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モビリティソリューション・コラム

V2Xとは?車とあらゆるモノをつなげる
技術の課題と動向

V2Xの概念や内包する四つの要素、メリットや普及への課題を解説

目次

本記事ではV2X技術についての解説を行います。V2Xは、自動車産業における最先端の技術であり、現在最も注目されている運転支援や自動運転技術に必要不可欠な概念です。本記事では、V2Xの構成要素や実現できること、さらに実現までの課題について解説していきます。

  1. V2Xとは?4種類の主な接続先も紹介
  2. V2XとV2Hとの違いは?
  3. V2Xで実現すること
  4. V2Xの市場動向
  5. V2Xを実現する上での課題
  6. V2X向けのサービス
    「機能安全規格(ISO26262)実践支援」
  7. まとめ

V2Xとは?4種類の主な接続先も紹介

V2Xとは、「Vehicle to X」の略で、車両と様々なものとの間の通信や連携を行う技術のことを指します。車に様々な機器や部品を搭載し、常時コンピュータネットワークに接続させることにより、運転に関する利便性を向上させます。V2Xには主に4種類の接続先があり、それぞれが異なる役割を担っています。4種類の接続先について、ひとつずつ解説します。

V2V(自動車と自動車)

V2Vは、「Vehicle to Vehicle」の略で、車両同士が通信を行うことを指します。この技術により、車両同士の車間距離を測定し、検知した障害物や、危険な路面状況などの情報を車に共有することが可能になります。事故や衝突の予防が図られるだけではなく、交通状況の相互通知などにより、運転の効率が向上します。運転者が把握しにくい死角や見通しの悪い状況でも、周囲の車両との相互通信によって情報を得ることができます。単体の車両では見えない範囲も、周囲の車両からならば見通すことができ、安全の確保につながります。これにより、危険が予測される場合は早期の対処を行えるようになるため、事故のリスクが低減されることが期待されています。
また、高速道路や一般道路での渋滞緩和にも貢献できます。車両間の通信によって、先行車が急ブレーキをかけた際に車へ速やかに情報が伝達されるため、それに伴う交通の滞りが軽減されます。さらに、急な渋滞や事故発生時にも、車への情報共有が迅速に行われることで、迂回ルートの案内や適切な速度調整が可能になり、交通の流れを改善できます。

V2I(自動車とインフラ)

V2Iは、「Vehicle to Infrastructure」の略で、車両と道路周辺のインフラ機器との通信を行う技術です。この技術により、信号機や道路標識、交通センサーなどのインフラから有益な情報が提供され、より安全かつ効率的な運転ができるようになります。V2Iを活用することで、信号の待ち時間や、歩行者の存在を運転者に知らせることができます。これにより、運転者は事前に適切な対応ができ、より安全な運転ができます。
また、V2I技術は車両の通行状況やインフラの状態をリアルタイムで把握し、最適な速度やルートを導き出すことが可能です。これにより、交通の効率化や渋滞緩和が期待できます。例えば、インフラ側からの情報提供によって、車両がスムーズに信号機を通過できる速度やタイミングが運転者に伝えられ、無駄な加速や急ブレーキを減少させ、燃費の向上や環境負荷の軽減が実現できます。
さらに、V2I技術は緊急車両の優先通行や駐車場の空き情報提供など、様々なシーンでの活用が期待されています。緊急車両への優先通行が実現されれば、救急車や消防車が迅速に現場に到着できるようになり、救命活動や災害対応がより効率化されます。また、駐車場の空き情報が提供されることで、運転者は無駄な時間を費やすことなく、効率的に駐車場を利用できるようになります。

V2P(自動車と歩行者)

