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モビリティソリューション・コラム

イーサネットとは?自動車の先進技術に
おける役割をわかりやすく解説

次世代自動車への活用が期待されている車載イーサネットについて解説

目次

イーサネットとは何か、仕組みやその必要性などがわかりにくく感じる方もいるかもしれません。この記事では、まずイーサネットの基本を解説し、自動運転に代表される自動車の先進技術のカギとなる「車載イーサネット」について、詳しく紹介します。自動車業界の今後について関心のある方にも役立つ内容です。

  1. イーサネットとは
  2. イーサネットの種類
  3. イーサネットの規格
  4. イーサネットは多様な場面で使われている
  5. 車載イーサネットとは
  6. 車載ネットワーク規格の種類
  7. 車載イーサネットは自動車の先進技術において重要
  8. 車載イーサネットで期待されること
  9. 車載イーサネットの課題
  10. まとめ

イーサネットとは

イーサネット(Ethernet)はパソコンなどの機器を有線接続し、信号のやり取りをする際に使われている通信規格です。一般的には、オフィスや家庭に小規模ネットワーク(LAN:Local Area Network)を構築し、機器間でインターネットなどのデータ通信を行うために用いられています。基本的に、ひとつのケーブルで複数の異なる規格を同時に扱うことはできません。イーサネットによってケーブルの規格を統一することで、効率よく複数の機器間での通信が可能となります。イーサネットには、ケーブルの仕様や通信速度の上限などが決められています。ネットワークの基本の部分であり、低コストで高速通信ができるのが特徴です。これに対してケーブルを使わずに通信するのが無線LANです。無線LANの一種としては、Wi-Fiがあります。

イーサネットの種類

イーサネットは主にLANケーブル、光ファイバー、同軸ケーブルの3種類に分けられます。
LANケーブルは、一般的にパソコンやゲーム機などの端末を有線接続する際に使われます。LANケーブルとイーサネットが同義として解釈されることもあります。マンションにおける各部屋からのインターネット接続や、サーバーと端末間の接続といった社内・家庭内ネットワークの構築に用いられます。

光ファイバーは、主にインターネット回線の構築に利用されています。他の2種と比べ、大容量データの高速通信に対応しています。ケーブルの長さの影響を受けにくいため、通信の安定性が高い点が長所です。一般的な端末では光ケーブルを直接つなげられないため、光回線から終端装置を経由してLANケーブルに変換し、各端末へとインターネットを接続します。

同軸ケーブルは主にテレビ映像のデータをやり取りする際に用いられています。古くからアンテナで受信した映像をテレビへ送信する際や、ケーブルテレビのインターネット接続に利用されてきました。

イーサネットの規格

イーサネットの規格は、基本的に最大通信速度、媒体(ケーブル)の違いで分けられます。
最大通信速度は、主に10Mbps、100Mbps、1000Mbps(=1Gbps)の3つがあります。bpsの単位は、1秒間に送れるデータ量を指します。速度別に分ける場合、最大10Mbpsの規格を「イーサネット」、100Mbpsが「ファスト・イーサネット」、1Gbpsが「ギガビット・イーサネット」と呼ばれます。現在は最大1Gbpsの「ギガビット・イーサネット」が広く用いられており、「イーサネット」と呼ぶ際にはこれを指すのが一般的です。

ケーブルは前項のようにLANケーブル、光ファイバーケーブル、同軸ケーブルなどの種類に分けられます。
これらのケーブルと速度の組み合わせで具体的な規格が決められています。例えば、LANケーブルの一種であるUTPケーブルで、最大1Gbpsが出るものに対応する規格名称は「1000BASE-T」または「IEEE 802.3ab」です。

イーサネットは多様な場面で使われている

イーサネットが使われているのは、企業や家庭でのパソコンやゲームなどの身近なネットワーク接続だけではありません。ネットワーク機器や巨大なサーバーが設置されているデータセンターでのインフラや、通信事業者の伝送システムや巨大ルーターの接続にも使われています。自動車業界では、自動運転といった次世代システムの構築に、大量のデータをコンピューターとやり取りするための通信技術が求められており、その手段としてイーサネットが注目されています。車載カメラやドライブレコーダーなど、すでにイーサネット規格が採用された機器もあります。

車載イーサネットとは

前項で述べた通り、自動車業界で電気自動車の普及や自動運転技術の開発が進むにつれ、イーサネットが次世代の車載ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を実現する技術として注目を集めています。車載イーサネットとは、車載機器同士をつなぐのに適した規格のイーサネットを指します。これは、一般的に用いられているイーサネットの技術をもとに、自動車向けに発展させたものであり、2008年にBMWが高級車向けの故障診断システムに利用したのが最初とされます。車載イーサネットは広帯域幅、低遅延のネットワークを実現できるのがメリットです。一般のイーサネットとの大きな違いとして、必要な機能だけを実装できる仕組みになっている点が挙げられます。

