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モビリティソリューション・コラム

IATF16949認証制度とは?
要求事項やコアツール、取得の流れを解説

IATF16949の要求事項やコアツール、取得する流れについて解説

目次

自動車の製造分野に携わる事業者にとって、厳格な品質管理は重要な経営課題です。品質マネジメントシステムを「IATF16949」の規格に準拠させれば、製品の品質向上と効率的な生産体制の構築に寄与します。本記事では、IATF16949の概要や認証制度の要求事項、コアツールや取得までの流れについてご紹介します。

  1. IATF16949とは
  2. IATF16949認証制度とは
  3. IATF16949要求事項 3つの構成要素
  4. IATF16949における5つのコアツール
  5. IATF16949認証取得から維持の流れ
  6. まとめ

IATF16949とは

「IATF16949」とは、自動車の製造領域に特化した品質マネジメントシステムの国際規格です。品質マネジメントシステムは「QMS(Quality Management System)」とも呼ばれ、製品の品質向上を目的とする仕組みを指します。
そして、「国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)」が定める「ISO9001」をベースに、「国際自動車産業特別委員会(IATF:International Automotive Task Force)」が自動車専用の要求事項を追加し、規格を制定・管理したQMSがIATF16949です。IATFは自動車メーカー10社・自動車産業5団体によって構成される組織であり、後述する「IATF16949認証制度」の運営元となっています。

自動車メーカー10社
BMW・フォード・ジーリー・GM・イヴェコ・ジャガーランドローバー・メルセデスベンツ・ルノー・ステランティス・フォルクスワーゲン

自動車産業団体5団体
AIAG(米)・ANFIA(伊)・FIEV(仏)・SMMT(英)・VDA(独)

IATF16949認証制度とは

IATF16949認証制度とは、IATFから承認を得た第三者審査機関が、自動車の部品や材料を供給するサプライヤーを「IATF承認取得・維持ルール」に基づいて審査・登録する制度を指します。そして、IATFに属する自動車メーカーはサプライヤーに対してIATF16949認証登録を要求し、認証を得た事業者から部材を調達する仕組みです。
IATF16949認証の取得により信頼性の向上につながるのはもちろん、QMSの効率化や経営体制の効率化といったメリットを享受できます。

IATF16949認証取得のメリット

IATF16949認証を得ているサプライヤーは、その取得によってバリューチェーン全体における品質保証の証明となるのが大きな利点です。
IATFが規定する国際規格に準拠していることを保証するものであり、自動車産業におけるグローバル規模での信頼を獲得できます。
また、IATF16949は厳格な品質管理を要求事項として規定しており、生産における不良率の軽減や工程の大幅な効率化が期待できる点も大きなメリットです。それにより、製品の品質向上や収益性の改善、顧客満足度の最大化といった経営基盤の総合的な強化に寄与します。

IATF16949要求事項 3つの構成要素

IATF16949は200を超える要求事項が定義されており、そのすべてを理解するためにはIATFの出版するガイドを確認しなくてはなりません。ここでは、IATF16949を構成する3つの要素から、要求事項について解説します。

1. ベースとなるISO9001の要求事項

冒頭で述べたように、IATF16949は国際規格のISO9001をベースとして、自動車産業に特化した要求事項を付け加えたQMSです。
ISO9001は「一貫した製品・サービスの提供」と「顧客満足の向上」の実現を目的とするQMSであり、126項目の要求事項が規定されています。「組織の状況」「リーダーシップ」「計画」「支援」「運用」「パフォーマンス評価」「改善」の7つを原則として、業務効率の改善や組織体制の強化、コンプライアンスの遵守、継続的な改善による企業価値の向上を推進します。

ベースとなるISO9001の要求事項

2. 自動車産業固有の要求事項

IATF16949の要求事項は、ISO9001の126項目をもとに「自動車の製造」に特化したものが追加されており、要求事項の総数は280ほどに及びます。そのため、基本的な要求事項の多くがISO9001と共通するものの、車体の安全性や排気ガスの規制、軽量化車体材料、車載機器など、自動車の製造領域に関する要求事項によって、より厳格な規定を定めています。
IATF16949の要求事項については、日本語による公式解釈(※1)が公開されているため、より理解を深めたい方はそちらをご参照ください。

3. 顧客固有の要求事項(CSR)

「顧客固有要求事項(CSR:Customer Specific Requirements)」とは、特定の顧客が個別の要求をした場合、その事柄も審査対象になるという規定を指します。IATF16949の基本理念は「顧客志向」であり、顧客固有要求事項は第三者審査機関の監査においても重要視される項目です。そのため、顧客のQMSに関わる独自の要求に対し、IATF16949で規定されていない項目であっても適用しなくてはなりません。

IATF16949における5つのコアツール

「コアツール」とは、IATF16949が規定する設計・開発・製造の品質管理において中心となる手法を指します。コアツールはOEMやサプライヤーにとって、自動車メーカーとの取引を進める際の最優先事項といっても過言ではありません。IATF16949の中核を成すコアツールとして挙げられるのが以下の5つです。

  • PPAP(生産部品承認プロセス)
  • APQP(先行製品品質計画)
  • FMEA(故障モード影響解析)
  • MSA(測定システム解析)
  • SPC(統計的工程管理)