V2Pは、「Vehicle to Pedestrian」の略で、車両と歩行者との通信を行う技術です。この技術は、歩行者が携帯するV2Pに対応したタブレットやスマートフォンと連携することで、歩行者の位置情報を車両に伝達します。V2P技術を利用することで、交差点や駐車場などの歩行者が多い場所では、車両と歩行者両方の安全性向上が期待できます。例えば、車両が交差点で右折する際、左折よりも死角が多いため歩行者との衝突リスクが高まりますが、V2P技術によって歩行者の存在を知ることができれば、運転者は十分な注意を払って進むことができ、事故のリスクを低減できます。
また、車両の死角に入った歩行者を早期に検知することも可能です。これにより、運転者は歩行者の存在に気づくことができ、適切な対応を行って事故を未然に防ぐことができます。

V2N(自動車とネットワーク)

V2Nは「Vehicle to Network」の略で、ネットワークに関する技術です。車そのものをインターネット端末として見なし、車の制御ソフトや地図情報の更新、エンターテインメントコンテンツの配信といったサービスを受けることができます。特に、リアルタイムの交通情報が受信できるのは、交通面や運転面において大きなメリットになります。

V2XとV2Hとの違いは?

V2XとV2Hは、一見すると似ている単語ですが、全く違うものを指す単語です。V2Hとは、「Vehicle to Home」という意味で、自動車と住宅を接続する技術のことを指します。特に電気自動車のバッテリーに蓄電された電力を、災害等の非常時に家庭で利用できるのが特徴です。一方、V2Xは上記でもご紹介したように交通に関わる技術で、車と様々な対象との通信を行い、運転に関する利便性を向上させることを目指すものです。つまり、V2Xは交通の面で車両をつなぐ技術で、V2Hは車両と住宅で電力をやり取りする技術、と全く違う概念を指します。

V2XとV2Hとの違いは?

V2Xで実現すること

V2X技術を利用することで、自動車運転に関する多くの課題が解決すると見込まれています、ここからは、実現できる具体的な例を紹介していきます。

運転手の運転支援

V2X技術によって、運転手に対する運転支援が可能になります。例えば、把握しづらい位置にいる歩行者や自転車を検知したり、見通しの悪い状況における他の車両の接近を警告し、いち早く回避やブレーキなどの対処をとれます。これらによって、運転手や歩行者の安全性が向上し、事故のリスクを低減できることが期待できます。また、交通の効率化や渋滞緩和にも貢献し、運転者のストレス軽減につながります。

今後、急速に普及が進む、自動運転・先進運転支援システムでは、交通事故を防止するための安全技術と、ドライバーの負荷の軽減。また、建設機械・農業機械では、無人化に伴う安全性の確保が求められており、車両および各機器の周囲に対する高度なセンシング技術が必要になっています。

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渋滞の軽減

渋滞の軽減も、V2X技術を利用することで実現できます。車両間や他のインフラとの通信を活用することで、渋滞状況がリアルタイムで把握でき、別のルートへの移動を誘導することが可能になります。これにより、渋滞の緩和が期待できます。また、赤信号から青信号に変わる際に、人間の運転手は直前の車両の動きを見て動きますが、V2X技術を用いた自動運転では、システムが一斉に車両を動かし、スムーズな交通の流れを生むことができるようになります。これにより、渋滞の発生を抑制し、詰まりの少ないスムーズな交通を実現できます。

環境保護の促進

V2X技術は、環境保護にも貢献できることが期待されています。他の車両などの動きから計算した、最適な速度での運転は、無駄なブレーキやアクセルを減らし、より効率的な移動を実現します。これにより排気ガスの発生を軽減し、空気汚染を減らすことができます。他にも、交通に関わるエネルギー資源の消費量も削減できるため、持続可能な社会(SDGs)の実現に寄与します。加えて、V2X技術は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の普及促進にも役立ちます。例えば、充電スポットの空き情報や最適な給電ルートを提供することで、運転手にとっての利便性向上や充電に関する不安を解消し、環境に優しい車の導入が促されることが期待されます。

