2025年の崖とは?経産省DXレポートが示す問題と対策 | NECソリューションイノベータ

サイト内の現在位置

コラム

2025年の崖とは?
経産省DXレポートが示す問題と対策

UPDATE : 2022.06.03

経済産業省が警告を発する「2025年の崖」が迫ってきています。企業のDX推進格差が大きくなる昨今、次の時代に生き残り、活躍できる企業であり続けるには何が必要なのでしょうか? ここではその対策をまとめた「DXレポート」の内容を踏まえ、2025年の崖を克服していくための方法を解説します。

INDEX

2025年の崖とは?
経済産業省のDXレポートで提起

「2025年の崖」は、経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』に記された言葉です。あらゆる産業でデジタル技術を活用したパラダイムシフトが起きている中、多くの企業が漠然と感じていた危機感を具現化する表現として話題となりました。

DXレポートでは、多くの企業がデジタル技術活用の重要性に気がついていながらも、何をどうすれば良いのかの見極めができておらず、「老朽化、複雑化、ブラックボックス化した既存システムも足かせになっている」としています。その上で、IT人材の不足が2025年までに約43万人にまで拡大すること、多くの企業で利用されているERPの代表的ソリューション「SAP」の標準保守期限が2025年末で終了(その後、2027年末まで延長されています)することなど、2025年までに解決すべき課題が山積している現状を指摘。この状況を改善できない場合には「経済損失が2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある」とし、「2025年の崖」と表現して警告しました。

2025年の崖(引用:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~)zoom拡大する
引用:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

DXとは

「DX」とは、デジタルトランスフォーメーションの略称で、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した言葉です。当初は「ITの浸透が人々の暮らしをより良く変化させる」とされましたが、現在は「IT活用によって事業を革新する」というビジネス用語として使われるようになっています。

なお、経済産業省は後述する『DX推進ガイドライン』の中で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

DXレポートとは

「DXレポート」とは、経済産業省が2018年5月に設置した「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」がとりまとめたレポートを指します。経済産業省はその後、2020年8月にコロナ禍などによる社会環境・事業環境変化を受けて「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(以下、DX研究会)」を新たに設置し、国内のDX推進に向け、新たなレポートやガイドライン、指標などを作成・公表しています。

2022年6月現在、DX研究会からは以下の3つのレポートが公表されています。

  • 『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(2018年9月)
  • 『DXレポート2(中間取りまとめ)』(2020年12月)
  • 『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』(2021年8月)

DX研究会は現在も精力的に活動しており、次なるDXレポートの作成も予定されています。

2025年の崖はなぜ提起された?
DX推進における課題

DXレポートにおいて、なぜ「2025年の崖」が提起されたのか、その背景とDX推進における代表的な4つの課題について解説します。

経営層の戦略やコミットが不足

多くの企業経営者は、将来的な成長や競争力強化のためにDXが必須であることを認識しています。しかしその一方で、具体的にどのようにビジネスを変革していくかについては明確になっていない、あるいは模索中であることが多いと指摘されています。結果、トップからの「AIを使って何かできないか?」「蓄積されたビッグデータを活用したい」といった曖昧な指示によって、ビジネスの革新につながらないPoC(概念実証)が繰り返されているという現状があります。

レガシーシステムのブラックボックス化

老朽化したITシステムが複雑化、ブラックボックス化し、「レガシーシステム」としてDX推進の足かせとなっていることも大きな課題の1つです。レガシーシステムは「ドキュメントが整理されておらず内部構造を誰も把握できていない」「他のシステムとのデータ連係が困難」「技術的な成約や性能の限界がある」など、さまざまな問題を生み出します。加えて、事業部単位の最適化を優先したことで社内にいくつものレガシーシステムが乱立し、全社横断でのデータ利活用が困難になっているケースも多く見受けられます。
また、一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の企業IT動向調査報告書 2017によると、国内企業におけるIT関連費用の約80%が現行ビジネス(システム)の維持に割り当てられてしまい、将来に向けた戦略的なIT投資ができない状況にあります。DX推進のためには、レガシーシステムからの脱却が求められています。

IT人材の不足やITエンジニアの確保が困難

かつて大規模なシステム開発を行ってきた人材の多くが定年退職を迎えており、属人的なノウハウの多くが社内から失われ、システムのブラックボックス化を加速させています。先進の技術を学んだ若い人材を老朽化・複雑化したシステムのメンテナンスを担わせようとしても、能力が活かしきれません。また、若いエンジニアにとって魅力的な業務に思えず、離職してしまうケースも。DX推進を担うITエンジニアの活用や育成が困難な環境となっています。

ユーザー企業とベンダー企業の関係性

日本ではユーザー企業よりもベンダー企業に多くのITエンジニアが所属しており、そもそもノウハウが社内に蓄積しにくいという土壌があります。そのため、社内システムの開発においては、要となる要件定義からベンダーに依頼するというケースも少なくありません。DX推進にはシステム開発においてユーザー企業のコミットメントが重要なのですが、このような状況では困難です。また、ユーザー企業自体がシステムにどのような課題があるかを把握できず、開発中に課題が明らかになり、開発期間や費用の増大を招くというケースも。転じて、ユーザー企業とベンダー企業の係争に発展する事態も発生しています。

