サーキュラーエコノミーとは?3原則や企業の取り組み事例を解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

サーキュラーエコノミーとは?
3原則や企業の取り組み事例を解説

UPDATE : 2023.06.30

日本を含む、世界各国で推進されているサーキュラーエコノミー。サーキュラーエコノミーとは「循環経済」という意味で、地球環境へ配慮しつつ経済発展が望める持続可能性の高い経済システムとして注目を集めています。本記事では、サーキュラーエコノミーの定義や注目される背景、国や企業の取り組みなどについて解説します。

INDEX

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(circular economy)とは、日本語では「循環経済」または「循環型経済」と訳される新しい経済システムを指します。資源の投入量と消費量を抑え、既存の資源を有効活用して付加価値を生み出す経済活動です。これまで破棄されていた原材料や製品などを「資源」と捉え、再利用やリサイクルすることで付加価値を最大化します。

2015年12月にEU(欧州連合)は、2030年に向けた成長戦略の核として、循環経済パッケージを発表しました。製品・材料・資源の価値を可能な限り永く保持し、廃棄物を発生させないことを目的として掲げたのです。これをきっかけに、世界的にサーキュラーエコノミーが広がり始めました。

サーキュラーエコノミーの定義

環境省はサーキュラーエコノミーを以下のように定義しています。

循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの。

引用:令和3年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境省)

また経済産業省は、下記のように定義しています。

循環経済とは、あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を図る経済。

引用:「循環経済ビジョン2020(概要)」(経済産業省)

リニアエコノミー(線型経済)とサーキュラーエコノミー(循環経済)

サーキュラーエコノミーに対する経済システムに、リニアエコノミー(線型経済)があります。従来型であるリニアエコノミーは、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済システムで、「原材料」「製品」「利用」「廃棄物」の流れが一方向に進みます。地球温暖化や海洋プラスチックなどの環境問題が深刻化している今、廃棄物を大量に発生させるリニアエコノミーでは、近い将来、世界経済全体が立ち行かなくなる恐れがあります。そのため、製品を生産する段階から、資源の回収や再利用が前提とされるサーキュラーエコノミーに舵を切り、新たな資源の使用量を最小化する必要があるのです。

リニアエコノミー(線型経済)とサーキュラーエコノミー(循環経済)
引用:令和3年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境省)

サーキュラーエコノミーの3原則

2010年9月にサーキュラーエコノミーを加速することを目的に設立された「エレン・マッカーサー財団(英国)は、「サーキュラーエコノミー3原則」として以下を挙げています。

  • Eliminate waste and pollution(廃棄や汚染を出さない)
  • Circulate products and materials(製品と素材を循環させる)
  • Regenerate nature(自然を再生させる)

出典:エレン・マッカーサー財団HP

サーキュラーエコノミーの3原則では、(1)製品の設計段階から廃棄物や汚染を発生させないようにすること、(2)製品を使用した後も循環させて使い続けること、(3)資源を有効利用して自然のシステムを再生させること、が重要としています。

3R(リデュース・リユース・リサイクル)との違い

これまで日本政府は3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進を行っており、廃棄物の削減に取り組んできました。似ているように思われますが、サーキュラーエコノミーと3Rには明確な違いがあります。それは、「廃棄物」の概念が存在するか否かです。

3RはReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取ったもので、「廃棄物をできるだけ出さないようにする」「使用済み製品を資源として有効利用する」ことを目標としており、廃棄物は出る前提です。一方サーキュラーエコノミーは、製品の設計段階から廃棄物が発生しない前提で資源を循環させます。

シェアリングエコノミーとの関係性

シェアリングエコノミーとは、内閣官房シェアリングエコノミー促進室によると「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と定義されています。具体的には、提供したい(貸したい・売りたい)人と利用したい(借りたい・買いたい)人がマッチングプラットフォームに登録して、お互いのニーズがマッチすると個人の資産を他の人にシェアできます。すでに持っている資源を再活用することで廃棄物の発生を防ぐため、サーキュラーエコノミーの類型の一つと言われています。

