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100ページに込めた“人を大切にする会社”のかたち
人的資本レポート2025 制作の舞台裏

制度や仕組みをどれだけ丁寧に伝えても、その背景にある想いまで届くとは限らない。そんな問いを出発点に、NECソリューションイノベータは「人的資本レポート2025」の制作に取り組みました。3年目となる今年は、脳科学を専門とする立命館大学の枝川義邦教授をアドバイザーに迎え、制度の本質をあらためて見直しました。社員一人ひとりのWell-beingを軸に、会社の「今」を見える化しています。レポート制作の舞台裏とともに、「人を大切にする会社」でありたいという想いを、制作チーム(丸岡晶、竹谷侑里、長瀬桃子)の言葉を通じてお伝えします。

制度を「見せる」から「伝える」へ。人事たちの100ページの挑戦

2025年6月に発行された「人的資本レポート2025」は、100ページ超のボリューム。人的資本経営の全体像から福利厚生、報酬制度、資産形成支援に至るまで、まさに「NECソリューションイノベータの百科事典」とも言える内容に仕上がっています。

昨年のレポートはその網羅性と透明性が評価され、389社が応募した「人的資本調査2024」で高評価を受け、「人的資本リーダーズ2024」(選出企業10社)に認定されました。とはいえ、「制度を並べただけでは伝わらない」というのが制作チームの共通認識。社員のリアルな声や、制度の背景にある想いまで丁寧に紐解くことで、読んだ人の心に残り、行動につながるようなレポートを目指しました。

今回の制作にあたって大きな方針転換はなかったものの、制度や施策のアップデートをきちんと反映する必要がありました。昨年に続き、メインでレポートの制作を担った竹谷侑里は、次のように語ります。

竹谷 侑里(たけたに・ゆり)
NEC HRトランスフォーメーション統括部 主任
NECソリューションイノベータ HR統括部 主任(兼務)

「特に時間をかけたのは、2つのページです。1つは、Well-beingの推進に向けた全社横断のワーキンググループ『きらねすプロジェクト』の紹介ページ。健康、成長、働きがいという3つの領域それぞれに重点施策と指標を設定しており、会社の本気度が伝わるよう、昨年よりもさらに多くの情報を開示しました。もう1つは、今年4月にスタートした『ジョブ型人材マネジメント』のページです。社内には制度の情報は十分にあるものの、『結局どういうこと?』という声が少なくありません。だからこそ、どんな伝え方なら伝わるのかを議論し、『この1ページを読めばおおよそわかる』というレベルにまで落とし込むことにこだわりました」(竹谷)

選択肢は“おすすめ”で届ける──脳科学から学んだ「迷わせない工夫」

2025年度版のレポート制作では、脳科学の専門家・立命館大学の枝川義邦教授をアドバイザーとして迎えました。依頼の背景について、丸岡晶はこう語ります。

丸岡 晶 (まるおか・まさる)
NEC HRトランスフォーメーション統括部 ディレクター
NECソリューションイノベータ HR統括部 ディレクター(兼務)
脳科学の視点から多くの気づきが得られた枝川義邦教授との勉強会

「昨年度から、第三者視点を強く意識しており、今回はさらに異なるアプローチを取り入れたいと考えました。HR(ヒューマンリソース)は『人』に関わる領域ですが、突き詰めると、生物としての人間の仕組みにもつながっています。今回は脳科学の視点を取り入れることで、より多角的に見直せるのではと考え、枝川教授にご協力をお願いしました。今までとは違う観点から、我々のやっている施策や方向性は果たして合っているのかを検証していただきました」(丸岡)

枝川教授との勉強会は全3回実施され、会長の石井力との対談も行われました。勉強会では、現在取り組んでいる施策に対して意見をいただくだけでなく、「今後、どうあるべきか」に焦点を当てた議論も多く交わされたといいます。
勉強会では、現在取り組んでいる施策に対して意見をいただくだけでなく、「今後、どうあるべきか」に焦点を当てた議論も多く交わされたといいます。

竹谷は勉強会で得た学びを次のように振り返ります。

「さらに良くするにはどうすればいいかという視点で、多くのヒントをいただきました。自分たちだけの理解にとどめず、社内に展開し、今後の施策に反映させていくことが今後のステップだと感じています」(竹谷)

丸岡が特に印象に残ったのは、「人のやる気や生産性は、脳の仕組みによって左右される」という視点でした。
「たとえば、私たちが用意してきたカフェテリアプランや社内人材公募などの施策は、社員が自己選択できるよう、あえて多くの選択肢を用意してきましたが、『選択肢が多すぎると逆に決めづらくなる』というアドバイスをいただきました。そこで、枝川先生から提案されたのが、『オススメを伝えることで、選びやすくなる』という考え方。選択肢が多くても、『これがオススメです』とガイドするだけで、迷いが減り自己決定しやすくなる。私たちにはなかった発想で、大きなヒントになりました 」(丸岡)

