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カメラに映った人々の年齢や性別を、自動的にリアルタイムに推定する。
そんな画像認識AI技術を活用した製品「FieldAnalyst」の導入が国内外で進んでいます。本製品のコア技術であるオリジナルエンジンの開発を担う若きエンジニアが、製品の特長や具体的な導入事例をご紹介します。

効率的な顧客分析の実現に向けて

いま画像認識AIは、どんな分野でどのように活用されているのでしょうか。

  • 田口:
    画像認識AIは技術の発展とともに、様々な業種・業務で活用が広がってきています。
    製造業の場合は、製品の品質確認や現場の安全サポート、小売業では店舗の在庫管理、医療現場では画像診断といった活用が挙げられます。

    また、コンサート会場の顔認証による入退管理に活用されたり、商業施設に設置したカメラ画像で来場者分析を行ったり、不審物を検知して防犯に役立てるなど、セキュリティやマーケティング目的の事例も増えています。

    さらに、SNSの普及によりパーソナル領域の活用も拡大しています。スマホの顔画像加工アプリ、性別変換アプリなど、最新AIがどんどん身近になっています。

田口さんたちが取り組んでいる、画像認識AIとはどんな技術ですか。
  • 田口:
    ひと言でいうと、カメラで撮影した画像の中から「人を見分ける」技術です。
    どこに何があるかを識別する画像認識と、画像データの中から特徴を自動で発見するAI。これら2つの技術を組み合わせて開発したのが「FieldAnalyst」という製品です。
「FieldAnalyst」の開発には、どのような背景があったのですか。
  • 田口:
    コンビニやスーパーなどでは、販売戦略やマーケティング強化のため、会計時に店員が目視でお客様の年齢や性別などの属性情報を確認し、POSシステムに手入力することで情報収集していました。しかし、この対応では、商品を購入したお客様の情報に限られてしまい、来店したお客様全体の情報は得られません。また、目視による確認のため、店員毎にバラツキがでるなど、情報精度においても課題がありました。

    こうした課題を解決するために、人手に頼ることなく、顧客情報をきめ細かく効率的に収集・分析するシステムを提供しようと考えて、開発がスタートしました。

画像の中から、人の年齢や性別を自動で推定

「FieldAnalyst」はどんなことができるのか。具体的な特長を教えてください。
  • 田口:
    「FieldAnalyst」は、カメラで撮影した画像をもとに、人の年齢や性別などをリアルタイムで推定することができます。
    さらにマスクやサングラスをつけている人、帽子をかぶっている人なども識別が可能です。例えば、新型コロナウイルス感染症拡大が大きな社会問題となっているいま、人の流れの中のマスク着用率の把握にも役立てることができます。
    また、個人を特定する画像データは即座に破棄するなど、プライバシー保護にも配慮しています。
年齢・性別推定システム「FieldAnalyst」

現在、「FieldAnalyst」は、客層、人の流れ、デジタルサイネージの視聴などの分析を目的として、国内では300システム以上の導入実績があります。

国内の導入実績

また、米国・韓国・オーストラリアなど世界20ヵ国以上でも、導入やPoCの実績があります。

活用は、安全・安心な街づくり、街の活性化にも

「FieldAnalyst」が実際に活用されている事例について教えてください。
  • 田口:
    大型レジャーランドのよみうりランド様では、画像分析の活用によるマーケティング強化を検討されていました。そこで実機を使った「FieldAnalyst」のデモを行ったところ、画像認識精度の高さが評価され、即座に導入が決定しました。2018年からの活用によって、年齢・性別など来園者のきめ細かな分析が可能になり、マーケティングの成果が上がったと高評価をいただいています。
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【事例】よみうりランド

六本木商店街様では、3年の実証実験を経て「FieldAnalyst」を活用したスマート街路灯が、2020年に設置されました。カメラ、通信機器、LED照明、スピーカー、サイネージを搭載したスマート街路灯は、カメラ映像から来街者の移動方向、性別・年齢、人数を24時間リアルタイムで推定します。その推定データをもとに、来街者にふさわしいコンテンツやイベント情報をサイネージで紹介するほか、災害時には緊急情報を来街者に通知するなど、便利で快適、そして安全・安心な街づくりに貢献しています。