サーキュラーエコノミーが注目される背景

サーキュラーエコノミーが注目されている背景を解説します。

廃棄物量増大による環境問題の深刻化

従来型である大量生産・大量廃棄の経済システム「リニアエコノミー」は、持続可能な経済モデルではないことが明らかになっています。地球環境の問題を解決するため、廃棄物をできるだけ出さない3Rの取り組みが世界規模で実施されていますが、世界の人口増加と経済発展に伴って、廃棄物の量が増大しています。

将来においても、人口は2000年に61億人だったのが2050 年には97億人(国連予測)に、GDPは2000年の34兆ドルから2050年には264兆ドルへの増加が見込まれています。廃棄物マネジメントや環境問題のコンサルティングを行う廃棄物工学研究所は、人口やGDPの増加に伴い、廃棄物発生量も増加すると予測しています。2000年の世界の廃棄物発生量は 76億トン、2020年は140億トンでしたが、現在の状態が続くと2025年には170億トンに、2050年には320億トンに達するとしています。

※国際通貨基金 IMF「World Economic Outlook Database, April 2019 Edition」

廃棄物発生量合計 2000年~2050年

さらに、経済産業省は、2050年には海洋中のプラスチックの量が魚の量以上に増加するとの推計も明らかにしています。環境問題の深刻化が懸念される状況下で、地球の生態系を維持しつつ、人類が進歩を続けていくための経済システムとして、サーキュラーエコノミーが注目されているのです。

資源不足や地球温暖化への対応

環境問題だけでなく、世界的な資源不足も憂慮すべき問題です。OECD(経済協力開発機構)によると、世界の資源利用量は2018年に比べ、2060年には約2倍に増加すると予測されています。このまま進むと、さらに環境に負荷をかけた開発が必要になるでしょう。資源が不足すると、資源価格の高騰や国家間の対立、政治情勢の不安を引き起こす原因になりかねません。資源の再利用など、新たに開発せずにすむ対策が望まれます。

また、地球温暖化への対策も欠かせません。政府は地球温暖化対策を推進するため、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言しており、2030年には2013年度比で温室効果ガス排出量46%削減を掲げています。資源を有効活用し廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーは、温室効果ガス排出量の削減にも効果があると期待されています。

SDGsと関連がある

SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標を意味します。2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットが掲げられており、サーキュラーエコノミーはいくつかの目標を達成するための手段として有効です。例えば、目標9、12、13、15はサーキュラーエコノミーに関係する取り組みとなっています。

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
9.4「資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。」
目標12:つくる責任 つかう責任
12.2「天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。」
12.5「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」
目標13:気候変動に具体的な対策を
温室効果ガスの排出を原因とする地球温暖化現象が招く世界各地での気候変動やその影響を軽減する
目標15:陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

サーキュラーエコノミーのメリット・デメリット

サーキュラーエコノミーのメリットとデメリットを解説します。

【サーキュラーエコノミーのメリット】

サーキュラーエコノミーには、以下のメリットがあります。

  • 資源コストを抑えられる
  • 資源を安定的に確保できる
  • 温室効果ガス排出量の削減が可能
  • 新たなビジネス創出が期待できる

製造過程を見直して無駄を省き、資源を再利用することで、製造する際の資源コストを削減できます。また、資源の再利用プロセスを構築することで、資源不足による価格高騰などの影響を受けにくくなり、安定した資源確保が可能となります。資源をリサイクルすることで、製造過程で使用する原材料やエネルギーを削減でき、温室効果ガスの排出量を削減できるでしょう。加えて、リサイクルなどの技術開発に取り組む他業種の企業と連携することで、新たなビジネスの創出が期待できます。