V2Xの市場動向

V2X技術の世界市場規模は、急速な成長が期待されています。調査会社であるIMARCグループ予測では、2027年までに45%以上の成長率で市場が拡大すると予測されています。この成長の背景には、自動運転技術の進化や、都市部に人口が集中したことによる渋滞やエネルギー問題を、最先端技術で解決する「スマートシティ」の構築、交通安全や効率化のニーズが挙げられます。
しかしながら、V2X技術の普及にはいくつかの課題が存在しています。その中でも、通信規格と周波数帯がまだ一本化されていないことは大きな問題となっています。現在、DSRC(Dedicated Short Range Communications)とC-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything)という2つの主要な通信規格が存在しており、各国や企業でどちらの規格を採用するかが注目されています。通信規格が異なれば、相互のデータやり取りなどに支障を来す可能性がでてくるため、どちらを採用するのかは重要です。
日本政府も、海外の規制当局の動きを見ながら今後の方針を決めていくと考えられます。

V2Xを実現する上での課題

V2Xを実現する上で、現状は普及や運用にあたって、避けては通れない様々な課題が存在します。ここでは、V2Xを実現する上での課題についてご紹介いたします。

対応車両の普及

V2Xは、車同士の通信を行う技術ですが、対応する車がいなければ機能しません。そのため、対応車両の普及が重要となります。特に都市部では、普及率の違いが大きな問題となりうるため、地域差の解消が課題となります。また、V2X機能を搭載する車種には追加料金が発生することが多く、コスト面も普及の障壁となっています。さらに、既存の車両に対するアフターマーケット製品の普及が遅れていることも、普及に影響を与えています。

インフラの整備

V2Xを実現するためには、諸々の機能が実現できるようなインフラ側の充実が必要です。大量の車両と通信するための許容量の多い通信技術が求められますが、それには相応の設備が不可欠です。また、道路交通インフラの整備が不十分な地域では、V2Xが十分に機能しない恐れがあります。さらに、インフラの敷設や維持には大きな投資が必要となり、財政負担が増加することが懸念されます。

通信障害への対応

V2Xが実現した後は、その機能に依存した社会になることが予想されます。そのため、通信障害の発生を想定した対処法が必須となります。特に、通信障害が生じた際に、交通システムが混乱しないような対策が求められます。また、通信障害が頻発する地域においては、信頼性の低下が懸念されます。

セキュリティの強化

V2X技術の普及に伴い、ネットワークへのハッキングリスクが増加します。それまでは独立していてハッキングなどはまず考えられなかった車両ですが、V2Xの導入により、ネットワークに接続されるため、発生する問題です。車両の操作権を奪われたり、誤認知を引き起こされるなど、重大な事故につながりかねないため、セキュリティの強化が求められます。

V2X向けのサービス「機能安全規格(ISO26262)実践支援」

V2Xは非常に便利で欠かせなくなるシステムですが、何より重要なのは安全性です。V2X開発会社向けのサービスとして、NECソリューションイノベータでは、「機能安全規格(ISO26262)実践支援」を提供しています。このサービスでは、規格対応に必要となる一部成果物の作成や、規格対応に向けた設計内容への改善提案、規格対応に関する現場作業員への指導などが行われます。

NEC 機能安全規格実施支援サービス(ISO26262)

自動車業界標準の安全規格にあたる機能安全(ISO26262)について、お客様が実践できるようになるまでプロセス構築・開発遂行の両面から支援し、規格の導入・実践の定着をワンストップで提供します。

まとめ

自動車と様々なものを通信でつなぐ概念、V2Xについて解説しました。
この先進歩していくという予測が立てられている自動運転にも密接に結びついたこの技術は、自動車運転の安全性や、快適性、環境への負荷低減などをもたらします。V2X向けシステムの機能安全規格であるISO26262の遵守は不可欠ですが、それには困難が伴います。そこでおすすめしたいのが、NECソリューションイノベータの「機能安全規格(ISO26262)実践支援」サービスです。V2X向けシステムに対応したISO26262規格の実践支援、開発支援をサポートします。
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