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コラム
WMSとは?生産性や物流の品質向上につながる倉庫管理(在庫管理)システムについて解説

UPDATE : 2021.03.05
倉庫管理をサポートする仕組みとして注目を集めている「WMS(倉庫管理システム)」。しかし、その適切な導入は簡単ではなく、多くの物流関係者を悩ませているのではないでしょうか。ここでは、実際に導入を検討している方に向けて、「WMSが何なのか」という基礎知識から、導入する上で必要なこと、メリットまでを解説します。
INDEX
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WMS(倉庫管理システム)とは
- WMS(倉庫管理システム)が必要とされる理由
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基幹システムや在庫管理システムとの違い
- WMSと基幹システムの違い
- WMSと在庫管理システムの違い
- WMSが基幹システムとわかれている理由
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WMS(倉庫管理システム)の基本機能
- 保管場所(ロケーション)管理
- 入庫管理
- 出庫管理
- 在庫管理
- 返品管理
- 各種帳票やラベルの発行
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WMS導入の効果・メリットとは
- 業務を効率・標準化、スピードアップすることができる
- 人為的ミスを減らすことができる
- データが即時反映されるので管理がしやすい
- 倉庫内の置き場所の管理がしやすくなる
- コスト削減につながる
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WMS(倉庫管理システム)導入のデメリット
- システム導入に伴い新たな手間がかかる
- 導入目的を明確にしておかないと自社に必要なシステムを導入できない
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WMS(倉庫管理システム)導入の失敗事例
- 既存システムや関係先との連携不足により業務の効率が悪くなってしまった
- 保管場所の変更など、現場のニーズとは異なっていた
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WMS(倉庫管理システム)を導入する際に確認しておきたいこと
- 自社の目的や運用方法を明確にする
- オンプレミス型かクラウド型か選ぶ
- 提供企業の導入事例の確認や体験版を利用するなどして自社に向いているかを検証
- 既存のシステムと連携できるか、外部連携する場合には委託範囲を明確にしておくなどの情報共有についての確認
- サポートやセキュリティ体制が整っているか確認
- どれくらいのコストがかかるか試算する
- まとめ
WMS(倉庫管理システム)とは
WMSとはWarehouse Management System(ウェアハウス・マネジメント・システム)の略。すなわち「倉庫管理システム」のことを意味します。商品の入出庫、在庫管理から、納品書作成や棚卸などまでをデジタル化することで物流品質や生産性を高めることが目的のシステムで、すでに幅広い業界で採用が進んでいます。なお、WMSは「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種に分類可能。ここではどちらを選ぶのかも含め、導入する際に注意しておくべき事を解説します。
WMS(倉庫管理システム)が必要とされる理由
企業の庫内物流にWMSを導入することで、現場作業の正確性とスピードアップを同時に実現することが可能です。また、WMSならERP(基幹システム)や在庫管理システムなどでは対応できない特殊で細かなニーズにも対応できます。これらWMSならではのメリットについては後段の「WMS導入の効果・メリットとは」で詳しく解説します。
基幹システムや在庫管理システムとの違い
ここではWMSが、すでに多くの企業で活用されている業務システムとどのように異なっているのかを個別に解説します。
WMSと基幹システムの違い
全社統一で幅広く業務内容を管理するERP(基幹システム)。もちろん在庫管理もその重要な機能の1つです。しかし、ERPで管理できるのは多くの場合、在庫数の把握まで。倉庫ごとに異なるローカルルールが存在しがちな入出庫作業や保管業務まではサポートしきれないというのが実情です。その点、現場ごとに導入され、倉庫管理に特化した機能の充実したWMSはそうした問題が発生しません。
WMSと在庫管理システムの違い
在庫管理システムは、企業全体の在庫量を把握するためのシステム。その管理対象は企業の倉庫内だけに留まらず、仕入先、出荷先、それら顧客情報まで、多岐にわたります。在庫管理システムはこれらの情報を元に、在庫の適正化など、より効率的なビジネスを生み出すための仕組み。つまりWMSと在庫管理システムは役割が異なるのです。
WMSが基幹システムとわかれている理由
