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誰もが十分に能力を発揮できる環境をつくり、組織のイノベーション創出につなげる。
[事業成長のためのエンジン]
I&D推進(多様性が生むイノベーション)
人財企画部 I&D推進室
佐野 寛子
2022年入社。2024年より人財企画部 I&D推進室長を務め、人権、障がい者雇用をはじめ人的資本経営もミッションとし、I&D推進の高度化とシナジーの実現に取り組む。
人財企画部 I&D推進室
山森 幸恵
2007年入社。これまで採用・研修のほか、人事総務に関する業務に携わる。2024年度より人財企画部I&D推進室所属。
グローバルビジネス推進本部
香林 竜央
2000年に入社後、海外パートナーとの業務委託連携や業務を通じた多文化協働の仕組みづくりに従事する。ALLY(アライ)※1の趣旨に賛同し、LGBTQ+※2の施策に参加。
- ※1LGBTQ+当事者たちを理解し寄り添いたいと考え、支援する人のこと。
- ※2レズビアンやゲイ、トランスジェンダーなど、性的指向や性自認・性表現において少数派である「性的マイノリティ」を表す総称の1つ。
プロジェクト概要 |
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持続的な企業価値の向上には、多角的なアイデアを受け入れ、イノベーションを生み出すことが重要です。そして、その原動力となるのはNECソリューションイノベータに関わる「人」であり当社では人材そのものが資産だと考えています。
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― どのように課題を解決し、どのような未来を描くのか ―
グローバル化が進み企業が様々な社会課題の解決に貢献していくには、多様な視点やアイデアが求められます。また、絶え間ないビジネス環境の変化の中で企業価値を向上し続けるには、イノベーションが必要不可欠です。しかし日本企業には、終身雇用に代表される経営システムのもと同様の経歴・経験を持つ人材が集まりやすい側面があります。この同質性の高さは自由な意見や柔軟な変化への妨げになりやすく、経営における明確なリスクになっています。企業の存在意義が製品・サービスの提供から社会貢献にまで拡大する中で、I&D推進はその企業の社会的責任や人権の尊重への姿勢をはかる指標となっており、積極的な取り組みが求められています。
- 社会課題の解決に貢献するための多角的な視点が不足している
- 同質性の高い人材は発想が似かよい、イノベーションにつながる多様なアイデアが出づらい
- I&Dは社会課題解決への貢献や人権尊重への姿勢をはかる指標として、ステークホルダーが注視する取り組みである
I&Dの取り組みでよく取り上げられるのは、女性や障がい者、LGBTQ+、外国籍の社員など、多様性豊かな人材です。こうした社会や組織で少数派となる方々は、これまで組織の「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」や意識改革の遅れ、就業環境の未整備などの理由でその能力を十分に発揮する機会が少なかったとされています。企業には、性別や国籍、外見や内面的な違いを受け入れ多様な人材がいきいきと働ける環境づくりと、最大限のパフォーマンスを発揮することで組織に貢献できるような制度づくりが求められています。
- 性別のみならず、年齢や国籍、宗教など個々の違いの尊重が求められている
- 多様な人材が、いきいきと活躍できる場が求められている
- 多様な人材から生まれる様々なアイデアを経営に取り込み、社会課題解決への貢献につなげたい
「東京レインボープライド」※4に2022年よりスポンサーとして参加
NECソリューションイノベータでは、以前からLGBTQ+への理解促進とその理解者であるALLYを増やす活動を続けてきました。「東京レインボープライド」はその取り組みの一環であり、2024年度はNECグループ初のブースの出展に当社も参加し、さらに規模を拡大しています。イベント2日目には、当社社長の石井をはじめ、多くの経営陣や社員がパレードに参加し「Happy Pride!(=自分が自分であることに誇りを持って楽しもう!を意味する)」の声を掛け合いました。
社内イベント「キャリアCafé」での当社社員(LGBTQ+当事者)による登壇
2023年6月、社内で『プライド月間に考えたい“ありのままを受け入れる”生き方』をテーマに「キャリアCafé」を開催しました。「キャリアCafé」では、LGBTQ+当事者の一人でありALLYとして活動する当社社員が登壇し、自身のキャリアや経験をもとにしたメッセージを全国の社員に向けて発信しました。会場ではレインボーカラーで彩られたクッキーやALLYステッカーが配られました。LGBTQ+当事者である社員の話を聞く初のイベントであり、多くの社員がこれを機会にALLYへの意思表示と多様性への理解を深めることができました。
