キャリアアップ助成金とは?正社員化コースや申請方法、金額などを解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

キャリアアップ助成金とは?
正社員化コースや申請方法、金額などを解説

UPDATE : 2023.07.07

非正規雇用労働者に対して正社員化や処遇改善を行った事業主を対象に、助成金が支給される「キャリアアップ助成金」。キャリアアップ助成金を受給するには、キャリアアップ計画の提出など定められた条件を満たす必要があります。本記事では、キャリアアップ助成金のコース内容や支給額、申請する際の注意点などについて解説します。

INDEX

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇改善を行ったりした事業主に対して、助成金が支給される制度です。有期雇用労働者、無期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などのキャリアアップを目的としています。

キャリアアップ助成金は厚生労働省が管轄しており、「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2種類に大別されます。申請は管轄の労働局またはハローワークで行い、申請内容に問題がなければ助成が受けられます。

キャリアアップ助成金
正社員化支援 正社員化コース
障害者正社員化コース
処遇改善支援 賃金規定等改定コース
賃金規定等共通化コース
賞与・退職金制度導入コース
短時間労働者労働時間延長コース

正社員化支援「正社員化コース」を徹底解説

正社員化支援には、「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2コースがあります。ここでは、正社員化コースについて解説します。

「正社員化コース」とは

正社員化コースは、非正規雇用労働者を正社員化した場合に助成金が支給されます。非正規雇用労働者のキャリアアップと雇用安定を目的としており、非正規雇用労働者の意欲向上や優秀な人材の確保、魅力的な職場づくりなどに寄与します。

正社員化コースの対象となる労働者は、有期雇用労働者、無期雇用労働者、有期派遣労働者、無期派遣労働者です。人材開発支援助成金の訓練を修了した有期雇用労働者なども対象となります。正規雇用労働者として雇用する前提で雇った有期雇用労働者は対象外です。また、助成金を申請する事業主は対象となる労働者に対して、正社員化後6か月間の賃金が正社員化前6か月間の賃金と比較して3%以上増額するなどの条件があります。

対象となる労働者
  • 有期雇用労働者または無期雇用労働者※1
  • 有期派遣労働者または無期派遣労働者※2
  • 人材開発支援助成金の訓練を受講修了した有期雇用労働者※1
  • 特定紹介予定派遣労働者※3

※1 賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用されていること

※2 6か月以上継続して派遣先の事業所の業務に従事していること

※3 新型コロナウイルス感染症の影響を受け就労経験のない職業に就くことを希望し、紹介予定派遣により2か月以上6か月未満派遣先の事業所の業務に従事していること

*その他にも微細な条件があります

令和5年度版(2023年版)の変更点

令和5年度版(2023年版)では、以下の点が変更となっています。

【令和5年度版(2023年版)の変更点】

  • 2023年4月1日以降、生産性要件を満たした場合の加算措置が廃止された。
  • キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の訓練を活用して正社員化する場合、加算の対象となる訓練が統合・拡充された。
  • 人材開発支援助成金の特定の訓練における対象労働者の正社員化に限り、人材開発支援助成金の計画届とキャリアアップ計画を一本化。
  • 有期実習型訓練※1修了者については、「賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用※2」を受けていることも要件とされた。

※1 有期実習型訓練とは、パートやアルバイトなどの非正規雇用労働者を、適性・能力を見極めた上で正社員に登用するために実施する訓練。なお、対象となる訓練は、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)によるものに限る。

※2 雇入れから転換日まで6か月を超える場合は6か月間、6か月に満たない場合は雇入れから転換日までの間。2023年(令和5年)10月1日以降の転換から適用。

生産性要件を満たした場合の加算措置は廃止されましたが、その他の加算措置は継続しています(詳細は後述)。なお、2022年(令和4年度)以降、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止されています。正社員化コースで適用されるのは、「有期雇用労働者から正規雇用労働者」および「無期雇用労働者から正規雇用労働者」となります。

