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コラム
【改正女性活躍推進法】2022年4月中堅中小企業で義務化スタート
先行事例から学ぶ女性活躍推進の取り組み
UPDATE : 2021.08.06
女性が社会で活躍しやすい環境づくりを促進する「女性活躍推進法」が改正され、2022年4月より対象企業が拡大します。新たに対象となる企業に求められる対応や、取り組みにより生み出される新たな価値について、先行する企業の事例を踏まえて解説します。
INDEX
- 改正女性活躍推進法が2022年4月より
中堅・中小企業にまで対象を拡大 - 改正女性活躍推進法とは?
女性が能力を発揮し活躍できる環境を整備 - 優良企業には「えるぼし」を認定
イメージ向上のほか、低金利融資などの優遇も - 中堅・中小企業での女性活躍推進の先行事例4選
採用拡大や離職率の低下などの効果が- 職場環境を改善し、女性への求人アピールを強化(栄和産業)
- トップの取り組み宣言で女性の働きやすい環境作りを推進(ミタニ建設工業)
- 経営トップが意識改革を促し女性管理者の増加を目指す(オレンジベイフーズ)
- 女性のキャリアプラン設計を制度の上でもサポート(システムフォレスト)
- 女性活躍推進の実現には課題も多い
改善しながら進めた取り組み事例3選- 女性活躍推進の対象を全社に拡大して大きな盛り上がりを生んだ(志摩地中海村)
- 上司や家族を巻き込む改革で女性活躍を促進(オルガン針)
- 全社員の理解を高めることで両立支援制度の活用を加速(ラブ・ラボ)
- まとめ
改正女性活躍推進法が2022年4月より
中堅・中小企業にまで対象を拡大
2016年4月に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、いわゆる「女性活躍推進法」が2019年6月に改正されました。これによって、これまで努力義務とされていた「常時雇用する労働者が101人以上300人以下」の事業主についても、「一般事業主行動計画の策定・届出義務および自社の女性活躍に関する情報公表」が義務付けられることとなり、2022年4月1日から施行されます。
改正女性活躍推進法とは?
女性が能力を発揮し活躍できる環境を整備
女性活躍推進法とはその名の通り、(ここでは労働生活において)女性の活躍を推進するべく国や自治体、雇用する企業の努力を促す法律です。具体的には対象となる企業に対して「自社女性社員の活躍状況の把握と課題の分析」「数値目標を伴った行動計画(一般事業主行動計画)の策定」「都道府県労働局への届出」「自社女性社員の活躍に関する情報の公開」が求められます。
そして前段でも触れたよう、2022年4月1日から施行される改正女性活躍推進法では、対象となる企業が大幅に拡大。具体的には、常時雇用する労働者が101人以上の規模の企業が対象となります。ここで言う「常時雇用する労働者」とは、事実上、期間の定めなく雇用されている労働者であれば、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど雇用形態を問いません。
なお、改正女性活躍推進法には義務を怠ることによる罰則規定はありません。しかし、積極的に推進した企業に対して認定を行う認定制度が盛り込まれており、優秀な女性社員の雇用促進や、企業ブランディングに大きな効果があると注目を集めています。また、同法への対応状況は厚生労働省が運用する「女性の活躍推進企業データベース」で確認できるため、対応を軽視するような姿勢を続けると企業イメージを大きく損なう恐れがあります。
女性が働きやすい職場は、誰もが働きやすい職場環境作りの第一歩。制度を軽んじることなく真摯に向き合い、より良い労働環境を構築していきましょう。
優良企業には「えるぼし」を認定
イメージ向上のほか、低金利融資などの優遇も
女性活躍推進法には、法の精神を理解し、女性の活躍を推進する取り組みを積極的に行っている優良企業を認定する「えるぼし認定」という仕組みがあります。