「同性婚を含む事実婚」と「法的な婚姻」を同等に扱う社内規程の改定
NECグループ人権方針「性的指向・性自認による差別行為を許さない」に基づき、「同性婚を含む事実婚」と「法的な婚姻」を同等に扱うよう社内規程を改定しました。この改定を皮切りに、2022年度には婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化する「Business for Marriage Equality(ビジマリ)」キャンペーンに参画しました。また、ビジマリへの登録は2023年のG7広島サミットで提出された「同性婚を法律として認める賛同書」への参画にもつながり、多様な人材活躍の可能性を広げています。
一般社団法人Famiee発行の「パートナーシップ証明書」を家族関係証明書の対象に追加
Famieeのサービスにより、スマホのアプリで個人情報と戸籍謄本や独身証明書などを登録することで、地方自治体が発行する「パートナーシップ証明書」※5に相当する書面が無料で発行できるようになりました。同証明書を家族関係証明書の対象に加えたことで、同性パートナーを法的な婚姻と同等に扱う社内手続きがスムーズになり、同性パートナーの連絡先を家族の緊急連絡先として登録できるようになったり、カフェテリアプラン※6や結婚休暇などの福利厚生の利用が可能になりました。
新木場本社ビルの各階にジェンダーレストイレを設置
LGBTQ+への理解促進を深める活動の一環として、2023年12月、新木場本社ビルにジェンダーレストイレを設置しました。
- ※4アジア最大級のLGBTQ+の祭典。
- ※5戸籍上同性であるカップルに対して、二人のパートナーシップが婚姻と同等であると承認し、地方自治体から発行される証明書のこと。
- ※6社員に毎年付与されるポイントで、育児・介護・旅行・健康などの福利厚生メニューから好きなものを選び利用する制度。
Project Story
I&Dの推進は企業の成長に必要不可欠
佐野:当社では多様性の向上への取り組みを、「インクルージョン&ダイバーシティ」と表現しています。あえて「インクルージョン」を前に置くことで、インクルージョンが発揮されてからダイバーシティにも価値が出るという考えを強調しています。これは、多様な能力を持った人材が揃っても、その人が持てる力を発揮できるような組織や文化という受け皿がなければ、個々人が能力を発揮するのは難しいからです。これまで日本企業には、終身雇用に代表される経営システムのもと、同質性の高い経歴・経験を持った人材が集まりやすい側面がありました。しかし、多様性が進む現代では同質性の高さは同調圧力となって自由な意見や柔軟な変化を妨げ、経営において明確なリスクになります。多様な個々人の視点や能力を掛け合わせることによって、物事を多角的に捉え意思決定の精度を上げることができるI&Dの推進は、数十年後にも企業が存続していくための成長戦略そのものだと考えています。
一方で、I&Dが浸透することでコミュニケーションやマネジメントのコストは上がります。お互いへの配慮や個人を尊重することは、意見の食い違いが発生しやすく、阿吽の呼吸で動けなくなることもあるからです。I&D推進には一時的なコスト増を乗り越え、先を見据えた企業価値向上やさらなるイノベーションにつなげようという確固たる目標が持てるかが鍵だと思います。当社のI&Dがフォーカスするのは女性に限らず、障がい者やLGBTQ+、外国籍の社員など多様な人材であり、属性だけでなく経験や価値観などあらゆる多様性を受け入れることで、強い組織をつくることを目的としています。しかし、過去には管理職の多様化を目指し「女性枠」を設けたところ、当人に「女性だから昇格した」という誤解を与えてしまったケースもあります。そのため、I&D推進の目的を正しく伝えながら女性やLGBTQ+、外国籍の社員など、特定の属性に向けた施策を丁寧に進める必要があると考えています。
交流の積み重ねでLGBTQ+の理解が進む
山森:LGBTQ+を例にとれば、当社が行った最初の社内イベントは、2021年2月に全社員向けに開催したオンライン講演会「LGBTと企業」です。当社の目指す姿である「イノベーションは、多様な人材の活躍により創出される」をテーマに掲げ、優秀な人材の活躍が阻害されることがないようにとの期待を込めて開催しました。2023年6月には、当社社員の当事者が登壇した「キャリアCafé」を社内で開催しました。社員自身の経験から「私たちに特別な配慮はいらない」と社内にメッセージを発信いただいたことは、初の当事者からの声としてたいへん嬉しく、当社としてもI&Dを進める力強い一歩として印象的なイベントになりました。こうした施策の積み重ねは、着実に社員一人ひとりの理解につながっており、実際に「パートナーシップ証明書」や「ジェンダーレストイレ設置」など、社員の声から実現した取り組みがいくつもあります。