2025年の崖を克服するために
DXレポートが示す対応策

経済産業省のDX研究会はこうした実情を踏まえ、2025年の崖を克服するための「DX実現シナリオ」を提示しました。このシナリオを実現することで、2030年には実質GDPを130兆円以上押し上げるとしています。そして経済産業省は、そのために個々の企業が参考にするべき「DX推進ガイドライン」や「DX推進指標」などを提示。ここではその詳細について解説します。

DX実現シナリオ(引用:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~)zoom拡大する
引用:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

DX推進ガイドラインの策定

「DX推進ガイドライン」とは、経済産業省が配布している『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0 』のことです。「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」という2つの柱で構成されています。経営者はこれを元に押さえておくべき事項を明確化できますし、取締役会や株主が企業のDX推進への取り組みを評価する際のガイドラインとしても利用できます。自社の抱えている課題の洗い出しや共有に活用しましょう。

DX推進ガイドラインの構成(引用:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン (DX推進ガイドライン)Ver. 1.0 )zoom拡大する
引用:「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン (DX推進ガイドライン) Ver. 1.0 」(経済産業省)

DX推進指標の活用

「DX推進指標」とは、経済産業省が配布している『「DX推進指標」とそのガイダンス』のことです。前述した「DX推進ガイドライン」を構成する2つの柱をより細かく指標化したもので、提示された「クエスチョン」に回答していくことによって自社のDX推進状況を自己診断できる「気づきの機会を提供するためのツール」です。自社の取り組みの現状やあるべき姿とのギャップを部署横断で認識・共有し、必要なアクションにつなげていくために活用しましょう。

「DX推進指標」の構成(引用:「DX推進指標」とそのガイダンス)zoom拡大する
引用:「DX推進指標」とそのガイダンス(経済産業省)

ITシステムの刷新

DXを推し進めていくにあたり、モダンなITシステムへの刷新は必須となりますが、それには膨大な時間とコスト、そしてリスクがともないます。DXレポートではそれらを最低限に抑えるために次のことを提示しています。

  • ①刷新後のシステムが実現すべきゴールイメージを共有すること
  • ②不要なシステムを廃棄し、刷新前に軽量化すること
  • ③マイクロサービス技術などの活用で将来的な拡張性を確保すること
  • ④事業部間の協調領域における共通プラットフォームの構築

①と②についてはDX推進ガイドラインでのチェックがおすすめです。

ベンダー企業との新たな関係

DX推進のためにはベンダー企業との関係性も新たなものにするべきでしょう。DXレポートでは、継続的なシステム再構築やアジャイル開発といったDXに適した形態に契約を見直すことを勧めています。さらに、業界内で共同研究を行う技術研究組合や、契約後のトラブル対応にADR(裁判外紛争解決手続)を用いることなども有用だとしています。

DX人材の育成・確保

多くの企業が頭を抱えているDX人材の育成・確保については、DX推進の過程で、既存システムの維持・保守業務に従事しているエンジニアをDX分野にスキルシフトする必要性を示しています。加えて、アジャイル開発の実践を通じ、事業部門人材のIT人材化を提案。経済産業省が定める「ITスキル標準(ITSS)」や「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を用いた人材育成なども有効としています。

DX推進において
企業が目指すべき方向性

ここまでの解説は2018年に発表されたDXレポート初版に基づくもので、レポートの主旨は、2025年までに老朽化しブラックボックスとなった既存システムの刷新に向け、計画的なDX推進を促すものでした。しかしその後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会環境・事業環境が大きく変化。結果として、コロナ禍において対応できた企業と対応できなかった企業の格差が拡大する、という現象が起きました。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が「DX推進指標」の自己診断結果を分析したところ、2020年10月時点で「9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況」であることも明らかになっています。

こうした状況にともない、経済産業省はDXを加速させるための取り組みを議論し、議論の成果を新たなDXレポートとして公開しています。ここではその中から重要と思われる象徴的なポイントについて解説します。

「デジタル社会とデジタル産業の姿」を把握する

DXを推進していくにあたり、これからの社会と産業のかたちを正しく把握しておくことが大切です。2021年8月に発表された『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』では、社会全体でデジタル化が進む中、企業が変化に対応し「データとデジタル技術を駆使して新たな価値を産み出すことが求められている」とし、デジタル社会とデジタル産業の姿を下図のようにまとめています。

デジタル社会とデジタル産業の姿(引用:DXレポート2.1(DXレポート2追補版))zoom拡大する
引用:「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」(経済産業省)

「デジタル産業を構成する企業」として

また、『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』では、デジタル産業を構成する企業が目指すべき姿を「価値創出の全体にデジタルケイパビリティを活用し、それらを介して他社・顧客とつながりエコシステムを形成している状態」と表現。デジタルケイパビリティとは「ビジネスケイパビリティ(価値を創出するための事業能力)をソフトウエアによってデジタル化したもの」をいいます。デジタルケイパビリティを駆使し、消費者も含めた産業全体を有機的に連鎖・循環させていくことが、これからの企業に求められているとしています。

デジタル産業(引用:DXレポート2.1(DXレポート2追補版))zoom拡大する
引用:「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」(経済産業省)

まとめ

もはや待ったなしの「2025年の崖」への対応。自社のDX化を実現するためにも、DXレポートを熟読し、まず何をやるべきなのかを明確にしましょう。そして、必要であれば外部ベンダー企業の助力を受けることも有用です。NECソリューションイノベータでは、お客様自身でDXビジョンを策定する段階でのサポートから実現までをお手伝いしています。専門家が伴走することで、段階的に無理なく、ノウハウを得ながら自社システムを刷新していくことが可能です。