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【事例】六本木商店街(スマート街路灯への活用)

パブリックセーフティ分野での活用として、最近注目されているのが岐阜県高山市様の事例です。
高山市様では、観光産業のさらなる活性化を目指し、ICT活用を推進。その一環として、人流分析のトライアル検証を行い、効果を確認した上で「FieldAnalyst」の導入を決定されました。
ところが、新型コロナウイルス感染症拡大により、急遽、外出自粛の状況を定量的に可視化するツールとして、当初の予定より前倒しで活用が開始されることになりました。決定後わずか1週間で準備作業を完了し、2020年4月21日から稼働がスタート。客観的なデータで状況の把握ができ、大変喜んでいただきました。
緊急事態宣言解除後は、地域における観光関連のマーケティング強化など、当初の目的のために活用いただいています。

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【事例】岐阜県高山市
豊富な実績を誇る「FieldAnalyst」のアピールポイントは何ですか。

  • 田口:
    1つは、画像処理やAIなど製品のコアとなる技術に研究開発の段階から社内で取り組んでいるため、最新技術や新しい機能をタイムリーに取り入れられ、先進性を持った製品を継続的に提供できていることです。そのために、日々進化する技術と向き合いながら、自分たちの技術に磨きをかけています。

    2つ目は、研究・開発から導入まで、チーム連携で一貫したサポートを提供することで、お客様からの声を研究・製品開発にスピーディーに反映できることです。これは、お客様へシステムを導入し運用支援を行うメンバーと、研究・製品開発のメンバーが同じチームにいることで可能になっています。

「楽しさ」をモチベーションに、開発者としてスキルアップ

「FieldAnalyst」の開発者として、田口さんはどんな業務を行っているのですか。
  • 田口:
    画像認識AIの応用研究をもとに、実際に動かせるモノを形にするのが私の主な仕事です。
    具体的には、「FieldAnalyst」のコア技術であるディープラーニングのアルゴリズムの開発を行っています。AI技術は日々進化していて、製品開発にはつねに先進の技術が求められます。そのため、最新の論文をネット上でチェックしたり、専門分野のコミュニティに参加したり、新しい技術に触れることも私の重要な業務です。
仕事に対して田口さんはどんな思いを抱いていますか。
  • 田口:
    自分が楽しいと感じることを大切にしたいと思っています。学生時代に感じていた画像認識に対する楽しさが、仕事やモノづくり、開発者としてスキルアップすることの原動力になっています。それがチームや会社、社会への貢献につながっていけばいいな、と思います。新しい技術に出会うことで、できることがさらに増えていく。そんな仕事に楽しさとやりがいを感じます。

    開発者としては、失敗を失敗と捉えないことが大事だと思っています。失敗したら、その理由を分析し、経験値として活かしながら成功を目指していく。そういう意味で、私は、「正しく失敗する」ことを心がけています。
最後に、今後の展望を聞かせてください。
  • 田口:
    今後、「FieldAnalyst」では、自転車に乗っている人、ベビーカー、車イスなど、より多くのものを識別できるよう、精度を向上していきます。
    また、現在は、商業施設など屋内での活用が中心ですが、今後は屋外イベントやパブリックビューイングなど屋外での活用を視野に、日照や天気の影響、カメラの設置位置など、技術的課題への対応も進めていきます。
    こうした取り組みにより、製品の技術的価値とお客様への提供価値をさらに高めていきたいと考えていきます。

個人としては、自分の「遊び心」を大切にしながら、人の眼を超えた画像認識を実現したいという思いがあります。カメラやAIの進化で、いままでにない便利さが生まれる、見たこともない新しさに出会える。そんな時代が来たら、きっと楽しいですよね。

(2020年9月25日)