さらに、こんなアドバイスも印象的だったと語ります。

「『人が情を持って関係性を築ける人数は150人程度』という話です。この『150人の法則』を意識することで、施策の設計もよりリアリティのあるものになると感じました。また、『共感を軸に組織をつくる』『1on1の対話をもっと深める』など、共感とコミュニケーションの大切さもあらためて教えていただきました。共感力が高まれば、生産性も上がる──その言葉が、とても腑に落ちました」(丸岡)

一方で、枝川教授もNECソリューションイノベータに対し、強い印象を受けたと話します。

枝川 義邦(えだがわ・よしくに)氏
立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 教授
東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(博士(薬学))、早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー認定。研究分野は脳神経科学、人を中心とした経営システムを対象にして、人材育成、組織マネジメント、マーケティングなど。

「スキルの高いシステムエンジニアが多く在籍しているにもかかわらず、会社は『スキル』以上に『人』としての価値を大切にしていると感じました。社員一人ひとりとしっかり向き合い、会社全体を『人がいる場』として設計している。その姿勢がとても印象的でした。

また、私の発言がすぐに、『自分たちの会社だったらどうか?』という視点で議論にされていたのも印象に残っています。人事の皆さんは、まさに社員一人ひとりのキャリアの舵取りをされているのだと感じました。

今回は脳科学や睡眠科学の視点からお話しさせていただきましたが、さまざまなエッセンスが溶け合った、今年ならではのレポートに仕上がったのではないでしょうか」

求職者や内定者の「知りたい」に応える、レポートの新しいかたち

「資産形成ってどうなってますか?」「内定者もUdemy使えますか?」学生からのそんなリアルな質問が、レポートの1ページ1ページを形作っていきました。本レポートは、社員だけではなく、求職者や内定者にも読まれることを意識して作られています。以前は新卒採用に携わり、今回のレポートではデータ作成やブラッシュアップを担当した長瀬桃子はこう語ります。

長瀬 桃子(ながせ・ももこ)
NEC HRトランスフォーメーション統括部 主任
NECソリューションイノベータ HR統括部 主任(兼務)

「これまで学生の皆さんから受けた質問は、できる限りすべて盛り込んだつもりです。たとえば、オンライン学習ツール『Udemy Business』はこれまでは入社後に利用できる仕組みでしたが、『入社前から使いたい』という声を受け、昨年度から内定式以降に利用できるように変更しました。今回のレポートでは、そうした変更点も新たに反映しています。

また、退職金制度が確定拠出年金へと移行してきた背景もあり、資産形成に関する質問も増えています。そうしたニーズにもこたえられるよう、できるだけ丁寧に盛り込みました。
実際に、学生の方から『このレポートで福利厚生などをひと通り知ることができ、選考を受ける後押しになった』という声もいただくようになりました」(長瀬)

「知ってもらう」から始まる人的資本経営──レポートの先へ

レポートが完成しても、それはゴールではなく、むしろスタートです。

「昨年は、発行後に社員や新卒内定者、お客様、パートナー様、社外有識者など、さまざまなステークホルダーと人的資本レポートをもとに対話の場を持ちました。その中で特に多かったのが『会社の取り組みがきちんと可視化されていて良かった』『ここまで情報開示しているとは知らなかった』という声です。『人的資本経営』という言葉はよく聞かれるようになりましたが、具体的な中身まで理解されているとは限りません。だからこそ、『このレポートを読んで、人への投資の全体像がつかめた』と言っていただけたのは大きな励みになりました」(竹谷)

制作チームが目指しているのは、制度紹介にとどまらず、働く人の不安や疑問に応えるレポート。その想いの延長線上に、今年も多くのステークホルダーとの対話が続きます。

「昨年、できる限り周知したつもりでしたが、それでもまだ、レポートの存在を知らない方が多くいることがわかりました。だからこそ、まずは知ってもらうこと。そして、読んでもらうことが大切だと考えています。
そのうえで、当社の制度や施策は年々拡充されており、把握しきれていない社員もいます。そういう社員にこそ、このレポートを『知るきっかけ』として活用してほしいですね。

正直、会社としてはあまり出したくないデータもありました。でも、あえて包み隠さずに掲載したのは、今のNECソリューションイノベータをきちんと知ってもらいたいからです。

人的資本レポートは、NECソリューションイノベータがどのような会社でありたいのかを示すひとつのかたちです。今年も、できる限り丁寧に、制度の背景や込めた想いを言葉にしました。このレポートが、働くうえでの気づきや理解の一助になればと考えています」(竹谷)

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UPDATE:2025.7.11