社会保険から国民健康保険への切り替えの手続きについて | NECソリューションイノベータ

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コラム

社会保険から国民健康保険への
切り替えの手続きについて

UPDATE : 2022.02.01

従業員が会社を退職して、しばらくブランクが空くような場合、通常社会保険から国民健康保険への切り替えが必要です。退職した元従業員から、保険の切り替えについて質問を受けることも多いため、人事労務担当者はその仕組みについて理解しておきたいものです。
この記事では社会保険と国民健康保険の違いや社会保険から国民健康保険へ切り替えるための手続き方法について紹介します。

社会保険と国民健康保険はそもそも何が違う?

日本ではすべての国民に対し、高額医療費の負担を減らすため公的医療保険に加入すべきとしています。公的医療保険にはいくつかの種類があり、「社会保険」と「国民健康保険」はその代表格ともいえるものです。それでは、社会保険と国民健康保険には一体どのような違いがあるのでしょうか。加入対象者や運営団体などいくつかの相違点があるため、しっかりとそれぞれの特徴を確認していきましょう。

社会保険の仕組み

社会保険とは、一般的に民間企業などに勤める会社員が加入する健康保険のことです。略称として「社保」と呼ばれることも多いです。社会保険は加入が義務づけられている「強制適用事業所」と、従業員の過半数が希望した場合に任意で加入する「任意適用事業所」があります。強制適用事業所は国や法人の事業所が指定され、法人の場合は加入義務が発生します。社長1人だけの会社や従業員5人以上の個人事業所なども加入義務があるため注意しましょう。
社会保険の運営団体は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「健康保険組合」となっています。全国健康保険協会は健康保険組合を設立しない企業の会社員を主な対象としたものです。主に中小企業の会社員が加入することになります。

一方、健康保険組合は単独で700人以上もしくは共同設立で3000人以上の会社員が所属する企業が国の許可を受けたうえで運営するものです。主に大企業の会社員が加入することになると考えられます。

社会保険と国民健康保険の大きな相違点として「扶養」の要素が挙げられます。社会保険は配偶者や親族を扶養に入れることが可能です。なお、社会保険の健康保険料は被保険者の本人の収入・年収によって計算されます。算出された保険料は被保険者がすべて支払うのではなく、事業者と折半する仕組みになっています。

国民健康保険の仕組み

国民健康保険は、原則として社会保険に未加入の人が入るものです。略称として「国保」と呼ばれる場合があります。具体例としては、自営業者や仕事に就いていない人などが該当します。運営団体は都道府県や市町村で、2018年からは責任主体は都道府県へと移りました。社会保険とは異なり、国民健康保険には扶養のシステムがありません。同居している家族であっても国民健康保険の扶養にはならず、加入者全員が被保険者として個々に保険料を支払う仕組みになっています。

なお、国民健康保険の保険料は世帯単位で人数・収入・年齢などの要素を加味して算出されます。また、運営する自治体によっても保険料が異なるため注意しましょう。所得額が一定に満たない世帯に関して、減額の制度も設けられています。何らかの事情で所得が少ない場合は、減額制度をチェックしてみると良いでしょう。

トラブルの元!健康保険証は退職後に必ず会社に返却してもらおう

社員の退職において、気をつけたいのが「健康保険証の返却」についてです。会社の保険証は通常退職日の翌日から使えなくなります。もしも次の就職先が決まっていない場合は、本人が国民保険に切り替えるための手続きを行う必要があります。そのため、退職日までには必ず保険証を返却してもらう必要があるのです。もしも返却を忘れている場合は声をかけ、郵便や宅配便などで速やかに返却してもらうようにしましょう。

失効した保険証が使用された場合、後日失効した全国健康保険協会や健康保険組合などから返還請求をしなければなりません。そのまま失効した保険証を繰り返し使用し続けた場合、使用者が詐欺罪に問われるケースもあります。このように、健康保険証が返却されないとさまざまなトラブルを招く要因になり得るため、注意しましょう。

社会保険から国民健康保険へ切り替えるための手続き

社員によっては、「退職後に社会保険から国民健康保険に切り替えたい」というケースもあります。会社退職後、国民健康保険に加入するためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。手続きのために準備するものや届出の方法について詳しく見ていきましょう。

用意するもの

社会保険から国民健康保険へ切り替える際は「健康保険資格喪失証明書」を用意する必要があります。これは扶養家族を含め、国民健康保険に加入するすべての人の分が必要となります。ただし、会社を退職した本人のみが国民健康保険に加入する場合は、「退職証明書」「雇用保険の離職票」など、退職した日付が確認できるものでも申請可能です。もしも同一世帯以外の人が申請を行う場合は、「世帯主のはんこ」も用意する必要があります。

