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エンジニアが輝く未来に向けたAIとのパートナーシップ

Developers Summit 2024 Summer セッションレポート

2024年7月23〜24日、東京・丸の内のJPタワーにてソフトウェア開発者のための日本最大級のカンファレンス『Developers Summit 2024 Summer』(主催:株式会社翔泳社 CodeZine編集部)が開催されました。23日のセッションには、NECソリューションイノベータから藤井 美穂、堀 研介、加藤 学の3人が登壇。テーマは「Are You Innovative?エンジニアが輝く未来に向けたAIとのパートナーシップ」。開始10分前にはほぼ満席となった会場で、開発現場でのAIの活用事例を紹介しながらSIの未来について考えるセッションとなりました。

「単純なミスが減る」
生産性を上げ品質を改善する生成AI

セッションのトップを務めた藤井は、「皆さん、エンジニアの仕事ってどれくらいあるでしょうか?」と投げかけます。スクリーンいっぱいに映し出されたエンジニアが“やらなければいけない仕事”のなかから、「良いコードを書く」「顧客への魅力的な提案内容を考える」「チームメンバーとのコミュニケーション」など“自分がやりたいこと”をピックアップ。それ以外の、事務作業を含む、開発や保守・運用などの作業でも生成AIに任せられる部分を任せることで、エンジニアが“自分がやりたいこと”、クリエイティブな仕事に使える時間を増やすことを提案しました。

ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部 藤井美穂

では、NECソリューションイノベータでは、具体的にどのように生成AIを活用しているのでしょうか。
今回のセッションでは登壇した3人が、コーディング(開発)・障害解析(保守)・アジャイル開発(マネジメント)という3つの切り口で、それぞれ現場での活用事例を紹介しました。

藤井が掲げたテーマは「生成AIと一緒にコーディング」。使用する生成AIはGitHub Copilotです。「使い方はとても簡単です」と大まかな使用方法を説明した後、具体的な事例を紹介しました。その効果を定量的に検証してみたところ、使用した4人の担当者の開発生産性が向上。そして、GitHub Copilotの提案を鵜呑みにした1人の担当者を除き、品質も改善しました。生成AIの答えが必ずしも正解とは言えません。使う側に提案内容の正しさを判断する力も求められます。

GitHub Copilotの効果を検証した結果、開発生産性、品質ともに改善

また、GitHub Copilotを使うことで、開発者の「イライラが軽減された」「繰り返し作業が迅速になった」というアンケート結果にも言及。生成AIと一緒にコーディングすることで「単純なミスが減る」「既存コードの理解が進む」「セルフレビューの品質が上がる」「ドキュメントも同時に作ってくれる」などのメリットをあらためて整理。エンジニアがやりたいことの時間づくりにつながることを強調しました。

藤井が考える「生成AIと一緒にコーディングする」メリット

4日かかった障害解析を、AIなら10分・3回の会話で解決

次に登壇した堀のテーマは「障害解析はAIにお任せ」です。「設計から開発テストまでの工程と生成AIの相性は良いのですが、障害の調査などはまだ手動ではないでしょうか?」堀は、Amazon Qで障害解析にアプローチする事例を紹介しました。Amazon Qは、質問を投げかけることで問題解決の方法を提示してくれる生成AIです。

ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部 堀研介

事例に挙げた障害は、オンプレミスで用意していたインターネットバンキングのセキュリティを強化するためにAWS Shield Advancedを導入したところ、タイムアウトが発生したというものです。原因はALBのルーティングによるものでした。この障害が発生してから、ALBのルーティングに問題があることを突き止め、解決するまで約4日を要しました。

