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リカーリングビジネスの構築 第1回 利益をだせるビジネスモデルを創造する

リカーリングビジネスの構築 第1回

利益をだせるビジネスモデルを創造する

  • 顧客満足は絶対値がなく評価は相対的
  • サービス価値を高める3つの分類
  • 顧客満足と収益を結ぶカギとなる3つのロイヤルティ

喜ばれるサービスを提供する

サービス事業を強化するためには、「喜ばれるサービス」を提供しなければなりません。「喜ばれるサービス」を提供するためには、お客様が何を期待されているのかを掴まなければなりません。そして、「期待に応えるサービス内容」と「期待に応えるサービス品質」と「納得してもらえるサービス価格」を実現しなければなりません。これができると、「顧客満足」や「感動体験」が生まれ、これを継続しつづけると、「顧客ロイヤルティ」や「ブランド」を醸成することができるのです。(図1)

喜ばれるサービスを提供する

(図1)喜ばれるサービスを提供する

サービス品質を磨き上げる

期待に応えるサービス内容はサービスによって異なりますが、期待に応えるサービス品質は抽象化することができます。著者は、サービス品質を正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象の6つの品質要素に分解しています。そして(図2)のように、それぞれの要素に関係するキーワードを列記すると、サービス品質が具体化され分かりやすくなります。正確性と迅速性は、成果品質に大きな影響を与えます。好印象と安心感は、プロセス品質に大きな影響を与えます。そして、共感性と柔軟性は、どちらにも大きな影響を与えます。

サービス品質を6つの要素で定義する(保守サービス)

(図2)サービス品質を6つの要素で定義する(保守サービス)

この6つのサービス品質を(図3)に再編してみました。お客様は、期待と不安が入り混じった状況でサービスを依頼されます。サービス提供者は、この依頼を好印象で迎えなければなりません。ここで好印象を持ってもらえると、いくばくかの信用を得られます。そこで、この信用をベースにして共感性を働かせて、お客様の依頼内容の本質や背景を探ります。もし、お客様が大きな期待を持たれている場合は、会社や店舗のルールぎりぎりいっぱいの柔軟性を働かせて、お客様の期待に応えます。そして、お客様が大きな不安を感じられている場合は、成功事例を説明するなどして安心感を持ってもらいます。一流企業どうしの競争では、正確性、迅速性はちゃんとできて当たり前です。最近では、好印象も当たり前になってきています。ということは、これからのサービスの競争は、共感性と柔軟性と安心感で勝敗が決まるということです。でも、多くの会社は、まだ正確性と迅速性だけを追求しているのではないでしょうか。

6つのサービス品質の役割

(図3)6つのサービス品質の役割

リカーリングビジネスとは

ではここで、著者が考える「リカーリングビジネス」のフレームワーク(図4)を紹介したいと思います。サービス事業を成功させるためには、事業を安定的に継続させる必要があります。つまり、顧客満足を高め、顧客ロイヤルティを高めてリピータを増やさなければなりません。このためには、「提供型サービス」や「適応型サービス」や「共創型サービス」のプロセスを磨き上げる努力が大切です。

サービスビジネスをリカーリングに成功させるフレームワーク

(図4)サービスビジネスをリカーリングに成功させるフレームワーク

また、サービス事業を成功させるためには、サービス事業の収益を向上させなければなりません。日本のサービス産業は顧客満足向上活動に取り組み、多くの企業が満足度を高めてきたと思います。「ありがとう」もたくさんもらえるようになりました。しかし、サービス産業の収益性は、あまり向上できていません。どちらかというと、年々苦しくなってきています。これまで収益を向上するために、サービスの生産性を高める努力はやってきました。少人数のスタッフで長時間労働などに取り組んできました。しかし、これまでやってきたサービスの生産性を高める努力だけでは、サステナブルな事業になりそうにはありません。

収益を向上させるためにやるべきことは3つあります。1つ目は、「理にかなったプライシング」です。日本のサービス産業の経営者は、迷ったら必ず安い方の価格付けを選択します。ディズニーランドもダイソーも世界で最安値だそうです。この傾向が日本のデフレ継続の一因になっていると思います。経営者には、迷ったら高い方の価格付けを選択することをお勧めしたいと思います。2つ目は、「サービスの価値を高める」ことです。お客様に高い価値を感じてもらえると、もう少し高い価格で買ってもらえるのではないでしょうか。これについては、後ほど詳しく説明いたします。3つ目は、「サービスの生産性をあげる」ことです。これは、これまでもそれなりに取り組んできたと思います。そして、これら3つを劇的に改善する可能性を秘めているのが、「利益をだせるビジネスモデルを創造する」ことです。これも後ほど詳しく説明いたします。

