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データドリブン経営のカギは?
ダッシュボード活用で意思決定を加速

ITの利活用が企業の競争力を左右する時代において、社内のDX化は多くの企業にとって避けて通れない課題です。NECソリューションイノベータでも、「データに基づく意思決定の高度化」を目的に、経営ダッシュボードを活用したデータドリブン経営を推進してきました。
自社で先行導入し、知見を蓄積するため、「クライアントゼロ」のプロジェクトを始動。単なるデータの可視化にとどまらない、「実際に使われる」ダッシュボードの構築に挑みました。取り組みの中心となった営業統括本部とソリューションサービス事業ラインの5名のプロジェクトメンバーにその背景や成果について聞きました。

営業DXと経営ダッシュボード構築の背景

あらゆるビジネスシーンにおいて、迅速かつ的確な意思決定が求められる昨今、経験や勘に頼るのではなく、データに基づいた意思決定が求められる場面は増え続けています。営業統括本部の細川百合子は、社内の状況を振り返ります。

細川 百合子(ほそかわ・ゆりこ)
営業統括本部 プロフェッショナル

「コロナ禍以降、営業活動のDX化が進む中で、より高度なデータ活用の必要性が高まっていました。そのタイミングで、営業統括本部のマネジメント層から『社内に蓄積されるデータを可視化し、戦略的に活用できる仕組みがほしい』という声が上がりました。そこで、NECグループが推進する、自社をゼロ番目のクライアントとする『クライアントゼロ』の取り組みの一環として、DXを加速させるプロジェクトが始動。データを分析・可視化するビジネスインテリジェンス(BI)ツールTableauを活用し、経営ダッシュボードの構築と、それを活用したデータドリブン経営の実践に取り組みました」(細川)

今回、経営ダッシュボードの構築を担ったのは、ソリューションサービス事業ラインの北海道エリアのエンジニアです。その中心となったのが、Tableauの社内教育などを手掛ける鈴木美香子です。構築にあたり、技術面で課題があったと語ります。

鈴木 美香子(すずき・みかこ)
ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部 主任

「これまでも社内には多くのダッシュボードがありましたが、十分に活用されているとは言えませんでした。データをグラフ化して『見える化』することにとどまり、それがどのように意思決定や行動につながるのかが明確になっていなかったのです」(鈴木)

鈴木と同様にTableauの社内教育や社内向けのダッシュボード作成を行う井上千夏も、データ活用の真の意義について続けて指摘します。

「視覚化がゴールになってしまうと、データを効果的に利活用する本来の目的には到達できません。データの力を最大限に引き出すためには、可視化によって得られた示唆を具体的な行動につなげ、その結果、新たな課題を見つける。このビジュアル分析のサイクルを回すことによって、データの価値は最大化されるのです」(井上)

隔週の会議を通じた営業と技術者チームの連携

北海道エリアでは、異なる部署の技術者同士が専門分野を超えて、横断的に連携できる組織を作り、データの利活用を推進する取り組みが以前より続けられていました。今回のプロジェクトでは、そうした取り組みに積極的に関わるメンバーが集められました。

チーム編成について、Tableauを使ったデータ分析支援を行っている沖田一成が語ります。

沖田 一茂(おきた・かずなり)
ソリューションサービス事業ライン 第一PFSI事業部 主任

「作業が個人に偏ると属人化してしまい、プロジェクトの円滑な進行が難しくなります。だからこそ、複数人で作業を共有しながら、それぞれの強みを活かすことが大切です」(沖田)

エンジニアチームと営業チームの定例会議は隔週でオンライン開催され、2023年の初年度には営業の予算に関するKPIの設定、データの共有、ダッシュボードの設計といったベースを構築。その後、営業統括本部のメンバーが実際の会議でダッシュボードを活用し、改良を重ねました。翌2024年からは、部門別の受注・売上速報や中期経営計画に関する情報など、より具体的なテーマに焦点を当てた経営ダッシュボードの構築が始まりました。

意思決定の迅速化と営業マネジメントの精度向上

本格的に経営ダッシュボードの利活用が始まったことで、実際にどのような変化があったのでしょうか。営業統括本部の根本雅史は、経営判断の迅速化に効果があった事例を挙げます。