えるぼし認定を取得するには、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」そして「多様なキャリアコース」という5つの評価項目について、自社の状況を「女性の活躍推進企業データベース」に登録、公表する必要があります。この際、1~2つの基準を満たした企業はえるぼし(1段階目)、3~4つの基準を満たした企業はえるぼし(2段階目)、全ての基準を満たす企業はえるぼし(3段階目)の認定を得ることができます。
さらに改正女性活躍推進法ではこの上となる特例認定として、「プラチナえるぼし認定」を新設。5つの評価項目のうち「継続就業」と「管理職比率」について、より高い水準での達成を求められるほか、男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者の選任なども求められます。
えるぼし、プラチナえるぼしを取得した企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを自社の商品や広告、名刺などに付することが許されます。自社の取り組みを広くアピールできるようにすることで、優秀な人材の獲得や、社会的評価の向上が期待できるほか、取り組みを進めて行く中で、女性視点による価値創造や業務の効率アップなども図れそうです。
また、えるぼし認定企業は公共調達で大きく加点評価されるほか、日本政策金融公庫が実施する企業活力強化貸付を利用する際に通常よりも低利で融資を受けられます。ちなみに2021年3月末時点のえるぼし認定企業数は、第1段階が7社、第2段階が436社、第3段階が858社、そしてプラチナえるぼし認定企業は13社となっています(厚生労働省『女性活躍推進法への取組状況(一般事業主行動計画策定届出・「えるぼし」「プラチナえるぼし」認定状況)』より)。
中堅・中小企業での女性活躍推進の先行事例4選
採用拡大や離職率の低下などの効果が
ここではさまざまな業界の中堅・中小企業がどのようにして女性活躍を推進し、どのような成果を得たか、具体的な事例を紹介します。
職場環境を改善し、女性への求人アピールを強化(栄和産業)
バスの行先表示機フロントルーフやショベルカーのエンジンフードなど、大型金属プレス製品の製造を業とする株式会社栄和産業(神奈川県/常用労働者数:140名)は、これまでも障がい者、外国人労働者、高齢者の雇用に積極的に取り組んできましたが、2016年の女性活躍推進法の施行をきっかけに女性技能職の雇用にも注力。
業務の性質上、そもそも女性の応募者が少なかったのですが、女性用トイレの新設などといった工場設備の見直しや、女性を意識した求人パンフレット、求人広告を作成。それにより技能職においても新卒女性の採用に成功するなど、女性の活躍の場を徐々に拡げています。
トップの取り組み宣言で女性の働きやすい環境作りを推進(ミタニ建設工業)
高知県の建設業者・ミタニ建設工業株式会社(常用労働者数:155名)は、業界全体の課題となっている男女を問わない人手不足対策として「女性が気持ちよく働ける環境がごく当たり前に整っている会社でなければ、そもそも人が集まってこない」と考え、全社的な職場環境改善に着手しました。
経営トップから「会社として真剣に女性を積極的に採用していく」という取り組み宣言を行い、女性の働きやすい職場環境作りや積極的な採用活動を始めたところ、女性が活躍できる職場であるという認知が内外に広がり、求人への女性の応募が着実に増加しているそうです。
経営トップが意識改革を促し女性管理者の増加を目指す(オレンジベイフーズ)
大手ハンバーガーチェーンのパティ製造などを手がけるオレンジベイフーズ株式会社(愛媛県/常用労働者数:74名)では、部長職こそ約半数が女性であるものの、社員の約7割が所属する製造部門の役職者は男性のみで、そもそも役職を目指す女性が少ないことが問題になっていました。
そこで、経営トップが牽引役となって女性管理職と女性社員が気軽に話せる交流会を実施したり、キャリア研修内容を大幅に見直ししたりするなど、女性社員の意識改革に取り組んだところ、管理部門からアシスタントチーフ(主任)に昇格する女性がでたほか、製造現場からも初の女性管理職候補が現れるなど、女性の管理職登用が進んでいます。
