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コラム
2030年問題とは?
2040年問題との違いや金融業界のDX活用をわかりやすく解説

UPDATE : 2025.05.16
2030年問題とは、日本の総人口の3人に1人が65歳以上となることで生じる社会問題の総称です。人口減少と少子高齢化によって労働力不足や消費市場の縮小も深刻化し、企業や経済に多大な影響を及ぼすと想定されています。2030年問題が企業に与えるリスクや2040年問題との違いをわかりやすく解説していきます。
INDEX
- 2030年問題とは
- 2030年問題で懸念される4つのリスク
- ①人口減少による労働力不足
- ②専門的な知識やスキルの継承が困難に
- ③国内市場の縮小と国際競争力の低下
- ④外国人労働者の増加に伴う摩擦
- 2030年問題が問題視される7つの業界
- ①物流業界
- ②建設・不動産業界
- ③医療・介護業界
- ④IT業界
- ⑤航空業界
- ⑥観光業界
- ⑦サービス業界
- 2030年問題と関係のある課題
- 2025年問題
- 2040年問題
- 2050年問題
- 2054年問題
- 2030年問題と2040年問題の違い
- 2030年問題で企業が取るべき対策とは
- 働き方改革や労働環境の整備
- 外国人労働者やシニア人材の活用
- リスキリングによる人材育成
- スキル・ノウハウのマニュアル化
- デジタル化とDX活用の推進
- 金融業界における2030年問題とは
- 金融業界における2030年問題に向けたDX活用とは
- FinTech
- AI
- IoT
- NECソリューションイノベータが提供する金融業務支援
- 金融機関向け・取引履歴検索システム
- 為替集中業務アウトソーシングサービス
- まとめ
2030年問題とは
2030年問題とは、現在の日本が直面している少子高齢化・人口減少がさらに進行した結果、2030年前後に顕在化すると予想されているさまざまな社会問題の総称です。
生産年齢人口の大幅減少によって多くの企業で人材不足が深刻化し、人材獲得競争の激化や人件費の高騰など、経済・社会全体に大きな影響を及ぼすと考えられています。
内閣府が公表している「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年10月時点の総人口1億2,435万人のうち、65歳以上の人口が3,623万人となっています。高齢化率は29.1%に上っており、高齢者が総人口の1/4以上を占めている状況です。さらに2030年には高齢者の割合が約3割に達すると見込まれており、あらゆる領域への影響が懸念されています。

2030年問題で懸念される4つのリスク
企業にも深刻な影響を与えることが予想される2030年問題。ここでは2030年問題がもたらすリスクについて解説します。
①人口減少による労働力不足
現在の日本では、高齢化が進む一方で出生数は減少を続けています。
1950年には65歳以上1人に対して15〜64歳の現役世代が12.1人いましたが、2023年には2.0人になりました。労働人口の減少によって予測されるのは深刻な人手不足です。2030年には7,073万人の労働需要に対し、労働供給は6,429万人と予測されており、約644万人の人手不足が見込まれています。生産年齢人口の減少は経済活動の縮小や税収減少を招くため、高齢者や社会を支える財源不足につながる恐れがあります。
②専門的な知識やスキルの継承が困難に
少子高齢化による労働人口の減少は、事業継続のための後継者不足も引き起こします。熟練社員の大量退職に伴い、専門的な技術やノウハウそのものが次世代へ継承することが難しくなるからです。
特に高度な技術が求められる分野では、ベテランが持つ暗黙知を形式知へと転換することが求められています。個人が蓄積している知識や技術を言語化し、チェックリストや作業標準書などを作成してマニュアル化を図り、若手に技術を継承する仕組みづくりが必要です。この技術継承が滞ると、企業の競争力低下や品質維持にも影響が出る可能性が高まります。
③国内市場の縮小と国際競争力の低下
人口の減少によって国内の消費市場が縮小することで、企業の成長機会が減り、国内消費に依存していた業界はビジネスモデルが成立しなくなる可能性もあります。労働人口の減少は経済にマイナスの影響を与え、総人口の減少は国内市場の規模縮小につながってしまうのです。
また投資先としての魅力が低下すればイノベーションも停滞。技術開発の遅れによる日本の国際競争力や経済成長力の低下も懸念されています。
④外国人労働者の増加に伴う摩擦
労働力不足を補うために、多くの業界で外国人労働者の受け入れが進んでいます。その一方で文化や考え方の違いによる摩擦や現場でのトラブルも少なくありません。外国人労働者とのトラブルで多いのは、宗教や生活習慣の相違からくる文化摩擦です。これらの問題を防ぐために、異文化を尊重しながら相互理解を深める取り組みが求められています。