根本 雅史(ねもと・まさふみ)
営業統括本部

「注力領域において、期の途中で人材リソースを再配置し、軌道修正を行ったことがありました。これは、最新の状況をリアルタイムで把握し、期待する成果が得られないと早い段階で予測できたからこそ可能になった判断です」(根本)

また、営業統括本部のマネジメント精度も向上したといいます。

「予算会議用のレポートは、これまで担当者が個別にExcelなどで作成しており、視点やフォーマットにばらつきがありました。そのため、体系的な運用が難しく、売上予測に大幅なズレが生じることもありました。しかし、現在は最新の状況を他部門と共通の視点で共有できるようになり、予測精度が大幅に向上しました」(細川)

「さらに、予算会議向けのレポート作成が不要になったことも大きなメリットです」(根本)

エンジニアから見た経営ダッシュボード成功のポイント

昨今、データドリブン経営が注目される一方で、BIツールを導入しても思うような成果が得られない企業も少なくありません。今回のプロジェクトが成功した要因はどこにあるのでしょうか。

「ダッシュボードは作ることが目的ではなく、実際に活用されてこそ価値を生みます。日々のマネジメントの中で自然に使われることを前提に構築しました。マネジメント層が実際の会議で継続的に活用することで、ビジネス環境の変化に応じた迅速な意思決定や仕組みの見直しが可能になります。また、隔週の定例会議を通じて営業チームと密に連携し、改善を重ねてきたことも成功の大きな要因です」(鈴木)

「誰もがマニュアルを見ずに直観的に使えることを最優先したのも、よかったのではないでしょうか。経営ダッシュボードを構築する際、多角的にデータを見たいというニーズから多くのフィルタやパラメータを追加するリクエストを受けることがよくあります。しかし、機能を増やしすぎると操作が複雑になり、ユーザビリティが低下し、結果として使われなくなってしまうことも少なくありません。当社はSIerであるため、営業部門であっても細川たちのようにBIツールに精通したメンバーが多く、エンジニアと営業が同じ目線で議論できました。その結果、必要十分な機能を的確に見極め、シンプルで使いやすいダッシュボードを構築することができました」(井上)

井上 千夏(いのうえ・ちか)
ソリューションサービス事業ライン ビジネス基盤事業部 主任

未来を見据えた最適なソリューション提供のために

今後の展開について、細川は「将来の予測分析が可能なダッシュボードを構築したい」と話します。それを受け、沖田は次のように述べます。

「シミュレーションについては、Tableauの生成AI機能の強化が進めば、精度が向上すると考えています。当社はこれまで多数のBIツールの導入支援を行い、導入のみではなく、実際に現場で活用される形に落とし込むことを強みとしてきました。そこで蓄積されたノウハウが、今回のプロジェクトでも活かされています。今後も、より実践的なデータ分析支援を提供できるように、さらにスキルを磨いていきます」(沖田)

技術チーム、営業チームそれぞれの中心メンバーである鈴木と細川は、この2年間を振り返ります。

「先日、営業統括本部のマネジメント層から『経営ダッシュボードは必要不可欠なツールになった』と言われ、このプロジェクトに携われたことを誇りに思いました。マネジメント層がリアルタイムにデータを確認し、迅速な意思決定ができるようになったことが、大きな価値につながったのだと思います。技術者として、常に最適なソリューションを提供したいという思いを私たちは強く持っています。そのため、『できません』と言いたくない一心で、どんなリクエストにも最善の方法を模索し続けてきました。技術のトレンドに流されるのではなく、実際に使われることを最優先し、試行錯誤を重ねながら最適解を導き出してきたことが、結果的にこのプロジェクトの成功につながったのだと思います。今後も、さらに価値のある経営ダッシュボードの構築に取り組んでいきたいと思っています」(鈴木)

「今回は営業統括本部の事例ですが、他の部門にも広がれば、全社の強化につながると感じています。データドリブン経営に関する課題は、お客様にも共通する部分が多くあります。クライアントゼロの事例として、今回のプロジェクトを通じて得た知見をお客様の課題解決に活かしたいと考えています。単なる技術提供にとどまらず、実際に活用され、価値を生み出すダッシュボードを提供することが、私たちの役割だと考えています」(細川)

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UPDATE:2025.3.27