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生成AIによる人間反応シミュレーションの適用可能性と限界を検証
ヒューマンデジタルツイン実現に向けた共同研究論文が国際学術誌に掲載
DATE:2026.07.01
NECソリューションイノベータ株式会社のイノベーションラボラトリと明治大学 後藤晶准教授は、画像に対する人間の感情評価と生成AI「GPT-4o」による評価を比較した共同研究論文が、国際学術誌『BMC Psychology』に掲載[1]されたことをお知らせします。

本研究は、イノベーションラボラトリが取り組む『ヒューマンデジタルツイン(Human Digital Twin: HDT)』の実現に向けた基礎研究の一環として実施したものです。HDTは、生成AIなどを活用して仮想的な人の反応や行動を再現し、施策実施前にその効果や受容性をシミュレーションする技術です。
生成AIの活用が急速に広がる中、その出力をどこまで信頼して意思決定に用いるべきかは新たな課題となっています。
イノベーションラボラトリは、HDTの社会実装に向けて、生成AIが人間の反応をどこまで妥当に再現できるか、その適用可能性と限界を客観的に検証することが重要だと考えています。
今回の研究では、画像を見たときに生じる感情反応について、人間による評価結果とGPT-4oによる評価結果を比較しました。あわせて、標準的なプロンプトに加え、ペルソナを付与したプロンプトや言語特化型プロンプトなど複数の条件を設定し、AIによる感情評価の再現性を多面的に検証しました。
その結果、快・不快に関する評価では、GPT-4oの出力は比較的人間の評価に近い傾向が確認されました。一方で、興奮の強さや、対象に近づきたい・避けたいといった反応については、人間評価との差が大きいことも明らかになりました。これにより、生成AIは人間の感情反応の一部を再現できる可能性を持つ一方で、活用にあたっては適用可能な範囲と慎重に扱うべき範囲を見極める必要があることが示されました。
本研究の特徴は、生成AIの活用可能性を示すだけでなく、人間の反応をどこまで再現できるかを学術的に検証し、適用可能性と限界の両方を明らかにした点にあります。また、AIの評価性能を検証する際には、平均値の比較だけでなく、分布の違いや一致度など、複数の観点から多面的に評価することの重要性も示しました。これは、今後HDT技術の信頼性を高め、社会実装につなげていくうえでの基礎的な知見になると考えています。
イノベーションラボラトリは、HDTを人の判断を置き換えるための技術ではなく、人の理解を深め、複数の選択肢を比較しながら意思決定を支援するための技術として位置づけています(図1)。最終判断を自動化することではなく、施策立案や設計段階における仮説検証と比較検討を支えることを重視しています。

また、顧客体験設計やサービス開発、組織・制度設計といった領域において、人の反応を事前にシミュレーションし、複数案の比較や仮説検証への活用を想定しています。これにより、従来は実施後にしか把握できなかった反応を事前に捉え、意思決定の精度とスピードの向上に寄与することが期待されます(図2)。

生成AIを用いた人間反応シミュレーションへの関心が高まる一方で、活用範囲や限界を十分に理解しないまま結果を利用することへの懸念も生じています。信頼性ある社会実装に向けては、適用可能性と限界の双方を継続的に検証し続けることが重要な課題といえます。
イノベーションラボラトリは、こうした課題に対し、人の反応を多面的に捉えながら、業務やサービスの意思決定に組み込むことが可能な技術基盤としてHDTの研究開発を推進しています。今後も共同研究や実証を通じて、生成AIによる人間反応シミュレーションの信頼性向上に取り組み、HDTの実現に必要な知見の蓄積を進めてまいります。
担当者紹介
担当者:日室 聡仁(ひむろ あきひと)
行動経済学・心理学などの「人間理解」と、ICT/生成AIを掛け合わせた研究に従事。現在は、ヒューマン・デジタルツインの実現可能性と応用可能性を推進。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーションラボラトリ
ilab-event@nes.jp.nec.com

Comparing human and AI emotional evaluations of images: GPT-4o performance across standard, persona, and language-specific prompting strategies | BMC Psychology | Springer Nature Link