IoTとは?産業別の活用事例からわかる 最新動向や必要な技術 | NECソリューションイノベータ

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コラム

IoTとは?産業別の活用事例からわかる
最新動向や必要な技術

UPDATE : 2021.12.10

以前から、よく聞く言葉ではありつつも今一つ理解しきれない「IoT(モノのインターネット)」と呼ばれる技術。しかし、気がつけば今やありとあらゆるシーンでこの技術が活用されるようになっています。この記事ではIoTが実際にどのように活用されているのかを、さまざまな業界の活用事例をもとに紹介・解説します。

INDEX

IoTとは?仕組みを解説

「IoT(Internet of Things)」は「モノのインターネット」とも訳される概念で、さまざまなモノがインターネットに接続され、相互に情報をやり取りするための製品や仕組み、技術を示します。この言葉自体は1999年に提唱されたものですが、2010年代になって技術的な目処が立ち、本格的な実用化が始まりました。IoTを実現するためには、大きく以下の4要素が必要とされています。

IoTの仕組みを実現する4つの要素
デバイス 対象となるモノ
・家電、スマホ、工場の設備、監視カメラ、自動車など
センサー モノの状態をデータで取得・測定する装置
・フィールドセンサー:温度や光の強弱を測定
・モーションセンサー:モノの傾きや振動など動きを測定
ネットワーク センサーが取得したデータを送受信する通信手段
・無線通信でサーバやPC・スマホなどの端末にセンサーが取得したデータの送受信
アプリケーション データを可視化するための手段
・PCやスマホなどを利用

まずは「モノ」に相当する「デバイス」です。家庭であればエアコンや洗濯機、冷蔵庫などの家電製品、工場であれば工作機械や監視カメラなどの設備類全般が該当します。そしてこれらの状態を監視し、データとして取得・測定するための装置「センサー」がデバイスに搭載されています。データを送受信する「ネットワーク」、データを可視化し活用するための「アプリケーション」が揃ってIoTの基本要素となります。

IoTで実現できる機能

IoTではさまざまな機能を実現できますが、現在では大きく4つの機能に集約できるでしょう。

IoTで実現する4つの機能

  • モノの遠隔操作
  • モノ同士の通信
  • モノや人の状態を知る
  • モノや人の動きを検知

1つが「モノの遠隔操作」です。例えばIoT化されたエアコンや照明は、外出先からスマートフォンでコントロールすることができます。そしてこれと組み合わせて使われることが多いのが「モノ同士の通信」。音声で家電製品などをコントロールできるスマートスピーカーなどはこの2つの機能を組み合わせて活用した代表例と言えるでしょう。モノ(スマートスピーカー)からモノ(エアコンなど)へ通信(命令)を行うことで、より便利で快適な暮らしを実現できます。

内蔵されたセンサーで「モノの状態を把握」し、ネットワークを通じて遠隔地から確認できるようにするのもIoTの代表的な機能の1つ。工場などで機器のコンディションや動作状況などの確認に利用されています。そして最後の1つは「モノの動きを検知」。ここでいう「動き」とは実際の動きのほか、温度や風速、水位などの環境変化も含みます。例えば、ビニールハウスのセンサーに組み込むことで、栽培環境における変化の監視などが可能になります。

IoTの将来性と最新の動向

総務省『令和3年版 情報通信白書』「世界のIoTデバイス数の推移及び予測」によると、(広義にはIoT機器となる)スマートフォンなどの「通信」機器や「コンピューター」は、2020年の時点ですでに飽和状態にあり今後、劇的な市場拡大は見込めないとされていますが、それ以外の分野、例えば「自動車・宇宙航空」「医療」「産業用途」「コンシューマー」は今後も高いレベルの成長を維持できる見込みとされています。普及台数においても今後は「通信」や「コンピューター」を上回っていくことは間違いないでしょう。長期的にはインターネット活用の主役はIoT機器に切り替わっていくことになります。

そしてこうした流れを後押しするのが、昨今注目度を増しているAI(人工知能)技術や、5G(第5世代移動体通信システム)の普及。現在も活発なIoT活用ですが、これら最先端技術の普及拡大によって、IoTは家庭からオフィス、工場、インフラなどまで幅広く活用されていくことになると予測されています。