2030年問題が問題視される7つの業界
少子高齢化や人口減少が加速する中、特定の業界では深刻な人手不足やスキル継承問題が顕在化しつつあります。以下では、2030年問題によって大きな影響を受けると懸念されている主要な業界について解説していきます。
①物流業界
もともとドライバーの高齢化が問題となっている物流業界。2030年問題の影響を大きく受け、トラック運転手や仕分け作業員の人手不足はますます顕著になるでしょう。担い手不足が急速に進み、物流網の維持が困難になると想定されています。
一方でインターネットショッピング市場は成長を続けており、EC需要の拡大によって物流需給のバランスが崩れ、配送遅延が発生する可能性も。またドライバー不足が進めばドライバーの賃金を上げざるを得ません。燃料費も高騰しているため物流コストが上昇し、消費者と企業の双方に影響を与える恐れがあります。
②建設・不動産業界
建設業界ではベテラン技術者の大量な現役引退が見込まれており、施工技術や現場管理スキルの継承が大きな課題です。老朽化した社会インフラのメンテナンスや新たな高齢者施設の建設などで建設業の需要は高まる一方、技術者不足による工期の遅延や施工品質の低下が懸念されています。
また不動産業界は他のサービス業と比べて人材確保率が著しく低く、若手世代の入社率低下による高齢化と人手不足が深刻化するでしょう。
③医療・介護業界
高齢者人口の増加により医療や介護サービスの需要が拡大する一方、医師や看護師、介護職の人材確保が難しくなると予想されます。
特に地方では医療現場を支える人材の確保が難しく、医療・介護サービスの提供体制に影響が出る可能性も。地域格差が広がると医療過疎地域が増え、地域住民の健康リスクが上昇する恐れがあります。都市部では患者が集中するため、医療機関の負担増加も懸念材料です。医療格差の拡大が大きな問題として挙げられています。
④IT業界
デジタル化の急速な進展に伴い、IT人材の需要は年々高まっています。しかし、若年層の供給が追いついておらず、今後も技術者不足が続く見込みです。
特にサイバーセキュリティ、AI、ビッグデータなどの高度な技術領域では経験豊富な人材の育成が間に合わず、開発力や競争力の低下が懸念されています。今や多くの分野でIT活用は欠かせなくなっており、高度なスキルを持つ人材の育成はIT業界の急務といえるでしょう。
⑤航空業界
インバウンド客の増加により航空需要はさらに拡大傾向にありますが、人手不足が大きな問題となっています。パイロットや航空整備士など専門人材の高齢化が進んでおり、技術継承や若手の育成が重要な課題として挙げられています。
しかし、パイロットや整備士の育成には長い時間と大きなコストがかかるため、一朝一夕には養成できません。人手不足の加速によって安全運航や便数の確保が困難になる可能性があり、地域路線の縮小や運賃上昇も懸念されています。
⑥観光業界
コロナ禍で事実上の休業を強いられた観光業界では、多くの従業員が他業界へと転職したこともあり人材不足は深刻です。インバウンド需要の高まりを受け、観光客数の回復が見られているものの人手不足により業務が停滞する可能性があります。外国人観光客の受け入れ体制も不十分となる恐れがあり、地域経済への打撃も危惧されています。
観光地での接客・サービス業務を担う人手の確保が難しくなる中、日本の観光業界の強みであったサービス品質の保持が課題です。
⑦サービス業界
サービス業は日本のGDPの約7割を占める基幹産業ですが、外食・小売・宿泊など幅広い分野で人材不足が加速しています。特に大都市圏の人手不足は深刻で、このまま状況が改善されなければ営業時間の短縮や店舗数の減少も避けられません。
自動化やデジタル技術の活用が進んでいますが、顧客対応がメインのサービス業では人が担う業務の継続が困難になる恐れがあります。
2030年問題と関係のある課題
少子高齢化と人口減少に関連する社会課題は、2030年の前後にも表面化すると想定されています。長期的な視点で対策を講じるためにも、2030年と密接に関連する課題について理解を深めていきましょう。
2025年問題
2025年には第一次ベビーブームに誕生した「団塊の世代」がすべて75歳以上となり、日本社会の構造が大きく変化します。人口の約5人に1人が後期高齢者となるため、医療・介護の需要が拡大し、社会保障費も急速に増大。団塊の世代の大量離職による労働力の減少や人材不足も明らかとなっています。2030年問題の基盤となる、超高齢化社会の本格的な幕開けともいえます。
2040年問題
2040年は、第二次ベビーブーム期に生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳を超える年です。高齢者人口がピークを迎え、総人口に占める割合が過去最大の約35%に達すると推測されています。高齢化の進行と15〜64歳の現役世代の減少により、現行の社会保障制度が継続できなくなる可能性があります。深刻な労働力不足も懸念されており、地域社会の維持が困難になる自治体も増加する見込みです。また、高度経済成長期以降に整備された公共インフラの老朽化対策も大きな課題となっています。