前段でも説明したよう、ERP(基幹システム)でも在庫管理が行えますが、それはあくまで在庫数の把握程度。現実的に庫内物流を効率化させるためには、ピッキングや出庫などといった現場寄りの作業をサポートしている必要があります。また、同じ企業内でも倉庫ごとに取り扱う商品や設備は異なっており、それに伴うローカルルールも多々あります。こうしたことを考えると、倉庫の管理・運営は、全社を一元管理するERPではなく、それぞれの現場ごとに最適な管理が行えるWMSに任せるのが正解と言えるでしょう。
WMS(倉庫管理システム)の基本機能
ここではWMSの持つ、倉庫管理を効率化する幅広い機能の中から、基本的で重要な機能を解説します。
保管場所(ロケーション)管理
WMSを使えば、任意の商品がどこ(ロケーション)に保管されているかが一目でわかります。品目だけでなくロットやSKUなども管理されているので、ピッキングの手間が大きく低減されます。
入庫管理
入荷する商品をリストで管理。実際の入庫時には、品目や数量に間違いないかをバーコードリーダーなどを使って素早く検品できます。大量に、しかも日々変動する入庫製品を正確に把握するために便利な機能です。
出庫管理
庫内の商品を正確に、かつスピーディに出庫するサポートをします。出庫したい商品の商品名、数量などを指定することで、ロケーション情報を記載したピッキングリストが素早く作成されるなど、出庫業務を効率化します。
在庫管理
現在、庫内にどの商品がいくつ保管されているかをリアルタイムに管理。保管場所だけでなく、製造年月日、消費期限なども照会可能です。庫内での保管場所移動や廃棄などの履歴も記録し、後日のトレースが可能です。
返品管理
在庫数や製造年月日などの情報に基づき、返品リストも作成可能。また、そうしてリストアップされた返品対象商品が、実際に返品されているかを管理する機能も用意されています。もちろん過去の返品履歴なども確認できます。
各種帳票やラベルの発行
ここまでで解説した各種管理業務に必要となる、納品書や受領書、発注書などといった帳票の発行や、ラベルの出力を自動化。自動化することで、手間の軽減に加え、人為ミスを低減することができます。
WMS導入の効果・メリットとは
WMSを導入することで、倉庫管理にどのようなメリットが生まれるのか、それがビジネス全体をどのようにブーストするのか。以下に代表的なメリットをまとめました。
業務を効率・標準化、スピードアップすることができる
本来煩雑な入出庫業務をハンディターミナル(バーコードリーダーや小型の情報端末)などを用いて誰でも簡単に行えるようにしてくれるWMSの導入効果は、何よりもまず「業務スピードのアップ」という形で明確に現れます。また、WMSは業務の平準化にも寄与。業務をわずかなトレーニングで習熟できる簡略なものにしてくれるので、新人スタッフでもベテランに迫る高い効率で作業できるようになります。
人為的ミスを減らすことができる
WMSでは業務の多くをデジタル化。入出庫、検品、ピッキングなどといった作業をハンディターミナルを使ったバーコード読み取りなどで行うため、チェックを目視で行う場合と比べてミスが激減します。作業に間違いがあった場合はエラー音などですぐに知らせてくれますし、それでもなおミスが発生した場合も、全ての作業が記録されているため原因究明が容易です。
データが即時反映されるので管理がしやすい
在庫の適正化には正確な在庫の把握が必須。WMSでは入出庫がリアルタイムに記録されるため、データ上の在庫と実際の在庫の差異が発生しません。対して作業とデータ更新が連動していない、タイムラグのある旧来システムでは、データ上の在庫と実際の在庫が異なるという状況が頻繁に発生し、結果として間違った発注をしてしまうリスクがありました
倉庫内の置き場所の管理がしやすくなる
WMSは商品が倉庫内に「いくつ」あるかという情報だけでなく、倉庫の「どこに」あるか(=ロケーション)も管理してくれます。しかも入庫時には届いた商品をどこに持っていくべきかシステムが指示してくれるので、スムーズな作業が可能です。もちろん、置き場所を変更した場合は情報を即時更新。必要な商品がどこにあるのか分からず探し回る必要がなくなります。
コスト削減につながる
作業の平準化=新人スタッフでもベテラン並みの効率で作業できるようになることや、入出庫の迅速化に伴う作業時間の短縮化など、ここまでで紹介したメリットによって人件費も大幅に削減することが可能です。
WMS(倉庫管理システム)導入のデメリット
多くのメリットをもつWMSですが、もちろん良いことばかりではありません。ここではWMSのデメリットについてまとめました。
システム導入に伴い新たな手間がかかる
当然ですが、WMSを導入するまでにかからなかったコスト(初期費用、ランニングコスト)が倉庫運営費用に上乗せされます。また、WMSを使えるようにスタッフをトレーニングする教育コストも無視できません。WMSをERP(基幹システム)や在庫管理システムなどといった既存システムと連携させる場合は、システム相互に異なるデータ形式、取り扱いを仲介するシステムの新規開発や、ネットワークの管理などといった手間も発生します。
導入目的を明確にしておかないと自社に必要なシステムを導入できない
デメリットというと言い過ぎですが、WMSは適切に導入しなければ、その真価を発揮できません。倉庫の規模や、どういった商品を取り扱うか、外部との連携が必要なのかなど、あらかじめ現場の状況、ニーズを把握しておかねば、WMSに期待する効果が得られないなどということも起こりえます。