正社員化コースの支給金額

正社員化コースの支給額は、有期雇用労働者から正規雇用労働者に転換した場合、中小企業は57万円、大企業は42万7,500円となります。無期雇用労働者から正規雇用労働者への転換時には、中小企業に28万5,000円、大企業には21万3,750円が支給されます。

また、派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合や、人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合など、条件を満たす場合は加算措置が適用されます。支給額および条件ごとの加算額、さらに中小企業の範囲については下図を参照してください。

■正社員化コースの支給額・加算額

正社員化コースの支給額・加算額

■中小企業の範囲

資本金の額・出資の総額 常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

正社員化支援「障害者正社員化コース」とは

障害者正社員化コースは、障害者の非正規雇用労働者を正社員化または無期雇用に転換した場合に助成金が支給されます。障害者の雇用促進と職場定着を図る目的があり、身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者・難病患者などが対象となります。以下の転換を行った場合に適用されます。

【障害者正社員化コースの転換】

  • 有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換
  • 有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換
  • 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換

支給額は、転換の条件によって変わります。また、重度障害者の場合は支給額が異なります。支給額の詳細は下図を参照してください。

■障害者正社員化コースの支給額

障害者正社員化コースの支給額

「処遇改善支援」の各コースを解説

処遇改善支援には4つのコースがあります。それぞれのコースを解説します。

●賃金規定等改定コース
有期雇用労働者などの基本給の賃金規定などを3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成されるコースです。支給額は条件によって異なり、中小企業は5万円または6.5万円、大企業は3万3,000円または4万3,000円となります。また、職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合は、中小企業に20万円、大企業には15万円が1事業所当たり加算されます。

●賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者などに関して、正規雇用労働者と共通の職務などに応じた賃金規定を作成して、適用した場合に助成されるコースです。支給額は、1事業所当たり中小企業は60万円、大企業は45万円です。

●賞与・退職金制度導入コース
有期雇用労働者などに関して、賞与・退職金制度を新たに設けて、支給または積立てを実施した場合に助成されるコースです。賞与または退職金制度を導入した場合の支給額は、1事業所当たり中小企業は40万円、大企業は30万円です。また、賞与と退職金制度を同時に導入した場合は、1事業所当たり中小企業に16万8,000円、大企業に12万6,000円が加算されます。

●短時間労働者労働時間延長コース
有期雇用労働者などの労働時間を延長することで、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成されるコースです。支給額は、中小企業は237,000円、大企業は178,000円です。3時間に満たない場合でも適用される場合があります。

各コースの支給を受ける条件や支給額、加算額については、下図にまとめたので参照してください。

■処遇改善支援コースの支給額・加算額

処遇改善支援コースの支給額・加算額

なお、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長コースについては、2023年(令和5年)4月1日以降、生産性要件を満たした場合の加算措置は廃止されています。廃止に伴い、助成額の見直しが図られています。

キャリアアップ助成金の申請に不可欠
「キャリアアップ計画」とは?

キャリアアップ助成金を申請するには、「キャリアアップ計画」の作成および提出が必要です。キャリアアップ計画とは、非正規雇用労働者のキャリアアップを計画的に進めるため、取り組み内容をまとめた計画書です。対象者の名前や期間、目標を達成するために事業主が行う具体的な取り組みなど、所定の申請様式に沿って記入します。

記入したキャリアアップ計画は、コース実施日の前日までに管轄労働局長に提出する必要があります。実施するコースの取り組みについて記載がないなど、不備があると助成金は支給されませんので注意が必要です。なお、キャリアアップ計画の内容は随時変更が可能です。変更する際は、管轄労働局に「キャリアアップ計画変更届」を提出します。

キャリアアップ計画の記入例
出所:キャリアアップ助成金のご案内 令和5年度版(厚生労働省)の一部を引用

キャリアアップ助成金の申請までの流れ

キャリアアップ助成金の支給申請までの流れは、下図になります。2023年4月からは、キャリアアップ助成金の正社員化コースの電子申請が可能となっています。また、管轄労働局のほか、ハローワークで受付をしている都道府県労働局もあります。