【サーキュラーエコノミーのデメリット】

サーキュラーエコノミーには、以下のデメリットがあります。

  • 移行に伴うジレンマ
  • 幅広い技術が必要になる
  • デザインが制約される
  • 回収・仕分けにコストがかかる

サーキュラーエコノミーへの移行期にはジレンマが発生します。例えば、既製服は多くの場合、発展途上国で大量生産し、先進国などで大量消費された後に廃棄物となります。廃棄物を無くすサーキュラーエコノミーへの取り組みは重要ですが、一方で、現在の経済活動は低所得者層に雇用機会を与えているとも言えます。サーキュラーエコノミーに移行すると、労働者の多くが職を失うかもしれません。また、リサイクルを前提とした製品開発を行うには、高度で幅広い技術が必要です。さらに、リサイクルを前提にした場合、製品のデザインや設計が制限されるでしょう。使用済みの資源を回収するための対策をしたり、仕分けするシステムを導入するためのコストがかかったりする場合もあります。

サーキュラーエコノミーに関する世界の動き

サーキュラーエコノミー推進は世界的に行われています。各国の動きを解説します。

EU(欧州連合)
2015年12月、EU(欧州連合)はサーキュラーエコノミーパッケージを採択し、2016年6月にいくつかのプランを掲げました。具体的には、2030年までに都市廃棄物の65%、包装梱包の75%をリサイクルすることや、埋め立て廃棄量を最大10%削減することなどを目標としています。2020年3月には「新・循環経済行動計画」を発表し、サーキュラーエコノミーへの移行が可能な「電子・情報通信機器」「バッテリーおよび車両」「包装」「プラスチック」などの7分野に対して具体的な施策を掲げています。

中国
中国はサーキュラーエコノミー政策を進めるため、2021年7月に「循環経済の発展に関する第14次5カ年(2021~2025年)規画」を発表しました。具体的には、2025年までに、各種資源の総合利用率を高めて、資源循環型の産業体系の構築を行い、鉄鋼・非鉄金属・冶金(やきん)・石油化学・設備製造・軽工業などの分野でサーキュラーエコノミーを普及させるとしています。

米国
米国でもサーキュラーエコノミーは推進されています。廃棄物のリサイクル率は、1960年には7%未満だったのに対し、2015年は35%となりました。リサイクル事業においては75万人を超える雇用を創出しており、サーキュラーエコノミーの進展がみられますが、年間90億ドル相当の資源がいまだに廃棄されていると言われています。こうした中、今後さらにサーキュラーエコノミーに関連する産業の成長が期待されています。

サーキュラーエコノミーに関する日本政府の取り組み

日本では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」が制定されました。それまでは「廃棄物処理法」の改正などで廃棄物対策を行っていましたが、依然として大量の廃棄物が発生していることや不法投棄が増大していることを受け、廃棄物やリサイクル政策の基盤が確立されました。

2020年5月には、経済産業省により「循環経済ビジョン2020」が取りまとめられ、3Rの経済活動からサーキュラーエコノミーに転換する方向性が提示されました。2021年3月には、経産省・環境省・経団連により「循環経済パートナーシップ(J4CE)」が設立。J4CEは、世界的にサーキュラーエコノミーへの転換が進んでいる背景を受けて、国内企業へのサーキュラーエコノミーに関する理解の深化や、官民連携の強化を目的に活動しています。

さらに2022年4月には、「プラスチック資源循環促進法」が施行。この法律の目的は、プラスチック製品の設計から販売へのプロセスにおいて、自治体・事業者・消費者が連携して、サーキュラーエコノミーを推進することです。

経団連の「サーキュラーエコノミーの実現に向けた提言」

2021年3月、経団連は環境省、経済産業省と共にサーキュラーエコノミーを推進するためのプラットフォーム「循環経済パートナーシップ」を創設しました。「循環経済パートナーシップ」は官民連携のプラットフォームで、企業・業種の垣根を超えた連携強化を目指すとしています。

