サイト内の現在位置
NEC Analytics Challenge Cup最優秀賞──対話を深めるAI活用、北海道チームの挑戦

AI人材の育成を目的に、NECが大学や企業と連携して開催する「NEC Analytics Challenge Cup」。2025年のアイデア企画コンテスト部門では、多くの企業や大学が参加する中、NECソリューションイノベータ北海道チームが最優秀賞を受賞しました。ビジネスPF統括部の大沢真由美、田澤宏季、ビジネス基盤統括部の井上千夏に、同大会に向けた取り組みや北海道エリアの特色について聞きました。
生成AIを活用した健康増進を促すアイデア
NEC Analytics Challenge Cupには毎年のように参加してきたという3人。今回、最優秀賞を受賞した感想をたずねると「ようやく花が開きました」という言葉が返ってきました。チーム内のリーダー的存在である大沢はその思いを語ります。
「過去にも入賞経験はあったのですが、最優秀賞に選ばれたことで、これまでの取り組みが成果として形になったと感じています。私たちは普段の業務とは別にワーキンググループを組み、13年ほど前からデータ分析の勉強を続けてきました。その仲間と一緒に受賞できたのは本当に嬉しいです」(大沢)

PFSI事業部門 ビジネスPF統括部
2017年に始まった同大会は、2020年から企業や大学と連携し、実際の業務データを使った競技へと進化しました。2025年の大会では、株式会社ツルハホールディングス様の協力のもと、ツルハドラッグ店舗のPOSデータや店舗属性データなどを活用し、予測精度コンテスト部門、データ活用コンテスト部門、アイデア企画コンテスト部門の3部門が開催されました。
3人が参加したアイデア企画コンテスト部門のテーマは「生成AIの活用」。今回のアイデア発案者の井上が提案内容を説明します。
「私たちのアイデア名は『ひとりぼっちの健康増進からの脱却』です。ツルハドラッグはお客様との会話を大切にされているので、コミュニケーションを通じて健康をサポートできる仕組みを考えました」(井上)

共通SIサービス事業部門 ビジネス基盤統括部
質問表や血液検査などから得られる健康状態のデータをもとに、お客様ごとにパーソナライズされたサプリメントの提案や健康に関するアドバイスを生成AIが作成します。コンテストでは実際の数値や記録は使用していませんが、サービス提供時には適切な活用を想定しています。スタッフはその情報を参照しながら、来店者とのコミュニケーションに役立てます。
「血液検査については、ツルハドラッグが店頭で実施している簡易血液検査のほか、当社のグループ会社であるフォーネスライフ社が提供する、血中タンパク質から疾病リスクを予測する『フォーネスビジュアス』という検査サービスも選択できるようにしました」(井上)
店舗を健康の拠点に──地域のお客様に寄り添う対話
アイデアが生まれたきっかけは、井上が普段から感じていた「こんなサービスがあったらいいな」という思いでした。
「健康診断で数値が悪いとサプリメントを試したいと思うものの、どれを選べばいいか迷います。血液検査もしてみたいけど、病院に行くのは大変です。生成AIを活用すれば、こうした課題を解決できるのではないかと考えました」(井上)
アイデアを形にする過程では、ツルハドラッグの店頭調査も行いました。田澤はその重要性について次のように語ります。
「店内には相談コーナーがあり、棚を眺めていると『どういうものをお探しですか』と店舗スタッフが声をかけてくれて。実際に足を運ぶことで、お客様との対話を本当に大切にされているのだと実感しました。AIを活用したアイデアは人員削減の方向になりがちですが、私たちは対話を深めるツールとして活用する方針にしました」(田澤)

PFSI事業部門 ビジネスPF統括部
プロンプト作成ではサプリメントの提案にとどまらず、自宅近所の散歩コースの案内や栄養成分解説など、会話が広がる補足的なアドバイスも組み込みました。コミュニケーションが苦手なスタッフでも、その情報を参照することでお客様との会話が弾むよう支援します。
「店舗を健康生活拠点と位置付け、有益なコミュニケーションを生み出すことを心がけました。その結果、地域住民の健康増進に貢献できるアイデアとして、良い評価をいただけたのだと思います」(井上)
ワーキンググループ活動が生んだチームワーク
今回の受賞の背景には、13年前に始まったワーキンググループ活動の積み重ねがありました。
「私たちのグループは、当時のNECソフトウェア北海道(NECソリューションイノベータへの統合前の社名)で独自に始まった新技術ワーキングという活動から生まれました。これは業務時間内であっても一定の時間を使って好きな技術の研究ができるという取り組みです。VRやドローンなど、さまざまなテーマのグループが立ち上がる中、それまで業務では携われなかったデータ分析の勉強をしたいと思い、メンバーを募って活動を始めました」(大沢)
「発足当時はIT企業がデータ分析を有償サービスとして提供する発想自体がない時代でした。今でこそ当社の中で北海道エリアはクラウドやデータ分析が得意と言われていますが、ここにいる3人とも本格的にそれらの領域に触れたのは、新技術ワーキングがきっかけです」(田澤)
「私たちは親しみを込めて大沢さんを“親分”と呼んでいます(笑)。グループには若手からベテランまで多くのメンバーが在籍し、大沢さんも田澤さんも一緒に技術を磨いてきた仲間です。今回のコンテストも楽しく、一丸となって取り組めました。長年にわたる新技術ワーキングの取り組みが土台にあるため、北海道エリアには新しいことに挑戦しやすい文化が根づいていると感じています」(井上)
13年間にわたる地道な歩み。これまでの取り組みで培われた技術力とチームワークが今回の受賞につながりました。

地域のデジタル人材育成に貢献
北海道エリアでは地域貢献の一環として、「北海道デジタル人材育成協議会(事務局:北海道経済産業局)」が実施する実務家教員派遣に参画しています。これは大学や高等専門学校におけるデジタル人材育成を強化する取り組みで、2025年度は「AI入門」をテーマに、今回の受賞者である大沢、田澤の2名、ほか1名が北海道科学大学で外部講師を務めました。
「講義では、業務で実際に扱うデータを活用した実例紹介と分析演習を行いました。100名ほどの学生の前で話をするのは初めてだったので、緊張しましたが貴重な経験となりました」(大沢)
「現在の学生が必修科目としてPythonや機械学習について深く学んでいることに驚きました。今後はIT企業に勤めていなくても、こうした技術を持った若い方が増えるのだろうなと感じ、私にとっても良い経験でした」(田澤)
NEC Analytics Challenge Cupや実務家教員派遣など、多方面で活躍する3人。最後にそれぞれの展望を聞きました。
「かつて北海道エリアは社内でも技術的に遅れていると言われていました。でも、今は最先端で活躍するメンバーが増えています。こうした地域にも“とがった人材”がいて、さまざまなことが実現できるということを社内外へ発信していきたいと思っています」(井上)
「むしろ北海道だからこそ進んでいることを社内でもアピールしたいですね。例えば、AWSの表彰プログラムでは、北海道エリアから優秀な技術者が多く選出されており、クラウドの技術者も多数在籍しています」(田澤)
「AIやデータ分析に長けている人材が多く揃っています。今後も地域貢献含めて、北海道や札幌から多くの情報発信をしていけたらと思っています」(大沢)

<関連リンク>
UPDATE:2025.12.23