イーサネット(Ethernet)はパソコンなどの機器を有線接続し、信号のやり取りをする際に使われている通信規格です。一般的には、オフィスや家庭に小規模ネットワーク(LAN:Local Area Network)を構築し、機器間でインターネットなどのデータ通信を行うために用いられています。基本的に、ひとつのケーブルで複数の異なる規格を同時に扱うことはできません。イーサネットによってケーブルの規格を統一することで、効率よく複数の機器間での通信が可能となります。イーサネットには、ケーブルの仕様や通信速度の上限などが決められています。ネットワークの基本の部分であり、低コストで高速通信ができるのが特徴です。これに対してケーブルを使わずに通信するのが無線LANです。無線LANの一種としては、Wi-Fiがあります。
前項で述べた通り、自動車業界で電気自動車の普及や自動運転技術の開発が進むにつれ、イーサネットが次世代の車載ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を実現する技術として注目を集めています。車載イーサネットとは、車載機器同士をつなぐのに適した規格のイーサネットを指します。これは、一般的に用いられているイーサネットの技術をもとに、自動車向けに発展させたものであり、2008年にBMWが高級車向けの故障診断システムに利用したのが最初とされます。車載イーサネットは広帯域幅、低遅延のネットワークを実現できるのがメリットです。一般のイーサネットとの大きな違いとして、必要な機能だけを実装できる仕組みになっている点が挙げられます。
CAN(Controller Area Network)は1986年に公式に発表された通信規格で、現在ほとんどの自動車に採用されています。従来の通信規格に比べ配線が少なく、スマートなネットワークを構築するため、軽量化やコスト削減できるメリットがあります。信頼性や確実性が高いため、エンジン、ブレーキ、ミッションといった根幹部分に使われています。自動車業界以外でも様々な分野で導入されていますが、通信速度は最大1Mbpsであり、映像処理といった大規模なデータの利用には向きません。
また、自動車の販売後にソフトウェアを追加・更新することで、新たな自動車の価値、体験を提供するSDV(Software Defined Vehicle)が、今後の主流になっていくと見られています。このSDVを実現し、活用するためにも高速大容量の通信を可能とする車載イーサネットが重要な役割を担うとされます。