キャリアアップ助成金 申請の流れ
出所:キャリアアップ助成金の申請までの流れ(厚生労働省)を引用

キャリアアップ助成金の注意点

キャリアアップ助成金を活用する際には、いくつかの注意点があります。

キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主

全コースで共通する、キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主は以下の通りです。

【対象となる事業主】*全コース共通

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置している事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定を得ている事業主
  • 対象労働者について労働条件や勤務状況、賃金支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできる事業主
  • キャリアアップ計画期間中にキャリアアップの取り組みを実施した事業主

上記の2で示されているように、キャリアアップ助成金の支給を受けるには、「キャリアアップ管理者」が必要です。キャリアアップ管理者とは、有期雇用労働者等のキャリアアップのために目標や期間、実施方法を定め、実行する責任者です。キャリアアップ管理者には、労働者のキャリアアップに必要な知識と経験を有する人を選任します。役員や事業主でも可能ですが、複数の事業所を兼務することはできません。加えて、労働者代表は不可となります。

また、キャリアアップ助成金の事業主には、民間の事業主のほかに、NPO法人や医療法人、社会福祉法人なども含まれます。各コースによって対象要件に多少の違いがあるため、申請時には管轄の労働局かハローワークに問い合わせるとよいでしょう。

キャリアアップ助成金を受給できない事業主

キャリアアップ助成金については、以下のいずれかに該当する事業主は受給できませんので、ご注意ください。

【受給できない事業主】

  • 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
  • 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
  • 暴力団と関わりのある事業主
  • 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
  • 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
  • 支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主

キャリアアップ助成金が支給されない例

以下のような場合にも、キャリアアップ助成金が支給されませんので、ご注意ください。

【支給されない例】

  • 労働者の処遇改善が図られていないなど、キャリアアップ助成金の趣旨や目的に沿った取り組みと判断されない場合
  • 同一の行為などを対象として2つ以上の助成金等が申請された場合、一方しか支給されないことがある
  • 不正受給を行った場合は、5年間は雇用関係助成金を受給できない
  • 事業所の実地調査等において書類や法定帳簿の確認等を求めた際に、調査に協力しない場合
  • 助成金が受給された後に会計検査院の検査の対象になった際に、検査の協力に同意しない場合
  • 添付書類の賃金台帳などが法定帳簿の原本または複写したもの(原本等)ではなく、加工・転記・別途作成された書類と明らかになった場合
  • 支給要件に照らして申請書や添付書類の内容に疑義がある場合や審査に協力しない場合

キャリアアップ助成金の電子申請など、
人事部門の業務をITで効率化

キャリアアップ助成金を受給するには、キャリアアップ計画の作成や支給申請などの事務手続きを踏む必要があります。正社員化コースは、2023年4月から「雇用関係助成金ポータル」での電子申請が可能となっています。また、他のコースにおいても今後、電子申請できる予定になっています。電子申請を活用すれば、移動や郵送などの手間が不要になるため、業務の効率化が図れるでしょう。

キャリアアップ助成金のみならず、助成金や補助金などの書類作成には多くのデータが必要です。NECソリューションイノベータが提供する「人事給与システム SuperStream-NX」を活用すれば、さまざまな雇用形態に対応した給与や人事考課などの人事情報が一元管理でき、業務効率化が促進されます。さらに、同システムにはタレント管理機能も有しており、従業員のスキル情報などが蓄積でき、個々の従業員にあわせた人材育成プランや適材適所の人員配置も可能です。

従業員の人事情報を一元管理できる人事システムなどのITを活用すれば、申請書類作成時の負担軽減や人事施策実行時のデータ管理などが容易になり、生産性が向上するでしょう。

まとめ

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、派遣労働者など非正規雇用労働者のキャリアアップを目的とした制度です。非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇改善の取り組みを行ったりした事業主に対して助成金が支給されます。助成が受けられるメリットは大きいですが、申請の手続きは相応の手間がかかります。電子申請や人事システムなどITを上手に活用し、人事部門の業務効率化を図るとよいでしょう。