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徳之島で社内ハッカソンを開催
時代の波に乗るエンジニアを育成するために

「ハッカソン(Hackathon)」とは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を組み合わせた造語。エンジニアがチームを組み、特定のテーマで決められた期間内にアプリやサービスを開発し、その成果を競い合うイベントのことです。
NECソリューションイノベータでは、2018年からオンラインで社内ハッカソンを開催していましたが、2022年より現地集合型のハッカソンも開始。これまでに和歌山県の南紀白浜で開催したほか、今年7月に、鹿児島県の徳之島で行いました。
日常を離れ、自然豊かな徳之島でエンジニアが得る刺激や学びとは。ハッカソンの運営メンバーと参加したエンジニアに聞きました。

非日常空間で短期間の開発に没頭。現地の高校生も参加

ハッカソンの目的は「人材育成」にあると、主催者であるHR戦略室 プロフェッショナルの松本好則は話します。普段の業務では、会社や自宅でPCに向かって黙々と作業を続けることが多いエンジニア。そこから離れて、普段は接することがないメンバーと非日常的な時間を過ごすことで、業務とは違った刺激を受けることができます。

「座学による勉強会やセミナーを受講して技術を知識として得る機会も重要ですが、ハッカソンでは、エンジニアが自分の技術力を存分に発揮して、モノづくりの楽しさを体感してほしいと考えています。今回は、プロボノ活動でつながりを持っていた社員や現地の商工会の方々の後押しを受けて、鹿児島県の徳之島での開催が実現しました」(松本)

HR戦略室 プロフェッショナル 松本好則

徳之島は、南西諸島の奄美群島に属する離島の1つ。周囲およそ80km、人口約24,000人の島です。「長寿の島」「子宝の島」としても知られ、合計特殊出生率は全国トップクラス。2021年7月には、世界自然遺産に登録されました。

観光開発が行われていない豊かな自然と南の島の文化が味わえる徳之島に30人のエンジニアが集合。現地で暮らすフリーランスのエンジニアの方や高校生ら6人の島民の方も参加し、8つのチームに分かれ、2日間の日程でハッカソンを実施しました。徳之島が抱える課題である「休眠施設」「福祉」「ローカルツーリズム」から、チームごとに好きなテーマを選択し、テーマに沿った魅力的なアプリの開発に没頭しました。

松本とともに運営を担う、エンジニアリング推進本部の佐竹江利那とAI・データアナリティクス事業部の山原加奈は現地での様子を次のように話します。

「開催の3ヵ月ほど前に視察へ行き、島民の方々の温かさに触れました。友好的な方が多く、事前に『こうしたらどうか』と具体的な提案をたくさんしてくださったんです。ハッカソン当日には、テーマに沿った島内のスポットを巡りましたが、障がい者の方が働く水耕栽培の見学ができたのも現地の方の提案によるものでした。現場を見学し、現地の方から直接聞いた課題を元にアプリ開発ができたことにより、過去のハッカソンに参加した社員からも『以前は用意されたテーマや課題を提示され、現場の様子を想像するのみで、その土地に対する理解度が十分ではなかったと思います。今回は、実際に現場に行き、自ら地域の方にテーマ以外にも様々な課題を聞くことができたため、より真剣に地域・文化と向き合うことができました。その結果、この島を本当に良くしたいと思いながら開発を行うことができたのは、エンジニアとしてすごく良い経験でした』という感想もあがってきました」(佐竹)

障がい者の方が働く水耕栽培のスポット
休眠状態となっている運動施設
エンジニアリング推進本部 佐竹江利那

また、前回までは数名のグループ単位で参加者を募集していましたが、今回は個人での応募に変更したとのこと。

「参加者は20〜50代で、部署や役職もさまざまでした。グループ単位での参加となると、どうしても気の合う仲間同士のコミュニケーションのみになりがちなので、個人で参加することで横のつながりを広げてもらうのも目的の1つでした。結果、イベントで知り合った参加者同士の交流が活発になったという声もあり、私自身も、全員の顔と名前が一致するほどの交流を図れました 」(山原)

AI・データアナリティクス事業部 山原加奈

松本は、「エンジニアに求められることが変わっている。時代の波に乗るエンジニアになるためにも有効である」とハッカソンの役割を話します。

「島民の方とも話し合いながら、テーマに沿った課題解決のためにアプリを開発するという体験には、大きな意味があると思います。エンジニアの多くは仕様書に沿って開発するのが一般的な流れですが、今後、そうした仕事は減っていくと言われています。世の中の課題に対して、エンジニア自らが解決方法を提案していく力が求められているのです。まずはその必要性に気づき、マインドを変える機会としても、徳之島でのハッカソンには意義があったと思います」(松本)

「どのように貢献するべきか」現地で考えた経験が糧に

参加したエンジニアはどう感じたのでしょうか。南紀白浜でのハッカソンへの参加経験もあるエンタープライズアプリケーション事業部の堀井旦に、今回の応募動機を聞きました。

「まず、日常的な開発環境がオンプレミス(自社保有のサーバなどを利用すること)のため、ハッカソンでクラウドサービスを使ってみたかったんです。そして、限られた時間のなかで、普段利用しないサービスを使った開発を自分がどれほど頑張れるのか、実力を試したいという思いもありました。
徳之島では、実質1日半と限られた時間でしたが、『どのような役割であればチームに貢献できるか』と考えながら、現地で組まれたチームでアプリの開発に関わった経験は貴重です。
仕事では関わる機会のない事業部のメンバーとも知り合うことができました」(堀井)

エンタープライズアプリケーション事業部 主任 堀井旦

さらに、島民の方も参加してのアプリ開発での日常にない刺激が「糧になった」と振り返ります。

「私のチームでは、ライドシェアアプリを作りました。現地の方から『交通の便が悪く、そのために観光客の方々と交流する機会が失われている』という意見があったからです。参加した高校生から『バスが1日で4本しか走っていない』との実情も聞き、課題を解決するためのアプリ開発に励みました。また、現地で生活しているフリーランスのエンジニアの方から、日常の仕事ぶりを聞いたのも勉強になりました。同じエンジニアという職種でありながら、フリーランスと会社員では異なる種類の苦労があることを知り、いい刺激を受けました」(堀井)

今後もハッカソンには「積極的に参加したい」と意欲を示します。

「徳之島では、自分が通常業務では扱わないプログラミング言語を使ったので、そこでつまずいてしまったのは反省です。次の機会には事前に予習してから臨みたいと思います。知らないことにも臆せずに取り組んだり、即席で組まれたチームの中で『自分はどのように活躍できるのか』と考えながら開発に携わった経験を、仕事にも活かしていきたいです」(堀井)

アジャイル型が主流の時代に対応できる人材の育成を

エンジニアが自身の意思で応募するハッカソン。「ハッカソンでの体験を、アジャイル型に対応できるエンジニアの育成につなげたい」と松本は掲げます。

「現代はプロダクトアウトが優先で、リリース後の仕様変更も前提としたアジャイル型開発が求められています。エンジニアも目まぐるしい世の中の変化に柔軟に対応することが必要とされる時代。自分たちが見聞きした体験をもとにアイデアを模索し、コミュニケーションをとり、自ら考えたアプリやサービスをつくるというハッカソンでの経験が活きてくると考えています。
今後も自主的に動こうとするエンジニアがさらに学びの機会を得られるよう、ハッカソンをはじめとした教育の機会を充実させていきます」(松本)


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UPDATE:2024.08.26