2050年問題
少子高齢化の進行と人口減少により、社会や経済において新たな局面を迎える2050年。日本の総人口は約1億人まで減少すると推測されています。一方で65歳以上の高齢者人口は全体の約38%まで上昇する見込みで、人口減少社会と超高齢化社会が現実となる可能性が示唆されています。人口構造の変化は需要構造にも大きな影響を与えることになるでしょう。国内市場の極端な縮小や産業構造の再編が求められ、経済・社会全体に深刻な影響を及ぼすと予測されています。
2054年問題
「団塊ジュニア世代」がすべて75歳以上となり、再び後期高齢者人口が大きく増加することで、2054年には4人に1人が75歳以上の「超々高齢化社会」に突入します。高齢者の増加と現役世代の急減により、医療と介護の分野では第2のピークが到来する恐れもあるでしょう。2040年以降に一度落ち着いた社会保障費も再び増大すると懸念されています。現役世代への租税や保険料の負担にも限界があるため、社会保障制度の変革が起きる可能性も否定できません。
2030年問題と2040年問題の違い
2030年問題と2040年問題はいずれも少子高齢化に起因する課題ですが、その深刻度には違いがあります。
2030年時点では労働力人口の減少により高齢者や社会を支える財源不足が懸念されるのに対し、2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となるため、財源不足だけでなく社会制度そのものの維持が困難となる見込みです。
金融業界への影響にも差があります。2030年時点では高齢化による資産運用ニーズの増加や、人口減少による市場縮小への対応が課題となりますが、2040年には国内経済のさらなる縮小と人材不足が進み、従来のビジネスモデルが立ち行かなくなる可能性も高まるでしょう。
2030年問題で企業が取るべき対策とは
少子高齢化による労働力人口の減少は、企業に大きな影響を与えます。2030年問題の深刻な課題である「人材不足」に対して取るべき施策には以下が挙げられます。企業の持続的な発展のためには今から適切な対策を講じることが必要です。
働き方改革や労働環境の整備
テレワークやフレックスタイム制の導入で働き方改革を推進し、柔軟なワークスタイルを可能にすることは人材確保に有効です。育児や介護などの理由で出社が難しく、就職を諦めていた人材も、働き方を選択できるようになります。時間や場所にとらわれない働き方の実現によって就職の間口を広げる企業は求職者にも魅力的に映り、人材確保につながると考えられます。また社員の労働環境改善は定着率向上にも寄与するでしょう。
外国人労働者やシニア人材の活用
人材不足を補うためには、若年層以外の多様な人材活用も重要です。経験豊富なシニア層の労働力が人手不足に悩む現場での貴重な戦力となり得ます。企業がミドルシニア向けの研修を強化し、長期的なキャリアプランをサポートすることも有用です。また、外国人労働者の雇用も重要度を増しています。外国人労働者やシニア人材が働きやすいような受け入れ体制を整え、幅広い人材を戦力化することが求められています。

リスキリングによる人材育成
社内の人材に新たなスキルを習得させる「リスキリング」によって人材不足に対応する戦略も有効です。リスキリングとは、社員が現在とは異なる職務に必要なスキルを身につけることを意味します。社員を別の職種へ円滑に配置転換したり、新しい技術に対応できるように育成したりする取り組みです。デジタル化で一部の職種が人材過剰となる可能性も指摘されているため、既存社員のスキルアップを支援し長期的に活躍してもらうことが企業の持続的発展を促進するでしょう。
スキル・ノウハウのマニュアル化
技術やノウハウの属人化を防ぎ、組織全体で共有する取り組みも不可欠です。ベテラン社員が蓄積した知識や技能を見える化し、マニュアルやナレッジデータベースとして残すことで、世代交代時の技術承継を円滑に行っていきます。また、熟練者の持つ暗黙知をチェックリストや標準作業手順書に落とし込んで共有する「ナレッジマネジメント」によって、引退後もノウハウが組織に残ります。人材育成や業務品質の維持には欠かせない経営手法の一つです。
デジタル化とDX活用の推進
2030年問題対策の要となるのは、デジタル技術の活用によって組織や業務を変革する「DX推進」です。手作業で行ってきた業務をIT化して業務時間短縮やミス削減を図り、限られた人員でも効率を維持していきます。さらに、DXを積極的に行うことで業務プロセスのみならずビジネスモデルまで変革し、新たな付加価値を生み出すことも可能。デジタル化とDXを同時に推進することで、生産性向上と競争力強化が期待できるでしょう。
金融業界における2030年問題とは
