AIで進化した「画像認識」技術最前線 ~認識精度90%越えは当たり前、購入者50%増の活用事例も~ | NECソリューションイノベータ

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コラム

AIで進化した「画像認識」技術最前線
~認識精度90%越えは当たり前、購入者50%増の活用事例も~

UPDATE : 2021.06.04

今、AI技術の成果のひとつとして「画像認識」技術が注目を集めています。画像認識とは、読み込まれた写真データの内容を分析し、何が写っているのか、写っているものがどんな状態なのかを判断する技術のことです。AIはすでに多くの分野で活用が進んでいますが、画像認識は特に実用化が進んでいる分野です。本記事では、そうした画像認識技術の基本を解説し、効果を上げている実際の活用事例を紹介します。

INDEX

画像認識技術とは? 人間に変わってAIの目がチェック
省人化に加え、スピードと品質も改善

画像認識技術とは、画像や動画データに映っている対象物をコンピューターで識別する技術です。たとえばある野菜を撮影した写真データを読み込むと、それがダイコンなのか、ニンジンなのか、あるいはキャベツなのかを瞬時に判断します。

技術自体はかなり以前から存在しており、OCR(文字認識)は1920年代後半にアメリカとオーストラリアですでに開発されていました。バーコードリーダーも、1950年頃にはアメリカで実用化に向けた研究・開発が進められていました。

そこから時を経て、機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)など、昨今の飛躍的なAIの進歩によって画像認識技術の精度が劇的に向上し、さまざまな分野で活用されるようになってきました。たとえば産業界では、次のような活用が実際に始まっています。

食品製造業での画像認識技術の活用

食品製造業では、製造ライン上に配置されたカメラで撮影した映像データをAI画像認識で分析。ラインを流れている商品が良品なのか不良品なのかを瞬時に判別します。

水産加工業での画像認識技術の活用

水産加工業では、加工品の形状や色の異常の検出にAI画像認識を利用。検査員ごとに異なっていた品質基準が明確となり、基準に満たない2級品の出荷が防げるので、品質水準が維持できます。

水産業での画像認識技術の活用

水産業では、水揚げされた大量の魚の種類や大きさを判別。仕分け作業の手間を大きく軽減するほか、希少な高級魚の取りこぼしなどを防ぎます。

設備保全業での画像認識技術の活用

設備保全業では、道路や壁などの状態検知にAI画像認識を活用。修繕が必要になるクラック(ヒビ)や穴を検出し、設備保全の効率化を図ります。

物流業での画像認識技術の活用

物流業では、倉庫内を撮影した映像をもとに在庫を把握。従来もバーコードなどを利用した在庫管理が行われていましたが、最新の画像認識技術を駆使することで、バーコードのない商品も管理できるようになりました。

画像認識技術はものづくりの現場で
すでになくてはならないものに

ここでは前段で紹介した産業界における画像認識技術の活用について、代表的なものをいくつか紹介します。

画像認識技術を駆使して原料検査を自動化(キユーピー)

食品加工大手のキユーピーは、これまで工場スタッフが生産ラインにつきっきりで目視確認していた原料由来の夾雑物除去を、画像認識での処理に切り換え。AIが問題のある原料(ダイスポテト)を見つけだすと空気砲を噴射してベルトコンベア上から取り除く仕組みを独自に開発しました。現在は、さらなる対応原料の拡大(40種以上を目標)と、画像認識だけでは判別が難しい内部にまで入り込んだ異物(虫)を電磁波センシングで検出することに挑戦しています。

水耕栽培農園の育成不良を検出(トーヨーエネルギーファーム)

エネルギー事業を中心に持続可能な社会の実現を目指すトーヨーエネルギーファームは、同社のアグリ事業の一環として行っているレタス水耕栽培農園に、画像認識技術を駆使した育成不良苗検出システムを導入しています。カメラを搭載した農業用AGV(無人搬送車)がビニールハウス内を撮影して回り、育成不良苗を発見すると作業者に報告。早期に対策を施すことで、生産性を大きく高めることに成功しました。熟練者にしかできないと言われていた育成不良の見分けも、最先端のAI技術を活用することで約96.5%にまで高めています。

河川のコンクリート護岸劣化を検知(八千代エンジニヤリング)

