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「AWS re:Invent 2024」参加レポートVol.1
技術的なアップデートを超えた、大きな学びと気づきの5日間


クラウドコンピューティングプラットフォームのリーダー「アマゾンウェブサービス(以下、AWS)」が主催する「AWS re:Invent」は毎年ラスベガスで開催される大規模な学習型カンファレンスです。2024年12月に開催された「AWS re:Invent 2024」には、NECソリューションイノベータからは20名の社員が参加しました。世界中から集まったユーザーの熱気やAWSの最新トレンドなど、参加エンジニアが体験したre:Inventの魅力を3回にわたってお届けします。第1回は過去の参加経験を活かして今回のメンバーを引率したソリューションサービス事業ライン 第二PFSI事業部の田中拓摩、そして、今回re:Inventに初参加となる同事業部の西森文昭に聞きました。
ラスベガスがAWS一色に染まる5日間
まず、「AWS re:Invent」とは、どんなイベントなのかを教えてください。
田中 AWSが2012年から毎年ラスベガスで開催している世界最大級のクラウドカンファレンスです。AWSやそのパートナーによる新サービスや新機能の発表、最新技術の展示、ハンズオン形式のセミナーなど、3,000を超えるセッションが実施されます。2024年は12月2日から6日の期間中に約6万人が参加し、日本からも約2千人が現地を訪れました。主要会場にはラスベガスの6つの大規模ホテルやカンファレンスセンターが使用され、街全体がAWS一色に染まる一大イベントです。今回の特徴としては、世界的なトレンドとなっている生成AIをテーマにしたセッションが多数行われていました。

ソリューションサービス事業ライン 第二PFSI事業部 シニアプロフェッショナル
2004年に医薬品卸業界向けのスクラッチ開発でキャリアをスタート。2008年からSAP Basis/インフラ/DBAとしてお客様を支援。 大規模SAPの基幹システムをAWSに移行したのをきっかけに、その後はAWSのソリューションアーキテクトとして提案~導入~運用を担当。 AWS社からも「AWS Top Engineers 2019~2024」と「Japan AWS Ambassadors 2020~2023」として表彰されている。 |

研修を引率することになった背景を教えてください。
田中 re:Inventへの参加が初めての社員が多い中で、私は今回が3回目でした。最初に参加した時は、スケールの大きさや見たことのない世界にただただ圧倒されました。その経験はとても刺激的で、その後の業務のモチベーションを高めてくれた一方で、もっといろいろなことにチャレンジすればよかったと反省も残りました。
当社では技術力向上を支援する様々な制度を整えていますが、今回のような海外研修もその一環として積極的に推進しています。re:Inventの参加をより実りのあるものにするため、私を含む過去に参加経験を持つAWS事業を牽引するメンバーが中心となり、社内での働きかけやサポート体制の整備を行いました。これまでは旅行会社のパッケージプランを利用していましたが、今回はエアチケットやホテルの手配を自社で行い、事業部ごとに引率係を設けるなど工夫しました。
私が所属する第二PFSI事業部では、事業部の参加メンバーが現地で最大限の学びや刺激を得られるよう、渡航や現地での行動計画を準備しました。
自社で計画することで何が変わりましたか?
田中 一番の変化は「一体感」です。去年までは、現地には一緒に行っても、個別に参加しているような感覚が強く、「バラバラ」という印象がありました。そのため、イベントの最中や帰国後も十分な情報共有ができませんでした。
会場はとても広く、すべてを回りきることは不可能です。だからこそ、どのセッションに参加すればどんな学びが得られるのか、そこでの発見や気づきをお互いに共有し合うことで、re:Inventでの体験をより深い学びへとつなげることを目指しました。

参加メンバーはどのように選びましたか?
田中 AWSから表彰を受けた社員や、今後、各事業部を牽引することが期待される社員に声をかけました。参加メンバーを事業戦略の一環として組織立てて選出できたことも、今回のよかった点です。参加したメンバーとは協力し合いながら、今回の研修で得た知見を社内に発信し、技術力向上につなげていきたいと考えています。
Chalk Talkの熱いディスカッション。現地でしか得られない体験と刺激
イベントに参加した印象はどうでしたか?
西森 ラスベガスには新婚旅行で訪れたことがあり、普段の町の雰囲気はある程度知っていました。それだけに、街全体がAWSの熱気に包まれている様子には驚かされましたし、会場に足を踏み入れた瞬間から世界規模のすごいイベントなのだと、圧倒されました。

ソリューションサービス事業ライン 第二PFSI事業部 プロフェッショナル
2001年に半導体企業のインフラ構築でキャリアをスタート。製造業を中心に、小売業、金融業など様々なお客様のインフラ提案から運用までを一貫して対応。2018年以降はクラウド、セキュリティに軸足を移し、アセスメントから導入、運用まで幅広く担当。 |
どんなセッションが印象に残っていますか?
西森 出発前から参加したいと思っていた「Chalk Talk」は印象深いです。これはAWSのエキスパートが講師を務め、冒頭の10分ほどでトピックを紹介したあと、参加者同士が提示されたテーマに沿って対話を行うセッションです。定員は30~40名程度で、教室くらいの規模の会場で行われ、ホワイトボードと電子ペンを使いながら議論を深めていきます。
re:Inventのセッションの多くはYouTubeで配信されますが、このChalk Talkはクローズドで実施され、現地でしか体験できません。私は英語が得意ではないため不安もありましたが、それ以上に、セキュリティやネットワークといった自分の関心の高い領域について、海外のエンジニアたちがどんな考えを持っているのかを知りたくて、思い切って参加しました。