1. PPAP(生産部品承認プロセス)

「PPAP(Production Part Approval Process)」は、部材の仕様や生産工程に関して顧客の承認を得るための手順を指します。
基本的にサプライヤーは顧客の承認を得た上で製造に入る必要があり、また工程や原材料などを変更する場合も承認が必要です。IATF16949では、こうした承認プロセスに求められる18個の作成書類が規定されており、必要レベルに応じた文書を提出することで顧客との契約が成立します。この一連の仕組みがPPAPであり、5つのなかでも特に重要度の高い手法です。

2. APQP(先行製品品質計画)

「APQP(Advanced Product Quality Planning and Control Plan)は、自動車部品における新規開発プロジェクトの運営管理に関わる要領を規定したものです。部品の生産は「プロジェクト計画の立案・策定」→「製品の設計」→「工程の設計」→「製品と工程の妥当性確認」→「量産」の5段階で進み、各段階において必要な人材や技術、知見が異なります。IATF16949では、各段階において必要な入力・出力事項が定められており、APQPの推進によってプロジェクト全体の効率化が期待できます。

3. FMEA(故障モード影響解析)

「FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)」は、設計や製造における潜在的なリスクを予測し、危険要因や不確実性の排除を目的とするコアツールです。FMEAには「DFMEA」と「PFMEA」という2つの手法があり、前者は製品の設計におけるリスク、後者は生産工程や物流プロセスにおけるリスクを特定し、解消することを目的とします。また、IATF16949の義務的要求事項として規定されており、さらにAPQPにおける重要要素でもある点がFMEAの特徴です。

4. MSA(測定システム解析)

「MSA(Measurement System Analysis)」は、測定器や測定者による誤差や偏りを定量的に評価する方法を規定したものです。
IATF16949では、測定したデータの誤差を解析すべく、統計的調査の実施が要求事項として定められています。MSAは工程能力と工程性能の評価、または合否判定や誤差評価などに必須のコアツールです。測定データの信頼性を高めるために欠かせない手法ですが、5つのコアツールのなかでも特に難解であり、用語や手法について正しく理解しなくてはなりません。

5. SPC(統計的工程管理)

「SPC(Statistical Process Control)」は、製造工程における品質の変動を、統計的手法を用いて管理するコアツールです。
製造分野では同様の工程で同じ製品を生産した場合でも、品質に差が生じるケースが少なくありません。顧客からの信頼を獲得するためには製品の品質を一定に保つ必要があり、過去のデータから規格を外れないようコントロールするための手法が求められます。このような品質の誤差や不均等を最小化すべく、製造工程の管理と改善を推進する手法として求められるのがSPCです。

IATF16949認証取得から維持の流れ

近年、自動車産業のイノベーションが加速しつつあり、IATF16949認証の取得を推進するサプライヤーは少なくありません。ここでは、IATF16949認証の取得を目指す企業に向けて、取得から維持に至るフローについて解説します。

IATF16949認証取得から維持の流れ

体制・システム構築

IATF16949認証を取得する最初の一歩はプロジェクトチームの結成です。IATF16949認証の取得に向けて情報を収集する体制を構築し、推進チームを設立するとともに品質管理責任者と品質監査責任者を選任する必要があります。ISO9001を取得済みであれば担当したメンバーから選任するのがおすすめです。そして、IATF16949の要求事項やコアツールの理解を深め、IATF16949認証の取得に向けた中長期的な計画を立案・策定します。

認証取得

IATF16949認証の取得に必要な審査は2つのステージで実施されます。ステージ1では文書審査を中心として、認証範囲の適切性およびステージ2に移行するための審査が実施されます。ステージ2では全要求事項の実施や品質パフォーマンスの有効性などが審査対象です。不適合事項が検出された場合は、定められた期限内に是正処置報告書を提出しなくてはなりません。是正後、登録可と判定された場合には、3年間を有効期限とした登録証が発行されます。

認証維持に向けた運用

IATF16949認証は永久ライセンスではないため、認証維持に向けた運用体制の整備が必要です。原則としてステージ2の初回審査の最終日から3年以内に更新審査を実施しなくてはなりません。万が一、3年を超過した場合は初回認証審査からやり直す必要があります。基本的には定期審査と更新審査によって認証を維持し、IATFが定める承認取得・維持ルールに基づいて要求事項を遵守する運用体制が求められます。
承認取得・維持ルールの詳細について知りたい方は、IATFの公式解釈(※2)を参考にしてください。

まとめ

IATF16949とは、IATFが規定する自動車産業に特化した国際規格のQMSを指します。ものづくり分野の国際規格であるISO9001をベースに、自動車専用の要求事項を追加したもので、IATFに属するメーカーはIATF16949認証を得たサプライヤーから部材を調達する仕組みです。

現代の自動車業界では製品開発プロセスにおいてIATF16949とともに、車載ソフトウェアの標準規格である「Automotive SPICE」への適合が要求される傾向にあります。ぜひAutomotive SPICE認証の取得に向けて総合的なサポートを提供する、「Automotive SPICE アセスメント支援サービス」の導入をご検討ください。

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