女性のキャリアプラン設計を制度の上でもサポート(システムフォレスト)
クラウドソリューションやIoT・AIソリューションのコンサルティング事業を展開する株式会社システムフォレスト(熊本県/常用労働者数:30名)は、長時間労働になりがちな業務の特性から、特に子供を持つ女性は自ら働き方を限定してしまうという課題を抱えていました。
そうした状況を解決すべく、「短時間正社員制度」を新設。テレワークなども併用することで、育児中の女性が一時的に短期間労働となった場合でも継続的にキャリアを積み上げていけるようにしています。また、これと並行して、長時間労働を是とする社風も一新。短時間で効率的に成果を上げていく仕組みを作りあげています。
女性活躍推進の実現には課題も多い
改善しながら進めた取り組み事例3選
前段の事例で紹介したようにメリットの大きい女性活躍推進ですが、その実現は一筋縄ではいきません。ここでは女性活躍推進に取り組んだ中堅・中小企業が直面した課題と、それをどのようにして乗り越えたのかを紹介します。
女性活躍推進の対象を全社に拡大して大きな盛り上がりを生んだ(志摩地中海村)
三重県志摩市でホテル業を営む株式会社志摩地中海村(常用労働者数:105名)は、グループ全体でえるぼし認定の取得を目指して女性管理職の登用を目指しましたが、そのために実施した課題分析が正社員に限定したものだったこともあり、会社全体の取り組み意欲を高めることができませんでした。
そこで同社では、この取り組みの対象をパート社員にまで拡大。直接意見交換する場を設け現場ニーズを把握したり、社内報などのコミュニケーションツールも駆使して経営陣の思いを伝えていったりしたことで、全社的な女性活躍への盛り上がりを作ることに成功。正社員昇格を目指すパート社員の意欲向上なども実現できました。
上司や家族を巻き込む改革で女性活躍を促進(オルガン針)
ミシン針などの繊維用針および電子部品の開発・販売を行うオルガン針株式会社(長野県/常用労働者数:213名)は、創業100年と前後してさまざまな社内改革に向けた取り組みを実施しています。女性活躍の促進もそうした取り組みの1つ。しかし、営業職と比べて育児との両立が難しく目標となるロールモデルの存在しない生産・技術職の現場では、上司や家族の理解が得られないこともあって、女性活躍に向けた意欲が高まらない問題がありました。
そこで同社では勤務・人事制度の改善に加え、上司や家族の理解と協力を促進する施策を実施。上司も交えた人事面談や、配偶者や子供を対象とした職場見学イベントなどのユニークな取り組みで周囲の理解を高め、女性活躍の促進を実現しました。
全社員の理解を高めることで両立支援制度の活用を加速(ラブ・ラボ)
ノベルティグッズの印刷加工・小売を手がける株式会社ラブ・ラボ(香川県/常用労働者数:102名)では、常用労働者の3分の2が女性であることもあって、かねてより女性の働きやすい職場作りを心がけてきましたが、周囲を気にして育児等、生活上の理由で仕事を休むという意識が低い問題がありました。また、そうした休暇・休業に協力的でない部署も現実に存在していたと言います。
そこで同社では自社の両立支援制度を全社員に周知するためパンフレットを作成。さらに制度対象“外”の社員に個別ヒアリングを実施することで関心を高め、全社員の両立支援の理解を進めることに成功。育児休業取得率100%(女性4名、男性3名)を実現しました。
まとめ
女性活躍推進法の対象拡大などもあり、中堅・中小企業においても、もはや「いつかやる」では許されない課題となっている女性活躍のための職場作り。しかし、その実現は簡単なことではありません。改正女性活躍推進法が施行される2022年4月1日まではあとわずか。充分な取り組みができていないという企業は、これまで以上に歩みを速める必要があります。
こうした働きやすい職場作りにICTの活用は欠かせません。育児と仕事を両立させるためのテレワーク環境構築など最先端のICTを駆使し、女性にとって、ひいては全ての人が働きやすい職場環境を構築しましょう。