サイト内の現在位置
コラム
AIはもはやエンジニアだけのものではない
全社員を“AI人材”に育成し自社AI活用を加速せよ

UPDATE : 2021.02.26
今や、非エンジニア層においてもAIリテラシーが求められるようになっています。
経産省によると現時点で約4.4万人、2030年度には約12.4万人が不足すると予想されているAI関連エンジニア。しかし、不足しているのはエンジニアだけではありません。
テクノロジーの世界だけでなく、ビジネスの世界でもなくてはならないものになりつつある機械学習、深層学習を始めとするAI(人工知能)技術。かつてのコンピューターがそうであったよう、もはやエンジニアや専門家だけが理解していれば良いというものではなくなりました。これからはビジネスマンにも一定水準のAIリテラシーが求められます。
ここでは、そうした一般ビジネスマンのAIリテラシーを高めるための方法、そして育てることでどのようなメリットがあるのかを解説します。
“次世代”では、AIリテラシーが
全てのビジネスマンの基礎教養に
時代は今、あらゆるビジネスにAI技術が活用される「AI時代」へ。今後、この流れはますます加速していくことでしょう。その中で勝ち残っていくためには、自社のAIリテラシーを高めていくことが何よりも重要。そのために求められるのがAI開発・活用に長じた人材=AI人材の確保です。
しかし、AIに長じた「AI人材」は、全く数が足りていません。経済産業省が2019年3月に発表した『IT人材需給に関する調査(概要)』では、現時点で約4.4万人、2030年度には約12.4万人のAI関連エンジニアが不足するとしています。そうした中で専門家を獲得するのは簡単なことではありません。
さらに、不足しているのは専門家だけではなく、AIによって生み出された成果物を元に事業を推進するAI知識を持ったビジネスパーソンも全く数が足りていないのです。
こうした状況を受けて、政府の統合イノベーション戦略推進会議は2019年6月、『AI戦略2019』を発表。教育面では「年間100万人の全ての高校生」「文理を問わない全ての大学・高専生 年間50万人」「年間100万人の社会人」などに対してAIリテラシー教育を行う大規模な戦略を発表しました。
今後さらに、ビジネスに生活にAI技術が活用されるようになる「AI時代」に勝ち残っていくためには、こうした戦略に先んじて自社社員のAIリテラシーを高めていく必要があります。また、個人としても「AI戦略2019」を受けて生まれてくる、AIリテラシーの高い後続人材に負けないような備えが必要です。
一般ビジネスマンに向けた
AI学習サービス・認定試験が活況
こうした世の中の動きを受けて、すでに多くの企業、ビジネスマンが自らのAIリテラシーを高めるべく動き始めています。
大きなところではまず、一般ビジネスマン向けのAI学習サービスが活況です。これはプログラミングや統計、数学などといった知識を持たない人々を対象としたもの。エンジニア向けのAI講習と比べて平易なところからAIの基礎を学べる上、最終的なゴールもAIを活用した企画立案や事業推進など、AI技術をどのようにビジネスに活かしていくかというところに設定されているためです。
たとえば、約8万5000人以上の個人ユーザーを擁する国内有数のAI学習サービスを展開する「アイデミー」は、法人向けのEラーニングプラットフォーム『Aidemy Business』を大々的に展開中。「はじめてのAI」といった入門的な講座から、「AIマーケター育成講座」などの実践的なものまで、45以上の講座を通じて社員のAIリテラシーを高めることができるとしています。
アイデミーは全てリモート形式で学習できることからコロナ禍で特に人気を集めましたが、他にもさまざまな形式のビジネスマン向けAI学習サービスが活況。規模としてはすでにエンジニア向けのAI学習サービスを上回る規模にまで成長しています。


また、一般社団法人日本ディープラーニング協会は「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する」、ジェネラリスト向けの『G検定(JDLA Deep Learning For GENERAL)』をスタート。2017年には1500名に満たなかった受験者数が、2020年には新型コロナ禍中にも関わらず、のべ2万5000名を超えるまでに注目度を高めています(ちなみにエンジニア向けの『E資格』の2020年の受講者数はのべ1000人強でした)。
AI学習サービス受験者の多くは20代〜40代。業種も製造業、運輸・通信業、卸売・小売・飲食店が、ソフトウェア業などに迫る勢いで増加しており、そうした顔ぶれからもAIリテラシーがより幅広い層で求められはじめていることがわかります。また、受験動機からは資格をビジネス活動やキャリアアップに活かしていこうという強い熱意が感じ取れます。

出典:JDLA試験実施レポート_202011版V3より
自社ビジネスに通じた社員を
AI活用のプロフェッショナルに育成せよ
社員のAIリテラシーを高めることは、自社ビジネスにおけるAI活用の加速と同義です。
とりわけ重要なのが、AIを活用した新しいビジネスの企画立案ができるようになること。自社ビジネスに通じたベテラン社員がAIの知見を身につけることで、自社にどんなビッグデータが蓄積されているか、自社がどんなサービスを提供しているかといったストロングポイントや、既存サービスに対してどのような要望が上がってきているのかを踏まえたAI活用が可能になるのです。社外のコンサルタントや、雇い入れたばかりの専門家ではこうはいきません。
既存のAI活用ソリューションを利用する場合においても、社員のAIリテラシーが高ければ、それらを適切に活用でき、より高い効果を得ることが期待できます。
たとえば製造ラインの様子を撮影し、良品・不良品を判定するようなソリューションではより精度高い判定を実現するためのライン側の工夫・改善や、商材ごとの好適・不適を自ら判断できるようになるといった具合です。これまでソリューションベンダーに任せっきりだった部分を自ら改善していけるようになることで、フットワークの向上とコストダウンを図れるようになるというわけです。そもそも一定以上のAIリテラシーがなければ、どういったソリューションが自社ビジネスに役立つのか判断が難しくなります。
AIの重要性が疑いようもなくなっている今、それをどれだけ上手に使いこなせるかがビジネスの明暗をはっきりと分けます。そのためには優秀なAIエンジニアの雇用と同じくらい、社内全体のAIリテラシー底上げが重要です。まずは社内育成から始めてみることをおすすめします。
まとめ
AI人材の育成が「これから(次世代)」の国家方針となりましたが、その実現を待っているのでは間に合いません。「今」のビジネスに勝ち残るため、まずは既存社員を事業に精通したAI人材に育成しましょう。個人のキャリアアップにおいても、今後AIリテラシーが必須のものになっていくでしょう。