産業別にIoT活用事例を紹介

すでに現実に活用が始まっているIoT。ここではIoTが実際にどのように活用され、どのような成果を上げているか、産業別に事例を紹介します。

医療/ヘルスケアのIoT活用事例

先に紹介した総務省『令和3年版 情報通信白書』でも示されているように、医療・ヘルスケアは今後のIoT活用が特に期待されている分野の1つです。

・脳梗塞の再発防止を促す服薬支援容器(大塚製薬・NEC)

大塚製薬株式会社とNEC(日本電気株式会社)は、脳梗塞の再発防止のため、毎日特定の時間に服用しなければならない抗血小板剤のピルケースをIoT化。時間になるとスマートフォンに服用を促す通知を送るほか、服用すると(錠剤の取り出しを検知して)その記録がメモリーに記録され、本人と医師・薬局が服用状況を確認できるようにしました。これにより従来は約半数の患者がおよそ半年で薬を飲まなくなってしまう状況の改善が期待されています。

・高齢者の健康寿命に貢献するウォークラリーシステム(リブト)

複雑な操作が必要ないIoT機器は、スマートフォンなどの情報機器を上手く活用できない高齢者との相性が良いと言われています。例えば、リブト株式会社が開発した「IoTを活用した健康まちなかウォークラリーシステム」では、公園や公共施設などの目的地に設置された到着記録レシーバーが、高齢者が装着したリストバンド型Bluetoothデバイスを検知し、特に高齢者側が複雑な操作をすることなく、外出回数や推定移動距離を記録できるようにしました。こうした情報をランキング化するなどの工夫で、高齢者が楽しみながら外出することを後押ししています。

製造業のIoT活用事例

製造業の世界ではすでにIoTの活用が大きく進んでいます。今後の成長拡大も期待されているIoTの主戦場の1つと言えるでしょう。

・世界130の工場をつなぐIoTプラットフォーム(デンソー)

株式会社デンソーは、2019年10月から世界130か所の工場をIoT技術で繋ぐ「Factory-IoTプラットフォーム」の運用を開始。IoTを活用して、世界中の工場のさまざまな機器から収集したデータを、クラウド上で集約・分析することを可能にしました。これにより「各位の需要に合わせた生産変動などにも即座に対応できるグローバルな生産体制強化や、作業者の動きや生産設備の稼働状況などのリアルタイムな分析」を実現できるとしています。

・IoT活用で勘と経験に頼ったモノづくりの脱却(大矢製作所)

株式会社大矢製作所は、工作機械を制御するPLC(Programmable Logic Controller)をIoT化することで、生産実績データや量産品の製造品質データをクラウド上に蓄積。作業ごとに加工機の動作設定(回転数、圧力制御条件)、実測データ(回転数、ヘッド位置、圧力、摩擦熱温度)を記録し、職人の経験と勘だよりになっていた加工作業のノウハウを「見える化」することに成功しました。将来的には蓄積された情報で機械学習を行い、今後の加工条件設定などを最適化していくことも予定しています。

建設業のIoT活用事例

建設業においても、人手不足の解消や安全性担保の目的でIoTが活躍できるケースがあります。ここではそれらの事例をピックアップして紹介します。

・地震直後の建物の安全性を素早く可視化(大成建設)

大成建設株式会社は、地震発生直後に建物の安全性を即座に確認・評価できるシステム「T-iAlert ® Structure」の構築に、IoTを活用しました。「T-iAlert ® Structure」では、建築物の構造的要所に加速度センサーを組み込み、地震直後に計測した加速度情報から建築物が受けたダメージを計測して即座に健全性を判定。状況を施設管理者に即時通知できるようにしています。これによって施設管理者は現地調査に赴くことなく、建物の使用可否を迅速に行えるようになります。同社はこの仕組みを工場や自治体などに導入推進していくとしています。

・建設現場の作業者安全モニタリングシステム(村田製作所)