大手総合建設コンサルタント会社として国土保全や交通基盤の開発・整備に取り組む八千代エンジニヤリングは、画像認識技術を河川コンクリート護岸の点検・改修業務に活用。これまでは熟練技術者が現地に赴き目視で行っていた点検作業を、撮影した画像データで自動化できるようにしました。画像認識技術の活用により、コスト削減のほか、担当者ごとの判断基準のブレが解決できました。

PRから医療、防犯まで
多くの場で利活用が広がる画像認識技術

画像認識技術は本当に多くの現場で活用が進んでいます。ここでは、基本的なユースケースに当てはまらない多彩な活用方法について、実際の事例を紹介します。

SNSの投稿写真を分析して顧客ニーズを顕在化(日本コカ・コーラ)

清涼飲料水メーカーの日本コカ・コーラは、SNSに投稿される写真データの中に写り込む自社製品を画像認識技術で検知・分析し、自社のマーケティングに活用しています。自社製品と一緒に写り込んでいる物体を識別することでシチュエーションを判別し、よりリアルな消費シーンを「見える化」する取り組みを実施。テキスト主体のSNS分析ではわからなかった約50もの新たな飲用シーン(ドリンキング・モーメント)が発見できました。

画像認識技術でコーディネート・購買をサポート(ZOZO)

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、ファッションコーディネートSNS「WEAR」に、閲覧中のコーディネート写真から類似したファッションアイテムを検索・購入できる「類似アイテム検索」機能を搭載。AIが形・質感・色・柄をもとに似ている商品を提案することで、導入前と比べて商品に興味を持つ人、購入する人の割合が1.5倍に増加したと言います。

AIで出品を極限まで簡単に(メルカリ)

オンラインフリーマケット大手メルカリは、面倒な出品手続きの簡略化に画像認識技術を活用。スマートフォンの専用アプリで出品したい商品の写真を撮ってアップロードすると、自動的に商品名やブランド名、カテゴリーなどが入力されます。書籍やゲームソフトなど特定の分野においては、商品説明の自動入力も可能に。この「AI出品」機能によって、撮影から約1分以内での出品が可能となりました。また、写真を撮るだけで類似商品を検索できる「写真検索機能」も実現しています。

早期胃がん領域の高精度検出に成功(理科学研究所/国立がん研究センター)

理化学研究所と国立がん研究センターの共同研究チームは、画像認識技術を駆使して専門医でも発見しにくいとされている早期胃がんの自動検出に成功しました。AIががんと判断した画像中、実際にがんであった割合(陽性的中率)が93.4%。正常であると判断した画像中、実際に正常であった割合(陰性的中率)が83.6%という極めて高い精度をマークしました。なお、画像1枚にかかる処理時間は1枚あたり0.004秒。臨床現場において、リアルタイムでの自動検出が実現できると期待されています。

車両や歩行者の移動経路などを分析するソリューションを提供(NECソリューションイノベータ)

さまざまな画像認識ソリューションを提供するNECソリューションイノベータは、AI技術を駆使して、動画データから自動車・歩行者の移動をリアルタイムに検知できる映像解析エンジン『FieldAnalyst for Vehicles』を開発。車種やナンバープレート、移動経路などの認識率が95%以上と高精度に検知・記録・分析できるため、交通量調査からマーケティングリサーチ、防犯などまで幅広い用途での活用が期待されます。

監視カメラに画像認識技術を活用(日本テクノ・ラボ)

コンピューターシステム開発の日本テクノ・ラボは、同社の映像監視ソリューション『FIRE DIPPER』に「AI画像認識機能」を追加。ネットワークカメラ映像を利用した顔認証や人数カウントなどを可能にしました。ディープラーニングによる精度向上によって、マスク着用時でも人物特定を可能にしたことも大きな特長の1つ。従来のIDカードを利用した入退場管理と組み合わせることで、工場などの監視業務を強化・効率化できます。

まとめ

気がつけばすでに多くの業界で活用され始めている画像認識技術。その認識精度はすでに実用レベルに達しており、幅広い業界において、業務効率化や人手不足の解消に寄与しています。最近ではベンダー各社から汎用ソリューションが登場し、かつてと比べて導入の敷居も大きく下がりました。まずは汎用ソリューションを利用することから始めてみてはいかがでしょうか。