車載ネットワーク規格の種類

自動車内には、エンジン、ハンドル、ブレーキ、ミッションをはじめ、ナビ、レーダー、カメラなど様々なECUが搭載されています。これらをつなぐための通信規格は車載イーサネットの登場以前にいくつかの種類が開発され、現在でも使われています。今後の自動運転における新技術への対応において、旧来の通信規格ではデータ量や速度の面で対応が難しいという背景があり、より高度な車載イーサネットの開発が進められています。

CAN

CAN(Controller Area Network)は1986年に公式に発表された通信規格で、現在ほとんどの自動車に採用されています。従来の通信規格に比べ配線が少なく、スマートなネットワークを構築するため、軽量化やコスト削減できるメリットがあります。信頼性や確実性が高いため、エンジン、ブレーキ、ミッションといった根幹部分に使われています。自動車業界以外でも様々な分野で導入されていますが、通信速度は最大1Mbpsであり、映像処理といった大規模なデータの利用には向きません。

LIN

LIN(Local Interconnect Network)は1999年に登場した通信規格です。通信速度は最大20kbpsと低速ですが、CANより低いコストで導入できます。信頼性の高いCANを必要とするような自動車の根幹部分を除く、ミラー、パワーウィンド、ドアロックなどのボディ系の制御に使われています。

FlexRay

FlexRayは2000年に組織されたコンソーシアムにて開発されました。CANより高速で、より信頼性と柔軟性に優れた通信規格です。自動車の電子制御の進展に伴う通信量の増加などの課題解決に有効で、10Mbpsの通信速度に対応します。エンジン、ミッションといった根幹部分や安全機能にかかわる高性能なアプリケーションに使われています。

車載イーサネットは自動車の先進技術において重要

今後、自動運転に代表される自動車の先進技術において求められるのは、速度と信頼性を備えたネットワークです。
そこで、これまでの車載ネットワークよりも高速通信ができ、IT技術との相性を高めた車載イーサネットは重要な役割を担います。カメラ、センサーから送られるデータをはじめ、車と車または路面までの距離といった複雑かつ膨大なデータの通信において、従来の通信規格での対応は困難です。
現在、規格化されている車載イーサネットには「100BASE-T1」があり、最大100Mbpsの通信速度を実現しています。これは、CANと比較すると100倍以上、FlexRayと比べて10倍以上も高速なネットワークです。高精細カメラや車載レーダーなどから送られる大量のデータに対応できるため、自動車メーカーでは車載イーサネットの導入が進んでいます。

また、ADAS、CASEといった、次世代自動車のカギとなる技術があります。
ADASは、Advanced Driver-Assistance Systemsの略称で、先進運転支援システムを指します。先進運転支援システムとは、ドライバーの代わりに自動車の制御をするなど、安全、快適な運転をアシストする機能の総称です。これは、自動運転システムの一部でもあります。CASEは、「Connected(接続)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字からなり、それぞれ自動車産業の先進技術とサービスの発展を象徴するものです。いずれも業界に変革をもたらす概念であり、自動車メーカーが今後新たな価値として開発を進めています。電動化、自動化がますます進展する中で、膨大な情報をスムーズに送受信できる車載イーサネットは不可欠とされます。

車載イーサネットで期待されること

車載イーサネットで今後期待されることは、前述の通り自動運転の実現への貢献です。AIによる高精細カメラでの周辺状況確認、車載レーダーでの路上障害物の検知などを行う際には、高速で精度の高い通信が求められます。現在では、すでに最大通信速度1Gbps、10Gbpsの車載イーサネットが標準化を完了しており、これらを利用した、より高速の通信を要求する技術・機能の実現が期待されています。

また、自動車の販売後にソフトウェアを追加・更新することで、新たな自動車の価値、体験を提供するSDV(Software Defined Vehicle)が、今後の主流になっていくと見られています。このSDVを実現し、活用するためにも高速大容量の通信を可能とする車載イーサネットが重要な役割を担うとされます。

車載イーサネットで期待されること

車載イーサネットの課題

先進技術を支えるための車載イーサネットの課題は、テストの複雑化です。
CANに比べ、イーサネットはIPv4、UDP/TCP、ICMPといった様々なプロトコルが使用されています。複数のプロトコルを用いると、安全性や利便性を確保するために相応のテストをこなす必要があります。車載イーサネットの実装時には、CANで用いたテストをそのまま適用できないため、効果的なテスト手法を策定することから検討が必要です。また、従来規格に比べ通信を行うソフトウェアなどが増えるため、セキュリティ面の強化も必須とされます。

まとめ

車載イーサネットは、自動運転、ADAS、CASEといった今後の自動車の先進技術に不可欠なネットワーク技術です。
NECソリューションイノベータでは、車載系組込みソフトウェアの開発に幅広く取り組んでいます。車載ネットワーク開発の分野では、車載イーサネットにも対応しているので、チェックしてみてください。

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