株式会社村田製作所は、ヘルメットに装着したセンサーデバイスで作業者の生体情報と環境情報を取得する「作業者安全モニタリングシステム」を開発し、離れた場所にいる現場監督者や事務所スタッフが作業者の安全をリモートで管理できるようにしています。具体的には脈拍、活動量情報から熱中環境下における熱ストレスレベルの可視化、加速度センサーを利用した転倒・落下検知などを行います。また作業者がセンサーデバイスのボタンを5連続押下することで緊急通報も可能です。

小売業のIoT活用事例

もちろん小売業の世界でもIoTはなくてはならないものに。商品や機器の自動管理、レジや警備の省人化、購買データ取得など、幅広く利用されています。

・カフェマシンや冷蔵庫をIoTで管理(NEC・セブンイレブン)

NEC(日本電気株式会社)は、2018年12月にオープンした「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」において、IoTを活用したさまざまな施策を行っています。カフェマシンや冷蔵庫などの店舗設備情報を収集・蓄積することで故障の予兆を捉え、先駆けて修理・メンテナンスすることで「止まらない店舗」を目指しています。2020年5月中旬からは店舗内の商品案内(サイネージ)画面の試聴時間測定の実証実験も開始。人の視線を検知できる技術を活用することで、商品案内の注目度などの測定をしています。

・IoTによる発注業務の自動化(山岸宇吉商店)

小売業のIoT活用はなにも大規模事業者だけの取り組みではありません。埼玉県入間市の酒類卸売業・山岸宇吉商店は、パッケージ化されたソリューションを利用することで、“昔ながらの街の酒屋さん”にしてIoTの早期導入に成功しました。重量で在庫を把握できるIoT機器を利用することで、棚卸作業を効率化しているほか、将来的には取引先への発注の自動化を予定していると言います。

自治体のIoT活用事例

最後に紹介するのは自治体におけるIoTの活用事例。先進的な自治体を中心に多くの活用が始まっています。

いちご農家の生産性向上を目指すIoTを活用した実証実験(青森県八戸市)

青森県八戸市は、後継者不足などから生産者が減少傾向にあるいちごの生産性向上と労働環境向上を目的にIoT活用の実証実験を行いました(2019年12月〜2020年3月)。同実証実験では、IoT機器を利用して、いちごハウスの温度、湿度および土壌水分量などの測定を行い、生産環境の可視化を実現。加えて、ネットワークカメラを使っていちごハウス内暖房機の稼働状況をリモートで確認できるようにし、見回り業務の負担低減などを目指しています。

・観光用のIoTレンタサイクル(ソフトバンク・PSソリューションズ・日本オラクル)

香川県の豊島(てしま)では、2016年にパーソナルモビリティ(電動二輪車)のレンタルサービス「瀬戸内カレン」が展開されました。同事業では「瀬戸内国際芸術祭2016」に向けた移動手段として、IoTを導入。電動二輪車に組み込まれたセンサーで取得した運転情報は、内蔵された通信機能で中央管制センターに送られており、急発進・急ブレーキ・コースアウトなどといったアクシデントをリアルタイムで検知、場合によっては運転者に連絡(安否確認)できるようにしています。

業務のIoT活用の前に万全なセキュリティ対策を

今後、さらに活用が拡大していくこと間違いなしのIoTですが、その利用に際してはセキュリティについて考えておく必要があります。モノが独自に通信を行うIoTには、PCなどと同様、情報漏洩のリスクが存在するためです。

こうした状況を受け、総務省は2016年7月に「IoTセキュリティガイドライン ver 1.0」を発表。IoT機器、システム・サービスの関係者が守るべきルール・対策を明確化しています。総務省ではその後も「IoTセキュリティ総合対策」(2017年10月)、「IoT・5Gセキュリティ総合対策2020(案)」(2020年7月)など、さまざまな資料を作成・配布しています。深刻なセキュリティ被害を避けるためにも、導入前にこれらの資料を通読し、適切な運用ができるIoTセキュリティ設計支援サービスを提供している開発会社に相談することをおすすめします。

まとめ

ビジネス、産業の世界から、個人の暮らしまで、あらゆるシーンで活用が進んでいくことが確実視されているIoT。今後、企業が生き残っていくためには、いち早くこの技術を事業に採り入れ、新規ビジネスの創出や、既存事業の効率化・最適化を目指す必要があるでしょう。