顧客満足の本質を再確認する

このフレームワークで、まず理解すべきなのは顧客満足です。(図5)実は、顧客満足には絶対値がなく顧客満足の評価は相対的なのです。お客様が大きな期待を持たれている場合は、それを上回るように頑張るしかないのです。企業のブランド力が高いことは素晴らしいことですが、お客様の事前期待が膨らむため、他社以上のサービスレベルを実現しなければなりません。また、多くの経営者は実績評価だけを重視して、どうすれば満足してもらえるかばかりを考えています。しかし、大切なのはお客様の事前期待を把握することなのです。

顧客満足を高めよう

(図5)顧客満足を高めよう

お客様の事前期待は、お客様のニーズそのものや抱えておられる問題点、競合企業のサービスの経験価値との比較から作られます。顧客満足を向上するために、ただがむしゃらに頑張っていくのは、ムダなコストを膨らませるだけです。満たすべきお客様の事前期待を把握できると、顧客満足向上活動の目標値が定まり、効率的にサービスを改善することができます。まぐれ当たりを狙ったサービスは、ムダが多いのは当然です。(図6)

顧客満足を決める事前期待は何から作られるのか

(図6)顧客満足を決める事前期待は何から作られるのか

なぜサービス企業は、顧客満足を高めたいのでしょうか。多くの経営者に聞いてみると、リピートオーダが欲しいからだといわれます。(図7)のグラフは、顧客満足の評価とリピートオーダの関係を示しています。大不満の時は、当然ですが誰もリピートオーダをだしません。やや不満、普通、やや満足と評価が上がってもリピート率は微増しかしません。そして、大満足になると、一気にリピート率が高まるのです。つまり、前回の顧客満足は2.8だったので次回は3.0を超えたいと目標設定しても、リピート率はほとんど上がらないのでナンセンスです。このことから、顧客満足を平均値で議論しても意味がなく、前回調査でやや満足だったお客様を特定し、そのお客様をどうすれば大満足にできるかを具体化するのが効果的なリピートオーダの作り方だということが分かります。顧客満足アンケートの取り方を工夫すれば、この施策を実現できると思います。

顧客満足には感情的満足と論理的満足がある

(図7)顧客満足には感情的満足と論理的満足がある

また、顧客満足には感情的満足と論理的満足があり、大満足でも論理的満足のお客様は、やや満足より低いリピート率であることが、調査で明らかになっています。論理的満足の主な要素は、「思ったより安かった」です。つまり、安売りや値引きから生まれる顧客満足は、リピートに繋がらないのです。外資系大手カード会社の調査では、論理的満足で大満足のお客様は、やや満足より低いリピート率しかなく、感情的満足で大満足のお客様は、ほぼ100%リピータだったそうです。

サービスの価値を高める

次の努力は、「サービスの価値を高める」ことです。まずは、(図8)のサービスの基本機能価値を高めます。保守サービスを例にすると、「機器を修理する」や「機器を点検する」などが基本機能価値です。これは、サービスの価値の基本ですが、一流企業どうしの競争では、これらはきちんとできて当たり前ともいえます。次は、顧客の事前期待に応えて価値を高めます。「一刻も早く修理してほしい」や「できるだけ安価に修理してほしい」などがこれに当たります。一人ひとりの好みや期待に応えるこの価値は、おもてなし感の高いサービスになり、感情的満足に繋がります。最後の価値は、サービスプロセスを磨き上げることによる価値です。「一人ひとりのお客様に適切に挨拶する」や「お客様に作業内容を説明しながら修理する」などです。これも感情的満足に繋がります。

サービスの価値を高めよう

(図8)サービスの価値を高めよう

サービスの価値は、いろいろ分類できますが、著者は(図9)、(図10)、(図11)が実用的な分類だと思っています。「基本機能価値」、「サービスプロセスを磨く価値」、「事前期待に対応する価値」は、説明してきました。(図11)の「サービス提供者のリテラシ向上による価値」と「顧客のリテラシ向上による価値」は、芸能界やスポーツでは重視されてきましたが、これまで一般的なサービスの価値としては、注目されてきませんでした。しかし、この価値は、感情的満足を呼び、きわめて高い顧客ロイヤルティを実現し、多くのファンを作っています。この価値を一般的なサービスにも活かすべきだと思います。