金融業界でも2030年問題に起因する労働力不足やデジタル化の遅れ、業界競争の変化が大きな課題となっています。
高齢化の進展でシニア層の資産運用ニーズが増加する一方、人口減少による国内経済規模の縮小で従来の融資中心の収益モデルが揺らぎつつあります。
また、レガシーシステムへの依存がイノベーションの阻害要因となっており、新技術の採用が遅れがちであることも懸念材料です。デジタルネイティブ世代が台頭するFinTech企業や異業種が金融サービスに参入する中、顧客ニーズの変化に対応できない金融機関は競争力低下に直面しています。
金融業界における2030年問題に向けたDX活用とは
2030年問題がもたらす課題に対し、金融業界ではDXの活用が不可欠です。FinTechやAI、IoTなど先端技術を取り入れることで、人手不足の緩和やサービス革新を図ります。
FinTech
FinTechはFinance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。革新的なサービスや事業領域を指しており、金融業界のDXを索引する存在です。
具体例として、モバイル決済・電子マネーやオンラインバンキングといったキャッシュレス決済サービス、AIを活用した非対面チャットボットによる顧客対応などが挙げられます。これらのサービスにより利用者の利便性が向上し、企業にとっても新たなビジネス機会の創出や業務コストの削減につながっています。
また、RPAなどデジタルツールによるバックオフィス業務の自動化もFinTechの一分野。限られた人員で大量の取引処理が可能となるため、2030年問題への対応策として注目されています。
AI
AI(人工知能)は金融分野で幅広く活用されつつあり、業務効率化とサービス高度化の要となっています。
多くの銀行が導入しているAIチャットボットは、顧客からの問い合わせに24時間365日対応可能です。これによって顧客満足度が高まるだけでなく、有人対応に割いていたリソースも削減できています。
同時に、AIのビッグデータ解析によって与信審査や投資判断も高度化。さらに、従来は人手で行っていた書類の点検・仕分けをAIが自動判定する取り組みも進んでおり、AIの導入で省力化と作業精度向上を両立しています。
IoT
あらゆるモノがインターネットにつながるIoTも金融サービスの革新に寄与しています。
センサーや端末で取得されるデータを金融商品設計に反映することで、利用実態に即したサービス提供が可能に。顧客のニーズに合わせた金融商品の提供や、リアルタイムのモニタリングによる与信管理の高度化を実現します。人手不足が懸念される中、IoTの活用によって質の高いサービス維持が期待できるでしょう。
NECソリューションイノベータが提供する金融業務支援
NECソリューションイノベータでは、金融業務の生産性向上を支援するソリューションを提供しています。革新的なシステムやアウトソーシングサービスによって金融機関が抱える問題を解消し、業務効率化とコスト削減をサポートします。
金融機関向け・取引履歴検索システム
膨大な取引履歴データから必要な情報を高速検索し、照会業務の効率化とコスト削減を実現する先進のシステムです。誰でも使える簡単な操作性と充実したセキュリティ機能により、旧来システムの課題を解決する仕組みとなっています。
従来の構造では各支店から専門部署へ取引履歴の照会を依頼しており、対応に時間と手間がかかっていました。本システムの導入によって、顧客からの過去取引の問い合わせや税務署・警察からの調査依頼にもスムーズに検索対応でき、迅速な情報提供が可能となります。属人化しがちな照会対応を標準化できるため、これからの金融機関には不可欠のシステムといえます。
為替集中業務アウトソーシングサービス
NECソリューションイノベータでは、信用金庫の振込業務などの為替事務を専用センターで一括処理するBPOサービスも展開しています。FISC(金融情報システムセンター)基準準拠の高い安全性の下、煩雑な為替バックオフィス業務をセンター側で代行するサービスです。
これにより各信用金庫で事務要員を抱える必要がなくなるため、人件費や研修コストの削減に加えて、人員確保やシフト管理の負担も抑えることができます。また、センター設備の利用によりシステム投資や保守負担も大幅に軽減。為替事務における「人的コスト」「設備コスト」を解消し、事務処理の高速化と品質向上に貢献します。
まとめ
金融業界における2030年問題への対応は喫緊の課題となっており、各企業が早期から人材戦略とDX戦略を両輪で推進することが求められています。人口減少が進む中では従来の経営モデルが立ち行かなくなる可能性も高く、働き方改革や人材育成策による「労働力確保」と、FinTech・AIなどデジタル技術の活用による「業務改革」を組み合わせて乗り越えていくことが不可欠です。デジタル化とDXの同時推進は、人手不足による生産性低下を補いながら新たな価値創出も期待できます。これらの取り組みで2030年以降も企業の持続的な成長と競争力維持が目指せるでしょう。