サイト内の現在位置
学会・研究成果発表
情報処理学会第5回量子ソフトウェア研究発表会にて、交通流最適化に関する研究成果を発表しました
量子コンピュータと交通流データを用いた交通渋滞緩和の研究
DATE:2022.05.27
研究テーマ:量子コンピューティング
2022年3月25日、情報処理学会第5回量子ソフトウェア研究発表会にて、東北大学と共同で推進した交通流最適化に関する研究の成果を発表しました[1]。


2021年度に川崎市の交差点で画像認識と量子コンピュータを活用した、交通流計測の実証実験を実施しておりました[2]が、本研究は、交通流計測のデータを収集できたとして、それを用いて「どうすれば渋滞問題を緩和する対策を立てることが出来るか?」という問いについて、オープンデータを用いて検証したものです。
量子コンピュータを用いた従来研究として、フォルクスワーゲン社による北京のタクシーの交通流最適化[3]の研究がありますが、タクシー418台から収集した移動データしか用いておらず、必ずしも実際の交通事情に即しているとは言えないところがあります。今回は、川崎市が公開している交通量の統計データ[4] と、OpenStreetMap[5]を用いて、川崎市全域において、フォルクスワーゲン社の研究を参考に最適化計算が行えるかを検証しました。
交通量の統計データを元に交通流をモデル化し、全ての車両について最短経路を選択させると、左下図の様に特定の道路に混雑が集中しがちになります(青線は混雑した道路を表します)が、各車両に最短経路だけでなく迂回路も2パターン用意した上で、量子アニーリングマシンを用いた組合せ最適化で選択した経路を提示することにより、右下図の通り、道路の混雑を分散させることがシミュレーション上で可能であることを学会で発表しました。

実際の社会実装までには、車両の配置・交通流の向き・時間変化など、詳細な交通事情も加味した最適化の検討だけでなく、現実的なデータ収集方法やドライバーに最適経路を提示する方法の検討も必要になってきますが、街の交通事情にリアルタイムに柔軟に対応しつつ、渋滞問題を緩和するには、大規模な最適化問題を瞬時に解ける量子コンピュータが有効である可能性を示すことができたと考えています。
本研究に関するご意見やご関心、先端技術を用いた渋滞緩和のアイデアなどがありましたら、下記までご連絡ください。
参考:
[1] https://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/qs5.html
[2] https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/rd/topics/topics_30.html
[3] Florian Neukart, Gabriele Compostella, Christian Seidel, David Von Dollen, Sheir Yarkoni, Bob Parney: Traffic Flow Optimization Using a Quantum Annealer. Frontiers ICT 4: 29 (2017).
[4] 川崎市,平成27 年度一般交通量調査 交通量図,https://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/28-6-2-2-4-0-0-0-0-0.html
[5]Researcher Information - OpenStreetMap Wiki, https://wiki.openstreetmap.org/wiki/Researcher_Information
担当者紹介
研究テーマ:量子コンピューティング
担当者:伊原 康行
コメント:新規研究の立ち上げを担当しています。これまで手掛けてきた主な研究領域は、画像認識、機械学習、量子コンピュータ、トポロジカルデータ解析、暗号、数理科学。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部
ipd-traffic_ai@nes.jp.nec.com