英語が苦手でも大丈夫なのでしょうか?
西森 正直、話しかけられたらどうしようかとドキドキしていました(笑)。細かい部分では、理解が追いつかない場面もありましたが、翻訳アプリを駆使してなんとか対応しました。それでも、もっと英語が話せればさらに楽しめたのではないかと感じています。開始早々から、参加者の「自分の考えを伝えたい」「他の人の考えを知りたい」という熱気がすごくて、私もすぐにそのエネルギーに引き込まれました。英語力があれば、その輪の中にさらに深く入ることができたのにという思いがあります。こうしたディスカッションの盛り上がりは日本ではなかなか体験できないので、文化や感覚の違いを肌で感じられる貴重な経験となりました。
今回の研修を通じて認識が変わったことや新しい発見はありましたか?
西森 普段の業務ではインフラやセキュリティの提案、設計、構築が中心で、生成AIに触れる機会がほとんどありません。しかし、AWSでは生成AIが想像以上に主軸のテーマであることを強く感じました。頭でなんとなく理解しているだけではエンジニアとして不十分だと思い、予定していたセッションを組み替えて生成AIに関する情報をキャッチアップすることにしました。やはり、実際に体験し触れてみることで得られる気づきは大きいですね。また、年齢を重ねるにつれ、ツールを直接触る業務が減ってきている中で、今回一緒に参加した若いメンバーたちが新しい技術を積極的に吸収しようとする姿勢に触れ、「自分も昔はこうだったな」と思い出しました。彼らの姿に刺激を受け、さらに成長したいと思うきっかけになりました。

人を惹きつけるプレゼンに必要なこと。登壇者に見る共通点
業務に活かせそうな技術的な発見はありましたか?
西森 ネットワーク経由のクライアントサーバ環境において、「何も信頼しない」という前提で構築されるゼロトラストセキュリティを適用するには、技術的なハードルがあります。でも、その実現をサポートする技術に関するセッションは非常に興味深く、我々の提供するサービスに取り入れることで、お客様への提案の幅を広げられると感じました。
ただ、そうした技術的なアップデート以上に強く感じたのは自分自身の未熟さです。特に、時間の使い方を見直す必要性を何度も痛感しました。現地でのセッションでは英語での説明を理解しながら吸収しようとする中で、情報をうまく整理できないもどかしさを感じることが多くありました。そんな中、最終日に参加した「Japan Wrap-upセッション」(AWSのソリューションアーキテクトがre:Inventを日本語で振り返る)で、理解度が一気に深まる実感がありました。この経験から、普段から日本語で利用できるAWSのドキュメントやワークショップといったリソースをもっと活用し、効率的に学びを深める時間の使い方が必要だと強く感じています。
1日は24時間だと。
西森 そうなんです。一見、無駄に思えることが後々役に立つ場合もありますが、それでも無駄な時間は極力減らし、質にこだわる必要があると実感しました。
また、セッションの登壇者や講師の方々がとても楽しそうに話をしている姿が強く印象に残りました。お客様にプレゼンをするときも、自分自身がわくわくする気持ちを持ち続けることが重要だと思います。そうでなければ、伝えたいことが十分に伝わらなくなってしまうのではないかと。なかでも、「伝わる」ことの大切さをあらためて意識しました。ただ技術的なことを説明するだけではなく、その技術がどのようにお客様の事業や業務、運用に変化をもたらすのかを明確に示すことで、初めて本当に納得していただけると、さまざまな登壇者のプレゼンを聞いて気づかされました。
帰国後、行動を変えたことはありますか?
西森 自分の学びをチーム内で共有する場を定期的に設けることにしました。一人で学ぶだけでは限界がありますし、アウトプットすることでインプットの質も向上します。さらに、情報や技術を整理するだけでなく、チームメンバーとの相互フィードバックを通じて新しい発見も得られると思います。今回得た気づきをチームで共有しながら、一緒に成長していきたいと考えています。
充実した5日間だったようですね。
西森 本当に楽しかったです。学習系のセッション以外にも「re:Invent 5K Run」というラスベガスの町を走るマラソンイベントに参加したり、「Sports Forum」と呼ばれる会場で、AWSがパートナーシップを結んでいるフォーミュラ1(F1)のタイヤ交換を体験したりと、さまざまな経験を積むことができました。今回、出発時の空港で初めて顔を合わせたメンバーもいましたが、帰るころにはみんな仲よくなっていました。同じ釜の飯を食うではないけれど、それだけ一体感があり、充実した研修だったと思います。


次回はソリューションサービス事業ライン第三PFSI事業部の園田泰子から、re:Inventでキャッチアップした新情報や現地での交流についてお伝えします。
「AWS re:Invent 2024」参加レポート
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UPDATE:2025.2.3