WMS(倉庫管理システム)導入の失敗事例
デメリットを越える多くのメリットを備えるWMSですが、導入の仕方をまちがえるとそのメリットを享受できなくなってしまいます。ここでは「ありがち」な、導入失敗パターンを紹介します。
既存システムや関係先との連携不足により業務の効率が悪くなってしまった
WMSの運用は倉庫内だけでは完結しません。IT部門や経理部門、販売部門など、多くの部署と連携する必要があります。たとえば先に挙げたERP(基幹システム)とWMSを仲介するシステムの開発・運用にはIT部門の定期的なサポートが不可欠です。さらに、より高度な物流を実現するには関係先システムとの連携も求められます。こうした調整を怠るとWMSはそのポテンシャルを発揮できず、むしろ業務の効率が悪くなってしまうということになります。
保管場所の変更など、現場のニーズとは異なっていた
WMSの大きなメリットの1つが、倉庫内商品のロケーションを効率的に管理できることですが、机上の効率が必ずしも実情に沿っていないことは大いにあり得ることです。また、同じ会社でも拠点ごとにローカルな運用ルールが必ず存在します。このような「現場のリアル」をしっかりと押さえておくことが大事。WMS導入時には現場の意見をしっかりとリサーチし、本当の意味で使いやすいものにしなければ、現場の効率は落ち、士気も下がってしまいます。
WMS(倉庫管理システム)を導入する際に確認しておきたいこと
多数の選択肢の中から、どのWMSを選び、導入するか? ここではどうすれば自社にぴったりのWMSを選ぶことができるのかを指南します。
自社の目的や運用方法を明確にする
まずは「WMSの導入目的を明確化する」ことが大切です。広大な倉庫の商品位置(ロケーション)をより正確に把握したいのか、あるいは人件費を削減したいのか、現在、自社が抱えている課題や目的を明確化しましょう。その上で、関連する部門を中心に社内合意をしっかり取り(特に運用をサポートするIT部門)、無理のないスケジュールで導入するようにしてください。
オンプレミス型かクラウド型か選ぶ
WMSには「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つの種類が存在します。オンプレミス型は自社内にサーバーを立て、そこでWMSを動かす方式。クラウド型はインターネット上のWMSサービス(サーバーはサービス提供会社のもの)に接続して利用する方式。前者は初期費用など、導入の敷居が低いことがメリット、後者はシステムを自社の業務に合わせて徹底的にカスタマイズできることがメリットです。
提供企業の導入事例の確認や体験版を利用するなどして自社に向いているかを検証
WMSには多くのソリューションが存在し、それぞれ得意とする業界・業種が異なります。繰り返しになりますが、まずは自社がMWSに求めるニーズを把握し、検討しているMWSがそれを満たす機能を備えているかを確認してください。提供メーカーが自社ウェブサイトなどに掲載している導入事例記事や、一定期間無償で使える体験版などで検証してみるのもおすすめです。
既存のシステムと連携できるか、外部連携する場合には委託範囲を明確にしておくなどの情報共有についての確認
MWSのパフォーマンスを十全に引き出すためには、他部門や関係先システムとのデータ連係が必須です。しかし、そうした外部システムのデータ形式がWMSで直接取り扱えないものであった場合、それを仲介(変換)するシステムが必要になるなど、負担が増えてしまいます。また、外部の企業と連携する場合は、必要なデータをしっかりやり取りできるよう、データの共有範囲などをあらかじめ決めておくようにしましょう。
サポートやセキュリティ体制が整っているか確認
あらかじめ確認しておくべきはWMSの「機能」だけではありません。導入時、あるいはその後のトラブル時などに提供メーカー・代理店がどういったサポートをしてくれるのかも確認しておきましょう。また、ネットワークを活用するWMSは情報漏洩のリスクと隣り合わせ。WMS製品のセキュリティポリシーや、運用時の注意点などをあらかじめIT部門と確認するようにしてください。
どれくらいのコストがかかるか試算する
ここまでで説明してきたことを踏まえて、最終的にWMS導入にかかる費用を試算します。オンプレミス型の場合は、初期費用に加えて、サーバー代や管理者の人件費、サポートプランの利用料などが必要です。クラウド型の場合はそれらの費用が利用料に組み込まれていますが、利用量に応じて料金が増大します。業務の特殊性に合わせた大幅なカスタマイズや定期的なアップデートが必要になる場合は、そのコストも見越しておくようにしましょう。
まとめ
「WMS」は庫内物流を加速し、業務効率を劇的に効率化してくれます。しかし、導入や運用の仕方をまちがえると、そのパフォーマンスを引き出せないばかりか、業務の足を引っ張りかねません。WMSを正しく活用するには事前の計画と調整と、その後の丁寧な運用が必須。不安がある場合は、まずサポートの手厚い、実績のあるソリューションを選択することをおすすめします。
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