また、届出本人の確認書類も必要となります。基本的には「個人番号カード」「運転免許証」「写真付き住基カード」など、写真付きの本人確認証のなかから任意のものを1点用意することとなります。もしも上記のものがなければ、「保険証」「年金手帳」「学生証」などのなかから任意のものを2点そろえましょう。

届出方法

国民健康保険申請は会社の健康保険を脱退したあと、区役所の保険業務担当窓口にて届出を行います。なお、届出は健康保険脱退後、世帯主が14日以内に必要な書類を用意して行うことが基本です。もしも世帯主以外が届出をする場合は、別途「世帯主の委任状」を用意する必要があります。

届出する際に気をつけるべきこと

国民健康保険の届出をする際は、いくつかのポイントに注意する必要があります。まず、気をつけたいのが「すでに国民健康保険に加入している世帯」です。追加で加入する場合は、届出の際に世帯主の保険証も必要になるため忘れずに持参しましょう。また、「健康保険の種類や内容が変わったとき」にも注意が必要です。変更があった場合は、かかりつけの病院にも連絡を入れておくと良いでしょう。

それ以外にも、「健康保険等資格取得(喪失)証明書」の発行場所をきちんと把握しておく必要があります。この証明書は会社や健康保険組合が証明するものであり、市役所や区役所では発行されません。退職時までに取得できるように手配が必要です。
加えて、「扶養家族の有無」も気をつけたい要素といえます。扶養している家族がいない場合は退職証明書や離職票などで届出できますが、雇用保険被保険者証では手続きを行えません。

退職後しばらく経ってから健康保険に加入するとどうなるのか

もしも退職後期間を空けて加入する場合は、まず「退職日をはっきりとさせる」必要があります。職場の退職日、つまり健康保険を脱退した日を明確に証明できる書類が必要となります。具体的には、「健康保険資格喪失証明書」を用意します。書類で退職日を証明できれば、その翌日までさかのぼって健康保険に加入することが可能です。ただし、その場合は健康保険の加入日となった日まで、さかのぼって保険料を支払う必要が生じます。
また、特段の理由なく届出が遅れてしまった場合は、医療費の給付は届出日からになってしまいます。過去に発生した医療費は全額自己負担となります。このような点を踏まえて、健康保険への加入は退職後14日以内に速やかに済ませることが無難といえます。

国民健康保険へ切り替えなくてもよい?退職後の社会保険の継続

会社を退職した際は、基本的に社会保険から国民健康保険に切り替える必要があります。ただし、必ずしもすべての人にこれが当てはまるというわけではありません。一定の条件を満たすことができれば、保険の切り替えをするのではなく退職後も社会保険を受け続けることができます。社会保険を受け続けられるケースは大きく分けて2つあります。どのようなものなのか、それぞれの詳しい内容をチェックしていきましょう。

任意継続を依頼する

退職後も社会保険を継続できる1つ目のケースは「任意継続」です。任意継続とは、以前勤めていた会社で加入していた保険に退職後も引き続き加入できるというものです。
任意継続でそのまま健康保険に加入し続ける被保険者のことを、一般的に「任意継続被保険者」といいます。最長で2年間ほど継続して保険に加入することが可能です。ただし、任意継続には大きく分けて2つの加入条件が設けられています。
1つ目は「退職前に2カ月以上連続して被保険者期間があること」、2つ目は「退職日の翌日から20日以内に手続きを済ませること」です。これらの条件をクリアしている場合、任意継続が可能になります。

任意継続をするためには「任意継続被保険者資格取得申出書」が必要です。加えて、扶養する家族や親族がいる場合は「扶養事実を確認できる書類」を用意します。
具体的には、「非課税証明書」「所得税に関する源泉徴収票のコピー」「雇用保険受給資格者証のコピー」などの書類です。
手続きはこれらの書類をそろえて、加入していた健康保険組合の窓口に持参して行います。

扶養家族になる

社会保険を継続できる2つ目のケースには「扶養家族になる」ことが挙げられます。配偶者や子どもなど家族内で社会保険に加入している人がいれば、その保険の被扶養者となる可能性があります。

パートやアルバイトが社会保険に入るケース

アルバイトやパートなどの雇用形態でも、条件を満たせば社会保険に入れるケースがあります。具体的には、「1週間あたり定められた労働時間が20時間以上」なおかつ「雇用の見込みが1年以上」などです。ただし、基本的に学生は社会保険に加入できなません。夜間や定時制の学生は対象となります。

まとめ

会社を辞めて次の仕事が見つかるまでは、基本的に国民健康保険に加入するケースが多いでしょう。国民健康保険への切り替え手続きは退職者本人で行うケースがほとんどですが、任意継続の場合は会社がフォローする場面も多々あります。また、国民健康保険に関する相談を受ける可能性も十分に考えられるでしょう。このような事態にスムーズに対応するためにも、人事労務担当者は健康保険の知識を幅広く身につけておきたいものです。