サービスの価値は、サービスの成果による価値とサービスプロセスを磨くことによる価値から作られる

(図9)サービスの価値は、サービスの成果による価値とサービスプロセスを磨くことによる価値から作られる

サービスの価値は、共通的な事前期待に対応する価値と個別的な事前期待に対応する価値に分類できる

(図10)サービスの価値は、共通的な事前期待に対応する価値と個別的な事前期待に対応する価値に分類できる

サービスの価値は、顧客のリテラシー向上による価値とサービス提供者のリテラシー向上による価値から作られる

(図11)サービスの価値は、顧客のリテラシー向上による価値とサービス提供者のリテラシー向上による価値から作られる

顧客ロイヤルティを獲得する

次は、顧客ロイヤルティの獲得を目指します。顧客満足と収益を結ぶカギとなる考えが顧客ロイヤルティです。顧客ロイヤルティには、「経済ロイヤルティ」と「行動ロイヤルティ」と「心理ロイヤルティ」の3つがあります。(図12)1つ目の「経済ロイヤルティ」は、顧客が経済的に当社に貢献しているかが基準になります。これは企業収益に直結した分かりやすい定義ですが、きわめて企業目線なものです。カスタマジャーニの書籍が多数出版されていますが、多くはこの「経済ロイヤルティ」だけを取り上げています。2つ目の「行動ロイヤルティ」は、顧客の企業に対するアクションに注目します。来店頻度やホームページへのアクセス頻度や滞留時間、イベントへの参加回数、サービスの利用頻度が基準になります。こちらも、企業目線の考え方です。3つ目の「心理ロイヤルティ」は、顧客の当社に対する感情を指標にしたものです。お客様が当社商品やサービスをずっと使い続けたい、買い続けたいという気持ちです。また、友人や家族に商品やサービスを推奨したいという気持ちです。「心理ロイヤルティ」は、顧客から見た企業や商品への愛着の度合いを示しています。これを高めると、ファンになっていただけます。これは、顧客目線の考え方です。

3つのロイヤルティで大切なもの

(図12)3つのロイヤルティで大切なもの

ロイヤルティと収益面の目標を(図12)の右側にまとめました。心理ロイヤルティを高めるためには、お客様を右側にガイドすべきですが、心理ロイヤルティを高めるためには、顧客接点を増やすことも大切なので、行動ロイヤルティを高める必要もあります。その顧客接点で感情的満足を高めて、お客様を右側に誘導していきます。単なる安売りやセット販売などで、経済ロイヤルティを高めるやり方では、結果的に顧客を失うことになってしまいます。

心理ロイヤルティ向上のロジック

(図13)心理ロイヤルティ向上のロジック

心理ロイヤルティを高めるためには、「基本価値を向上する」ことと「顧客体験価値を向上する」ことが必要です。(図13)体験価値とは、お客様が商品を選択して購入し使用するプロセスで生まれる価値です。さらにこれらを具体化すると、「商品やサービスを磨き上げる」ことと「サービスプロセスを磨き上げる」ことになります。心理ロイヤルティを高めるためには、サービスプロセスを磨き上げるウエイトをより高めるべきだと思います。具体的には、(図14)のサービスプロセステンプレートを使ってサービスを設計していきます。

サービスプロセスを磨き上げる(会員制ホテル)

(図14)サービスプロセスを磨き上げる(会員制ホテル)

これまでのサービス設計では、サービス提供者のプロセスだけを議論の対象にしてきました。しかし、この提供者のプロセスとほぼ同期して、顧客プロセスが走っており、これを意識してサービスプロセスを設計すると、考慮すべき点を漏らさずに設計できることが分かりました。例えば、企業の基幹システムがダウンした場合を考えてみます。この基幹システムを開発したシステムインテグレータは、全力で原因究明にあたります。この時、ユーザ企業の情報システム部門は、イライラして原因究明を待っています。このプロセスが定義されていないと、システムインテグレータは、作業に没頭してしまい、1時間以上かかった分析作業で中間報告を入れるアクションを忘れてしまい、大きなクレームに繋がる可能性があります。顧客プロセスを定義して、「待ちの対応」に10分毎に報告を入れるアクションが定義してあると、このクレームを防ぐことができるでしょう。ところが、このようなサービスプロセス設計ができている会社は、ほとんどないのが実態です。

多摩大学大学院 諏訪 良武 教授

著者プロフィール

多摩大学大学院 諏訪 良武 教授

71年
オムロン入社。85年通産省の年通産省のΣプロジェクトに参加。
95年
オムロン情報化推進センター長。
97年
オムロンフィールドエンジニアリングの常務取締役として保守サービス会社の変革を指揮。
04年
OA協会のIT総合賞、第1回コンタクトセンタアワードのマネジメント部門金賞を受賞。
06年~
ワクコンサルティング常務執行役員、
国際大学グローバルコミュニケーションセンターの上席客員研究員。

多摩大学大学院客員教授。サービスや顧客満足を科学的に分析し、
サービス企業の改革を支援するサービスサイエンスを提唱している。
また、問題解決のコンサルティングを主たるビジネスとされている。

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