、過去の変化を見ていくと、これまで「情報」は「より賢く」、「演算」は「より豊富に」なるように進化を繰り返してきたことが分かります。

(発表資料を基に、筆者が作成)

このように、過去に進化してきた法則性・力学を見つけると、未来を予測することもできます。
「相互作用」では、よりシンプルなインタフェースとして「環境体験(Ambient experiences)」「ブレイン・コンピュータ・インタフェース(Brain-computer interfaces)」などの登場が予測されていました。「情報」では、今後は指数関数的にAIが発展するようになり、最終的には「汎用人工知能(General AI)」と呼ばれるような様々な分野に対応したAIができるだろうと言っていました。また「演算」については、Web3やIoTの発展に伴って「空間ウェブ(Spatial web)」という技術が確立し、さらには現在多くの研究者が研究開発に取り組む「量子コンピューティング(Quantum computing)」の実現が待っていると語っていました。

このように過去から法則性を見出すことで、未来が予測できることがおもしろいポイントでした。

私たちの知っているインターネットは終わった

「私たちの知っているインターネットは終わった」。このように話したのは、Future Today InstituteでCEOを務めるAmy Webb氏です。Webb氏は、これから起こるAIを中心とした時代の転換について語りました。

予測される大きなトレンドの一つとして、「AISMOSIS」があります。これは「AI」と「osmosis(浸透)」を合わせた造語で、さまざまなソースやシチュエーションを通して、あらゆるデータがAIに流れ込むことを意味しています。私たちの日常生活のさまざまな情報をAIが学習することで、「私たちの知っているインターネットは終わった」という言葉の通り、私たちがインターネットで何かを検索するのではなく、インターネットが私たちを検索して、物事を紹介・推薦するようになるでしょう。

Webb氏は、このような時代を迎えるに対して、まだ私たちの準備ができていないことが問題だと言います。私たちがデジタルの活用に対してスキルアップが進み、準備が整えば、AISMOSISによって現在よりもシームレスでセキュアな未来が待っているかもしれません。一方で、私たちの準備ができなければ、過剰なキュレーションとレコメンドが進み、たくさんの情報に囲まれていても、私たちが本当に欲しい情報にはたどり着けない未来が待っているかもしれません。

もう一つ大きなトレンドとしては、アシストコンピューティング時代の到来です。AIをはじめコンピュータが私たちの判断や仕事をサポートしてくれる時代が本格化しようとしています。ある企業では、がん細胞をターゲットに免疫機能を働かせるための抗体のデザインに生成AIを用いています。毎週300万個の抗体デザインが生成されるなど、人間の手だけでは絶対に不可能な仕事が現実のものとなっています。

しかし、今後AIを扱っていく上で注意しなくてはいけないポイントがいくつかあります。その一つが「AIにはバイアスがある」ということです。例えば、画像生成AIに「CEO(最高経営責任者)」の画像をつくらせると「白人男性」ばかりの画像が生成されます。このようにAIには、学習されたデータによってバイアスが含まれていることを知っておく必要があります。

このように今後AIを中心として、デジタルと日常のつながりが強くなっていく中で、私たちも準備をしていく必要があることが感じられるセッションでした。

まとめ

未来学者の2名とも、今後私たちとデジタルとのつながりはさらに強化され、それを基にAIがさらなら成長を遂げるという点で一致していたのが、印象的でした。私たちも研究者として、過去から未来を想像し、よりよい未来のために活動していきたいと感じました。

Part2では、SXSW2023のキーワードについてご紹介いたします。
よろしければご覧ください!

担当者紹介

研究テーマ:ウェルビーイング
担当者:菅原 収吾
コメント:心理学的な観点を織り交ぜながら組織のエンゲージメントやウェルビーイングについて研究をしています。学生時代はバイオ研究をしていました。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部

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