さらに、2023年2月には「サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言」を発表。サーキュラーエコノミーを実現するための方向性として、以下の9点を掲げています。

  • (1)環境配慮設計の促進
  • (2)再生材の活用、部品リユースの普及促進
  • (3)「利用型ビジネスモデル」の普及促進
  • (4)消費者の行動変容促進
  • (5)循環資源の効率的な収集、再資源化の拡大
  • (6)海外における資源循環体制の構築への協力
  • (7)情報流通プラットフォームの構築
  • (8)企業の「循環度」等の評価
  • (9)企業と投資家・金融機関の建設的対話

引用:サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言(経団連)

日本企業における取り組み事例

日本企業において、サーキュラーエコノミーを推進している企業の取り組み事例を解説します。

使用済みタイヤの有効活用【ブリヂストン】

国内大手タイヤメーカーのブリヂストンでは、使用済タイヤのすり減った表面(トレッド)部分を貼り替え、再度使用可能にする「リトレッドタイヤ」を開発しています。リトレッドタイヤは新品タイヤと比較して原材料の使用量が3分の1未満、ゴム以外の部材も再利用できるため、廃棄物削減に有効です。リトレッドタイヤは車だけでなく、航空機・トラック・バスにも使用されており、サーキュラーエコノミーの推進に役立っています。

みんなでボトルリサイクルプロジェクト【ユニリーバ・花王・P&G・ライオン・ヴェオリア】

消費財メーカーのユニリーバ、花王、P&G、ライオン、そしてプラスチックリサイクル事業を展開するヴェオリアは、使用済ボトルのリサイクルに取り組む「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」を展開。業界の競合である大手企業が手を組み、企業の枠を超えてサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。

具体的には、東京都東大和市内の10か所に回収ボックスを設置し、家庭で使用した容器を回収。その後、リサイクル工場にて分別・洗浄・処理を行っています。各社の商品であるシャンプーなど日用品容器の資源循環を目指し、ペットボトルから新しいペットボトルを作るような、リサイクル前と後で用途を変えない「水平リサイクル」技術の検証を実施しています。そうして東大和市で始まった同プロジェクトは、茨城県常総市や東京都狛江市にも拡大しています。

サーキュラーエコノミー実現に向けて、DXを推進

サーキュラーエコノミーに向けた動きは世界的に広がっており、地球環境の持続可能性を損なう恐れのある事業は、事業継続のリスク要因と考えられるようになっています。サーキュラーエコノミーへ転換することで、持続可能な事業活動として、中長期的な事業戦略が構築できるようになるでしょう。

サーキュラーエコノミーを実現するには、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)などデジタル技術を活用したDX推進がカギとなります。例えば、AIを活用した需要予測により、過剰生産や過剰在庫を防止して無駄をなくしたり、IoTの活用で設備機器からデータを収集・分析し、設備が故障する前に補修したりすることもできます。さらに、ICカードでアクティビティデータを記録し、地域住民のゴミ資源循環の仕組みを作ることも可能です。

NECソリューションイノベータの「NEC 地域資源循環サービス」では、サーキュラーエコノミーを実現するためのプラットフォームを提供しています。地域のごみステーションに回収される生ごみなど、循環資源の回収状況や地域住民の参加状況などを可視化し、資源エネルギーの地域内循環を促進します。

まとめ

サーキュラーエコノミーとは、循環型経済を意味する経済システムです。廃棄物を出さないシステムを構築することで、環境問題の深刻化や資源不足への対応、地球温暖化対策などに有効とされています。EU、中国、米国など世界各国にサーキュラーエコノミーが広がり、日本でも法律が制定。企業においても、サーキュラーエコノミー推進が活発化しています。
サーキュラーエコノミーを実現するには、デジタル技術を最大限に活用したDX推進がカギとなります。デジタル技術を活用しサーキュラーエコノミーを推進するためには、サーキュラーエコノミーに関する実績のあるITベンダーに相談すると良いでしょう。