佐野:当社ではこれ以外に、LGBTQ+当事者の方を理解し応援する「ALLY(アライ)」の概念を広げることにも取り組んでいます。ALLYの表明は、あらゆる個性との相互理解を目指す意思の表れです。そして、全国の職場に理解者を増やすことで、LGBTQ+当事者の方に「支援してくれる人がいる」というポジティブな空気を感じ取ってもらい、企業文化を変えていこうと考えています。
香林:私は元々同級生にLGBTQ+の支援者がいたこともあり、取り組みには興味がありましたが、自ら活動するには「知らないことが不安」という感情を抱いていました。LGBTQ+やその支援者の方々がどういった存在で、どのような考えをお持ちなのかを知りませんでした。そのため、接する機会があったとしても、気づかないうちに差別的な発言などで当事者を傷つけていないか、不快感を抱かせるのではないかと感じて、自身をALLYと表明することやイベント参加にも躊躇していました。
しかし、当社の講演会や当事者との意見交換などで、新たな気づきや学びを得ることでLGBTQ+への理解を深めることができました。中でも講演会で有識者に質問をした際に「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があれば互いに指摘して改善し、恐れず当事者に関わってほしい」とお答えいただいたことには強く背中を押され、2022年度に発足した「LGBTQ ALLYの仲間を増やす会(以下、ALLYの会)」には、迷わず参加しました。発足当初、数十名だった「ALLYの会」は現在100名を超える規模になり、今後も様々な施策を応援していきたいと思っています。
様々な場面で当事者との交流が進み、I&Dの機運が高まる
佐野:I&Dを取り巻く環境は年々変化していると感じます。「東京レインボープライド」は、参加初年度のパレードには10名ほどしか集まりませんでしたが、2024年度には約60名が参加するまでになり盛り上がりを見せています。社内でもダイバーシティを語ることが普通になっており、多様性の尊重や風土に対する社内調査ではポジティブな回答が年々上昇しています。
香林:私もALLYとして活動しながら「東京レインボープライド」や「ALLYの会」への参加で、社内に新たな人とのつながりをつくると同時に多くの当事者の存在とそれぞれの活躍を知りました。個人的には、上司から他部門の当事者の方を本人了承のうえで紹介されたことは大きな変化でした。その後、業務で関わる機会があり親交を深めたことでLGBTQ+に関する施策の受け取り方をはじめ、当事者の方をどのように呼ぶか、どのような表現に注意が必要かなど、当事者の率直な意見が聞けるようになり大いに参考になっています。
山森:当社では、LGBTQ+の当事者が長く在籍していることを把握しており、人事担当者と当事者が自然とつながっていく文化・慣習があります。人事担当者は社員の教育・研修などで、新入社員から中堅、ベテランまであらゆる階層の方々と接します。各階層の社員との密なコミュニケーションの中で、当事者であることの相談なども内々に伝えてもらえる関係性ができました。この関係性は人事担当者が変わっても代々受け継がれており、LGBTQ+の施策を考える際には対象者の顔を浮かべることで、より具体的な取り組みの策定につながっています。
互いを尊重し合う文化をつくり、企業のイノベーションを促進
佐野:LGBTQ+を含め、I&Dは私たち全員に関わりがあることです。全社員が自分ごととして捉え、互いの個性や発想を尊重し合う文化を築くことができれば、私たちが目指すゴールである「知と経験の多様性の受容」※7に近づきます。今年度もI&D推進室としての施策を展開しながら、すべての社員が存分に能力を発揮できる組織づくりに貢献し、イノベーションを創出する集団へと着実に歩んでいきたいです。
山森:I&D推進では、LGBTQ+当事者に限らず誰もが何かしらのマイノリティの立場にあるという考えのもと「人」に寄り添い、少しでも働きやすい環境をつくっていきたいです。また、施策を通じて「事実婚」や「ステップファミリー」※8といったマイノリティが抱える社会課題も見えてきているので、さらなる知見や経験の多様性を進めることで、ICTによる貢献領域の拡大などイノベーションの創出につなげていくことも当社の大事な使命だと感じています。
香林:私は「ALLYの会」の活動報告をとおして、自分の身近な人からLGBTQ+への理解を促進させたいです。また、引き続き当事者の方を含むALLYの方々と働くうえでの不便や違和感について意見を交換し、その解決方法についてともに探ることでI&D推進活動の後押しができればと思います。
- ※7多様な個人や組織、チームが活性化されることで、生産性の向上やイノベーションにつながっていくという考え。
- ※8夫婦の一方あるいは双方が、子どもを連れて再婚したときに誕生する家族のこと。
UPDATE:2024.11.29