問題解析までに約4日を要した障害

そこで、上記の障害と類似の環境を作り、Amazon Qが解決できるか検証しました。

質問の精度を上げることで、Amazon Qは3回の会話で障害を解析

最初は堀と生成AIの会話が噛み合わなかった様子に、会場から笑いが起こりましたが、質問の精度を上げていくことでずばり的を射た回答を提示。約4日かかった障害の解析が、Amazon Qを使うことでわずか約10分・3回の会話で解決したのです。堀は障害解析をAIと一緒に行う未来に期待が持てると力を込めました。

小さくつまずいて改善するアジャイル開発とAIの相性

活用事例の紹介、3つ目のテーマは加藤による「アジャイル開発とAIのイイ感じな関係」です。加藤は、柔軟で迅速にソフトウェアを作るアジャイル開発にGitHub Copilotを導入しました。当時、プロジェクトのメンバーは作業に追われている状況だったため、作業時間の短縮や、生成AIを活用したペアプログラミングの可能性を期待し、チームとしてGitHub Copilotの導入を決断しました。生成AIの活用によって生まれた時間を何に使うかは、チームメンバーが各自考えます。サイクル内の検討作業に充てるのもよし、リフレッシュや学習時間に使うのもよし、エンジニアが自分の時間として費やします。

ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部 加藤学

実際にはGitHub Copilotから期待通りの回答が得られなかったり、間違った回答をされたりすることも。しかし加藤は「毎回小さくつまずいて改善を重ねるアジャイル開発に、生成AIはむしろ合っている」と述べました。

アジャイル開発メンバーへのアンケート結果

GitHub Copilotを導入し、2~3カ月後に実施したメンバーへのアンケートでは、全員が生成AIの導入により開発時間が短縮し、その分を検討作業や新しい技術の調査、資料のチェックなどに充てられていると回答しました。たった2~3ヵ月で、メンバー全員がその効果を実感するに至っています。小さな失敗と改善を繰り返すことで、生成AIとのいい関係性が作られると加藤は話します。

最後は藤井が「生成AIは、時には優しい先輩のように、時には気が利く後輩のように、隣でエンジニアの仕事を支えてくれるパートナーである」、そして「AIをパートナーに『やりたいこと』に集中することで、エンジニアがより輝ける」と未来への展望を語り、セッションを終えました。

藤井が描くエンジニアとAIの未来図

発表を終えて
3人があらためて語る、AIとのパートナーシップ

登壇後の3人に、今回のセッションの狙い、AIとのコミュニケーションの取り方、ウォーターフォールにはないメリット、そしてエンジニア視点でのNECソリューションイノベータの働く環境について聞きました。

「期待する回答をAIから得るには、1つ聞いて違ったらまた別のアプローチをするなど、いろいろ試すしかありません。『コーディングするよりも、質問を書いている時間の方が長いかもしれない』と言うエンジニアもいます。AIの回答の精査は、エンジニアの開発力が試されるテーマです。AIからの回答でも先輩からの回答でも、自分で精査しなければいけないという意味では同じです。ただ、人間と違って生成AIはいつでも質問できます。特に開発経験の浅いエンジニアはいつでも質問し、回答を精査することでどんどん開発力を高めていく。そんな環境を実現させたいと考えています」(藤井)

発展途上の生成AIの活用にはリスクもありますが、藤井は「NECソリューションイノベータは挑戦を推奨してくれる」と話します。

「私はもともと新しい技術をどんどん取り込んでサービスを提供していきたいと考えていました。当社にはエンジニアの挑戦を推奨してくれるカルチャーがあります。これからも新しい技術を見つけて、試して、見定めることに挑戦していきたいです。新しい技術の探索をはじめ、社外の研修も自由に受けさせてくれるなど、教育体制も整っています。自分が進みたい方向に進めるチャンスが豊富にあるので、キャリアを前進させたい方にはおすすめの環境です」(藤井)

