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< 第3回 >
人にしかできない領域をAIで。
教育現場から広がる未来への展望
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探究を支える新しい学習
AIと未来を切り拓く

探究を支える新しい学習、AIと未来を切り拓く

- 第1回 探究学習の拡大とともに浮き彫りになった、課題を補う『AIメンタリングシステム』
- 第2回 「答えを提示しないAI」が問いを深める。広島の高校で始まった挑戦
- 第3回 人にしかできない領域をAIで。教育現場から広がる未来への展望
人にしかできない領域をAIで。
教育現場から広がる未来への展望

中央:イノベーションラボラトリ 加賀 茜
右:イノベーションラボラトリ プロフェッショナル 宍倉 健司
以下敬称略
探究学習に用いている『AIメンタリングシステム』は、問いを出し合いながら考えを深める「哲学対話」の手法を基に設計されました。哲学対話とは、東京大学特任研究員・堀越耀介氏が実践するアプローチで、参加者同士が問いを出し合い、一緒に思考を深めていくものです。この考え方をAIに取り入れることで、生徒は新たな疑問を発見し、課題を深掘りする視点を獲得、自律的な学びを促進する仕組みが構築されました。
その効果は、広島県立広島皆実高等学校(以下、広島皆実高校)のパイロット運用(※1)で表れています。2年目の2024年、2年生84名が参加した『AIメンタリングシステム』での探究学習(※2)で、防災をテーマにしたグループがありました。グループ内で問いを深めていき、実際に宮城県のNPO法人に意見を求めたことをきっかけに被災地のシンポジウムへ参加するなど、学びを社会へ広げる事例も生まれました。卒業生からは「AIとの対話は、自分で考える習慣につながり、大学でも役に立っている」との声が寄せられています。
また、広島皆実高校のプロジェクトのきっかけとなった木下教諭も「『AIメンタリングシステム』は答えを提示せず、生徒に考えるきっかけを与えてくれる。教員にとっても伴走の負担を減らす助けになる」と評価します。2年間のパイロット運用を経て、広島皆実高校では本年度も320名の生徒が活用する予定です。
- ※1
新しいシステムを導入する前に試験的に運用し、実際の運用における課題を把握するプロセス。
- ※2
探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことをとおして、自己理解を深めながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成することを目標とする教科のこと。
NECソリューションイノベータはこの運用結果を踏まえ、実用化に向けた取り組みを進めています。教育現場で得られた『AIメンタリングシステム』の成果は、AI活用の可能性を広げる契機となっています。
宍倉は「答えを提示しないAIとの対話により、探究学習を行う生徒の課題に対する深い思考と客観的な分析を促すことで生徒の成長に寄与し、また教員の学習・評価を含めた負荷軽減を実現します」と語ります。
『AIメンタリングシステム』をはじめとする、特定のスキルや価値観を再現する「代理存在AI」の技術の活用は、教育にとどまらず、新規事業の企画やキャリア形成支援など、思考を深めることが求められる多様な場面での応用が見込まれています。
創造性や多角的な観点、直感的な判断など「人にしかできない」領域を開拓し、不足する高度な知識やスキルを持つ人材育成の課題解決に貢献していく技術として今後さらに拡大していくことが期待されます。

| プロジェクトのポイント |
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日本の教育現場では、生徒の自律的な学びを育む「探究学習」が推進される一方で、答えのない課題の評価や専門外のテーマへの対応など、教員の負担が課題となっています。NECソリューションイノベータは「答えを提示しない」問いかけ型の『AIメンタリングシステム』を開発し、広島県立広島皆実高等学校(以下、広島皆実高校)で2年間のパイロット運用を実施。その結果、生徒の自律的な学びが促進され、教員の負担軽減にも効果があることが確認されました。 |
UPDATE:2025.12.22

