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【SXSW2023レポートPart2】ストーリーテリングからみるSXSW2023

DATE:2023.05.25
研究テーマ:ウェルビーイング

こんにちは。
ポスト・ウェルビーイングや感謝、エンゲージメントなどの研究をしている菅原です。

今回、3月10日から3月19日にアメリカのテキサス州オースティンで開催されたSXSW2023に視察に行ってきました。私が現地で感じたSXSW2023の注目ポイントやトレンドをお届けします。

レポートPart1はこちらです。SXSW2023のなかで語られた未来予測についてまとめています。
【SXSW2023レポートPart1】SXSW2023で語られた未来

SXSW2023のキーワード | Storytelling

SXSW2023の数多くあるセッションのなかで、よく耳にしたキーワードが「ストーリーテリング(storytelling)」です。日本ではそこまで聞くことのない単語なので、特に印象に残りました。実際に、すべてのセッションのうち、「storytelling」タグがついたセッションをカウントしてみると、なんと117セッションもありました。

では、ストーリーテリングとしてどのようなことが語られていたのでしょうか。

ディズニーのストーリーテリング
例えば、Disneyのセッションでは、これまでディズニーがつくりあげてきた映画や音楽、パークなど加えて、とてもリアルなライトセーバーや実寸大のティンカーベルなど最新の技術が紹介されました。魅力的な新コンテンツに目が行きがちなセッションでしたが、注目したいのはその背景にあるストーリーテリングです。

登壇されていたJosh D’Amaro氏が、特に強調して話していたのが、ディズニーのこれまでの背景には、「幸せをつくる(Creating Happiness)」ことを常に考え続けてきたということです。ディズニーが取り組むアートやテクノロジーの背景には、幸せをつくるというストーリーがあるからこそ、これだけ世界中のたくさんの人々を魅了してきたのだと感じました。

SXSW Pitchでもストーリーが重要視
SXSW内で行われるスタートアップ向けのピッチ大会「SXSW Pitch」でもストーリーテリングが重要視されていた印象があります。

私は今回すべてのピッチをみることはできませんでしたが、「なぜそのビジネスを行うのか」「社会にどのような影響を与えたいのか」など、ビジネスの背景にあるストーリーがよく語られていたピッチが印象に残りました。実際、ストーリーテリングを上手く活用していると感じたピッチは優勝を勝ち取っていました。もちろんストーリーテリングだけでなく、ビジネスモデルや質疑応答など評価のポイントは他にもあると思いますが、そのストーリーは審査員や聴講者の心をつかんでいたと思います。

SXSW Pitchの様子。Innovative World Technologies部門で優勝したSXDのShelly Xu氏。

SXSWとストーリーテリング

なぜSXSWでストーリーテリング(Storytelling)がよく活用されているのでしょうか?
現地で感じた私なりの考えをご紹介いたします。

1つは、SXSWがアーティストを含む「多様な人々が集まるイベント」だからだと考えられます。SXSWにおいてインタラクティブ(テクノロジー)領域は一つの大きなテーマですが、他にも音楽や映画、アートなども同様に大きなテーマで、年齢も性別も人種も専門性も興味も本当にさまざまな人々が一緒に参加しています。多様な人々がビジョンを共有し、前進していくために、ストーリーテリングが活用されていると感じました。

2つ目は、「世界規模での課題意識」です。現在、日本でSDGsという単語をいたるところで聞くように、環境問題や人種差別、金融格差など、世界規模で対処しなくてはならない課題が数多く顕在化しています。アメリカでは「SDGsのために」と発言するのが恥ずかしいほど、企業や団体、個人がこれらの社会課題に取り組むことは当たり前となっているようです。世界規模の課題の解決に向かって、多くの人々が協働するために、ストーリーを語ることの重要性がありそうです。

3つ目は、「Z世代・α世代に対する意識」です。SXSW2023では、多くのセッションでZ世代やα世代を意識した発言が見られました。必ずしも経済合理性になびかず、社会課題への高い意識を持つデジタルネイティブな世代に対して、どのような未来・ビジョンを描くかという点が意識されていると感じました。

これらの理由が合わさって、SXSW2023はストーリーテリングが一つのキーワードとなる、「共感」を大切にするイベントであった感じます。さまざまな人々が大きな視野をもって未来を描くために、ストーリーを語り、共感を生みだす。今後、社会課題解決がより重要となり、今の若い世代が社会に増えていく中で、共感はさらに重要なキーワードになると思います。「共感」を大切にするSXSWは、今後さらに注目が集まるイベントになると思います。

まとめ

現地で感じたSXSW2023の注目ポイントとキーワードを私なりに整理してレポートにしてみました。他にもGeneral AIやメタバースなど、語りきれない部分が多くあります。SXSWに興味を持った方は、ぜひ来年度は現地で参加しみてはいかがでしょうか?

担当者紹介

研究テーマ:ウェルビーイング
担当者:菅原 収吾
コメント:心理学的な観点を織り交ぜながら組織のエンゲージメントやウェルビーイングについて研究をしています。学生時代はバイオ研究をしていました。
連絡先:NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部