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ドローンを空飛ぶ
コンピュータと考えて、
安全に使える未来をつくる。

『国産ドローン基盤の開発』

 

インタビュー動画

老朽化するインフラの保全点検や修理、災害対策、過疎地の物流など、
様々な分野での活躍が期待されるドローン。
しかし、その実用化のためには「安全性の確保」が大きな課題となる。
20年にわたり培ってきたクラスタリング技術の応用で、ドローンの社会実装へと挑む。

プラットフォームサービス事業部
下問 勝司

大学院では物質理学を専攻しコンピュータ物理を専門に研究。入社後サーバ監視技術を開発する部署を経て現職へ。
ラジコン好きだった少年時代の思いをそのままに、現在は技術者を育成する立場として「技術で食べていける人を増やす」をモットーに活動する。

プロジェクト概要
今後、活用範囲の拡大が期待されるドローンの安全・安心を確保するため、NECの高可用性クラスタリングソフトウェア『CLUSTERPRO(クラスタープロ)』の開発で培った技術を応用。ドローン上に、機体を制御する通常のフライトコントローラに加えてコンパニオンコンピュータを搭載することで機体制御を高度化させる。飛行状況の把握・監視、自己健全性の判断、通信の冗長化、飛行範囲設定の二重化などを行い、異常事態に応じた緊急動作を起こすことで、可用性(システムなどが使用できる状態を維持し続ける能力)と耐障害性を向上。様々な社会課題解決に活用できるドローンの社会実装を、安全性の面からサポートする。

安全な飛行のために必要な、
もうひとつの「頭脳」。

ドローンは今後社会に普及していくうえで、安全性の確保という大きな課題を抱えています。現状起きている事故のほとんどが墜落もしくは衝突で、原因は操作ミスだけではなく、通信異常と機体異常の割合も高くなっています。操縦者のスキルアップや手順を守るだけでは回避することが難しいケースも多く、本体以外に通信性能や機体を制御するアプリケーションの進化が必要だったのです。

そこで私たちが開発したのが、サーバ監視の技術を応用した『高可用性ドローン基盤』です。ドローンに搭載されているフライトコントローラとは別に、もう1台、頭脳となるコンピュータを搭載することで、状態をリアルタイムに監視して、緊急時には着陸などの動作をするドローンの制御に、外部からの監視を加えるといった、いわば第三者的チェックの発想で、墜落事故や遺失、進入禁止エリアへの侵入を未然に防ぎ安全性をサポートしていく技術です。

ドローンを取り巻く環境は急速に変化しており、2022年12月の法改正ではレベル4飛行が解禁され、有人地帯における目視外飛行が可能になりました。しかし、法的には整備されたものの安全性にはいまだ課題があり、実際に都市部を飛行するにはまだ時間がかかると言われています。だからこそ、私たちがICTの力で、人々がドローンを活用する可能性を拡げていきたいと思っています。 

止めてはいけない存在なのは、
サーバもドローンも同じこと。

元々私たちは『CLUSTERPRO』という、サーバ用の高可用性クラスタリングソフトウェアを長年開発していました。これは複数のITサーバのうちいずれかが故障してしまった場合に、別のサーバを代替として動かすことでサービスを維持する技術です。

社会の変化を見据えながら、技術を活かせる場所を考えた結果、今後浸透していく予感があったドローンという市場に行き着きました。ドローンが今後社会的な役割を担いはじめると、サーバと同様に止めてはいけないものになるはずです。ドローンを空飛ぶコンピュータと考えれば、自律判断し状態を維持できるプログラムが必要なのではないか、そう考えて技術を応用していったのです。

『CLUSTERPRO』は、21年連続国内シェアNo.1(※)の製品です。世の中の重要なシステムの安定性を保ち、継続的な稼働を支え続けてきた知見が蓄積されていたことも、技術を応用できた理由。20年以上にわたり開発を止めることなく、新しいデバイスやOS、クラウドなどの新しい環境の登場に合わせてアップデートを続けてきた当社だから実現できたことだと思っています。

※ IDC Japan、2022年6月 「国内コンピューティング/ネットワークインフラストラクチャソフトウェア市場シェア、2021年:クラウド環境における成長」 (JPJ47878522) 

被災地にも、過疎地にも。
活用の可能性は広がり続ける。

無人で現場に行けるドローンは様々な分野での活用が進んでいます。たとえば、空を飛ぶドローンにカメラを搭載することで、広大なダムや水管橋の点検作業、都市部における災害時の状況確認などに活用できます。手早く安全に確認するツールとして、ドローンの活用は非常に有効です。

さらに、今まさに自治体と実証実験を進めているテーマとして過疎地の物流があります。共創活動を行っている広島県神石高原町(じんせきこうげんちょう)は県の中でも過疎化に悩む地域。約400㎢もの地域の中には山奥にも病院や施設がありますが、医薬品や日用品を届けるには自治体のリソースが足りません。そこで活躍するのが、機体の重量が約100kgもある大型のドローン。万一墜落したら大きな被害になるため安全性の確保がいっそう重要であり、『高可用性ドローン基盤』を用いた自律判断でパラシュートを開き軟着陸する実験をしています。

こうしたインフラの仕事に関わっていると、今まさに社会課題の解決ができていると実感することが多くあります。ドローンは技術力や実装力といった私たちが社会に提供できる価値を、時代に合わせて拡張できるプラットフォーム。ワクワクする気持ちを忘れずに、新しい技術も社会に役立てていきたいです。

 

 

UPDATE:2023.11.30