堀は、「生成AIと共生していく未来がある」と言います。

「今回のセッションは、生成AIの専門家で、AI活用の道を切り開いてくれた藤井が主でした。『生成AIの導入で仕事を奪われるのではなく、生成AIと共生していく未来がある』という方向で3人の世界観が合致し、セッションを組み立てたのです。生成AIは現在が黎明期で、先行者利益が大きい。まず導入してみることが大切で、そのための投資をしてくれる経営者は技術に対する先見の明や理解があるのだと感じています」(堀)

そのうえで、今後必要なのは、新たな価値創造のための生成AIの活用であると語ります。

「当社は2030Visionにて、『システムインテグレータ』として、技術力・開発力を進化させ、お客様価値の最大化を実現するとともに、『バリュー・プロバイダ』として、人や社会の未来を描き、新たな価値の創造に挑戦することを掲げています。今回のセッションのテーマは『システムインテグレーター』として、生産性を改善し、お客様の利益を作り出す分野での生成AIの活用に関するものです。一方で、『バリュー・プロバイダ』、つまり新たな価値の創造をするための生成AIの活用については、取り組みがまだ少ないと感じています。当社のカルチャーを活かして生成AIの活用にトライしていくつもりですし、興味のあるエンジニアと一緒に、その変化を楽しんでいきたいですね」(堀)

加藤は、ウォーターフォールと比較してアジャイル型のプロジェクトのメリットを話し、「人間」の必要性についても言及しました。

「アジャイル型の場合は、参加したメンバーがそのプロジェクト内で成長できますし、次のプロジェクトですぐに活かせます。生成AIとの相性はとても良いのです。一方で、開発の前の段階、つまり『人が何を望んでいるか』『その望みを形にするには何が必要か』を見極めるには、人間が適切に判断することが求められます。エンジニアは生成AIが導入されることによって起きる変化に合わせて、スタイルを変えていく必要があると考えています」

加藤が重視しているのは「お客様を見て、物を作っていくこと」。

「今回はアジャイル開発について紹介しましたが、私自身はアーキテクトがメインです。私はユーザーであるお客様を見て、物を作っていくことを重視しています。これからもお客様起点の物作りを意識して活動していきたいですね。1万人以上のエンジニアが所属する当社では、大きなシステムに携わる醍醐味を味わえます。そんな規模感の中で成長したい方にはふさわしい環境だと思います」(加藤)

セッション後に行われた参加者の方とのQ&Aトークでは、生成AIとのパートナーシップ以前の課題として、「そもそもどうすれば自分の会社に生成AIを導入できるか」という質問が多かったとのこと。すでに生成AIの活用を進めているNECソリューションイノベータでは、今後もエンジニアが成長、活躍できるよう、新たにチャレンジしやすい環境をさらに整備していきます。

<イベント概要>

イベント名 Developers Summit 2024 Summer
主催 株式会社翔泳社 CodeZine編集部
開催日 2024年7月23日(火)12:40 ~ 13:10
登壇者 NECソリューションイノベータ株式会社
ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部
藤井美穂(ふじい・みほ)
Windowsアプリやスマホアプリ、Linux向けファームウェア開発など、ハードウェアからアプリケーションまで幅広いレイヤーの開発を10年以上経験。 その後、ITアーキテクトとして、AWSシステム開発、AIモデル開発、XRシステム開発と活動の範囲を拡大。
NECソリューションイノベータ株式会社
ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部
堀研介(ほり・けんすけ)
入社より主に鉄道関連のシステムを担当。 長年、大規模システムを中心に活動てきたが、2019年よりクラウド領域にリスキル。 現在は、API、顔認証決済、AI売買審査などでクラウド基盤チームをリードしている。
NECソリューションイノベータ株式会社
ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部
加藤学(かとう・まなぶ)
1993年に入社後、金融系の基盤システムを中心に、多数のシステム設計・開発に関わる。 2018年頃からクラウドに関わり、マイクロサービス、認証サービス等のクラウドシステムを担当するなかでアジャイル開発にも着手。 現在は ITアーキテクトとして複数の案件に関わっている。
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UPDATE:2024.09.09